9-nine- にじいろゆめいろきみのいろ。   作:氷桜

26 / 114
或いは、敵。
けれど、大事な友人で。
けれど、大事な人を奪った相手で。


12.友人。

 

暫くして戻ってきた都は、もうその時にはいつものような状態に戻っていた。

心配を続ける二人。

動揺を何処まで隠せるかわからないけれど。

心配なのは事実なのだから、声を掛けた。

 

「大丈夫か? 九條。」

「あ、うん。 なんでも無かったみたい。」

 

互いにどういう状況なのか分かった上での会話。

ただ、一つ気になっているのは。

……此処まで落ち着いていられるような女性だっただろうか、という純粋な疑問。

もっとこう、慌てたりするイメージが有るのだが。

 

「無理はしないようにね。」

「ねえにぃに。 私先輩の様子見てる担当で良い?」

「あ~……。 俺は別に構わん、単独で絶対前に出なければそれでいい。」

「成程。 先輩、どうでしょう?」

 

実際、魔眼持ち……与一の対策は知識の有無で変わってくる。

一人で行かなければいい。

だから、希亜だけでも保険でいてくれれば問題はない……と思う。

最悪は、ソフィから借り受けた幻体のアーティファクトだってあるのだから。

 

「ううん……心配させるのも、悪い気がするんだけどな。」

「新海くん。 確認しておくけど、九條さんは必須だった?」

「どうかな。 前の時は俺だけじゃない、っていうのも彼奴の判断の一つになったと思うし。」

「だったら、私! 私が先輩を隠して最後に姿だけ見せるのはどう?」

 

確かに、最初から姿を見せる必要はないが……。

 

「結城、どう思う?」

「そうね……新海くんから聞いた情報から考えられる範囲だと、大丈夫だとは思うけれど。」

「ただ、何をするかは未知数……ってところか。」

「そうね。 私はその人のことを知らないから、どうしても穿った目で見てしまうのだし。」

 

立ち位置が違う、というのは最初から分かっていたこと。

そして、俺自身も。

彼奴のことを、全て理解出来たとは思えないし――――()()()()()()()

 

「俺は、信じたいとは思ってる。 ただ――――。」

「ええ。 もしもの時には、私が裁く。」

 

希亜が、壁を超えるには。

まだ難しいだろう、と思いながらも。

小さく首肯して、その場の相談の締めとした。

 

 

 

 

「……来たな。」

 

公園のベンチに腰掛ける、希亜の制服と同じ少女。

そして、少しずつ近付いてくる見覚えのある影。

あれが?という声に小さく頷く。

私服姿。

ベンチの少女を見つけたのか、声を上げて近付いていく。

 

ほんの少し(10m)

向こうも知り合いのようで。

楽しげな表情を浮かべているのが照明灯の光で、視界に入っていた。

 

「俺が先に行く。 念の為、距離を取って来てくれるか?」

「分かった。 気をつけて。」

 

端的に、短いやり取りを挟んで一歩ずつ進んでいく。

 

会話は、盛り上がっているようだった。

与一は、立ったまま。

普段どおりの笑みを浮かべて。

少女は、座ったまま。

何処か夢見心地のような表情で。

二人だけを見るならば。

とても楽しそうだったのに。

 

与一が、腰を下ろした。

視線を、合わせようとしていた。

少女は、何も疑うこと無く。

 

「……やめろ、与一。」

 

繰り返しても。

お前は、同じことをするのか。

 

与一が、立ち止まる。

怪訝そうな表情を浮かべたまま。

その顔に、スティグマを輝かせたまま。

俺を、睨みつけようとして。

けれど、そこで立ち止まった。

 

「翔?」

「今ならまだ、戻れるぞ。 ……やめてくれ、与一。」

 

僅かな戸惑いと。

何故気付かれたのか、という顔色を浮かべながら。

それでも、笑顔は消さずに。

 

「……そっか。 もういいよ、帰って。」

「え、は?」

「邪魔だって話。」

 

その場の少女を追い返し。

一度溜息を漏らして。

彼女に向けていた視線を。

こちらに向けた。

()()()()()()()()()()()()()

 

咄嗟に動けたのは、恐らくは何度も味わった経験から。

両目を瞑り。

使うことがなければいい、と思っていた。

この場で呼ぶのは、初めての。

借り受けていた、幻体の。その名を、叫んだ。

 

「――――レナッ!」

「おうよッ!大将!」

 

両目は閉じたまま。

けれど、抑え込むような音が数秒聞こえ。

返事を待った。

 

「もういいぜ、大将。」

 

そんな声が聞こえて。

薄く目を開けば、後ろ手で地面に抑え込まれた与一の姿。

 

「……やっぱ無理か~。」

「与一、何でお前……。」

「もしかしたら、なんて思っちゃったから。 無駄だったみたいだけどね~。」

「お前……ッ!」

 

この状況でも、飄々とした態度を変えることはなく。

 

「運が悪かったのかなぁ。」

「わざわざ、あの子を呼び出して……?」

「そんな事しないよ。 偶然見つけたから声を掛けてみようと思って。

 偶然、誰もいなかったから。 ちょっと使ってみたくて。 それだけ。」

 

どの枝でも、変わらない。

止めなければ、何度でも。

こいつは、人を殺す。

 

「まあ……何でかは知らないけど。全部バレちゃってるみたいだから、もう諦めるけどね。」

「そんな簡単に、信じられると思うか?」

「とは言ってもね~。 証拠が残らないから、と思ってたけど。

 全部知られてるんじゃ、やる理由もないし。」

 

会話は、平行線を辿る。

 

「誓ってもいいよ? 僕は、この能力でこれ以上人に手を出さない。」

「なぁ大将。」

「……ああ。」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

それだけだよ? 翔。」

 

言ってしまえば、殺人()()

それも立証ができない、オカルト的な行動だ。

だから。 俺が手を出せば、それは。

 

「……ま、信じられないって言うならそれでもいいよ。」

 

俺の後ろから、砂を踏むような音がした。

俺自身は、どうしていいか分からなくて。

手を出して良いのか、悪いのか。

二度と、友人と殺し合うなんてごめんだったから。

そんな迷いに、飲み込まれて。

 

気付けば、レナも。

与一も姿を消していて。

 

その場には、俺達。

四人だけが、佇んでいた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。