春風アフター(1)。
かちりかちりと音がする。
スマホを弄る独特の音。
パソコンでなくて、携帯機器を弄る時間はもうすぐ
いつだったか、冗談交じりでしたその会話は。
春風がいつものようにぽろりと漏らした頃から、習慣へと移り変わり始めていた。
手慣れたように電話帳を開いて、履歴から。
毎日のように話しているから、履歴はほぼ一色が彼女で。
けれど、一向に慣れなかった。
繋がるまでの少しの時間。
今頃は彼女も似たように楽しみにしてるのだろうか。
学校がある間の、休日前までの。
春風が自宅に帰った後の、ほんの少しの楽しみの時間。
『は、はい、もしもし……。』
「今日はこっちからの電話だったな。」
『昨日は、その。 私からでしたから。』
電話に慣れていないような口調で。
でも、その語尾には嬉しさが隠し切れないような声色。
それもそうか、と思い直す。
こんな電話だって、彼女が妄想していた事象のひとつなんだから。
「とは言っても、毎日会ってるのに妙な気分だけどな~。」
『私は、嬉しいです……。』
「そりゃ俺だってそうだけどさ。」
話したいこと、したいこと。
ずっと考え続けていた彼女の、少しばかり色っぽい方向に偏りすぎた想像の数々。
そんな内容の幾つかを実際に体験したり、体験させたり。
或いはもっと健全に、ゲームを一緒に始めたり。
やはりというか何というか、一人で遊ぶほうが得意な彼女ではあるけれど。
最近やっと、俺と一緒だったら息を合わせて遊べるようにもなってきた。
……何方かと言えば、俺がフォローしてもらってるっていう現状もあるが。
『それでは、土曜日は夕方に伺いますね?』
「あ~、来るなら待ってる。」
『ふふ。 ええ、出来得る限り早く。』
高校3年生と高校2年生。
大学受験を控える身と、それを上に見つつも余り実感がない身。
そんな一学年違いの俺達だからこそ、出来ることは幾つかあったりなかったり。
「それに……ユーザーの情報あんまり拾えなくなっちまったな。」
『精力的に動きましたもの、私達。』
「って言ったってなぁ。」
そんな内容の一つ。
勉強に打ち込む彼女の代わりに、動ける俺達が情報を集める。
春風の能力を使えばもう少し捗りはするけれど。
……俺が嫌だったし、彼女も余り使いたがらなかった。
これが独占欲なのかね、と。
自分のことを考えたりする事も無かったとは言えない。
『でも。』
「ん?」
『皆で過ごす時間も大事ですが、二人で過ごす時間も……私は、嬉しいですよ?』
「……いや、そりゃこっちの台詞だ。」
お互い様ですね、と声がして。
お互い様だ、と声を出す。
直接会っていないからこそ、ある程度落ち着いた話ができるような。
星空の下で、俺と春風は。
いつもの時間まで、たった二人で語り続けた。
こんな時間が、ほんの少しでも続くように。
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