9-nine- にじいろゆめいろきみのいろ。   作:氷桜

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隣りにいるからこそ隠したいこと。
遠くにいるからこそ公に出来ること。


55.心層。

 

家に辿り着き。

普段と違い、ペースを守らないような無理な走り方で限度一杯まで走ったからか。

或いは、天を引っ張るために無理をしたからなのか。

咳き込むような荒い息を何度も繰り返す羽目になった。

 

「ぜぇ……ぜぇ……。」

「も……無理ぃ……。」

 

そして、それは天も同じ。

途中でなんとか振り切れたようで、後を追ってくることはなかったが。

その分、学校なんかが少し不安といえば不安だが。

今日のような現場で相手するよりは遥かにマシだろうと思う。

天の知り合いというか、友人というか。

そういった人間が極少数でもいるなら、だが。

 

「……無理なダッシュは、流石に、な……。」

「私運動部じゃないし……。」

「運動得意なやつとか俺らの周り誰だよ……。」

「……ごめん、浮かばない。」

 

性別差の一点だけで俺がまだマシって状態だぞ。

普通の男子高校生くらいには動ける自信はあるが、それ以上は無い。

何か格闘技でも学んでたんだったら別だが。 高峰みたいに。

 

「まあ、夜まで少し休んでようぜ……。」

「うん、そうする……。」

 

少しずつ息は整ってくるが。

肉体面への負荷と、精神的な負荷はまた別物。

特に天の方は人見知りな部分もある。

一方的な物言いに、表面上は怯えてるだけだったが。

内心どれくらい酷いことになってるかは予想もできん。

普段よりも、意識をそちらに向けた。

 

「しかしなんだかなぁ。」

「何が?」

「正義に酔いしれてんだかなんだかは分からんけど。」

 

反応を見つつ。

 

「あんな町中で叫ぶことか?」

 

一番気になってることを聞く。

俺より気が回る……というより、周囲の顔色を見て、判断する能力は上。

物事を隠し通せるって意味合いでの胆力も上。

だから、俺がフォローできるところをそうしてやればいい。

 

「あ~……うん、私も上手く動ければよかったんだけどさぁ。」

「お前に出来るとは思えんのだが。」

「ちょっとー、バカにしてる?」

「今までの経験からだっつーの。」

 

そんな軽口の後、唇に指を当てながらなんか考え始める。

誰の真似だ、見たこと無いスタイルだが。

 

「いや、割と本気であの……彼? の顔見たことなかったんだよね。」

「まあ、同学年ってだけだとな~。」

「お兄の気が抜けてるんだかよくわかんないスタイルとは違いますぅー。」

「そんで?」

「うわ乗ってくれないつまんない。 ……あ~、だからね? ()()()()()()()()()()()()()()って話。」

 

それはまあ、想定通り。

だがどういう考えからそう思ったのかも聞いてみる。

 

「何も言わないで頷くだけとかやめてよ反応に困るし。」

「お前が役に立つならなんかお前の好きなことをしてやろう。」

「うわめっちゃやる気出た。」

「現金っすね。 ナインボールの飯代出す感じでいいか?」

「ちょっと悩むけどまた別で宜しく。」

 

やる気を出させるための釣る台詞に乗ってくるのは見てて小気味いいけども。

まあ何をしてくるのかは若干怖い。

 

「私もそういう……陽キャ?じゃないから詳しくは分かんないけどさ~。」

「そうだな。」

「そこで頷かれるのちょっと悲しくなるからやめい。 でね。」

 

ちょくちょく入るコントじみた会話にもまあ慣れたもので。

 

「私の考える範囲だけど、ああいうのってなんていうか~……部長とか、皆のリーダーとか、そういう子がやることだと思うわけっすよ。」

「まあ同意する。 誰かを庇ったりするならまだ分かるけどなぁ。」

「自分の考えだけで突っ走ってくる、知らない子……ってちょっとやばいと思うんですが。」

「そうだな。 結構を通り越してかなりヤバいと思うぞ俺は。」

「他人事!?」

「んなわけあるか。」

 

まあ、何かあったら嫌だから先生には話通しておこう。

……うわ、頭の中ですげー嫌な顔したぞあの人。

まず反応が間違ってない自信があるから嫌だ。

 

「一応、俺の考え……と言っても何の理由もない思い付きも言っておく。」

「え、兄貴の思い付き? 勘ってこと?」

「そうだな、多分勘が一番近い。」

「結構な確率で当たりそうで嫌です。」

「正直者だからって許されると思ったら大間違いだからな?」

 

ちょっとイラッとしたので天の頬を両手で横に引っ張る。

意外とモチモチしてて良い肌感覚。

 

「いひゃいいひゃい!」

「で、話の続きだが……。」

「その前に離してよ!」

 

そして両手で剥がされて。

目の前で睨まれても小動物レベルだぞ。

 

「多分、()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

「へ?」

「……経験してるのは希亜と俺か。 少しだけ春風も関わってるはずだが。」

 

簡単に話す。

イーリスによる暴走の誘発、それに付随する大事件。

事件、と一言で言うのも出来れば言いたくもない。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()で。

それがなければ――――多分、俺は終わっていただろうから。

 

「……え、それって。」

「顔だけは見てるよな。 あの時の敵……与一。」

「どうやって?」

「それが分かれば困らねえって。 ……ただ。」

「?」

「もしそうなら…………流石に、きっつい。」

 

どの枝でも、彼奴とは敵対して。

幾つかの枝では、殺し殺された。

そんな言葉を漏らす俺の顔は多分。

沈んでいたようにも、思う。

 

「……お兄ちゃん。」

「悪い、お前の事考える時にな。」

「大丈夫。 ……辛いなら、頼ってね?」

 

ああ、と言えたのかは分からなかった。

もし、そうだったら。

俺は、どうする気なのかが。

自分で自分が分からなかったから。

結局本編二回見返しても周囲になんにも無さそうだったので行き先を生やそう。

  • 山:温泉
  • 海:水族館とか
  • ちょっと都会:遊園地
  • その他:民宿とか
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