9-nine- にじいろゆめいろきみのいろ。   作:氷桜

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そして、黙っていること。


7.伝えるべきこと。

 

「い、一応見てくるね。」

「じゃあ先席で待ってる。」

 

とは言っても、流石に口頭だけでは事実かどうか信じられなかったらしい。

一度見てくる、というのでナインボールの前で一度解散。

裏口方面に回るのを見て、正面の扉を開けた。

からん、からんという聞き慣れた物音の中。

店内を見回して……発見。

 

奥の席。

手持ち無沙汰を解消するためか、小説を読みながら待っていた希亜。

その正面の席を引いて、座りながら侘びた。

 

「悪かった、待たせたか?」

「いいえ。 そこまで待っていないから。」

「なら良かった。 ……悪いが、もう一人同席することになった。 いいか?」

 

怪訝そうな表情を浮かべて、問いかけが飛んでくる。

 

「……仲間?」

「そうだ、同じユーザー。」

「だったら……まあ、拒否する理由もないわね。」

「悪いな、急に割り込む感じになって。」

 

良いのよ、と言いながら手元にあった紅茶の残りを飲み干した。

……苦手だろうに、よく飲めるな本当。

そんな軽い雑談をすること少々。

厨房から顔を赤くしながら登場したのが都。

 

「…………新海くんのいう通りでした。」

「いやまあ、気にすることでもないだろ。」

「恥ずかしい……。」

 

そんな俺達の顔を確認するように左右に振って、何かを理解したように頷いたのが希亜。

 

「仲間、って言うから誰かと思えば……彼女だったのね。」

「ああ。」

「あ、すいません。 私――――。」

九條都(くじょうみやこ)さん……で合ってる?」

「え……聞かれたりしたんですか?」

 

いえ、と彼女は呟いて。

 

「当然知ってる。 ナインボールの客なら、皆。」

 

視線を逸らした。

すいません、気付いてない多分唯一の客でした……。

視線を感じる。

多分見られてたんだろう。

がたがた、と都が隣の席に座るような音がして。

 

「……まあいいわ。 私は結城希亜。 玖方女学院の二年で……貴方達と同じ学年ね。」

「宜しくお願いします。 それで、ええと……。 結城さんも、同じとは聞いたんですけど……。」

「……嬉しくはなさそうね。」

「何分、急なことなので……戸惑いのほうが大きいのは、事実です。」

 

初対面の、同性の、同い年のユーザー。

幾つか二人に共通する点はあっても、話が噛み合うかはまた別問題で。

 

「そこからは俺が話す。 二人とも、それでいいか?」

 

一度、全てを説明したほうがいいだろうと。

俺が間に入り、先に説明をすることにした。

小さく頷くのを確認して、言葉を続ける。

 

二人に話しておくべきこと。

アーティファクトのこと。

異世界――――世界の眼を介して繋がった世界のこと。

ソフィのこと。

魔眼のこと。

そして……念の為。 もう滅んだはずの、魔女のこと。

 

質問には答え、分かりにくい点は噛み砕いて。

出来得る限り、丁寧に。

俺の、記憶に関して以外を全て。

 

途中で頼んでいた飲み物が届き、一段落する頃。

それらを自分なりに噛み砕いた希亜から、漏れた言葉は。

 

「魔眼が、魔女に渡れば世界が滅ぶ。 だから、それを止めるのが私達の使命。

 この認識で、間違ってない?」

「ああ。 少なくとも、俺が知る限りでは魔女は滅んでるはずだけどな。

 ただ……。」

「”万が一”を考えれば、警戒しすぎるに越したことはない……わね。」

 

うん、と一度頷いた。

 

(ジ・)の力(オーダー)について、知っていて。 世界を救う一助になれるのなら、手を貸さない理由はない。

 仮に、万が一が外れていたとしても――――散逸した物を集めなければいけないことに変わりはないのだから。」

「ああ。 頼りにしてる。」

 

実際問題、希亜の持つアーティファクトの力は持ち主の意志の力さえあれば相当に優秀なもので間違いない。

当人が、それを扱う精神力さえあるのならば。

 

「それで……九條は大丈夫か? 付いてこれてるか?」

「あ、うん。 何とか。」

「分からないことがあったら言ってくれ。 何でも答えるから。」

「……私で、役に立てるかはわからないけど。 やれるだけは、やりたいと思う。」

 

気合は十分。

実際、この二人の能力は何方も使い方を理解してしまえばかなりの相手に有利なモノなのだから。

当人のやる気は、非常に大事。

 

「そう。 ……なら、ようこそ。 ヴァルハラ・ソサイエティへ。」

「ヴァ……ソサ?」

「あー…………組織名、というかチーム名。」

「なんだか嬉しいわね。 八歳のときに考えた名前が実現するなんて。」

「八歳……って、結城先輩と新海くんって幼馴染?」

 

ああ、この辺の会話もしたな。

そんな記憶が、蘇る。

 

「違う違う。 あー……未来での話でだよ。 後こいつは同級生だから先輩じゃないって。」

「へ……ぁ。 ご、ごめんなさい! なんだか凄い落ち着いてたから……!」

「別に、先輩でもいいけど。」

 

あせあせ、と慌てる都。

何処か楽しげな希亜。

それを眺める俺。

不可思議な状況。

一度は、体験した状況。

 

「それで……魔眼のユーザーについてだ。」

「その……石化させるっていう、アーティファクトの?」

「契約者まで特定できてるの?」

 

ああ、と二人に伝える。

以前は、イーリスがいたから敵対した。

今度は……何があっても、繰り返させない。

 

「俺の友人……九條にはこういったほうがいいか。 与一だよ。」

「与一……深沢くんが?」

「知り合い?」

「はい。 クラスメイトで……。」

 

起こりうる内容を精査する。

石化事件。 これは、今日止めれば「石化事件としては」発生しないはずだ。 イーリスさえいなければ。

学校の火事。 暴走者を止める……いや、アーティファクトを事前に奪ってしまえばそれ以上は起こらないはずだ。 これは明後日。

それ以外なら。 別の次元の狭間に落ちた「誰か」のこと。

思い浮かべようと思って、浮かぶ内容も然程多いわけではない。

けれど。 止めなくちゃいけない。

事前に知っているのはのは、俺と。 俺から話を聞いた、ソフィを含めた三人だけなのだから。

 

「……今日。 十九時、公園で待ち伏せ。 それで、いいか?」

 

ええ、と。

はい、と。

以前と同じように、三人で待ち伏せすることが確定して。

一度解散しよう、と。

そんな話になった矢先。

 

「……最後に、一ついい?」

「どうした? 結城。」

 

いえ、と。

勘違いならいいんだけど、と。

彼女は前置きを挟みながら。

 

「……来た時から、妙に悲しそうな顔をしていたのは。 友人のことがあったから?」

「……あ、それです。 新海くんがなんか変だな、って思ったの。」

 

疲れてるのかと思ってたんだ、と告げた都。

こちらを思いやるような目を、俺に向ける希亜。

 

大丈夫だ、と。

それが原因だよ、と。

そう、言えたのだと。

取り繕えたのだと。

多分、思った。

 

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