9-nine- にじいろゆめいろきみのいろ。   作:氷桜

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2.5 「ゆきいろ」と「ここいろ」。

 

「彼」と出会ったのは、フェスのあった日。

()()()()ナインボール。

パフェと、余り好きじゃない紅茶を頼み。

本を片手に、のんびりとした時間を過ごしていた時だった。

急に、目の前の席に座り込んで。

 

結城希亜(ゆうきのあ)だな?」

 

そう、急に声を掛けられたときだった。

 

「彼」は私を知っているようで。

けれど、私は「彼」を殆ど知らない。

幾度か、此処で見かけたような気がしないでもないけれど。

ただ、それだけの間柄の相手。

だから、私は警戒していた。

 

「……どこかで会った?」

 

だから、それは実質的な否定のはずで。

 

「いいや、まだだ。」

「まだ?」

 

ああ、と告げる「彼」。

真剣な表情で。

けれど、何故だろう。

少しだけ、悲しそうな顔で。

 

「俺は、ヴァルハラ・ソサイエティの一員だ。」

 

そんなことを。

誰も知らない筈の、その名前を。

私と。 死んだはずの妹しか知らない名前を出した。

 

「貴方は、一体……。」

「別の世界線で知り合った仲だ。」

「別の……。」

「聖遺物は?」

「ぇ。」

 

畳み掛けられるように、次々と。

()()()()()()を、投げ掛けてくる。

けれど、何故だろう。

何かを忘れているような気がするのは。

そんな筈は、決して無いのに。

 

結局、「彼」は。

自分の連絡先と、LINGのIDを書いた紙を置いて立ち去った。

「聖遺物を手に入れたら連絡してくれ」と。

「お前の力が必要だから」と。

 

いつもどおりの日常の中に入り込んだ、ほんの少しのバグのような。

何処かで求めていたような。

或いは、変わる切っ掛けを求めていたような。

そんな私の前に現れた変化の切っ掛けは。

 

同い年くらいの、男の子の姿をしていた。

 

 

 

 

からん、からんと音がする。

いつもの「彼」。

知っていたのは、一方的なようで。

ちゃんと知り合ったのは、学年が上がってから。

 

「よろしくね」と、私が「彼」に告げたあの日から。

 

「ビーフカツレツのセットを、ライスで。」

「はい。 ビーフカツレツのセットを、ライスで。 以上でよろしいですか?」

 

はい、と。

「彼」の注文を受け付ける。

ここまでは、バイトの私。

少しだけ、同級生の私に戻って。

困っている、一つのことについて相談する。

 

「ごめんなさい、新海くん。 少し良いかな?」

「ん? どうした?」

 

そう返す彼の顔は、少しだけ疲れているようで。

多分、フェスの手伝いの疲れがあるんだろうな、と。

私は、そんな風に思いながら。

 

「これ、なんだけど。」

 

気付いたら持っていた、アクセサリー。

私のものではないそれの持ち主についての相談。

彼なら、誰のものかを知っているかもしれないと思って。

 

「……んー、悪い。 分かんねーや。」

「そっか、ごめんね。」

「九條も大変だな、フェスの後にバイトとか。」

「新海くんもお疲れ様。 それと……ありがとう。」

 

へ、と漏らした彼に。

 

「いつも、お店に来てくれて。」

 

にこり、と。

彼に、いつものお礼を告げれば。

少しだけ、赤くなる顔が見えて。

私も、何故か。

同じように、顔が赤くなったような気がした。

 

仲良くなれればいいな、と。

そんなことを、思いながら。

何かが、頭の片隅にあるような気がしながら。

 

セットのおまけに、プリンとコーラを載せた。

 




記憶の混雑。
完全インストールまでは、まだ長い。

二人目のインストールは?(参考程度)

  • 新海 天
  • 香坂 春風
  • 結城 希亜
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