9-nine- にじいろゆめいろきみのいろ。   作:氷桜

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心の底に押し殺したモノ。


23.ほんの少しの。

 

がちゃり、という音がして。

午睡から目を覚ました。

午前中のうちに押入れの中はある程度整理し終えて。

少しでも身体を休めようと、休日のように過ごしていたわけだが。

 

「やっほ~……ってあれ、にぃに寝てたの?」

「……お前の声で起きたわ。」

 

煩いのが一名。

その他に周囲を異様に気にする人が一名。

合計二人が極当然のように入ってきていた。

 

「俺がいること分かってるんだからチャイムくらい鳴らせよ……。」

「え、だって鍵持ってるんだし良いじゃん。」

「お前の辞書にプライバシーって載ってる?」

「但し家族は除く、って書いてある。」

 

ああ言えばこう言いやがる。

 

「それで……ああ、香坂先輩、どうも。」

「あ……その、ええと……お見舞い、きま、した……。」

 

その言葉を告げるだけで顔が赤い。

なんだかこれも懐かしいような、そうでもないような。

……まあ、仲間というか。

友人が出来上がれば少しずつ解消されていくはずなんだが。

 

「なにもない部屋ですが、ゆっくりしていってください。」

「……は、はい。」

「ね~兄やん。 次の休みでもいつでもいいからさ、食器くらいは買いに行かない?」

「まぁ、都と希亜に聞いてからになるが……それでいいか?」

 

何やら怪しそうな目でまた俺を見る。

別にいいだろ、下の名前で呼んだって。

 

「い~けど。 なんかこう怪しいんだよなぁ……。」

「言ってろ。 んで……ああ、飲み物何かいりますか?」

「あ、にぃに。 それ一口頂戴。」

 

あ、と。

止める間もなく、テーブルの上に置きっぱなしになっていたペットボトルを奪われる。

 

「おい、新品あるからやめろって!」

「え、別にいいじゃん。 私は気にしないし。」

「そういう問題じゃ――――!」

 

飲み込む前にギリギリで確保する。

 

「何……? 思いっきり怪しいんですけど~?」

「人が飲んでる残りに手を出すなって話だよ!」

「別に良いじゃん!」

「良くねー!」

 

そんな言い合い……のような、何か。

ぽかん、とした表情で春風が俺達を見上げていた。

 

「仲、良いんですね……?」

「ああ、まあそう見て貰えるなら助かります……おい天、何買ってきたんだ飲み物。」

「何かあったら私が飲むと思う?」

「思うから聞いてる。」

 

まあ、こう返してくるってことはなにもないって事か。

 

「お茶かコーラしか無いですけど。」

「……でしたら、その。 お茶を。」

「私はコーラ!」

「はいはい……。」

 

飲まれないように、ペットボトルの中身を飲み干して潰しておく。

ぽいっとペットボトル用のゴミ袋に放り込み。

紙コップを3つ……と残り2つあるのを確認した。

 

「なら俺もコーラにしときますかね……っと。」

 

どれくらいで来るかは分からなかったけれど。

来ない理由も考えにくいので確認は必須。

ただ、持ってきてもらうばかりで悪いのも間違いなく。

 

「はいよ、飲み物。」

「さんきゅー!」

「い、頂きます……。」

 

何とも言い難い、不思議空間。

確か、春風と付き合うことになった枝では天も一緒にいた日があったはず。

……そうだ、あれは確かカレーの日(二日目)だ。

アレもある意味才能だよな……。

 

「それで兄上。 身体の方はもう大丈夫なの?」

「ああ、休んでたから大分マシになった。 明日は学校行けそうだわ。」

「分かった、お母さんには伝えとくね。」

 

距離感が上手く掴めてないんだよな、母さんとは……。

天越しくらいが丁度いい。

向こうがどう思っているかは別問題として。

 

「あの、それで……。」

「? あれ、香坂先輩?」

 

がくん、と。

一度頭を下げて。

それを心配したような天の言葉。

 

「いえ、大丈夫です。 それで、力のコントロールという話でしたが。」

「……今は()()()ですか?」

「ええ、まあ。 緊張しすぎても話にならないでしょうし。」

 

そして、起き上がったのはもう一人の春風。

確かにこっちだったら話はしやすいけど。

出来れば本人と話したほうが慣れさせる意味でも、当人のためにもなるんだがなぁ。

 

「えー……そうですね。 結局、自分で何処まで出来るかを認識できてないのが大本だと思うんです。」

「そうですわね。 私もそれには同意いたしますわ。」

「なので……希亜の都合が付けば、別れて実体験の練習でも出来ればな、と思ってたんですが。」

「実体験、ですか?」

 

頷く。

これは幾つかの枝でも実験済みだし。

何より、二人が仲良くなる切っ掛けにもなる。

 

「はい。 ……まあ、何をするかは二人が来てからということでいいですか?」

「分かりましたわ。 ナイト様の仰ることですし。」

 

おい天、吹き出すんじゃない。

 

「ナイト様……?」

「ええ、そうでしょう? 困っているところを、何の見返りもなく助けてくださった方ですし。」

「ねえにぃに。 先輩変わり過ぎじゃない?」

「言ったろ。 もう一人って。」

 

聞こえながらも、ニコリと返してくるこの人。

確かに、対人ではかなり有能……というか、乙女ゲーの主人公とかはこれくらい言う感じはする。

 

「で……ああそうだ天。 お前大人数で出来るゲームとか持ってるか?」

「え、何急に。」

「いやな。 言ってなかったが希亜も香坂先輩もゲーマーだから、持ってるならやれると思ったんだわ。」

 

先輩が持ってるのは単独ゲームがメインのはずだし。

 

「あ~……どうかなぁ。 探してみるね。」

「なければないでいい。 遊ぶことばっか考えても仕方ないしな。」

「うわ真面目~。」

「言ってろ。」

 

紙コップのコーラを一口。

そんな折に、香坂先輩のスマホから振動音。

 

「あら……お母様からです。 少々席を外しますね。」

「あ、でしたらベランダでどうぞ。 俺もちょっとトイレ行ってくるわ。」

「は~い。」

 

そう言って、その場から立ち上がって。

……天の悪巧みしてるような笑みが妙に気になった。

 




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