その行いから、その思いを推し量る。
半ば無理な動き方をして、肉体的にも精神的にも疲労を溜め込みながら。
四人の場所に戻ってきた際、目の前に映ったのは大きく分けて二つ。
春風の前に立つ、大声を上げて威嚇するような元同じ学校の、春風の……なんだ、ストーカー?
そして、希亜から少し離れた場所で吃りながらも話しかける、推定ユーザー。
距離的には、希亜の方が手前側に位置していて。
けれど、話の重大さを鑑みれば春風の方が緊急性は上だった。
「何してんだよ、こんなところで!」
そんな、問い詰めるような声が耳に響く。
――――何方に向かうべきだ?
一瞬だけ迷いはしたものの。
泣きそうな、誰かを求める顔を浮かべた春風と。
俺を見て、一度確かに頷いた希亜と。
両方の行動を見。
次の瞬間には。
缶を手元から落としながら、滑り込むように春風の前へと立っていた。
「おいってば!」
「そんな、大声出す必要あります?」
何とか、距離がそれ以上縮まる前に割り込めた。
「あ? 何だよお前。」
「香坂先輩の……何でしょうね、
目線だけを都と天へ向け、動かないように。
或いは、天のアーティファクトを使ってくれるように。
つまりは此奴の目の届かないようにしていて欲しい、と強く睨みつけた。
果たして、それが通じたのか。
或いは妙に鋭い時がある二人だからか。
天の近くへと都が移動して、小さく頷いた。
「は? 此奴に? 友達?」
「そうですよ?」
どの程度深い友達なのか。
聞かれたら、口元だけを歪めてやるつもりだった。
以前、此奴が全身をスティグマに染めて襲いかかってきた際。
俺が全力で押さえつけても、向かっていたのは春風に対してだった。
つまり、それだけ思い入れが。
或いは、執着があった相手ということだ。
……確か、レナが言ってたな。
知り合いに聞いた話だが、周囲が彼女だらけになって焦って、この辺りを探していたとか。
小中同じ学校で、春風を自称「面倒見て」いた張本人。
その行為が、どれだけの恐怖を抱かせていたのかに気付かなかった張本人。
だから、少しでも。
その考えを、俺に向けるために挑発し続ける。
――――良いことだとは、到底思えない。
けれど。
彼女へ危害が向くのなら。
狙われるのは、俺でいい。
「小中と面倒見てやらなきゃ引きこもってた此奴に、男の友達ィ?」
「そうですよ。 色々と面倒見て頂いてましてね。」
「ハッ、どうだか! 騎士様気取りとかそんなとこじゃねえのかね!」
少しずつ、会話の度合いがヒートアップしている。
抑えろ。
暴走の方向性を、怒りの噴出度を抑えるように発言しろ。
「誰……って酷いな。 ぼ、僕だよ。」
「いえ……その、すいません。 何方、でしょう?」
困惑の色を多分に含ませ。
恐怖で染めたような、誰とも知らぬ相手への希亜の返答も聞こえている。
出来れば、こちらか向こうか。
何方かを片付けてしまいたいのだが。
「なぁ、香坂! 此奴、お前の何なの? ウゼーんだけど?」
そんな風に、思考を向けてしまったのが悪かったのか。
俺ではなく、春風に話を持っていく。
恐らくは、話せないのを理解していて。
その顔が、歪んで見えて。
「
だからこそ、その声色に驚いた。
何処かで聞いた、彼女の強い口調。
そう、確か。
初めて、イーリスを撃退したあの時の。
「こちらを、向いて下さい。」
その言葉に、逆らえずに。
或いは逆らわずに、後ろを向く。
目の前の男の目が、見開いていくのが妙に遅く見えていた。
そちらを見れば、一歩を踏み出した彼女の姿。
両腕を頭に。
何かを信じたように、目を見つめていて。
だからこそ、なのか。
或いは、彼女の能力での理想の実現なのか。
いつかの俺の部屋での。
「襲われたい」とかいう、あの妄想じみた時のように。
ただ、答えは明白に。
彼女からでなく。
俺は、俺の意志で。
「――――は?」
乾いた声が、背後から聞こえる。
呆然としたような声色が、俺の背中を突き刺す。
実際触れ合っていたのは、多分数秒にも満たない時間で。
けれど、互いの口内には自分のものでない液体が残っていて。
だからこそ、確実に。
互いに、線が繋がったと理解して。
「……こういう事らしい、ですね?」
もし。
この場にいたのが、あの時に抑えてくれた彼の友人ならば。
慰めながら、暴れようとするのを止めてくれただろうか。
ただ、此処にいたのは。
それを加速させるような、ユーザーの存在で。
「ふ、っ――――。」
憤怒までの、一瞬で春風を。
「ふざけんなアアアアアアア!」
口の端から、泡のような物を吐き散らしながら。
目の前の存在を打倒しようとする、男が一人。
咄嗟に身を屈め、胴に手を回して。
一方的に殴られるのを抑えながら、地面へと伏せさせようと力を入れても。
相手は、自身の身体が壊れるのも厭わないように暴れ続ける。
「アアアアアアア! 殺す!」
声を出せずに、抑え続け。
ふっ、と重みが消えたのはどれくらいしてからか。
「……なぁおい、大将。 無理しねえって言ったのはお前だろーが。」
疲労と、痛みが脳裏を麻痺させる中。
暴れていた彼の、腕を極めながら。
溜め息を吐く、レナの姿が視界に映った。
だから。
「悪い――――少し、任せる。」
「あいよ。 カッコつけて来いよ。」
其処で、倒れるわけにも行かずに。
怯えを、仮面の中に隠した。
希亜の方へと、重い足を向けた。
騒動は未だ、終わらない。
GW何しようね……?
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