何処かで待ち合わせ。
そんな、想像していた学生らしい行為も最近は減ってきて。
殆どは彼女が俺の家にやってくるか、俺がナインボールに迎えに行くか。
今日は前者。
「おはよう?」
渡してある合鍵で、自分の家のように入ってくる都。
半分以上はもう、彼女の家のようなもので。
俺だけの家、という自覚も少しずつ減ってきていた。
「おはよう、都。」
「あ、今日は起きてるんだね?」
「早めに寝たからな~。」
「私はちょっと寝不足……。」
左手の指で目を擦る姿に、少しだけ笑みを浮かべて。
「眠れなかったのか?」
「そういう訳じゃないんだけど……なんでだろ?」
「眠いなら少し寝てからにするか?」
「うぅん……一時間だけ、良い?」
勿論、とベッドを指し示して。
「ご自由にどうぞお姫様。」
そんな言葉を呟けば。
「ありがと、王子様。」
と。
少しして、小さく寝息が聞こえて。
流していた音楽を消して、寝顔を少しだけ見て。
起こさないように静かに、マウスをクリックした。
「おやすみ、都。」
そんな言葉を囁いて。
※
それから凡そ二時間弱。
少しだけ長く寝かした後で。
デート、という名目もあってか。
久々のモックでの昼食。
「……。」
けれど。
幸福半分、何とも言えないモヤモヤ半分といった感じの。
言葉にしづらい、入り混じった感情を顔に浮かべている。
「……いい加減機嫌直してくれよ。」
「……うん、そうなんだけど、ね。」
「俺が寝かしておいたのが悪いんだからさぁ。」
「文句は絶対に言えないし……ううん、ちょっと時間頂戴。」
何でこんな顔をしているかと言えば。
単純に寝過ぎたことで俺との時間が減ってしまったこと。
そして、出かける時間になってしまったことで昼食を外で食べることになった事。
500円の外食が月一での楽しみ、と以前から言うように。
倹約家の外面が特に強く、お金も貯まるだろうなぁ、という感じが俺にはあった訳だが。
「でも。」
「……?」
「久しぶりのデートなんだし、笑っていて欲しいって思っちゃ駄目か?」
明日も、その先も。
一緒だというのは分かっていても。
一日を大事にしたい、というのはズルい言い訳だろうか。
「……むー。」
「ほら、そんな考え事してるから。」
頬に赤茶けた色のソースが付いていて。
手を伸ばして、それを拭き取れば。
……あちこちから聞こえる妙な舌打ち。
何だお前等。
「……うん、そうだよね。」
「そうだよ、食べたら出よう。」
舌打ちが聞こえるし。
視線に関して気を配っていたわけでもないから、何となく独り身が妬んでるんだろうなとか。
そんな感想は浮かんでくるが。
「そう……だね。 その代わり。」
夜は期待しててね。
その言葉に、
此処最近の、彼女の変わりようを身に沁みて理解していたからかも知れない。
「じゃあ、商店街にも行く感じか?」
「付き合わせても、大丈夫?」
「今日は半分俺の要望もあってだろ。」
「そうかなぁ……。」
「そうだよ。」
何があっても、責任も喜びも半分割。
そう、決めてるんだから。
「だからほら、ポテトも冷める前に食べちゃおうぜ。」
「うん。」
都のポテトに手を伸ばし。
口元に向ければ。
それに、ぱくりと。
口を伸ばして、餌付けされる雛のように飲み込んだ。
くすりと笑って。
くすりと笑われて。
少しずつ食べ進める姿を、眺めていた。
この後は――――都の、新しい水着を買いに行くというのに。
既に、心の中が暖かいもので満たされている感じがしていた。
本番は下だよ!