9-nine- にじいろゆめいろきみのいろ。   作:氷桜

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あれが欲しい、これが欲しい。
結局待つのはいつも。


46.好み。

 

からんからんと乾いた音の中。

深い深い溜息を吐いた希亜が入ってくるのを、席で見ていた俺達四人。

 

「よう、おつかれ。」

「……本当に。」

 

目に見えるレベルで疲労しているので、メニューをそっちに回しつつ。

少し出るのは遅くなりそうだな、と思った。

 

「結城先輩、今日は遅かったですね?」

「色々と……そうね、本当に色々とあってね。」

 

もう一度溜息。

俺と天は、目を見合わせた。

少なくとも此処までになった姿は見たことがなかったから。

 

「ぁ~……聞いて大丈夫か?」

「ええ。 出来れば聞いて欲しい気分。 だって。」

 

ジトッとした目。

え、俺?

 

「貴方にも関係あるから、翔。」

「俺にぃ?」

「何やったのにぃに。 今なら減刑して極刑で許してあげるけど。」

「下がってねえし何もしてねえよ!」

 

二人っきりは別だけどな!

言わずとも分かってて言ってんだろ天。 その湿り気のある目はやめろ。

 

「ほら、昨日の夜の公園。」

「……アレがどうした?」

「なんだか、何処からかはわからないけど見られてたみたいでね。」

 

うわぁ。

 

「それに加えて、朝のもまた別の……後輩かな? が見てたみたいで。」

 

うわぁ。

 

「冗談抜きで言ってるよな?」

「こんなことで冗談言うと思う?」

「悪い。 だよなぁ……見られてたって何処で見てたんだよって話なんだが。」

「それで、お昼から帰りに掛けて色々ね。」

 

また溜息。

パフェクイーンとして一部で名声(?)を誇っていた頃とは思えない。

まあ、確かに女子校だと余計に大変だろうなぁという予想は付く。

実際、色々想造されているような花園……というような場所とは程遠いとかいうのはネットで見かけるし。

 

「え、何々。 つまりそれってそういうこと?」

「春風。 近い。 顔が近い。」

「うわぁ……先輩の目が輝いてる……。」

「あ、あはは…………いいなぁ。

「……何か言った? 都。」

 

姦しいと言うべきか。

或いは騒がしいと言ってしまうべきか。

先程まではまあ、まだ静かな部類だったと思うのだが。

急に火種が投下されたかのようにやや高い、女性の声が飛び交って。

超絶居心地が悪い……!

 

「どこでも似たようなことになってんだな……。」

「どこでも、というと?」

 

それで、ついうっかり口を漏らせば。

自分から話の主点をズラそうと、容赦なく希亜が突っ込んでくる。

そっちで引き受けててくれ。

さっきから微妙に視線を感じるんだから。

 

「ほらほら、早く吐いたほうが身の為ですぜ兄ィ~?」

「もはやお前の立ち位置が分かんねえよ。」

「え、問い詰める人!」

「大雑把過ぎないか!?」

「じゃあ何ていうのよ私知らないもーん!」

「逆ギレすんなし。」

 

まあ……ごまかしても仕方ないか。

ただ此奴が絶対笑顔になるのが見えるのが嫌だ。

 

「帰り際に先生に呼び止められたんだよ。」

「先生ってーと……沙月ちゃん?」

「そう。」

「呼ばれてたって……先生に?」

 

そう言えば詳しく言ってなかったな。

ちょっと用があった、とだけは伝えたけど。

 

「呼ばれた……って程でもなかったんだけどな~。」

「それでそれで?」

「妙な噂になってるって聞かされてグロッキーです。」

「……何を聞かされたんですか? ()()。」

「春風、人格変わってるわよ。」

 

頼んでいたコーラを一口。

ついでに希亜が頼んだパフェが届いて、それにパクついているのを横目で見つつ。

今日の夕飯此処でいいかなぁ……都が駄目っていいそうだけど……。

ちらりと横目で見たら、ムッとした顔。

駄目ですか。

 

「……なんかな、うちの学校でも噂になってるんだってよ。」

「噂? ……って、まさかとは思うけど。」

 

パフェに伸ばしていた手が一度止まり。

白い、希亜の顔が少し赤く染まった。

少しだけ違う、と訂正するのも野暮だったので。

そのまま話を進めることにする。

 

「なんか三股掛けてるとかどっかの誰かが噂してるらしくてな……。」

「……三?」

「そう、三。」

 

誰、とは明示しない。

 

「え、三って誰?」

「さあな……。」

「私以外じゃないの? にぃに。」

「知るかよ、お前と俺の関係知らない奴かもしれねーだろ。」

「もしそうなら()()()()()見られてることになるけど。」

 

そうだな。

周囲の圧が加速するから少し黙れ。

 

「翔は誰だと思うの?」

「お前その禁句を持ち出すか?」

「持ち出すわよ、そりゃ。」

「ノーコメントということにしておいてくれ。」

 

誰が選ばれなくても遺恨っつーかしこりが残るだろうし。

例え天でも。 そう、例え天でも。

 

「ふぅん……。」

「そ、それで。 希亜ちゃんはこの後は?」

 

ナイスインターセプト。

春風は……ああ、目が輝いたまま戻ってきてないのか。

 

「早めに帰って荷物整理ね。 幸いにも、日曜日くらいには片付きそうだから。」

「荷物が少ない、って意味でか?」

「そうよ。 お父さんも賛成してくれたから。」

「なら……少しは時間あるんだよな?」

「何か?」

 

そうだな、と小さく頷いて。

 

「パフェ食い終わったら、食器買いに行こうって話してたんだ。」

「ああ……家での、ね。」

「それくらいは俺が出す、行けそうか?」

「勿論。 ……少し、楽しみ。」

 

そうだな。

すましている方が普通にも思えるが。

お前は、そうやって笑っている方が柔らかくて好きだ。

そんな笑みを浮かべる、希亜を見て。

全員が、揃って笑いあった。

 

結局本編二回見返しても周囲になんにも無さそうだったので行き先を生やそう。

  • 山:温泉
  • 海:水族館とか
  • ちょっと都会:遊園地
  • その他:民宿とか
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