戦いの、苦労の後で受けるモノ。
「ぁー…………。」
ついつい、独り言が漏れてしまう。
制服が多少汚れたのはまあいい、家で母さんに見られれば文句の一つも出るだろうが。
一人暮らしな以上、そんな部分で怒られる道理もない。
……というか、一人じゃなかったら今朝の……その、
『ありがとうございましたー!』
駅前のドラッグストアで買いたくもなかった傷薬と湿布を購入。
将来的に使えなくもない……と信じたい。
スマホで時間を見れば、先に帰らせてから一時間ほど遅れての帰宅になりそうで。
少しばかり憂鬱と、疲労と、怠さを抱えての帰宅。
(社会人ってこんな気持ちになるんだろうなぁ……ネットで見る限りだが。)
がちゃり、と自身の部屋の扉を開けて。
漂ってきたのは、何時ぞや嗅いだことのある、咄嗟に身構えてしまう匂い。
……カレーか。
「悪い、遅くなった……。」
そう、明かりがついている部屋に声を掛ければ立ち上がる音と駆けてくる音。
そんな走るほど広い部屋でもないんだけれど。
それでも、自分のことを気にかけてくれる相手がいるのは思いの外嬉しいもので。
「大丈夫だった!?」
「もー、にぃにカッコつけ過ぎだってば。」
顔を見せたのは、まあある程度予想はしていた都と天。
アルバイトがないとは言え、うちにずっといるような状況は……最初の時以来だろうか。
色々と迷惑かけてるな、とは自分でも思う。
「自分じゃ見えないところに痣とか出来てるかもなー……まあ、大怪我とかはしてない。」
「じゃあすぐ消毒しなきゃ……天ちゃん、お風呂ってどうなってる?」
「んー、何かあった事考えて誰も入ってはないはずです! 乾いてるかは見てくるっす!」
「そもそも普通に誰かが入ってる状況が何かおかしいからな?」
まあ、それを受け入れつつあるのも現状ではあるのだけど。
実際問題、ほぼ全員が一度は入っているはずだし。
……全員が全員、一緒に入った記憶もあるとかいう状況下では何を言っても然程変動はないと思うが。
「もし怪我とかしてて傷口から細菌入ったら大変だよ!」
「そういう血、とかは無さそうなんだけどな……。」
「それでも!」
「悪い、そうだな。 心配掛けたのは俺だもんな……それで、春風と希亜は?」
両手を上げて降伏表示。
先に好きになった者故の頭の上がらなさ。
それに加え、色々と迷惑かけっぱなしだし……家事までやってもらってる。
これで何か言ったら流石に駄目すぎるだろ、俺。
「希亜ちゃんはお父さんに上で電話掛けてるみたい。 お母さんの件で、春風先輩と一緒に。」
「ああ……どうなりそうだ?」
「多分大丈夫そう……だけど、入院騒ぎにまでなるかもって。」
「そりゃあ……。」
命に別状がなかったとは言っても、かなりの負担を掛けていた。
感情の変動が激しすぎれば、擬似的な躁鬱病に近い状況。
入院して少し休む……というのも頷ける。
「……そうなるとどうなるんだ?」
「分からない……のが正確かな。 多分お父さんが面倒見ることになるとは聞いたけど。」
「家にいてやった方がいい気はするんだが……まあ、家庭事情か。 特に理由が理由だもんな。」
「だから、少しだけ嘘ついちゃった。」
……何をした?
というか、嘘ってなんだ都。
そんな舌を少しだけ出してごまかしても駄目です。
そんな風に、目で疑っていれば。
「春風先輩の家に泊まっている事にしたの。」
「……先輩の?」
「私の家だと……ほら、流石にバレちゃいそうじゃない? 家も、ある意味近いし。」
「とは言っても……学校からわざわざ電車で遠ざかってるのは……って、だから一人暮らしか?」
今の年代、高校二年から三年に掛けて。
大学に進学することを念頭に置いているのなら、まず間違いなく一番大事な時期。
今までの経歴を考えても、確かに希亜の両親なら娘のことを第一に考える。
だから、勉強を考えられる環境……で、一人暮らしか?
「多分、そうなると思う。 もしもの場合は、私とお祖父様もいるし。 ナインボールっていう手もあるから。」
「いや、勿論俺も協力するが……予想より大事になってきたな、今日の彼奴。」
「だよね……多分、一方的に知られてて。 ずっと見られてた、ってこと……かな。」
「どうだかな。」
え?ってぽかんとするんじゃない。
アーティファクトの特徴を考えろ。
「基本的に自分に使わない……というか、使えないアーティファクトなんてのは別のものに使うよな。
都とか、ちょっと例外だが希亜とか。」
「そう……だね、私も家で練習しちゃったし。」
「もうすんなよ。 で、彼奴のアーティファクトは感情操作で確定だ。 ソフィに聞いた。
それが、今まで勇気が出せなかった自分に使えるとなったらどうなると思う?」
「あ……自分の感情を弄って、前向き……とか、隠してたことを出す?」
「昔は好きだったけど特に告白もできず。 アーティファクトが手に入っちゃったから……ってな。」
まあ、これも推測に過ぎない。
本来なら何事もなかったかもしれない。
少なくとも今までの枝では発生しなかったのは確かなんだ。
それは、ひょっとすれば――――イーリスが介入することで、あの
その生贄に選ばれていたからかも……と。
「……翔くん?」
「ん、ああ何だ悪い。」
「怖い顔、してたよ?」
……無意識に、そっちに引っ張られてたか。
気をつけないとな、俺も。
GW何しようね……?
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お泊りとかしようぜ