9-nine- にじいろゆめいろきみのいろ。   作:氷桜

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初めは、名も知らず。
助けてくれて。
仲間になって。
仲間にして。
結ばれて。
永劫に、別たれたけれど。
――――こうして、また会えた。


21.「結城希亜」。

 

食事を済ませ。

全員が今日は帰る、と。

まあ連続して平日に泊まるのも違和感がある話ではある。

足が石化した時とか。 何かしら要因があればまた別ではあるけれど。

 

(やっぱ痛みは抜け切らないか……痛てて。)

 

骨までは折れていないらしいが、それでも予想以上に強く打っていたらしい。

寝て起きて、その後の対処は朝次第だな……と。

シャワーだけを済ませて、一人思う。

 

女子エリア、と定めたエリアから少しずつ物は移動しようと思う。

先程帰る前に何やら楽しそうに話していたのを思い出す。

それを思い出すと。

本来一人暮らしなのだから当然ではあるのだが、少しばかり寂しくも思えてくる。

考えるだけ無駄だ、と首を振った。

 

時計を見れば、もう23時。

そろそろ寝なければな……と、パソコンで最後に見ようと思った動画をクリックしようとして。

スマホが小さく振動していることに気がついた。

LINGからの着信。

相手は、希亜。

特に考えることもなく、手に取った。

 

「……もしもし?」

『もしもし。 ごめん、夜遅くに。』

「いや、まあ俺はいいんだが……。」

 

何か忘れ物でもあったか?

或いは連絡?

そんな幾つかの要素が浮かんでは消える。

 

『寝る前に、声が聞きたくなって。』

「……そうか。」

『うん。 大丈夫?』

「まあ、動画でも見ようかと思ってたくらいだからな。」

 

今季のアニメ。

幾つかあるし、以前の枝で春風や希亜が熱心に会話していたのを覚えている。

後は……それに混じるように話していた高峰か。

 

高峰蓮夜(たかみねれんや)

希亜とある意味で性格が合う相手で、与一の幼馴染。 唯一の味方。

リグ・ヴェータとかいう組織の司令官で――――能力者であり、同時に格闘技も出来る。

正直に言って、相手にしたくない相手というやつだ。

 

『動画?』

 

ほにゃ、としたような。

気が抜けたような、少しばかり甘えるような声が電話口から聞こえる。

 

「動画。 前の枝で希亜と……春風が話してた、今季のアニメでも見るかなーって。」

『アニメ。 何見るの?』

 

好きなものだとやはり押しが強くなるのか……?

少しだけ声色が強くなるのを理解した。

 

「いや、まだ決めてませんでしたけど……。」

『だったら、断然四部。 出来れば原作も読んでほしいけど……。』

「まあ、貸してくれれば読む気ではいるけど……。」

 

読んでる余裕あるのかが疑問。

というか、ほぼ毎日のようにお前等が来るなら読んだりするよりも……と。

もう少し先の、ゴールデンウィーク。

多分、毎日のように泊まったり遊んだりするんだろうなぁ……という考えは外れてはいないと思う。

 

『なら、今度貸すから。』

「ネタバレにならないかそれ。」

『あぁ……でも、出来れば読んでほしいし……。』

「……難しいところだよなぁ。 まあ、そう言うなら読むけど。」

 

何も知らずに見るのもそうだが。

多分希亜の場合は知ってから見て欲しい、というだけではなく。

それについての話をしたい、ということ込みでの発言だと思う。

そう考えると、まあ。

読まない理由は大分薄れてくるのだから我ながら現金だ。

 

『……ふふ。』

「どうかしたか?」

『翔と、こんな話できるなんて……と思って。』

「ああ……ゲームしたりは、したけどな。」

『全力で怠けてる時とかね。』

 

思い出す。

デモハン一緒にやったり。

とにかくダラダラしてみたり。

アレはアレで、俺の動揺を除けば楽しかった。

 

「春風……は一人でゲームするタイプだからなぁ。」

『誘ってみれば買うかも?』

「かもな。 パソコンとかはやり込んでた筈だし。」

 

他愛のない会話。

けれど、時間はどんどん過ぎていく。

楽しい時間だからこそ、余計に。

 

『……ごめん、そろそろ寝る時間。』

「ああ、俺もそろそろだな……。」

 

24時に差し掛かろうとする時計を見て、互いにそう呟いて。

 

『また、こうして電話しても良い?』

「俺はいいが、そっちは大丈夫なのか?」

『うん。 ……私も、少しずつ変わっていかなきゃいけないから。』

「そっか。」

 

苦笑したのが聞こえたのか、どうなのか。

 

『もしかしたら、そっちの近くに引っ越すかもしれないけどね。』

「お前、あの時言ってたことマジでやる気なのか……?」

『多分お母さんなら賛成してくれるから。 お父さんは……ちょっと分かんない。』

 

一人暮らしの練習。

近くに一人暮らしの知り合いがいる。

そんな事を言うのだろうか。

……まあ、心配する気持ちもよく分かるけど。

 

「まあ、もしするなら引っ越しも手伝うよ。」

『うん。 ……じゃあ、そろそろ切るね。』

「おう。」

 

そして、耳を離そうとして。

 

『翔。』

「?」

 

声が、最後に聞こえてきた。

 

()()()()。 ――――大好き。』

「……お帰り。 そんで……これからも宜しくな。」

 

ぷつり。

電話が切れて。

少しばかり熱を持った顔を振って。

寝る前にと、歯を磨きに立ち上がった。

 

4/22(金)メインヒロイン。

  • 九條 都
  • 新海 天
  • 香坂 春風
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