9-nine- にじいろゆめいろきみのいろ。   作:氷桜

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私は、貴方と共に。
決して、彼と共にではなく。


54.誰そ彼時。

 

「ああそうか、お前みたいにお高く留まってる奴は名前すら覚えてないってか。」

「いや……あの……。」

 

かちん、という言葉が聞こえてくるかのように。

静かに激高しているように見える少年。

ジーパン姿に、季節柄長袖のシャツを着た若そうな姿で。

天は、おろおろとどうしていいのか分からないでいるようだった。

当然、少年の怒りの声に周囲は近寄ろうともせずに。

関係ない、とでも言うように横目で見ながら遠巻きに見ているような状況下。

 

「チッ……良いから来いよ、話があるんだから!」

「嫌っ!」

 

無理に腕を掴もうとする彼と。

掴まれまいと身体を翻して距離を取る天。

声色は、どんどんと大きくなっていく。

 

……何をしたんだ?

訝しみながら、その声の間へと飛び込む。

 

「何が――」

「はい、一旦そこまでだ。 ……天、大丈夫か?」

「…………うん。」

 

激高の度合いが加速したのか。

無理に掴み掛かろうとする腕を何とか捉え、抑えつける。

今のうちに、と。

天を避難させようとすれば、俺の後ろで服の裾を掴むような形に。

丁度、俺を挟んで二人が対峙する状況になったわけだ。

 

「……あんたに用はねえ。 そこの子に話があるだけなんだからどっか行ってろよ、関係ねえだろ。」

「悪いが、まんま関係者でな。 ……それとも何だ? 用件すら女にしか言えねえのか?」

「関係者ァ?」

「兄だよ、此奴のな。 それで、お前は?」

 

こういう時は、普段の顔が役に立つ……んだが。

与一みたいに上手く立ち回れるわけじゃない。

どうしても、敵と味方を作ってしまうというか……人付き合いが苦手なのは、ずっと変わっていなかった。

その悪影響が今の状況。 煽るような言い方をしてしまって、少しばかり後悔した。

 

「…………。」

 

親の仇を見るような、殺意というか負の感情が綯い交ぜになった目を俺たちに向けている。

 

……実際殺されかけた以上、ある程度そういったものに嫌でも慣れてしまっていたが。

天は何方かと言えば距離を取っていた側だ。

あの、高峰にアンブロシアを撃ち込んだ時と。

最後の時を除けば。

だからこそ、怯えの表情が隠し切れずに浮かんでいて。

俺の服の裾を握る力が、更に強くなるのを感じ取った。

 

「……で?」

「……大した事じゃねえけどよ。」

 

繰り返すように言えば、しかたなく漏らすように言葉を発した。

嘲るように。

それは、俺達をか。 或いは自分をか。

何方も、が正解かもしれないが。

 

「そこの……あんたの妹が、今週呼び出されたってのは知ってるか?」

 

あれは、確か…………。

 

「放課後に……ってやつか?」

「知ってんなら話は早い。 それ絡みで色々とダメージ受けてるやつがいてな、せめて謝って欲しいだけだ。」

「……天、お前翌日に謝らなかったのか?」

「謝ったよ! ……直接は無理だったから、手紙でだけど。」

「らしいが。」

 

俺が知る限り、天がこういった事で後に残すようなことはしない。

直接謝れなかったにしても、元々手紙経由で呼ばれたとかだった筈。

だったら、此方も同じようにしても無礼とは言い切れないラインだと思う。

 

「は? 彼奴が勇気振り絞ってのを無視した上で、直接もなしにか?」

「……そりゃ違うと思うがね。」

「何がだよ!」

 

……余り言い過ぎるのも、どうかと思うが。

何というかこいつ、自分で言ってる矛盾に気付いてないのか?

 

「手紙で呼ばれたから、手紙で返す。 それでチャラだろ。」

「は!? なら無視したって部分はどうなるんだよ!?」

「いや……朝に急に呼び出し掛けといてそれは自分勝手すぎんだろ……。」

 

要するに、()()()()()()()()()()()()()()()類。

もう少し言い直すなら、正義だから何をしても良い、と思ってるタイプ。

……俺も、危うくそうなりかけたから。

偉そうなことは言えないが。

 

「せめて、謝るくらいはさせろよ!」

「お前にか? ……それとも、呼び出した当人にか?」

「五月蝿え!」

 

こうして話していると、何となく思い出してきた。

下手すると虐め一歩手前とかって話で、それ以降天から聞かなかったから。

解決したんだろう、とある程度楽観視をしていた話。

……妙な形で膨れ上がったな、と溜息を吐いた。

 

「……天。」

「うん。」

「走れるか。」

「……頑張る。」

 

相手をするだけ――――とまでは言わないが。

恐らく、今こうして話していても何も進まないし妙に怒り狂うだけ。

まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()に。

 

そこに、引っ掛かりを感じ。

けれど、今は急ぐことではないと思考の隅に片付けて。

 

「とっとと! 謝れば! 良いんだよ!!!」

 

相手の少年が、周囲の物に当たり始めた時に。

 

「行くぞ!」

「う、うん!」

 

その腕を掴み、駆け出した。

進むのは、結局俺の家。

用事を済ませることも出来ず。

唯絡まれて。

物事を先延ばしにしながら。

 

けれど、最近の明らかな異常の理由の一つに見当がつきそうになっていた。

イーリスの、街の人々を暴走させたあの現象。

そして、その魔女と唯一眷属化を行った張本人。

 

――――まさか、お前なのか? 与一。

 

どうやってか。

何故か。

そんな事には、意識が向かわずに。

ただ、走りながら。

妹の天(だいじなおんなのこ)を護ろうと、それだけに意識が向いていた。




少しずつ話を加速させたい(願望

結局本編二回見返しても周囲になんにも無さそうだったので行き先を生やそう。

  • 山:温泉
  • 海:水族館とか
  • ちょっと都会:遊園地
  • その他:民宿とか
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