9-nine- にじいろゆめいろきみのいろ。   作:氷桜

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春風の残る中、天の下。
嘗ての都で、君を希む。


56.夜天。

 

その後、時間を無駄に使ってしまったような感じはあった。

五分、十分。

少しずつ進んでいく時計の針をちらりと眺めては、言語にならない言葉を漏らす。

それを天が睨んでは、同じように返し。

そしてそれをまた繰り返す。

 

そんな事を三十分も過ごした後。

 

「あ゛ー! に゛ゃー!」

 

弄っていたスマホをベッドに投げ付けて、急に猫のように叫び始めた。

 

「うるせーよ!」

「考えすぎるのにいやんらしくないって!」

 

叫び返せば叫び返してくる。

そして、それを言われると何とも言えない表情になってしまう。

 

「ぁ~、だからその顔だよ、その顔!」

「いや、結構ダメージ受けてるんだが?」

「それは分かるけど、考えすぎるのはお兄らしくないって話!」

「そりゃまた一方的な物言い……って、お前には言えねえな。」

「分かるなら宜しい、って言ってあげましょう!」

 

ドヤ顔すんな。

ただ、今のほんの少しの会話で気持ちが上向きになったのも間違いない。

感謝してやろう。 で、今のうちに聞いておくことにする。

 

「で、天。」

「なぁに?」

「さっき言ってた事だが何か候補はあるか、全力で聞き流してやるが。」

「やめてよ上がったモチベーションが落ちるじゃん!」

 

物事によっては俺のモチベーションが死ぬんだが。

まあ口に出してしまった以上はあまりに変なことじゃなきゃ受け入れる所存だが。

 

「え~どうしよっかにゃ~。」

「後五秒で言わなきゃ無かったことにする。」

「横暴! 横暴過ぎるよ!」

「ごー、よーん……。」

 

まあ、然程ふざけたこと言うとは――――。

 

「え、じゃあ。 今日も、一緒に寝ていい?」

 

極めて普通の顔で呟いたというか、問い掛けてきた。

……まあ、まだ普通か。

高校生同士がすることかどうかって言われたら激しく首を横に振るが。

 

「……まあいいが。」

「よっしゃ。」

「いや今の一言で背筋ゾワッとしたんだが!?」

 

何だその仕込みが成功したみたいなボソッと呟いた台詞は。

致命的な物事を踏んでしまったような。

或いはそれを踏み台にして何かを仕込んでくる時みたいな巧妙な言葉。

 

「え~?」

「……怒らないから言ってみ?」

「言わなかったら?」

「無視して寝袋で寝る。」

「私の特典何処いったの!?」

「宇宙の彼方にでも飛んでいったんじゃないか?」

 

こういう会話一つ一つが、何となく感じる此奴の気遣いなんだろう。

少なくとも落ち込むことだけは無くなるから……口には出さないが、感謝はしてる。

 

「……引かない?」

「内容次第ではめっちゃドン引く。」

「え、それで言わせるお兄どんだけ外道って話になるけど……。」

「ほれ良いから言ってみろ。」

 

時計を見て、神社までの時間を考える。

……七時過ぎたくらいで出ればいいか。

そう考えれば、途中で夕飯食っていく事を考えると時間は微妙にある。

用事が済ませられなかったのは痛手だが……ひょっとすれば、明日の高峰との会話で何かが掴めるかもしれん。

そんな、予感もある中で。

 

「……絶対他の人には言わない?」

「言わない……と言っても他の三人にはバレバレじゃないのか? その前置きだと。」

 

妙な前置きに、嫌な予感が加速。

 

「お兄ちゃんから言ってほしくないの!」

「何だその拘り……。」

 

正直に言おう。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

と言っても、そう思ってしまったのは、多分。

此奴と結ばれた枝の記憶が残っているから。

多分、一度でも再び結ばれれば――――。

そんな予感があるから、俺は距離を取ろうと思っていた。

その、筈だった。

 

「ん~……。 やっぱり今は言わない。 神社行くんでしょ?」

「まあ、そのつもりだが。」

「帰ってきたら、言うから。」

 

上目遣いの。

()()()見たような。

過去の記憶と今の姿がブレて、重なって見える。

 

「覚悟はしてなさいよ~?」

「うわマジでこええ……。」

「それとね、兄貴。」

「ん?」

 

一瞬視界から消えたと思ったら、頬になんだか温かい感触。

……いや、お前、この感覚。

 

「私、負けないからね?」

「いや、お前……。」

「想ってた年数じゃ、誰にも負けないんだから。」

 

いや、そういう問題でもなくてだな。

色んな思考が頭の中を駆け巡る。

何を言っても、何かが違うような不都合というか。

或いは……そうだ、()()()に近いような。

 

「だって。」

 

近くに、それこそ触れ合うくらいに近くにいた天が呟いた言葉は。

いい加減に、俺に覚悟を決めさせる言葉に違いなかった。

 

「一人でいたら、多分…………自分を責めて、いなくなっちゃうもん。」

「誰が?」

「お兄ちゃん。」

「俺が?」

「自分で気付いてないのが一番駄目だと思うんだよなぁ、妹としては。」

 

友人とずっと敵対し続けてきたからか?

アーティファクト騒動が終わって目的が無くなるからか?

理由は、自分で突き詰めても分からずに。

 

「え、理由分かんない?」

「おう、分からん。」

「いや其処で自信満々にされても……仕方ない、自称兄貴マニアの天ちゃんが教えてあげましょう!」

「別にどっちでもいいぞマニア。」

 

スルーして、天が言った言葉が最後になって。

俺達は、気付いたら大分暗くなり始めていた外へと飛び出すことにした。

 

「誰かと一緒にいるのが、当たり前になってるんだよ。 お兄ちゃんは。」

 

そんな、言葉を胸に抱きながら。

夜天の下へ。




ふっきれ天&ふっきれフラグ乱立翔。
全ヒロインとちゃんと関わってから覚醒予定。

結局本編二回見返しても周囲になんにも無さそうだったので行き先を生やそう。

  • 山:温泉
  • 海:水族館とか
  • ちょっと都会:遊園地
  • その他:民宿とか
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