「彼」と出会ったのは、フェスのあった日。
パフェと、余り好きじゃない紅茶を頼み。
本を片手に、のんびりとした時間を過ごしていた時だった。
急に、目の前の席に座り込んで。
「
そう、急に声を掛けられたときだった。
「彼」は私を知っているようで。
けれど、私は「彼」を殆ど知らない。
幾度か、此処で見かけたような気がしないでもないけれど。
ただ、それだけの間柄の相手。
だから、私は警戒していた。
「……どこかで会った?」
だから、それは実質的な否定のはずで。
「いいや、まだだ。」
「まだ?」
ああ、と告げる「彼」。
真剣な表情で。
けれど、何故だろう。
少しだけ、悲しそうな顔で。
「俺は、ヴァルハラ・ソサイエティの一員だ。」
そんなことを。
誰も知らない筈の、その名前を。
私と。 死んだはずの妹しか知らない名前を出した。
「貴方は、一体……。」
「別の世界線で知り合った仲だ。」
「別の……。」
「聖遺物は?」
「ぇ。」
畳み掛けられるように、次々と。
けれど、何故だろう。
何かを忘れているような気がするのは。
そんな筈は、決して無いのに。
結局、「彼」は。
自分の連絡先と、LINGのIDを書いた紙を置いて立ち去った。
「聖遺物を手に入れたら連絡してくれ」と。
「お前の力が必要だから」と。
いつもどおりの日常の中に入り込んだ、ほんの少しのバグのような。
何処かで求めていたような。
或いは、変わる切っ掛けを求めていたような。
そんな私の前に現れた変化の切っ掛けは。
同い年くらいの、男の子の姿をしていた。
※
からん、からんと音がする。
いつもの「彼」。
知っていたのは、一方的なようで。
ちゃんと知り合ったのは、学年が上がってから。
「よろしくね」と、私が「彼」に告げたあの日から。
「ビーフカツレツのセットを、ライスで。」
「はい。 ビーフカツレツのセットを、ライスで。 以上でよろしいですか?」
はい、と。
「彼」の注文を受け付ける。
ここまでは、バイトの私。
少しだけ、同級生の私に戻って。
困っている、一つのことについて相談する。
「ごめんなさい、新海くん。 少し良いかな?」
「ん? どうした?」
そう返す彼の顔は、少しだけ疲れているようで。
多分、フェスの手伝いの疲れがあるんだろうな、と。
私は、そんな風に思いながら。
「これ、なんだけど。」
気付いたら持っていた、アクセサリー。
私のものではないそれの持ち主についての相談。
彼なら、誰のものかを知っているかもしれないと思って。
「……んー、悪い。 分かんねーや。」
「そっか、ごめんね。」
「九條も大変だな、フェスの後にバイトとか。」
「新海くんもお疲れ様。 それと……ありがとう。」
へ、と漏らした彼に。
「いつも、お店に来てくれて。」
にこり、と。
彼に、いつものお礼を告げれば。
少しだけ、赤くなる顔が見えて。
私も、何故か。
同じように、顔が赤くなったような気がした。
仲良くなれればいいな、と。
そんなことを、思いながら。
何かが、頭の片隅にあるような気がしながら。
セットのおまけに、プリンとコーラを載せた。
記憶の混雑。
完全インストールまでは、まだ長い。
二人目のインストールは?(参考程度)
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新海 天
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香坂 春風
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結城 希亜