9-nine- にじいろゆめいろきみのいろ。   作:氷桜

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何故、執拗に彼女に迫ったか。
そんな事も、既に呑まれて。


37.妄執。

 

「……僕のこと、知らない?」

「何度も言ってます――――いえ、言ってるけれど。 知らないわ。」

 

希亜と対峙している、若干小太りの推定ユーザー。

まだ4月だというのに、汗が額に輝いていて。

妙に荒い呼吸を繰り返しながら、ずっと彼女と話をしていた。

 

「……希亜、どうだ。」

「翔。 ……春風の方は?」

「レナが抑えてくれてる……それで。」

 

目の前、20mくらいに近付いた辺りだろうか。

空気が少しだけ、重くなったような気がして。

頭に鈍い痛みが走り始めた。

 

「あは、ははは…………!」

「……こいつ、知り合いか?」

「いえ。 私は、覚えもないのだけど。」

 

とは言うものの、此処まで執着……いや、それよりも粘っこい、何だ?

妙な笑いを上げて、壊れるように感情を強めているのが分かる。

 

「君が知らなくても! 僕は! ずっと見てきた!」

 

呟く一言一言が、重く。

 

いつだったか。

ゴーストが、天に消された時のような。

異常な感情の悪化、暴走。

――――アーティファクトの過剰な進行か。

 

「らしいが。」

「何度も言わせないでよ。 それとも、私が知らないだけでそういう趣味があったりする?」

「あるわけねえだろ……。」

 

相手の行動、言動から考えると。

感情の増大化、それとある程度の方向性の指定ができるアーティファクト……だろうか。

しかし、希亜の事を見てたとか言われるとイラッとくるのは一旦置いておくとして。

一つ、気になることを問い掛けなければ気がすまない。

 

「おい、あんた。 一つ答えろ。」

「……お前、結城さんの何だよ!? む、向こうのも見てたぞ!?」

「何……と言われるとな。」

 

何と答えるのが良いんだ。

都の場合は事件解決までのパートナー。

天の場合は護ってやれる兄貴で、且つ……あー、何か変な関係?

春風からしてみれば王子様らしいし。

ただ、希亜の場合…………一言でいうと……。

 

「答えてあげれば? 翔。」

「そりゃ答えるが、いい機会とか思ってないよな?」

「思う余裕もないわ。」

 

それもそうか。

 

「相棒、DEAR MY WAKER(ともにあるくもの)()()()()()()()。 どれが良い?」

「……別に、どれでも良いけど。」

 

いや、お前には今は聞いてねえ希亜。

冗談めかしてはいるが、かなり危険な状態だってのは互いに承知。

けれど命まで……と思っていない理由は唯一つ。

 

「で。 お前、()()()()()()()()()()()()

 

直接的に被害を及ぼすアーティファクトでなく。

間接的に被害を出す、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()アーティファクトであること。

そして、()()()()()()()()()()()()()()()ということだ。

 

今朝方の、触れ合い。

少し前の、記憶のインストール。

それら全てが、互いの眷属化を発揮する理由になる。

 

だからこそ、俺達には殆ど効果を発揮しない、出来ない。

俺達の中で言えば最も近いのは天のモノ。

実際、存在の希薄化は。 俺やゴースト……レナには効果を発揮しない。

その類でなければ今頃、俺や希亜には何か変化が起こっていたはずだ。

それも、目の前のやつに望ましい方向に。

 

「な、何って……何を?」

「知らねえよ。 こっちが聞いてるんだからな。」

 

一歩踏み込む。

相手は……多分、年上だろう。

だが、今大事なのは年齢でなく。

精神力で、相手を上回ること。 その事実。

その情報を――――相手は、()()()()

 

「な、何もしてねえよ! ただ……!」

「ただ?」

「俺は、心配だっただけなんだよ!」

 

朝、通学途中で偶然出会った希亜の母親に。

そんな事を伝えただけだ、と。

心配じゃないですか?と。

けれど。

けれど、だ。

 

「……知らない相手にそんな事言われるの、怖くねえか?」

「……そうね、お母さんも怖かったと思うわ。」

「――――!」

 

仮に相手は、希亜のことを知っていたと仮定して。

一学年上の異性、それも今では女子校通いの相手。

小中も勉強に専念し、自身を壁で覆っていた彼女に取って。

人間付き合い……それも、先輩後輩、男女関係。

そんなものに気を取る時間がどれだけあったのか。

 

「だから。」

 

希亜は、左目のスティグマを解放した。

 

「私が、裁くわ。 お母さんの分まで。」

 

 

「……それで、この有様というわけね。」

 

それから少ししての、公園の隅。

暴走していた元いじめっ子は、感情を誘導していたアーティファクトが消失したことで気絶し。

希亜の事を(一方的に)知っていたユーザーは、ジ・オーダーの効果で一時的に気を失っていた。

 

「なぁソフィ。 このアーティファクト、何のために使われるんだ? そっちの世界では、だが。」

 

だから、アーティファクトを都に奪取して貰い。

それをソフィに渡して破壊、能力解除……という火事騒ぎの時に想定していたコンボで片付け終え。

状況を、目の前のぬいぐるみに報告しつつの疑問。

女子四人は、色々とありすぎて。

先に買い物をして貰いつつ、俺の部屋に先に帰した。

……春風の熱暴走っぷりと、それをジト目で見ている都と天から逃げたともいう。

 

「そうねえ。 簡単に言えば、見習いが戦闘に向けて使う精神向上かしら。」

「精神?」

「先に好戦的であったり、感情を上向きにしておくのよ。 そうすれば精神力の戦いだもの、少しでも優位に立てるでしょう?」

「……でも、それ欠点大きくねえ?」

「あら、カケルでも気付くのね。 そうよ?」

 

毎度一言余計なんだよお前。

 

「一度でも怯んだり、悪い方向に考えたら一気に転落する。 だからこその見習い向けなのよ。」

「……あー、精神を調整できない見習いだからこそ、ね。」

「ま、それは貴方には関係ないことよね。 ……あの子達のためなら、()()()()()でしょうから。」

 

何でも()()、の間違いだけどな。

…………救急車だけ呼んで、帰るとしよう。

 

昨日今日と……身体を痛めつけ過ぎた。

 

GW何しようね……?

  • 日変わりでデート
  • 全員で旅行
  • ヒロインペアでイベント
  • お泊りとかしようぜ
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