「おはよ~、おっはよ~!」
朝からテンションが高い声がする。
学校到着後、普通についてこようとする
教室、自分の席に付いたところで聞こえた声……与一のものだ。
妙な感情を抱く。
怒りのような。
けれど
それらを務めて心に沈めて、表面上は普通に。
可能な限りで、普通に。
「おはよ~、翔」
「よう」
大丈夫だ。
今は、まだ。
「昨日どうだった?」
「昨日っつーと……フェスか?」
「そうそう、色々準備してたみたいだったけど。」
「地震あったろ? それもあって散々だったわ。」
あらら、と軽口のように与一は告げる。
「アニメも散々だったし、流石にそろそろ厳しい気がするけどなー。」
「それでもまた来年もやりそうじゃない? そしたら手伝うの?」
「分かんねー、ただ手伝う羽目にはなりそうだよなぁ。」
雑談。
他愛もない会話。
いつまで続けられるのかも、分からない会話。
出来れば――――と、そう思うのは無理なことなのだろうか。
「? 翔?」
「ああ、悪い。」
少し上の空だった。
そんな言葉を話しながら、耳に聞こえるチャイムの音。
それとほぼ同時に入ってくる、先生の声。
「は~い、席についてー。 ホームルーム始めるわよ~。」
少しばかり上の空。
これも、変わらない。
……変化が、無かった。
※
放課後。
掃除をしながら、希亜に軽くメールを送信。
「分かった」と返事があったのを見て、閉じて。
「掃除サボって何してんの?」
後ろから覗き込んできそうになる視線から身を外す。
「んー、ちょっと連絡。」
「連絡? 誰とさ。」
「ちょっと用事あってなー。」
「珍し。 翔だったら遅れても気にしなさそうなのに。」
「あのな……。」
そんな軽口。
幾度しただろう。
枝の総数、戻った回数。 或いはそれ以前も含めれば。
……不味いな、何か見落としそうだ。
「お~い、新海く~ん。」
「あ。」
そうだ、前の枝でも忘れてたな。
都の落とし物――アーティファクト――の件か。
「うわ、サボってるから目をつけられた。」
「謝ってくるわ、進めてて。」
足を運び。
学校では殆ど話をしたこともない、困った顔の
呼び名、口調。 そういったものに気をつけながら。
「どうかしたんですか?」
「あーね、何か変わったことあった?」
「何か…………?」
視線を都に向ければ、赤くなった顔。
ずっと前に見た気がする、そんな顔。
「いやね、九條さんが呪われたとか何とか。」
「呪われた……え、呪いとか信じてるんですか?」
「信じるわけ無いじゃん。 気の所為よ気の所為。」
毎度思うが、神社の巫女がそんなこと言って良いのかこの人。
ほら、ぽかんとした表情浮かべてる子だっているんだぞ。
「まあそれはそれとして。 新海くん、九條さん送っていってあげなさいよ?」
「ああ、はい分かりました。」
「え?」
またその表情しなくて良いんだぞ?
「いえ、私自転車ですし……。」
「女の子一人で帰らせるのも心配だしね~。 それで恋話とかになって噂させなさいよ。」
「はいはい……。 勝手に言っててください。」
「え、でも新海くんに迷惑じゃ……。」
幾度も聞いたその言葉なのに、妙に心がざわつくのは。
彼女が三人目の犠牲者になった枝と。
恋人になった、その記憶も。
「じゃ、任せたわよ~。」
先生が離れたのを、確認し。
「落とし物について話したいことがある。」
「!」
小声で、彼女にそう告げて。
何かに反応したように、少しばかり動作が見えて。
「じゃ、掃除終わったら行くから校門前集合で良いか?」
「あ、うん……お願いします。」
結局は、こういう流れに収束する。
……始まりも、そんな感じだった気がする。
気を遣わず。
浮かれて。
彼女を失い。
脳裏に走る反応で、前の枝と違う行動をとって。
彼女と結ばれた。
理解はしていなかったけれど、アレも記憶のインストールに近いのだろう。
或いは、直感を相棒が与えてくれたのか。
どうなるかは、分からない。
けれど、決して。
彼女達を、不幸にはしたくない。
そんな風に、思った。
2.5話としてヒロイン視点を追記しました。
読んでない人はそっちもどうぞ。(5/11 12:30現在)
二人目のインストールは?(参考程度)
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新海 天
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香坂 春風
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結城 希亜