9-nine- にじいろゆめいろきみのいろ。   作:氷桜

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失って、得て。
その均等が取れないからこその、人生なのだと。
歳を重ねた彼は言う。


39.喪失、取得。

 

「どうなるんだかなぁ……。」

「こーら、にぃに。 また溜息なんて吐いてる!」

「吐きたくもなるだろ。 ついでに今の状況鑑みてくれると俺は嬉しい。」

「可愛い可愛い妹が風呂場でチェックしてあげてる所?」

「それをどうしたら納得しろっつーんだよお前!」

 

二人が戻るまではする話も、食事もする気になれず。

普段だったら色々と済ましている時間にも関わらず。

上だけ脱いで、取り敢えず背中周りの確認中。

お~、とか言いながら普通に触るんじゃないお前。

 

「やっぱり擦り傷とかそこそこあるねえ……。」

「そうか? 特に痛みとかは感じないんだが。」

「変に慣れちゃってるだけじゃない? もしかしたら麻痺してるかもだけど。」

 

傷口の消毒、と言いながらシャワーで湯を背中に掛けられれば。

少しだけぴりり、とした熱を感じる。

普通にしていれば特に感じない辺り、本当に薄皮一枚と言ったところだろうか。

 

「で、どうだ?」

「んー……やっぱり痣があるかなぁ。 大丈夫?これ。」

「触んな!」

 

痣、内出血。

恐らくはレナに手助けして貰う迄に付いたものだろう。

栄誉の傷、といえばかっこよく感じるが。

喧嘩で付いたモノ、といえばいかにも子供っぽい。

 

「はいはい、じゃあこのままお風呂入っちゃう?」

「……入るって言ったら何する気だお前。」

「そりゃ~……頭くらいは洗ってあげようかなーって。」

「出てけ!」

 

石化してたときじゃねえんだよ!

今は平常なんだから何するんでも一人で出来るわ!

 

「ぶ~。 兄貴ひどーい。」

「……何でこうなっちゃったかなぁ、本当に。」

「いやだから、落差。 落差考えてくれませんこと?」

「教育が悪かったんかな……どう思う?天。」

「私に聞く所なのぉ!?」

 

いいから出てけ、と追い払い。

簡単に汗を流すだけにして、そそくさと着替えを着込む。

背中を丸めると、今まで意識はしていなかったけれど。

引っ張られるような感覚と、じくじくとした痛みを味わえた。

この辺りに痣があるんだろうなぁ、と。

嫌な想像をしながら。

 

「外誰もいないよな?」

 

念の為に、外へ声を掛ける。

 

「う、うん。」

「外にいたら怒るでしょ、どうせ!」

 

聞こえる、扉越しのくぐもった声。

……普通ならこんな事気にしなくてもいいんだけどな。

パパっと着替えて……ドライヤーは今日はいいか。

乾燥するのに任せて、軽く髪を拭うだけに留めておいた。

 

がちゃり、と自身の部屋……というよりはリビングに当たるのか。

台所とそこを塞ぐ扉のノブを開けば。

テーブルに座り込み、恐らくは今日出された宿題を片付けているのが見える都。

俺のベッドに勝手に座り込み、スマホで何かを検索している天。

 

「悪いな、俺だけこんな感じで。 ……二人はまだか?」

「みたい。 そろそろ、見に行ったほうがいいかな?」

「もう……30分にもなるもんな。」

 

時計を見れば、それくらいの時間は進んでいる。

それだけ長く話す内容があったのか。

或いは、二人で何か話しているのか……と、そうだ。

 

「……帰り際、話したか?」

「うん。 先輩も、やっぱり記憶取り戻したって。」

「ただねー、ちょっと厄介な事になるかもしれないよ? お兄。」

「厄介?」

 

適当にパソコン前に座って、電源を入れる。

無音……ではないけれど、人の立てる物音だけの状況に少し戸惑いがあったから。

一人ならそうでもないけれど、吐息とか衣擦れとかな。

 

「アガスティアの葉のオフ会、覚えてるよね?」

「高峰が計画して……お前の時もあったそうだが、先輩の時は潜り込んだやつか?」

「それそれ。 今度の……日曜日だっけ? そこでやるみたいなの。」

「……参加者二名で?」

「あ、やっぱりそこ気になる?」

 

前の時はゴースト……というか与一がいて三人。

その三人でリグ・ヴェータ……だっけか、アレが結成されてた覚えがある。

インドがどーたらこーたら言ってたが、希亜のアレと似た発祥なんだろうなぁ。

 

「まあ、オフ会自体よりは高峰は気になるところだが。」

「ユーザーなんでしょ? あの人も。」

「隠し玉とか何とか言ってたが……一応その筈だ。」

 

問題は、能力がよく分かってないところなんだが。

基本的に、というより。

ほぼ常に敵に回ることが確定している、中立的な相手。

一番対処に困る。

 

「ならさー、やっぱり互いに顔だけは知っておいたほうがいいと思うの。」

「となると……日曜に、春風経由で行くことを連絡する感じか?」

「かなぁ。 私はそうするべきだと思う。」

 

まあ、土日予定が決まってなかったのは事実。

時間があるなら遊びにも行きたかったが、然程長い時間を要する訳でもないはず。

それにまあ。

土曜でもいいわけだし、ゴールデンウィークもあるし。

 

「……二人が戻ったら相談事項追加だなー。」

「え、何? にぃににもあるの?」

「少しな。 レナに言われて腑に落ちる部分と……嫌な気分になる部分があることだが。」

「うぇ、嫌な予感がする。」

 

その通りだよ。

 

「翔くん。」

「あ、悪い。 邪魔になったか?」

 

パソコンのブラウザを開いて、適当な作業用の音楽を流し始める。

何処かで聞いたような、クラシック……か? これ。

その音から少しして、都が顔を上げた。

 

「ううん。 一緒にやらない? と思って。」

「……ああ、やらなきゃだもんな。」

 

片付くのが先か。

二人が戻るのが先か。

少し、腹が減る音がした気がした。

 

GW何しようね……?

  • 日変わりでデート
  • 全員で旅行
  • ヒロインペアでイベント
  • お泊りとかしようぜ
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