9-nine- にじいろゆめいろきみのいろ。   作:氷桜

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一人の中に、二人の彼女。


16.二人で、一人の。

昼休み。

中庭。

俺の他に、影が三つ。

 

「うわ、九條先輩すっご! これ自作ですか!?」

 

俺と同じくコンビニ飯を片手に目を輝かせている天。

 

「今日は……ほら、あれだったから。 これは前に作ってたのと……冷凍食品に頼っちゃった。」

 

帰宅後によく作れたな、と思わなくもない都。

その手には若干俺からすれば小さくも見える、弁当箱が一つ。

 

「…………ぇと、あの。 それでも、凄い、と。」

 

そして、居場所が無さそうにしている春風。

手に握られていたのは茶色い中身のお弁当。

 

(居場所がねえ……)

 

そんな中心にいるのが俺。

この状況見られたら男子生徒に殺される気がする。

というか出ていく際に視線を感じた。

クラスの中に余り知り合いがいないとは言え、後が怖い。

 

「……で。 昼休みも長くないですし、話を進めましょう。」

「ぁ……は、い。」

 

男性に慣れていない、というのは別の枝でも。

そして、朝方の春風からもかなりの時間を掛けて聞き出していた。

というか、もう少し慌てていたらもう一つの人格が出てきたんじゃないかと思うくらいには慌てていた。

 

「新海……ううん。 翔くん。 ちゃんと説明してもらっても、いいかな。」

「あ~……そうだな。 この人は香坂春風(こうさかはるか)先輩。 同じく、ユーザーだ。」

「……その、ゆーざー……? というのは……この、能力の?」

「はい。 え~っと、アクセサリーみたいなのをアーティファクト。 能力者をユーザーと呼んでいます。」

 

輪廻転生のメビウスリング。

大元になったこの街の伝承もそうだが、名称も。

アニメを見たことがある人なら通じやすい、というのはある種の利点だと思う。

……まあ、出来が良いとは口が裂けても言えないけど。

 

「それで……ええと、俺は未来が見える能力を持っています。 それもあって、先輩が困っているのも分かっています。」

「……出来る、の?」

「はい。 出来る、というよりは俺はその手段を知っている、という方が正しいんですが。」

 

飲み物を一口。

余り宜しくはないけど、移動時間も考えると結構忙しい。

この後移動教室だったし。

 

「それで? にぃに、香坂先輩はなんでこう……逆ハー?みたいになってたの?」

「ぇ…………っと、それ、は……。」

「先輩の能力が強すぎるから――――ってのも一つの理由なんだがな。 コントロールが上手く出来てねえんだよ。」

 

願望の実現。

というよりは、思考の具現化とでも言ったほうが良いだろうか。

思ったことを、可能な範囲で実現する能力。

そう聞けば万能だし、最強とも取られがちだが。

「当人が思えるかどうか」という壁。

そして、「自分にしか使えない」という思い込み。

この二点が存在する限り、有用度は一気に減少する。

言い方は悪いが、玄人好みのアーティファクトだと俺は思ってる。

 

「気を悪くしないで聞いてほしいんですが……。」

「ぇ、ぇっと……はい。」

 

現状、春風との距離は俺だけが意図的に離している。

裏、というかもう一つの人格の方が落ち着いて話せるのは事実なんだが。

春風には、出来れば普通に話してほしいから。

 

「先輩、アーティファクトを手に入れた時になんて思いました?」

「…………乙女ゲーの主人公みたいに、って……あわ、あわわわわ。」

「だ、大丈夫ですよ?」

 

そしてもう一つの、思ったことを口に出してしまう事。

これもなんとかするか、出来れば皆には慣れてほしいんだけどな……。

都のフォローに任せ、話を続ける。

 

「と、まぁ……自分で思っただけで暴発みたいに発動しちゃって、朝のあんな感じなわけだ。」

「はー……大変ですねえ。」

「めっちゃ他人事だなお前。」

「いや~まぁ? 大変だなぁ~とは思うけどさ。 私のより全然強いじゃん。」

 

お前のも実質的に攻撃無効・消去化出来るから極悪なんだが。

お前一人の時には絶対使わせないけど。

……もうあんな状況は懲り懲りだから。

 

「というわけなので……先輩、明日辺りは時間ありますか?」

「ぇ……明日、ですか?」

「はい。 時間があるようでしたら、少し練習してみるというのはどうかな、と。」

「大丈夫……です。 誰も友達もいませんし……。」

 

ああ、また自分で言って自分でダメージを受けている。

時間があるのが確認できたなら、まあ。

 

「でしたら……え~っと、LINGやってますか? 番号交換しておきましょう。」

「は、はははははは……きゅう。」

 

あ、オーバーヒートした。

限界を超えたか……。

 

「……悪い都、先輩頼む。 で、天。 クラスメイトは?」

 

はい、と頷くのを見て任せてしまう。

 

「ええ……ほっとくのにぃに……ドン引きだわぁ……。」

「話が済んだら俺が面倒見るわ。 んで?」

「あ~うん。 いた。 言われた通り距離は取ってるけど……なんていうか、確かに危なさそうだった。」

 

暴走までは至ってない……としても、ギリギリってところか。

ならやっぱり今日だな。

 

「分かった、放課後そいつがどっか行くようなら連絡頼む。」

「は~い。 で、私は?」

「合鍵はどうせ持ってんだろ。 どっか行く事を伝えた後で一旦家帰れ。 その後なら来ることを許可してやる。」

「いつも思うけど上から目線なのどうにかならない?」

「あ?」

 

そんな軽口を叩いて、春風の方を見る。

あの慌てていた表情とは違う、何処か妖艶さを感じる笑み。

間違いなく、もう一つの人格だ。

 

「……まあ、そういう訳で。 仲良くして貰えますか?」

「ええ、勿論。 私の大事な王子様ですから。」

 

……あ、もうそれ認定なんですか。

 

 

 

 

そんな会話を終えて。

教室に、少し余裕を持って戻り。

空白の、与一の席を少しだけ眺めた。

姿を、彼奴は見せなかった。

 




※一文忘れていたので追記
※間違い修正

閑話内容。

  • いちゃいちゃ。
  • 想定外の進行。
  • 他ヒロインとの会話。
  • その他、趣味を個別募集
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