9-nine- にじいろゆめいろきみのいろ。   作:氷桜

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天から雪は降り、都を覆い。 春風が溶かす。


20.思い出すもの達。

とんとんと、普段は使わないキッチンからの音。

がさり、と袋の中を見る音に。

冷蔵庫の開閉音。

 

「……なんつ~か、こういうの懐かしいんだよな。」

「そうなの?」

「希亜は……あんまり経験ないよな。」

 

何度も味わったのは、俺と天だったから。

テーブルの一角に座る希亜は、いつかのような笑みを浮かべていた。

過去を乗り越えて。

結ばれた後の、ベッドの上のように。

 

「うん。 ……でも、いいな。」

「何が?」

「手料理作れる、って凄いことだと思うから。」

「そういや料理作れるのか? お前。」

「少しだけ。 簡単なものなら、自分で作ることもあるから。」

 

そっか~、と部屋に転がる。

パソコンからはアニメ音。

輪廻転生のメビウスリング、全二十五話のうちの第七話がパソコンから流れていた。

 

「それで……天は一人にしておいて大丈夫?」

「唐突に『アイス食べたい!』とか言い出したんだし放っといていいと思うが……。」

 

既に日は暮れ、夕食の時間帯を少し回っていた。

帰り際に幾つかの店を回り、料理費として三人で出し合って。

都が学生らしからぬ腕を振るっている、という訳だ。

天は夕食代を両親に請求して暫く食っていく気でいるらしい。

……いや、バイトとかもあるんだしお前も動けよ。 というかいい機会なんだから習えよ。

 

「そうかなぁ……。」

「というか、出来れば動きたくはない。」

 

普通に動けるとは言っても、痛みがあちこちに残っているのは変わらない。

凝った身体を解そうと軽く伸びをしてみればあちこちに痺れるような痛み。

最悪は、先輩にも謝りのメールをして明日は休みだなこりゃ……。

 

「湿布とか貼っておく?」

「貼った場所が妙に痛みそうだからやめとく。」

「そっか。」

 

出来たよ、という声が聞こえて。

アニメを一時停止。

パソコンをベッドの上へと動かした。

……押入れの一角は、もう既に天が占領し始めていた。

変なもん発掘されてなければ良いんだが。 念の為奥の奥に隠してあるが。

 

「運ぶの手伝ってくるね。」

「悪い、任せた。」

 

立ち上がった希亜の後ろ姿を見送り、スマホを取り出して天に連絡。

何度か着信音がした後、繋がる音がした。

 

「おう天。 こっちはもう飯の用意出来たっぽいがお前今何処だよ。」

『飲み物とかも買って今帰ってる所~。 駅前近くだから後五分くらいで着くよ、にぃに。』

「了解。 冷める前に早めに来いよ。」

『分かってますって。 折角の手料理だもんね、兄貴は早く食べたいでしょぉ?』

「そうだな。 じゃあ切るからな。」

『うわ乗ってくれないとなんか滑ったみたいじゃん。』

「実際滑ってるんだよ。」

 

そう言い残して切る。

あっ、ちょ。

そんな声が聞こえた気がしたが無視無視。

 

「翔くん、天ちゃんなんだって?」

 

人数分の皿なんて用意してあるはずもなく。

都が昨日余らせていた紙皿なんかを利用して。

両手に料理を持った二人が顔を出す。

 

「今駅前くらいだってさ。 後五分位って言ってた。」

「そっか。 それくらいなら待ってる?」

「ま、先に食べ始めると煩いだろうしな。」

「そういうところはお兄ちゃんだよね、翔くん。」

 

そんな俺達の会話に、割り込むように。

 

「まあ、()()()()()()兄妹愛じゃないなら。」

「それに関しては暫く黙ってるって言ったろ……。」

 

天の性癖……とまで言って良いのか。

好みとかを勝手に知られているのも彼奴には大ダメージすぎる。

実際――――あのアルバムを見なければ、もしかしたら。

まだ実家で暮らしていたのかもしれないのだし。

 

「実際翔からはどうなの? 妹とかそういう目線抜きなら、だけど。」

「男子高校生ってことを考えてくれると助かる。 ひじょーに助かる。」

「私女子高生だから分かんない。」

 

そこで別性だから、って言うのは卑怯だぞ希亜。

お前も気にしてるのか都。

優しくされればコロッと行くんだよ!

天の時は大分ぶっ飛んでた覚えがあるが!

 

「まあ……。 仲間達以外で、浮気したら許さないけど。」

「は?」

「? 何かおかしいこと、言った?」

 

その発言全てが。

確かに頷いて。

 

「なら、翔。 全員との枝の記憶持ったままで――――誰か、選べる?」

「そういう話に、なっちゃうもんね……。」

 

選ばれた側も。

選ばれなかった側も。

記憶を有している以上、絶対に酷い光景が見えると二人は力説した。

……確かに、誰かを選ぶのなら。

初めから誰も選ばないか、全員の方が結果的にマシにはなるが。

 

「……倫理的にクソ野郎にならないか? それ。」

「選んだ子も選ばれなかった子も泣くよ?」

「何だその究極の選択……!」

 

そんな雑談……雑談?を繰り広げていれば。

 

「たっだいま~! 全員分アイス買ってきましたぜ~!」

 

やけにテンション高めで帰ってきた怪奇生物(いもうと)

顔を見合わせて、小さく笑った。

 

「おう、お帰り。 冷やしとけよ?」

「あったぼうよ! あ、みゃ~こ先輩と結城先輩は先に選んでくださいね!」

「うん、御飯のあとでね。」

「ありがと、天。」

 

彼奴がいるのと、いないのとでは。

なんというか……確かに、違うのだ。

誰が欠けても、多分それは同じ。

 

ゲームの中で。

漫画の中で、理解していた「仲間」の大事さを。

もう一度、噛み締めた。




実際他三人は天の枝の結末受け入れるのだろうか……?
春風だけは趣味の部分からして普通に受け入れそうではあるがどうなんだろう

※間違い修正

4/22(金)メインヒロイン。

  • 九條 都
  • 新海 天
  • 香坂 春風
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