その後、少しして春風は帰宅して。
状況を把握している人間だけが残ったところで改めて。
「……さて、レナ。 報告頼む。」
予想よりも遅くなったが、一度幻体を消してその場に再召喚。
実際使い魔みたいな扱いをしてるが、ソフィ達みたいに扱うのも合わないし。
こうして幾つかの依頼だけして自分の判断で動いてもらうほうが色々と便利だ。
「記憶では見た覚えあるけど……こうして見るのは初めてだよね。 というかにぃに、ちょっと怖い。」
「あぁ……お前の場合はそうか、ただゴーストとは違うから慣れてくれ。」
「服の色が違うだけだから……ちょっと、時間掛かるかも。」
記憶が残っている弊害。
天の枝で起きた一番大きな消失騒動は、天がアーティファクトを限界以上に使用したから。
その対象がゴースト……与一が扱っていた時の幻体である以上、慣れるまでは厳しそうだ。
あの時は、本当に助かった。
「へーへー。 つってもそんな報告する事があるわけでもねえけど。」
「それでも、情報は大事だよ。」
「それを否定する気はねーけどよ。 あー、どっちから行く?大将。」
「そうだな……まずは与一の方から頼んでいいか。」
一度、首肯。
「何処ほっつき歩いてるのか分からなかったから取り敢えず繁華街とか人混み辺りを見て回ったんだがな。
どっかに拠点があるのか、女の家に転がり込んでるのか。 今日は顔見なかった。」
「まあ、予想の範囲内か。 引き続き頼む。」
「おう。 夜にだけ動く場合もあるし、オレはそっちを重点的に見りゃいいよな? 戦いなら別だけどよ。」
「戦い、なぁ……。」
この街にどれだけのアーティファクトユーザーが存在するのかわからない。
下手をすれば、普段接するクラスメイトの大半がユーザーの可能性すらある。
今までの枝では考えにくかったが、それも視野に入れる必要があるか……?
「……いや、そうだな。 可能性に備えなきゃいけないのは事実だ。」
「当たり前だろ。 んで、2つ目……春風の元クラスメイトだったよな?」
「……春風の?」
「あ~……。 多分、これを知ってるのは当人と俺、与一だけなんだよな。」
その場で説明する。
全身をスティグマに覆われていた、春風の元クラスメイト。 河本。
ゲームセンターで絡まれたというか、何というか。
その後、夜に襲われた時には春風しか見えていないような有様で。
「成程ね。 能力は?」
「分からん。 結局彼奴が殺して……俺達はその場を離れたから。」
その言葉を告げるだけで、少しだけ空気が重くなる。
俺達は今、そういう生死を賭けた状況にいる。
その事を改めて再認識したから。
「で、そいつだが。 ……まだ分かんねーけど、アーティファクトを持ってない可能性もある。」
「は? どういうことだ?」
「いや、純粋に手に入れたのが遅い場合もあるけどよ。 なんつーか、そういう独特の感覚?が無い気がすんだよな。
勿論感覚でしかねーからもう少し調べるが。」
「……悪い、任せた。」
全身に広がるスティグマ。
……希亜の枝で見た、無差別に発動されたイーリスの介入。
あの時のそれと、関わりがあるのか?
現状は何も言えない。
「ああ、大将も出来る限り彼奴に近付けねえようにしてくれよ?」
「って言ったって連絡の取りようがねえだろ。」
「そういやそうか。 何とかしたいがなー。」
スマホ二台持ち……とか出来れば便利だろうが。
今は金銭的にも無理。
「ま、オレからはそんな感じ。」
「分かった、引き続き頼む。」
「おう。 テキトーに時間見て報告しに来る。」
そんな事を言い残し。
また気軽に、夜の世界へ出ていくレナ。
暫くは放置だな、こりゃ……。
「で、今の説明を踏まえて幾つか準備しておきたい。」
殆ど口を開かずに、俺達の報告や話を聞いていた三人の顔は。
文字通りの真剣さで。
それを見て、少しだけ口角が上がってしまった。
同じ危機感を、共有できていると思って。
「まず第一に、ユーザーの有無を知っておきたい。 可能性だけでも良いから。」
「え、っと……。 それは、友達にってこと?」
都の問いかけに、ああ、と呟いた。
実際、同じクラスメイトの中だと知ってる限りで三人しかいなかったが……。
「それも含めてだ。 各々覚えはあると思うが、火事騒ぎみたいな暴走に繋がる可能性もあるからな。」
全員が頷いたのを見て、次。
「それと、イーリスが完全に滅んだのを確認できる日まで。 或いは、与一とかが捕捉出来るまでだな。
一人で動くのは出来る限り避けてくれ。」
「……もしもの場合は、ってことね。」
「じゃあお兄ちゃん。 自由に動ける私達みたいなのが付き添う感じ?」
「レナも入れれば六人。 まあ奇数にはならないしな……。」
魔眼に対抗するには、一人ではほぼ無理だ。
掛かった時点で対処手段の大部分が失われる。
故に、一人で動かないことをほぼルール化しておく。
「分かった。 なら、それを前提に動きましょう。 ヴァルハラ・ソサイエティとしては止めたいし。」
「……そういえば、高峰くんはどうするの?」
「彼奴なぁ……。 絶対的に与一の味方である以上、潜在的な敵……中立で見たほうが良いだろ。」
彼奴と戦う羽目になった場合。
レナを呼び出すくらいしか俺にはどうにかする手段がない。
「他に意見は?」
横に振られた首を見て。
「なら、今日はこれくらいだな……。」
それを口切りに、各々が帰宅の準備をし始めて。
「それなら……私は、今日は帰るね。 お祖父様に、もう少し相談しておくから。」
「分かった、気をつけてな。」
「なら兄貴。 私はみゃーこ先輩と帰るから、希亜先輩任せていい?」
都が立ち上がり。
天が、それに付き添うように立ち上がって。
けれど、希亜は動く気配がなかった。
「へ?」
「……泊めて、貰えない?」
「は?」
……何があった?
ツイッターアンケート有難う御座いました。
原作と大分剥離してますがこれからも宜しくお願いします。
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