なら、何をするべきなのか。
声を掛けるか、少しだけ迷った。
それくらいには落ち込んでいると言うか、暗い表情を浮かべていたから。
「? 大将、行かないのか?」
「そりゃ行く。 行くけど。」
歩いている速度は変わらない。
ただ、あの顔色は……希亜に起こった、家の事件の時に酷似している。
「レナ、三人の方頼めるか?」
「え、別にいいけど。 今何処にいるんだ?」
「魚屋の前だってさ。」
LINGに記された、天からの情報をレナに見せて。
希亜を拾ったこと、何かあったらしいから話を聞いてから向かう事を伝言として依頼する。
まあ俺の考えをベースとしている幻体だ、言わなくても分かってくれただろうけど。
幻体と言うよりも――――『人』として捉えている部分がある俺からすれば、この方がやりやすかった。
「分かったが、あんま遅くなるなよ? 気にするだろーし。」
「分かってるよ。」
レナに任せ、唯歩いてくる希亜に近付く。
流石にこの距離までくれば、彼女も此方に気付いたようだった。
「……翔?」
「何かあったのか、希亜。」
「……何か、で済めば良かった。」
普段希亜を纏っているモノすら見えない。
近いのは、昨日の俺や都。
極度の疲労……まるで、
それがどういう意味を持つのか。
それを知るのは、俺達が一番だった。
「だったら……すぐに合流しないほうが良いかもな、 どうする?」
「……そう、ね。 少し、時間を置きたいの。」
話、聞いてくれる?
そんな呟きに、黙って肩を支えた。
向かった先は、少し話すだけと割り切ってモック。
互いに飲み物だけを頼み、二階の向かい合った席へ腰掛ける。
数分の間、時間が経つだけの状態を過ごした後。
ぽつり、ぽつりと呟き始めた。
「学校で、ユーザーが暴走した。」
「……今日、それを全員で懸念してたとこだ。」
「なんて、言えば良いのかな。
「顔見知りだったのか?」
「違う。 ……けれど、私と似たような子だったから一方的に知ってた。」
希亜に近い子。
話す相手も余りおらず、独立しがちな子……という意味合いで捉えた。
希亜は自分の内面に芯を作り、またそういう『仮面』を纏うことで自分を保つ精神性を持っている。
けれど、そんなものも持たない相手がユーザーとなったなら。
「……能力は?」
「多分……幻体、ううん違う。 春風の物に近い……
「…………?」
少し、顎に手を当て考える。
そんな事をして何の役に立つのか。
最初に浮かんだのは、春風のように自身に出来ないことをさせるための人格。
ただ、見方を変えれば……可能か不可能かは分からないが、試すことは出来る。
つまり。
ただ、今では無理に契約する手段が知られているって話だから……それより以前のものか、或いはイーリスが作り出したものか。
「暴走して……周りの子に、危害を加えて。 他に、止められなかった。」
「……そうか。」
「でも……って、考えちゃうの。 明らかにおかしくなってる、その子を止められなかったのか、って。」
対象の「罪」を認定して裁くアーティファクト。
一方的に、そういうものだと見定める能力。
悪と善、それらを決定づけるのは全て希亜の主観でしか無い。
だからこそ、他のアーティファクトに比べれば――――言い方は妙だが、
「他になかった……とは思う。 その子は?」
「急に飛んできたソフィに任せた……。」
彼奴、俺が呼んでも無視してたのに希亜には反応したのか。
まあ、起こった騒動的にうちの火災と同程度だと思えばそれも仕方ないのだが。
「なら……明日からは問題ないのか? 学校の方は。」
「白泉の……あの騒動があって、うちも一日遅れるけど調査はするみたい。」
「玖方もか……。」
それだけ影響が大きかった、ということなのだろうけれど。
それを引き起こした主因の、イーリス……与一の行方も目的も未だに不明。
俺達に悪影響を直接は与えない、と。
それ以外の理由とすると――――。
いい加減に、動かないと不味い予感だけがする。
ただ。
「……まあ、落ち着くまではこうしてるから。」
今は、今だけは。
昨日の礼ではないけれど――――希亜が、落ち着くまでは。
こうしていたい。
【新章】クリアした中で誰が一番好きでした?
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都
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天
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春風
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希亜
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ソフィ