がさり、と食器を入れた袋の中身が揺れた。
各々が、自分の物を選び。
それを新聞紙で包んだり、或いは傷がつかないように個別に包装し。
持つ俺の、背中のリュックは今いっぱいだ。
「予想以上に種類あったな……。」
「まあ、食器も趣味が出る部分だからね~。」
思い返すは、並んでいた数と種類。
正直俺は割れにくくて丈夫なもの、みたいな基準で選ぶものだと思ってたが。
そこはまあ、各々個人の趣味が反映されていた。
特にで言えば、飲み物を飲むコップだろうか。
「にぃにってだいたい雑じゃん?」
「お前……実の兄に向かって凄い言いぐさだな。」
「いやだってさぁ、家事っていうかご飯作るのだって面倒くさくてしなくなったでしょ。」
「毎日やること考えると結構辛いんだぞ……?」
都はやや小柄な、白い陶器にワンポイントの花が描かれた物。
天なら青く染められた、色々と使えそうなやや大きめのもの。
春風と希亜はお揃いなのか、或いは似ているもので自分たちで選んだのか。
それぞれ猫の色が違う、マグカップに似た形の物。
使う場所はほぼ固定で俺の家……になるのだろうそれらは。
普段は置く場所まで管理されることになりそうで、侵食具合に少しばかり閉息する。
「慣れれば……っていうか、コツを掴めば楽……だよ?」
「九條さん……その、私にも教えて貰えませんか?」
「それ自体は全然構いませんけど……。」
手慣れた、主婦のような台詞の都。
正直この年齢のお嬢様がやることにしては少しだけズレている気がしないでもない。
そしてそれから学ぼうとしている春風。
その物事に関しては凄まじく同意する、と言いたい。
「どの程度できるんですか?」
「…………隠し味が、隠れてないくらいかな。」
「はっ……!」
いやアレはカレーに色々混ぜ込みすぎたのが理由だとは思うけど。
味見してれば防げた事態でもあるので、多分そこを抑えてくれてレシピをきちんと守れば良いタイプだとは思う。
良く創作で見る、何故か普通に作ってるのに変に吹っ飛ぶ系統の料理人ではないと信じてる。
「意外ね。」
「? 何がだ?」
「春風って……こう、一人でやれることは得意だと思ってたけど。」
「実際一人なら出来るんだとは思うけどな……。」
大元は「誰かに美味しいものを食べさせたい」という気持ちからの色々投入だから否定できるはずもなく。
多分自分が食べるだけなら、それほど間違ったものは作らないと思う。 思いたい。
「そう。」
「希亜は……?」
「私は調理実習でやったくらい。 でも、一人暮らし始めるわけだし。」
「挑戦はしてみよう……と?」
小さく首肯。
確かに、少し食べてみたい気はする。
「そうね。 この前、都の手際を見せてもらったけど……彼処まで行けるのにどれだけ必要かは考えたくないわね。」
「そりゃ例外だろ。」
「けれど、どうせだったらやれるところまでやってみたいから。」
「そりゃまあ分からんでもないが。」
完璧主義……とまでは言わないけれど。
昔からの経験上。
そういったところも、彼女の魅力のひとつなんだとは思っているが。
「一応経験上、力入れすぎると面倒になるぞ。」
「そうでしょうね。 翔見てるとそう思うわ。」
「何だとこの野郎。」
「野郎じゃないでしょう?」
くすくす笑う、冗談を言い合う。
以前では考えられないような、気安い関係で。
「ああ……もうこの辺り。」
気付けば、駅前。
俺の家までは残り五分足らずと言ったところか。
「荷物だけ置いたら今日はすぐに帰るわ。 荷物は少ないとは言っても、初めての一人暮らしだし。」
「家近いんだし、取りに帰ることも考えても良い気はするけどな。」
「余り、そうも言ってられないじゃない。」
「……まあ、な。」
もし帰った時に、母親と出会い。
そしてそれが原因で更に……となった場合。
彼女がどれだけ傷付くかは予想したくもないレベルだ。
「私も、微力ではありますがお手伝い致しますので。 ……ええと、日曜日の午後に向かわせて頂きますね。」
「分かった。 皆はどんな感じ?」
「私は日曜日……午前中はナインボールかな。」
「俺は午前中、春風の付き添い。 天はどうする?」
「そうだなぁ……結城先輩、午前中から行っても大丈夫です?」
各々が予定のすり合わせをしながらの帰宅。
特に今週末は希亜の引っ越し関連と、高峰との出会いもあるから大忙し。
そんな中で、ポツリと呟いた。
「ゴールデンウィーク、旅行でもしたいよなぁ……。」
それが、妙な波紋を呼ぶとは。
言った当人である俺も、予想してなかった。
結局本編二回見返しても周囲になんにも無さそうだったので行き先を生やそう。
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山:温泉
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海:水族館とか
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ちょっと都会:遊園地
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その他:民宿とか