9-nine- にじいろゆめいろきみのいろ。   作:氷桜

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何かを戒めるかのように。
何かを悔いるかのように。


79.打音。

 

階段を降りれば、響いていた音は段々と大きくなってきた。

同時に、周囲の異常に目が向き始めたのは――――恐らくは、春風の保護があってこそなのだろう。

 

「……なぁ、都、春風。」

 

女王であっても、肉体は同一。

故に呼び名を変える事はなく――と言うよりは気にする余裕がなく――声を投げ掛ける。

 

「どうか、した?」

「何か気付きましたか?」

 

二人は気付いていないのか、或いは周囲が当然のように見えているのか。

同調はし続けている筈だが……その辺りの影響力に関してまでは分からないし、知る時間もなかった。

分かっているのは、互いのアーティファクトを利用できる。

そして、それらを利用してのほぼリアルタイムでの強化・同調反復。

……そ(・)れ(・)以(・)上(・)にも手を出すべきなのかは、踏ん切りがついていなかったが。

今はそんな事を考えている余裕はないのだと、改めて気を引き締める。

 

「俺だけかもしれないんだが……なんだか、周辺の廊下の色(・)が(・)違(・)わ(・)な(・)い(・)か?」

 

なんと言えば良いのか。

この学校だって出来たばかりとは到底言えないから、所々壁がくすんで見える場所だってある。

隅の方だったり、或いは物陰だったり。

そういった場所を含めて――――なんだか、明るいと言うか。

言ってしまえば、桃(・)色(・)が(・)漂(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)よ(・)う(・)に見える。

 

「色……?」

「私は……申し訳有りません翔様。 とてもそうは見えないのですが。」

「さっきまでは俺も気付かなかったんだけどな。」

 

二人の反応からして、見えているのは俺だけ。

となれば、相棒由来か……或いは、体内に取り込んでいる破片の影響の強度差か。

何にしろ、今はあって困るものじゃない。

 

「向こう……体育館のほうが少し濃くなってる気がする。 少しの差にしか見えない気もするんだが。」

 

何かにぶつかるような音は、そちらから響いてくる。

つまりは、この妙な状況を引き起こしているユーザーも向こうにいると考えて良い筈。

 

「何にしても……。」

「そちらに行くのは必須、という事ですわね。」

 

二人は音を頼りに。

俺は音と、色の濃さを頼りに。

体育館へと、足を向けた。

 

む(・)わ(・)っ(・)、とした明らかな異常が身体に張り付いては来るが――――其処は、春風の持つアーティファクトの効果。

『眠らない』と定義付けた自身と俺達、そしてその能力を「保てるように」実現化する俺。

何方かだけであれば途中で効果が薄れていた危険性もあったが……前の枝で、経験していることだから。

 

がつん。

がつん。

がつん。

 

体育館へと通じる、鉄製の……言ってしまえば安全扉のようになっている少し重い扉。

その前で頭をぶつけ続けながら、何かを呟いているユーザーの前にたどり着くことは難しくはなかった。

 

『眠れない眠れない夢を見たいのに夢くらい見ていたいのに彼女と彼奴と彼奴等と過ごす夢くらい…………。』

 

ぶつぶつと、意味を持たない言語を垂れ流すだけのそれは。

一年生と思われる――――体操服姿の男子生徒だった。

 

がつん。

 

『俺だって僕だってやりたいことだって願いたいことくらい自由だろでもなんでなんでなんで……。』

 

がつん。

 

俺達でさえ、言葉が出ない……口を出すに出せない、その状況。

 

ぶつけることで、鉄製の扉に振動が伝わる。

少しずつ、変形とともに額が割れた血液が飛び散っている。

同時に揺れる、耳元の装飾品。

――――その血が見る見る間に蒸発し。

俺の見る、桃色の何かに変動する様。

 

幾度もぶつけたことで、体操服の上着が捲れ。

その腹部に、大きく広がるスティグマが侵食を示し。

彼の放つ体液全てが、今のこの学校を侵食し始めている。

 

「…………。」

「ぇ……。」

「…………。」

 

呼吸を飲む、都。

口を抑える、春風。

そして、腕を伸ばさざるを得ない俺。

 

今のこの状況を止める手段は、俺の取れる範囲でたった1つ。

都の持つ、簒奪、盗賊――――奪取のアーティファクトを行使すること。

問題は、契約しているアーティファクトの位置そのモノなのだが……今は、気にしなくても良かった。

 

「……都、力を借りる。」

 

そんなことを囁いて。

彼女の返事を待たずに、手の中に引き寄せるように。

狙うは、耳元の装飾品。

服装に似付かわしくない、明らかに異物のそれ。

それを奪うために、力を集中する。

 

すぐ近くに、契約者がいるのに。

眷属に過ぎない、同調しているに過ぎない俺が使おうとする理由は。

今のこの状況を止めたい。

彼女に、手を汚してほしくない。

そんな、俺の我儘故に。

 

 

――――ちりん、と。

 

金属の音が、廊下に響くのと。

彼が、倒れるのは――――同時だった。

 

…………そんな光景を見続けていた。

都が倒れるのも、また同時だった。




ねむい

4/25のヒロイン誰が良いよ? 一位が25,二位が26です

  • 九條 都
  • 新海 天
  • 香坂 春風
  • 結城 希亜
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