9-nine- にじいろゆめいろきみのいろ。   作:氷桜

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助けて欲しい、と彼女は願い。
自分のものにしたい、と彼は願う。
叶った願いは、一つだけ。
消えた願いも、一つだけ。


35.5.「はるいろ」。

 

――――私が、こうなってしまったのは。

一体、いつだったでしょうか。

 

小学校、中学校。

男子から、ずっと虐められ。

周囲からはそれで当然と見られて。

友達なんてものも、当然のようにいなくて。

 

けれど、それでも。

高校生に上がる際、遠く離れた場所に逃げられなかったのも。

多分、私が弱かったからなんだと思います。

 

高校に入ってからも、それは引き続き。

虐めという言葉、行為からは縁遠くなりました。

それでも。

余計なことを言ってしまうこと。

気分が高揚すれば、話をするのにも苦労を掛けてしまいます。

吃り、掠れ。 スムーズに話そうとすれば、考えていることを口に出して。

 

いつしか「そう」、周囲には思われて。

そんな立ち位置を手に入れて、二年。

 

時折、こうも思っていました。

誰かに助けて貰いたい。

こんな私から、変わりたい、と。

 

ゲームの中でも。

漫画の中でも。

アニメの中でも。

誰かに助けられて。

誰かを、助けて。

 

けれど、けれどと。

切っ掛けを求めても、何も変わらずに。

 

だからこそ、その力を手に入れた時。

私が思ったことは――――「こうなりたい」と、自分の理想を浮かべる事で。

「私」は、変わりました。

 

周りに、男の子が集まって。

その数は、自分が思うよりも遥かに増えていって。

そして。 その人達を従え、侍らせる「私」。

心の何処かで願っていた、ゲームの主人公のような「私」。

誰とも、普通に。 周りを動かすことが出来る「私」。

 

でも。

()に手を差し伸べてくれたのは。

少しだけ、目付きが鋭い。 年下の、男の子でした。

 

助けられることを、願っていた私には。

自分から抜け出せない、と。

信じ込んでいた私には。

彼は、ずっと待っていた白馬の王子様に見えて。

 

多分、その時から。

()は、彼を好きになっていたのだと思います。

 

そこからは、少しの時間しか経っていないはずなのに。

とても、とても。 濃厚な、時間でした。

 

ユーザー。 アーティファクト。

輪廻転生のメビウスリングから飛び出してきたような。

私がずっと願っていたような。

考えていたような、少しだけ変わった能力の仲間達(ともだち)

 

一つ年下なのに、私よりもしっかりしていて。

礼儀正しい、お嬢様と言った具合の九條さん。

二つ年下で、彼の妹で。

ムードメーカーのような、新海さん。

趣味も合って、性格面でも噛み合って。

他の誰よりも、親しくなれた希亜さん。

 

そして、そんな彼女達を。

何処か遠い目で、悲しそうに見ていた「王子様」。

なんで、そんな目で私を見るのか。

それを問い掛けることは――――どうしても、出来ず仕舞いでした。

 

 

その日は。

私の能力を、自覚させるためにと。

皆で、公園にやってきた日でした。

 

猫を集める。

そう強く願えば、私の望みの通りに集まって。

そして、疲れからへたり込んでしまって。

何事もなく、一日が終わると思いこんでいたのです。

楽しいままに、終わると思っていたのです。

 

「あれ? 香坂じゃん!」

 

そんな声が飛んでくるまでは。

 

跳ねるように、顔を上げてしまって。

そこに見えた、出来れば二度と見たくない顔を見て。

身体が、固まってしまったのは。

昔の、悪影響だったのでしょうか。

 

河本(こうもと)くん。

私を率先して、虐めていた張本人。

 

「何してんだよ、こんなところで!」

 

馴れ馴れしくて。

嫌だ、と言っても構ってきて。

何をしても、逃げ出せなかった相手。

 

「何黙ってんの?」

 

少しずつ、少しずつ近付いてくる彼の姿。

ぁ、と口から言葉が漏れて。

少しだけ、少しずつ。

後ろに下がろうとして、ベンチの背もたれ沿いに横にずれ。

 

「おいってば!」

 

身動きが、取れなくなってしまって。

楽しかったはずの一日が。

目の前の彼で、塗り潰されていくような幻覚に襲われて。

 

助けて、と願ってしまった。

王子様、と思ってしまった。

願ってしまえば、本物ではないのだと。

心の何処かで理解していても。

 

――――だから。

 

目の前に、「彼」の。

翔さんの、背中が急に現れて。

立ち塞がって。

私を護ろうとしてくれた、その事に。

嬉しがってはいけないのに。

黙って、見ていてはいけないのに。

私が、否定しなければいけないのに。

目の前で、言い争いが広がっていく。

 

私を見て。

私を求めて。

 

何処か()()()ような、嘗ての「幼馴染」(こうもとくん)

それに立ち向かう、白馬の王子様(かけるくん)

 

怯えているだけでは、駄目と。

心の中の「私」が叫ぶ。

知らない筈の、誰かの声が叫ぶ。

 

――――「彼」の背中を、見ているだけでいいの?

 

だから、私は思ってしまった。

自分を、変えるためにと。

過去を、乗り越えるためにと。

 

少しだけ、力を貸して、と。

()()()()()()()()()()()()、と。

手が、淡く光り出し。

 

やっと、視界に入れられた。

何とか動こうとしてくれる、九條さんと新海さんの顔が変わるのが見えた。

 

「なぁ、香坂! 此奴、お前の何なの? ウゼーんだけど?」

 

だから、何が起こったのかは必然的に。

(わたし)は、悪役(かれ)に告げる。

貴方の姫は、私ではないと。

私の、王子様は。

少しだけ目付きの怖い、彼なんだから、と。

一方的な想いで、あったとしても。

 

「翔さん。」

 

声が、出せた。

 

「こちらを、向いて下さい。」

 

動くことが、出来た。

簡単に、妄想してしまう私だからこそ。

その動きは、何度も思ったような動き方だった。

 

後ろを向いた、()の唇を奪う。

見せるように。

見せつけるように。

 

少しだけ、考えていた初めてとは違ったけれど。

最後の動きは。

私の考えを読んだように、王子様からのモノだった。

 

 

 

 

ニア 記憶をインストールする。

 

 

 

 

――――そして、私は。

全てを、思い出した。




少しだけ踏み出せた、最後の一人。

彼女の感情を、何も気にしなかったからこそ。
彼の末路は、残酷だったと作者は思います。

GW何しようね……?

  • 日変わりでデート
  • 全員で旅行
  • ヒロインペアでイベント
  • お泊りとかしようぜ
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