9-nine- にじいろゆめいろきみのいろ。   作:氷桜

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5.落とし物。

「おはよ~、おっはよ~!」

 

朝からテンションが高い声がする。

学校到着後、普通についてこようとする(アホ)に一瞥し。

教室、自分の席に付いたところで聞こえた声……与一のものだ。

 

妙な感情を抱く。

怒りのような。

けれど()()何もしていない奴に抱くようなものでもなく。

それらを務めて心に沈めて、表面上は普通に。

可能な限りで、普通に。

 

「おはよ~、翔」

「よう」

 

大丈夫だ。

今は、まだ。

 

「昨日どうだった?」

「昨日っつーと……フェスか?」

「そうそう、色々準備してたみたいだったけど。」

「地震あったろ? それもあって散々だったわ。」

 

あらら、と軽口のように与一は告げる。

 

「アニメも散々だったし、流石にそろそろ厳しい気がするけどなー。」

「それでもまた来年もやりそうじゃない? そしたら手伝うの?」

「分かんねー、ただ手伝う羽目にはなりそうだよなぁ。」

 

雑談。

他愛もない会話。

いつまで続けられるのかも、分からない会話。

出来れば――――と、そう思うのは無理なことなのだろうか。

 

「? 翔?」

「ああ、悪い。」

 

少し上の空だった。

そんな言葉を話しながら、耳に聞こえるチャイムの音。

それとほぼ同時に入ってくる、先生の声。

 

「は~い、席についてー。 ホームルーム始めるわよ~。」

 

少しばかり上の空。

これも、変わらない。

……変化が、無かった。

 

 

放課後。

掃除をしながら、希亜に軽くメールを送信。

「分かった」と返事があったのを見て、閉じて。

 

「掃除サボって何してんの?」

 

後ろから覗き込んできそうになる視線から身を外す。

 

「んー、ちょっと連絡。」

「連絡? 誰とさ。」

「ちょっと用事あってなー。」

「珍し。 翔だったら遅れても気にしなさそうなのに。」

「あのな……。」

 

そんな軽口。

幾度しただろう。

枝の総数、戻った回数。 或いはそれ以前も含めれば。

……不味いな、何か見落としそうだ。

 

「お~い、新海く~ん。」

「あ。」

 

そうだ、前の枝でも忘れてたな。

都の落とし物――アーティファクト――の件か。

 

「うわ、サボってるから目をつけられた。」

「謝ってくるわ、進めてて。」

 

足を運び。

学校では殆ど話をしたこともない、困った顔の彼女(みやこ)に近付いて。

呼び名、口調。 そういったものに気をつけながら。

 

「どうかしたんですか?」

「あーね、何か変わったことあった?」

「何か…………?」

 

視線を都に向ければ、赤くなった顔。

ずっと前に見た気がする、そんな顔。

 

「いやね、九條さんが呪われたとか何とか。」

「呪われた……え、呪いとか信じてるんですか?」

「信じるわけ無いじゃん。 気の所為よ気の所為。」

 

毎度思うが、神社の巫女がそんなこと言って良いのかこの人。

ほら、ぽかんとした表情浮かべてる子だっているんだぞ。

 

「まあそれはそれとして。 新海くん、九條さん送っていってあげなさいよ?」

「ああ、はい分かりました。」

「え?」

 

またその表情しなくて良いんだぞ?

 

「いえ、私自転車ですし……。」

「女の子一人で帰らせるのも心配だしね~。 それで恋話とかになって噂させなさいよ。」

「はいはい……。 勝手に言っててください。」

「え、でも新海くんに迷惑じゃ……。」

 

()()()()()

幾度も聞いたその言葉なのに、妙に心がざわつくのは。

彼女が三人目の犠牲者になった枝と。

恋人になった、その記憶も。

()()()()()()()()()()から、なんだろう。

 

「じゃ、任せたわよ~。」

 

先生が離れたのを、確認し。

 

「落とし物について話したいことがある。」

「!」

 

小声で、彼女にそう告げて。

何かに反応したように、少しばかり動作が見えて。

 

「じゃ、掃除終わったら行くから校門前集合で良いか?」

「あ、うん……お願いします。」

 

結局は、こういう流れに収束する。

……始まりも、そんな感じだった気がする。

気を遣わず。

浮かれて。

彼女を失い。

脳裏に走る反応で、前の枝と違う行動をとって。

彼女と結ばれた。

理解はしていなかったけれど、アレも記憶のインストールに近いのだろう。

或いは、直感を相棒が与えてくれたのか。

 

どうなるかは、分からない。

けれど、決して。

彼女達を、不幸にはしたくない。

 

そんな風に、思った。




2.5話としてヒロイン視点を追記しました。
読んでない人はそっちもどうぞ。(5/11 12:30現在)

二人目のインストールは?(参考程度)

  • 新海 天
  • 香坂 春風
  • 結城 希亜
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