9-nine- にじいろゆめいろきみのいろ。   作:氷桜

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可能性は収束する。
良いことであっても。
悪しきことであっても。


17.収束。

 

かつん、かつんと歩みを進める。

ふらり、ふらりと何処か歩みは覚束ない。

 

火事の主原因――――暴走した生徒の後を追う、俺と希亜、都。

そして暴走した生徒は、既に精神の何処かが危ないのか。

歩み自体が不安定。

例えるなら、そう。

膨らみきった風船、だろうか。

 

今までで見た中で一番近いのは……恐らく。

消(・)え(・)る(・)前(・)の(・)、(・)消(・)え(・)る(・)こ(・)と(・)に(・)な(・)っ(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)枝(・)で(・)の(・)天(・)。

 

内側に何かを溜め込んだように見えるそれは。

何も見知らぬ人間であれば、体調不良のようにも見え。

知っているからこそ、巻き込まれないように距離を取る。

そんな危なさを内包していた。

 

「……ねえ、新海くん。」

「なんだ?」

「こう言っては何だけど……暴走なんて、そんな簡単に起こるの?」

 

その姿を見て、改めて気になったのか。

出来うる限り小声で、その疑問を問いかけてくる。

 

「……俺や、希亜ならま(・)ず(・)大丈夫だけどな。」

 

結局は、アーティファクトを扱うにも才能次第。

仲間内で一番危険だったのが天。

だからこそ、多用は厳禁と強く戒めたのだけど。

 

「ただ、彼奴は……なんていうか、根本的に向(・)い(・)て(・)な(・)い(・)相手なんだ。」

「向き不向き……がある?」

「魂の強さ弱さ、っていう部分と、才能部分。 何方も、なんだろうけど。」

 

同じことは起こさせない、と。

視線を、目の前の彼に向け続ける都をちらりと見れば視線が交差する。

不安に揺れているわけではなく。

浮かんでいるのは、恐らくは決意。

 

(ただ――――。)

 

ソフィに頼んでいた追跡は、今回の枝では上手く出来た。

正確に言うなら。

イーリスが行っていた暴走の加速が無くなっただけ、のようにも思えるのだが。

 

「……危ういな。」

 

そんな言葉が、口から漏れ出した。

 

「そうなの?」

「何というか……こうして接触しようとするのは初めてだからな。」

「流石に、今の状態じゃ取るのは厳しいかな……。」

 

どんなに強い能力であっても、制約は必ず存在する。

相棒の持つオーバーロードであっても、「外部からの認識」がなければ殆ど意味をなさない。

希亜の持つジ・オーダーであれば、対象の罪の認定。 魂の捕捉。 そして、断罪の強度の指定。

都……希亜風に言うならメルクリウスの指であれば2つ。

ある程度の集中が必要になる。

そして、射程は約10m。

この範囲に入らなければ都の能力で奪うことは出来ない。

 

何処かで止まってくれれば良いのだが、と。

そんな事を考えていれば。

 

ぴたり、と。

帰宅路の途中か。

或いは能力を扱う練習でもしていたのか。

街路樹が生い茂る道の片隅。

ほんの少しの石階段の上には、今では殆ど使われていなさそうな、空き地のような場所。

幾つかの木が乱雑に植えられた場所の中心よりやや奥側に、彼は佇んでいた。

 

「……行けそうか?」

「……うん。 もう少し、近付ければ。」

「なら、近付きましょう。」

 

何故そんな場所に立ち竦んでいたのかは分からない。

ただ、今分かるのは。

都の能力を使うのに、絶好の機会だということ。

 

一歩。

一歩。

 

傍から見れば、それは怪しい……ストーカーのようにも見られかねない行為。

だからこそ、少しだけ……30mくらいは距離を取って追跡していた。

幸いにしてか。 人気が特に多くない場所で。

だからこそ、今度は大丈夫だろうと。

楽観視をしていたのは否めない。

 

ぐ(・)り(・)ん(・)、と。

彼の首だけが、こちらを向き直ったのは。

ぼ(・)う(・)、と。

周囲の景色が、揺れ始めたのは。

そんな時だった。

 

目が、淀んでいる。

それを見て、瞬間的に察した。

 

元々、イーリスの介入で暴走が早まったのだと思っていた。

まだ、何とか抑えられると思っていた。

ソフィからの話も、奪ってしまえばそれ以上は進行しないという話だけは聞いていた。

 

ただ。

元々、どんな小さな切っ掛けでも起爆するような状況だったのなら?

今までの枝。

昼休み。 友人同士の他愛もない会話が切っ掛けだったのかもしれない。

唯一の、希亜の枝。

放課後。 イーリスの介入による範囲が、俺は目視できていたわけではない。

そのタイムラグは、一日。

その、些細な均衡が。

ギリギリのところで保たれていた、均衡が。

崩れ去った。

 

「――――レナァ!」

「あいよっ!」

 

咄嗟に、その名前を叫ぶ。

そして、俺自身は。

後ろを歩いていた二人を咄嗟に抱き抱えて後ろに飛んだ。

それが間に合ったのか。

或いは、元(・)々(・)間(・)に(・)合(・)う(・)筈(・)が(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)の(・)か(・)。

 

レナが蹴飛ばした彼。

その辺りから、熱が噴出した。

 

火事は、止まった。

けれど。

暴走は、発生した。

 

閑話内容。

  • いちゃいちゃ。
  • 想定外の進行。
  • 他ヒロインとの会話。
  • その他、趣味を個別募集
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