9-nine- にじいろゆめいろきみのいろ。   作:氷桜

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空を見上げる。
移り変わる景色は、それぞれで。
抱く想いは。


29.5.都に映る天。

 

春の風は、もう暖かくなり始めていた。

自転車を押しながら、隣の天ちゃんを横目で眺める。

 

「~♪」

「楽しそう、だね。」

「そう見えます?」

「うん、とっても。」

 

前の籠には、天ちゃんの荷物が載せられている。

もしこれが、翔くんだったら、なんて。

他愛もないことを考えてしまうくらいには、平和で。

 

「……これ、内緒なんですけど。」

「うん。」

「今日で、全部終わっちゃうと思ってました。」

「……全部?」

「はい。」

 

駅前までの短い時間。

けれど、話すのを楽しむように。

少しずつ、少しずつ。

こつん、と。

目の前の小石を蹴飛ばすのを、目で追った。

 

「色々、気付かれたくないこととか。」

「うん。」

「隠してたこととか、全部バレちゃって。」

 

記憶が戻ることは、良いことだけじゃない。

多分、それは皆同じなんだと思う。

 

私だって。

与一くんに、石にされた時。

自分を、ずっと叱って。

最期に思ったのは。

ごめんなさい、って言葉だったから。

 

自分には釣り合わない、って。

だから、一緒にいられるくらいには、って。

一人で動いて、最期は。

……悲しませてしまったんだから。

 

「多分。 お兄ちゃんに、拒絶されてたら。」

「……しないとは、思うけどね。」

「……どうだったかな。 もしかしたら、自分を消してたかもしれません。」

 

極めて平坦に。

彼女は、私にそう告げた。

 

「みゃーこ先輩は?」

「え、私?」

 

聞き手に、受け手に回っていた私への質問。

駅前まで、少しだけの遠回り。

誰かと、こんな話をするとは思ってなかった。

そんな、唯のお話。

 

「見てれば、何となく分かりますよ?」

「そ、そう?」

「はい!」

 

互いに、何の話かは口に出さない。

それは、出してはいけない事なんだろうって。

周囲に、認められるか分からないことなんだから。

 

「多分、そうだなぁ。」

 

思い返せば。

いつから、なんて決まっている。

 

「天ちゃんを、助けに行ったときかな。」

「え、私の時ですか?」

「うん、そう。」

 

中にいて、外の様子を一切知らなかった天ちゃん。

火事であっても。

自分が焼け死ぬ、なんて気にも止めずに。

私を護ってくれて。

天ちゃんを、護り抜いて。

 

「私が、一方的に知っててね。」

「……ナインボールで働いてたこと、知らなかったんでしたっけ?」

「みたいだね。 初めて知った時は、ちょっと驚いた感じだったかな。」

 

それから、いろんな事があった。

初めは、結ばれて。

ずっと先までを誓いあったけど。

スティグマについては、何も知らなかった。

 

それを知っている「私」は、彼と結ばれる事はなくて。

ただ、心に秘めたまま。

ずっと、目で追いかけているだけで。

 

「だから。」

「……はい。」

「私を、選んでほしい気持ちはあるけどね。」

 

うん、素直に認める。

独り占めにしたいし。

一緒に、いろんな事をしたい。

だけど。

 

「それは、皆同じだもんね。」

 

私、今。

上手く笑えてるかな。

 

「……みゃーこ先輩。」

「? どうかした?」

「私、やっぱりみゃーこ先輩大好きです!」

 

――――希亜ちゃん。 ……今日だけは、翔くん独り占めにさせてあげる。

 

たった二人の、秘密の話。

誰にも聞かれたくない、私達だけの内緒話。

 

ヒロインたちが付けてて違和感がないアクセサリー形状?

  • ブレスレット
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