幻体を生み出す影。
全てを奪い去る指。
裁く瞳。
それらを見つめる、目と王。
砂の感触を顔に浴びる。
そして、身体の中の一部が焼けたような違和感。
どん、と小さく跳ねて其処で止まったけれど。
衝撃を全て吸収できるわけもなく、苦しむような声が両腕の中から2つ。
「悪い……大丈夫か!?」
「え、ええ……。」
「翔くん、ありがと……。」
手を離し、後ろを向けば。
周囲に炎を撒き散らしながら、頭を抱える男子生徒。
そして炎の衝撃で吹き飛ばされたのか、レナが木の付近に片膝を立てて睨みつけていた。
「――――失敗した、ッ!」
一度レナを消し、自分の近くに再出現させる。
仮に距離を取らされても、こうして再度出すことが出来るというのは決して見逃せない利点の一つ。
本来なら、幾つかアーティファクトを俺が所有していれば更に有用度は跳ね上がるんだが。
……昨日の夜、念の為レナを三人に紹介しておいて正解だったか。
そうでなければ、妙な疑心を抱かせる元になっただろうから。
「どうすんだい、大将!」
「彼奴を取り押さえる、行けるか!」
「ただ抑えても無駄だってのは分かってんだよなァ!?」
視線の先の炎は、地面に残ってはいるが燃え広がらない。
木々、壁に張り付いたまま、じりじりと残り続ける。
この炎が燃やすのは、魂だけなのだから。
そして、その炎は中心の彼を守るようにして円状に構築され始めていた。
暴走、限界以上に行使すると言葉一つで言ったとしても。
アーティファクト毎に効果が違うように、使用者毎によっても使い方は変化する。
俺が使うなら、何方かと言えば攻撃的な。 罠や、直接的に扱った。
そして彼は、防御的に。
或いは、自分の身を守ることだけを考えているのだろうか。
炎で描いた魔法陣のように、幾つもの壁のように立ち塞がり始めていた。
「分かってる――――!」
結局、あの炎を止めるには都の能力が必須に近い。
そして、それだけ近付くには俺があの炎を全て消すか。
或いは、希亜の能力で相手を止めてもらうしかないことも。
だから。
「二人共、任せていいか?」
立ち上がる二人を視界で確認して。
端的に、そう問い掛ける。
「少しでいいから、あの炎を近づけないで。 そうすれば、私が止める。」
左の瞳に浮かぶ、スティグマ。
「……うん。 私が、止める。」
左手に浮かぶ、スティグマ。
「任せた。 行くぞ、レナ!」
「おおよッ!」
同時に、突撃を敢行する。
炎がそれに対応して、身体に……魂を焼こうと、這い回ってくる。
だが。
「
「ハッ、効かねえなァ!」
全ての枝で、彼は火事騒ぎを起こしていた。
その全ての現場に関わったのは、俺と都。
教室内に取り残されていた天は直接彼の鎮圧に関わってないから除外。
そしてレナは、俺の産み出した幻体。
つまり、俺と記憶を同期している。
俺の知るゲームの技をメインで立ち回っているのが、その証拠。
つまり、何方も気合を持ってすれば突破出来ることは知ってはいるのだ。
炎の結界を超える。
一枚、二枚。
後数枚も超えれば彼自身へと手が届く。
恐らく、ソフィも。 そして相棒も常に見ているのだろう。
――――手を掛けさせる程じゃない、と。
そう、証明したい。
「邪魔なんだよッ!」
右、左。
何度も獣のように跳ねては、距離を詰めるレナ。
全てを無視して。
一直線に突進していく俺。
燃えないとは言っても、視界の邪魔になることは変わらない。
けれど。
「大将、来るぞ!」
「分かった、貼り付け!」
その場で、前方にジャンプ。
腕を伸ばし、未だ暴れ回る彼の身体を抑え込む。
炎が、幾度も脈動するように。
持ち主を守るように俺の身体に纏わり付く。
けれど、それ以上に炎を周囲に撒き散らさせない為に。
幻体で作り出す周囲を囲む壁――――結界を張り巡らせる。
これで、後は俺と彼の耐久勝負。
そして、希亜と都の速度の戦い。
「ジ・オーダー……アクティブ!」
幾つかの炎を、意志だけで乗り越えていた希亜が。
自分の定めた
「パニッシュ――――」
彼が、暴れる。
自身の限界を超えるように、体を無理矢理に動作させ。
そして、空いた隙間で炎を発動する。
手が、少しだけ浮いた。
足が、少しだけ緩んだ。
たったの、その違い。
けれど。
「メント!」
希亜の、動作を止めるその叫びに一瞬早く。
緩んでいた身体が、宙を舞う。
それに呼応して、彼の動きはその場で留まって。
都が、彼に腕を伸ばす光景が偶然目に入りながら。
どん、と。
背中を、なにかに強く打ち付けた感触がして。
息が、肺から漏れ。
叫び声が、聞こえて。
呼吸が出来ずに。
一瞬、或いはもっと長くか。
意識が――――。
※
ニア 記憶をインストール
ニア これは。
ニア
※
気がつけば。
少しだけ、赤くなり始めた空を見上げていた。
地面に……いや、後頭部に、柔らかい感覚。
視線の先、左側。
心配そうにする都の姿を認めた。
そして、真上。
きらり、と光る糸が唇を伝う。
少し生暖かいそれが、俺の唇へと繋がっている。
そんな。
先程までと、表情の
希亜が、口を開いた。
「……
ああ。
そして、二人目。
誰の閑話が見たい?
-
九條 都
-
新海 空
-
香坂 春風
-
結城 希亜