9-nine- にじいろゆめいろきみのいろ。   作:氷桜

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変わらない、変われない。
想いはそう簡単に。


50.昔から。

 

ぱしゃり、という音が聞こえた気がした。

片目だけを細く開き、小さく欠伸をしながら身体を起こす。

視界に入ったのは、大方予想通りの光景。

 

「……ん。」

 

寝袋の俺に覆い被さるようにする、余(・)り(・)見(・)た(・)く(・)は(・)な(・)い(・)光(・)景(・)で(・)、(・)見(・)慣(・)れ(・)た(・)顔(・)。

家から持参してきたパジャマ姿でスマホを片手にする天の姿。

 

「……。」

 

此方が起きたことに気付いているのかいないのか。

抜き足差し足で人のベッドに戻ろうとする後ろ姿に声を投げる。

 

「オイコラ。」

「…………。」

「聞こえてないふりして逃げんのやめろな?」

「……ぅー。」

 

文句なんて本来は言いたくもない。

此処最近、寝ているはずなのに妙に神経が高ぶっている気がする。

きちんと休めていない証拠でもあるので、あまり良くはないと思ってはいるんだが。

 

「起こされたことに文句くらいは言っていいと思うんだが。」

「……でも、普段なら起きなかったはずなのに。」

「そりゃ運がなかったな、とでも言っておくか。」

 

ふぁぁ、と大きな欠伸。

暗闇の中、手を伸ばしたスマホで見た時間は夜中の二時。

確か、寝ようと思って電気を消したのが12時を少し回ったくらいだから……。

 

「ほとんど眠れてねえな……。」

「や、起こしたのは悪いと思ってるよ?」

「そこは疑わねえよ、安心しろ。」

「でもなんか、魘されてた感じはする。」

「俺がか?」

「うん。」

 

一昨日、昨日と悪夢を見てた実感はある。

ただ、今日は特に何も見なかったと思うんだが。

 

「どんな感じだった?」

「ん~……どんな、かぁ。」

「お前、態々撮るために寝るの待ってたんじゃないのか?」

「違うよ~。 なんか寝付けなくて。」

「まあ、そこまではしないよな。 お前でも。」

「一回やったことはあるけどね!」

 

ぽふん、と空気を叩くようにベッドに横になる天。

一応今日出る前にシーツだけは洗濯機叩き込んで乾燥まで回してたが。

色(・)々(・)と(・)付(・)い(・)て(・)な(・)い(・)かは心配だったからな。 匂いとか。

 

「それを堂々と言える神経は信じらんねえ。」

「あ、やっぱり?」

「分かってていったのか此奴。」

 

少しずつ、眠気も覚めては来る。

多分どっかで揺り戻しが来そうだが。

 

「いやね、さっきも言ったけどさ。 何の夢見てたの?」

「それが全く覚えてねえんだよなぁ……。」

「なのに魘されてる、ね。」

 

そこまで深刻そうにする話か?

また珍しいが、いつもマイペース気味な此奴が。

 

「いやいや、そんな俺関係ありませんー、みたいな顔してちゃ駄目でしょにぃに。」

「自分で見た夢が思い出せないくらいだぞ? 深刻そうにされるのはちょっと反応に困る。」

「あのね、魘されてたって言ってるじゃん。」

 

布団を抱えるように、見下ろすように。

丁度ベッドと寝袋の高さの差もあって、視線を逸らすことも難しく。

頬の辺りを軽く掻くことで、ごまかしながら。

 

「なら……なんだよ。」

「いや、これ私の想像なんだけどさ。」

「おう。」

「嫌(・)な(・)記(・)憶(・)も(・)全(・)部(・)引(・)っ(・)張(・)っ(・)ち(・)ゃ(・)っ(・)た(・)か(・)ら(・)、(・)ま(・)だ(・)混(・)乱(・)し(・)て(・)る(・)ん(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)の(・)?」

 

夢は記憶を整理する際に見るもの、という話。

それが事実なんだかは知らんが、まあ聞いた事自体はあるな。

正夢とかいうのも実際は過去の経験からの想像とか勘違いとか言うし。

 

「そう言われればその可能性もある。」

「うわ、なんだこいつ堂々としてる。 折角可愛い可愛い妹が心配してあげてるのにさー!」

「そっすね。」

 

いや、だから何だよ。

そんな目で見れば。

 

「だーかーらー。」

「おう。」

「こっちで一緒に寝ない?」

「お前ずっとその話に持ってこうとしてなかった?」

「何のことやらですよ。」

 

ぐっふっふ、じゃねえよ隠しきれてねえよ。

 

「え、嫌って言ったら?」

「私がそっちに潜り込む。」

「やめろよ狭い。」

「普通に返されても困るんだけど~……。」

 

まあ、その内実家から布団持ってこなきゃなぁ、とは思うが。

ただ実家に戻るつもりはない。

天が来ることを止める理由もなくなったし、別に同じ部屋でも問題はないが。

 

「前々から……というか記憶を戻してから? 思ってたんだが。」

「うん。」

「お前の最終目標が全く見えん。」

「え、目標?」

 

何言ってるの?と言われましても。

何かしら動く目標があっての行動じゃないのか? これ。

 

「目標も何もなぁ。 いや、ほら。 私受け入れられるとは思ってなかったし。」

「おう。」

「でも今は……なんか違う気もするけど、一緒にいられるわけじゃない?」

「そうだな。」

「だから、嫉妬とか全面的に押し出してるつもりだけど。」

「……要するに、今のままを維持したいってことでいいのか?」

「そうともいう。」

 

そうともじゃなくてそうとしか言ってねえんだよ。

 

「……全く。」

 

立ち上がって。

 

「あれ、どうしたの?」

「お前が言ったんだろ。 狭いからもっと奥行け。」

「え。 何。 熱でもある?」

「嫌なら良いが。」

「いや嬉しいけどさ。」

 

可愛いかどうかは横に置いといて。

妹であることは間違いないし。

同時に、なんとも言いづらい感情を抱いているのもまた事実。

それをはっきりと口に出せる日が来るのかは、分からないが。

 

「小さい頃みたいに、とはいかないけどな。」

 

ベッドに並んで、二人で眠る。

何となく、そんな気分になって。

 

「……ありがと、お兄ちゃん。」

 

何となく、いい気持ちになって。

並んだまま、小さくお休みと囁いて。

……眠気は、すぐにやってきた。

結局本編二回見返しても周囲になんにも無さそうだったので行き先を生やそう。

  • 山:温泉
  • 海:水族館とか
  • ちょっと都会:遊園地
  • その他:民宿とか
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