私の目の前に立つ女はクール気取りの生意気なヤツだと思っていたけど。
それは私の勘違いだった。私はアイツに喧嘩を売ったことを後悔している。アリーナを覆うバリアを突き破った未確認ISを素手で殴り飛ばし、サッカーでもするように砲弾を蹴り返している。
篠ノ之箒やセシリア・オルコットのように彼女も一夏にアプローチしていると思っていたのは勘違いで、本当は一夏と話すのも嫌がっているとは思いもしなかった。
だいたい、どんなISを使っているのすら不明な代表候補生なんて有り得ない。たぶん、彼女は日本政府が一夏を守るために用意した特殊捜査官だ。
彼女は身体を振り子のように右から左へ左から右へ動きながら拳を未確認ISに叩きつけ、操縦者を殺す勢いで殴り続けている。いや、操縦者は居なくても遠隔操作できる機体とかだろうか?
それも有り得ないわね、遠隔操作を可能としたISの製作に成功した国は中国を含めて存在しない。
それこそ人間の脳と骨髄を取り出し、機械と結合すれば可能性はあるかもしれないけど。非人道的行為を行う国は存在しないはずだ。
「日本代表候補生を嘗めんじゃねえっ!!」
彼女の叫び声はアリーナ全体へ響き渡り、我先に逃げようと暴れていた生徒達は動きを止め、彼女の戦う姿を見詰めている。正直、さっさと逃げてもらえると彼女をカバーするために私は動けるんだけど。
そんなことを考えていると地面を突き破り、機械生命体としか表現できない人型が彼女と未確認ISを一周するように駆け回っていた。
「ムッちゃん、時間は大丈夫だよね?」
この学園、ちょっとだけセキュリティを見直す必要があるんじゃあ…。いや、べつに意見する訳じゃないけど。生徒は不信感を覚える可能性だってあるわけだし、もっとキッチリとするべきよ。
ふと、彼女を見ると見たことのないメタリック・グレーのボディと未完成な部分の残った全身装甲を纏うヤツが彼女の隣に立っていた。次から次へと侵入を許すとか学園のセキュリティ管理者はバカなの?
「ずいぶんと遅かったじゃないか、簪。だが悪くないタイミングだ」
そう告げた彼女は起き上がろうとする未確認ISを蹴り飛ばし、アリーナの壁際まで歩いていくと壁に足を突き刺しながらバリアと観客席を隔てる隙間に座って観戦している。
「
もう、ダメね、頭が痛くなってきた。チラッと一夏を見るとキラキラと目を輝かせながらバッタを纏ったヤツを見ている。なんだかヒーローを見たような少年みたいでかわいいわね。
「私の強さは桁外れだ…!」
向こうも向こうで訳の分からないことを言ってるし、私がIS学園に来た意味ってなんなのかしらね?
一夏とラブラブな学園生活を送るためよ!!