その均等が取れないからこその、人生なのだと。
歳を重ねた彼は言う。
「どうなるんだかなぁ……。」
「こーら、にぃに。 また溜息なんて吐いてる!」
「吐きたくもなるだろ。 ついでに今の状況鑑みてくれると俺は嬉しい。」
「可愛い可愛い妹が風呂場でチェックしてあげてる所?」
「それをどうしたら納得しろっつーんだよお前!」
二人が戻るまではする話も、食事もする気になれず。
普段だったら色々と済ましている時間にも関わらず。
上だけ脱いで、取り敢えず背中周りの確認中。
お~、とか言いながら普通に触るんじゃないお前。
「やっぱり擦り傷とかそこそこあるねえ……。」
「そうか? 特に痛みとかは感じないんだが。」
「変に慣れちゃってるだけじゃない? もしかしたら麻痺してるかもだけど。」
傷口の消毒、と言いながらシャワーで湯を背中に掛けられれば。
少しだけぴりり、とした熱を感じる。
普通にしていれば特に感じない辺り、本当に薄皮一枚と言ったところだろうか。
「で、どうだ?」
「んー……やっぱり痣があるかなぁ。 大丈夫?これ。」
「触んな!」
痣、内出血。
恐らくはレナに手助けして貰う迄に付いたものだろう。
栄誉の傷、といえばかっこよく感じるが。
喧嘩で付いたモノ、といえばいかにも子供っぽい。
「はいはい、じゃあこのままお風呂入っちゃう?」
「……入るって言ったら何する気だお前。」
「そりゃ~……頭くらいは洗ってあげようかなーって。」
「出てけ!」
石化してたときじゃねえんだよ!
今は平常なんだから何するんでも一人で出来るわ!
「ぶ~。 兄貴ひどーい。」
「……何でこうなっちゃったかなぁ、本当に。」
「いやだから、落差。 落差考えてくれませんこと?」
「教育が悪かったんかな……どう思う?天。」
「私に聞く所なのぉ!?」
いいから出てけ、と追い払い。
簡単に汗を流すだけにして、そそくさと着替えを着込む。
背中を丸めると、今まで意識はしていなかったけれど。
引っ張られるような感覚と、じくじくとした痛みを味わえた。
この辺りに痣があるんだろうなぁ、と。
嫌な想像をしながら。
「外誰もいないよな?」
念の為に、外へ声を掛ける。
「う、うん。」
「外にいたら怒るでしょ、どうせ!」
聞こえる、扉越しのくぐもった声。
……普通ならこんな事気にしなくてもいいんだけどな。
パパっと着替えて……ドライヤーは今日はいいか。
乾燥するのに任せて、軽く髪を拭うだけに留めておいた。
がちゃり、と自身の部屋……というよりはリビングに当たるのか。
台所とそこを塞ぐ扉のノブを開けば。
テーブルに座り込み、恐らくは今日出された宿題を片付けているのが見える都。
俺のベッドに勝手に座り込み、スマホで何かを検索している天。
「悪いな、俺だけこんな感じで。 ……二人はまだか?」
「みたい。 そろそろ、見に行ったほうがいいかな?」
「もう……30分にもなるもんな。」
時計を見れば、それくらいの時間は進んでいる。
それだけ長く話す内容があったのか。
或いは、二人で何か話しているのか……と、そうだ。
「……帰り際、話したか?」
「うん。 先輩も、やっぱり記憶取り戻したって。」
「ただねー、ちょっと厄介な事になるかもしれないよ? お兄。」
「厄介?」
適当にパソコン前に座って、電源を入れる。
無音……ではないけれど、人の立てる物音だけの状況に少し戸惑いがあったから。
一人ならそうでもないけれど、吐息とか衣擦れとかな。
「アガスティアの葉のオフ会、覚えてるよね?」
「高峰が計画して……お前の時もあったそうだが、先輩の時は潜り込んだやつか?」
「それそれ。 今度の……日曜日だっけ? そこでやるみたいなの。」
「……参加者二名で?」
「あ、やっぱりそこ気になる?」
前の時はゴースト……というか与一がいて三人。
その三人でリグ・ヴェータ……だっけか、アレが結成されてた覚えがある。
インドがどーたらこーたら言ってたが、希亜のアレと似た発祥なんだろうなぁ。
「まあ、オフ会自体よりは高峰は気になるところだが。」
「ユーザーなんでしょ? あの人も。」
「隠し玉とか何とか言ってたが……一応その筈だ。」
問題は、能力がよく分かってないところなんだが。
基本的に、というより。
ほぼ常に敵に回ることが確定している、中立的な相手。
一番対処に困る。
「ならさー、やっぱり互いに顔だけは知っておいたほうがいいと思うの。」
「となると……日曜に、春風経由で行くことを連絡する感じか?」
「かなぁ。 私はそうするべきだと思う。」
まあ、土日予定が決まってなかったのは事実。
時間があるなら遊びにも行きたかったが、然程長い時間を要する訳でもないはず。
それにまあ。
土曜でもいいわけだし、ゴールデンウィークもあるし。
「……二人が戻ったら相談事項追加だなー。」
「え、何? にぃににもあるの?」
「少しな。 レナに言われて腑に落ちる部分と……嫌な気分になる部分があることだが。」
「うぇ、嫌な予感がする。」
その通りだよ。
「翔くん。」
「あ、悪い。 邪魔になったか?」
パソコンのブラウザを開いて、適当な作業用の音楽を流し始める。
何処かで聞いたような、クラシック……か? これ。
その音から少しして、都が顔を上げた。
「ううん。 一緒にやらない? と思って。」
「……ああ、やらなきゃだもんな。」
片付くのが先か。
二人が戻るのが先か。
少し、腹が減る音がした気がした。
GW何しようね……?
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お泊りとかしようぜ