9084 共産趣味と化した世界   作:ryanzi

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おっと、作者は共産趣味者の中でも少数派なんだ。
それに、にわかでもあるんだ。
『AAで学ぶネット事件簿』を見れば大弾圧がどんなものかわかるよ。
◆mtwlx/9P3UwKに敬礼!
さあ同志たちGenocide of “Social Justice”を読むのです!


原始的な、あまりに原始的な・・・音声案内

『・・・もともと共産主義に対する恐怖は存在していましたが、それとはまた別の理由で彼らは同志たちを危険視しました。彼らは同志たちを得体のしれないナニかと見なしました。無理もありませんでした。特に現在の朝鮮半島南部に位置した大韓民国の市民は、この一連の政変を、自国の安全保障を脅かすものと見なしました。何しろ、日本が共産国家となると周りに味方はいなくなるので』

 

確かに、信義の時代では韓国の周りには日本以外に資本主義国が存在しなかった。

 

『そして韓国の市民たちにとって想定外だったのは同志たちが〈米帝万歳〉のスローガンのもとにアメリカとの同盟関係を強化したことでした。こうなると正規軍は手を出せなくなってしまいました。そこで韓国市民たちは独自に市民軍を結成して対馬に上陸しました。これが最初の大弾圧である〈対馬大弾圧〉となりました。さて、ここまで説明してあげたので、お礼くらいはしてくれますよね、同志?』

 

信義は驚いた。音声案内で金をむしり取ろうとしているのだ!

 

「すみません・・・、この大躍進麦酒を置いてください」

 

レイラは申し訳なさそうな表情をして、ビール瓶を信義に渡した。

もっと信義は驚いた。音声案内で酒を奪い取ろうとしているのだ!

だが、仕方がない。信義は浮遊ウィンドウの上に瓶を置く。

すると、瓶は1と0の数字に分解され、光の粒となって消えた。

 

『ありがとうございます、同志。・・・プハア』

 

「レイラさん、もしかして・・・」

 

「・・・人間がやってるんです」

 

91世紀なのに、音声案内だけは微妙に原始的だった。

 

『ふう、やっぱりこの一杯のためだけに音声案内をやっているんですよね。さて、話を続けましょう。〈対馬大弾圧〉に関しては対馬大弾圧公園に行ったらわかると思います。さて、この最初の大弾圧をきっかけに世界各国で市民団体が団結するようになり、そして、ついにanti communist hobbyst committe、通称〈反共産趣味者委員会〉が結成されてしまいました。彼らはIT企業と結びつくことによって、独自の裁判システムを築き上げたのです。その裁判は歪なものであり、弁護人はおらず、大多数の市民が裁判官として臨んだのです。結果は・・・大惨事となりました。かつての魔女狩りのように、多くの同志たちが日々処刑されていきました』

 

信義はぞっとした。〈大弾圧時代〉は自分が眠った直後だ。もし致死性横隔膜痙攣にかかっていなかったら、信義は地獄を見ていたに違いない。

 

『しかし、それに抵抗する国は日本以外にも存在しました。中国、ロシア、朝鮮民主主義人民共和国、ベトナム、キューバといった共産〈主義〉国家です。彼らは反共産趣味運動の抑圧に力を入れ、日本に対する支援を行いました。そして、ついに中国、朝鮮、日本による現在のイースタシア軍の前身である東亜連合軍が結成され、韓国を占領下に置き、対馬は日本に返還されました』

 

信義からすると半分悪夢であった。

 

(何かの冗談か?中国と北朝鮮と日本が協力しただって?)

 

『しかし、それは新たな悲劇の始まりとなりました・・・』

 

その時、空から光輝く雨粒が降り注ぐ。

それと同時に音楽が響いてくる。

信義は知らないが、それはノルウェー版『赤軍に勝るものなし』だった。

 

「レイラさん、これは一体・・・?」

 

「・・・『愛の日』の再現です。週に一回くらいのイベントです」

 

「『愛の日』?」

 

「音声案内を聞けばわかりますよ」

 

『困りますよ。あれ説明するの大変なのに』

 

「おや、シベリアに転勤しますか?キムさん?」

 

『やっぱりリイナかよ。・・・じゃあ、そこにいるのは』

 

「ええ、21世紀から来た人ですよ。それも最初の」

 

『うげ、すごくメンドクサイな。あれすごくオカルトな出来事なのに』

 

(オカルト・・・?)

 

結局、リイナがもう一本、大躍進麦酒を渡すことで話がまとまった。

 

『では、話を再開しますね。ACHCは一連の出来事を受けて、連合市民軍を結成しました。そして、ついに市民軍は東日本を占領してしまいました。そして、東京大弾圧が始まってしまいました』

 

声が急に真面目なものになった。

 

『そのころのACHCが定めていた共産趣味者の定義はかなり曖昧なものとなっていました。それにより、本来は共産趣味者ではないはずの同性愛作家や淫夢廚として知られていた同志たちが処刑されました』

 

「たまげたなあ・・・」

 

信義はつい語録を口にしてしまった。

 

『おや、それなら話が早い。本来なら十分くらいは淫夢廚の説明に費やされるはずだったんですが』

 

(危ないところだった!)

 

信義もあれに関する説明は聞きたくなかった。

ついでに、あることに気がついた。

 

「・・・あの、まさか致死性横隔膜痙攣の研究が遅れたのは」

 

『ええ、西暦4000年まで戦乱が続いたので。大弾圧時代自体は五年で終わったんですが』

 

「よ、4000年・・・」

 

千年以上の時を要したのだ。それなら遅れても仕方がないだろう。

 

「でも、そこまで長く続くような戦いをどうやって終わらせたんですか」

 

『・・・この野郎』

 

「キム、そこまでシベリアに行きたいの?」

 

『わかったよ・・・さっき雨が降っていただろ?』

 

「はい」

 

『その雨が降ったおかげで、争いが終わったんだ』

 

「・・・はい?」

 

結局、また話についていけなかった信義だった。




柞刈湯葉の『人間たちの話』はすごく面白いですぞ、同志。
ぜひ、『たのしい超監視社会』を読もうではないか。
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