少なくとも肉体的には色々と頑張ってはいるようで。
60.休暇。
4月24日。
メビウスフェスから丁度一週間が過ぎた日曜日。
俺達の変動から変わった、そんな節目の日。
「いい加減起きろ!」
「むー……後五分……。」
「普通逆じゃねえかこの立場!?」
「え~……男女差別~。」
朝、俺の部屋で繰り広げられていたのは超絶グダグダした感じの時間だった。
ベッドから起きようとしない愚妹。
というか俺のほうが先に起きるって相当なんだが、と思わなくもないが。
「そろそろ起きねーと飯抜きで肉体労働だぞ!?」
「私はね、疲れてるんですよぉ……?」
「それは俺も同じだわこのアホ!」
「チッ。」
つーかこいつ、絶対どっかで起きてただろ。
寝たいとかそういうんじゃなく、単純にこういう話をしてたいだけとか。
いやいやまさか。
「まさかだよな?」
「私に分かるように言ってくれますぅ?」
「お前、俺で遊ぶためにこうしてたりしねーだろうな?」
おい無言で首を壁側に向けるな。
こっちを向け。
「あだだだだだだ!? 首、首に負担が!?」
「質問に答えろ、な?」
「暴力反対!」
「お前普段おかんからどうやって起こされてるんだよ……。」
いい加減マジで叩き起こそうかと思ったら、漸くもそもそと動き出す。
「にぃにが優しくない……。」
「お前俺がお前をダダ甘やかしてるだけの姿を想像してみ?」
「あ、はい。 吐きそう。」
「本人を前にしていい度胸だなお前。」
対応するのもいい加減疲れてきた。
一人分を用意するのも二人分をするのもほぼ一緒。
久々に台所にでも立つかと思ってみればこれだからな……。
「で、そんな起こそうとした理由なんかあるの? 結城先輩の手伝い以外でなんかあるんでしょどーせ。」
「そういうところだけ妙に勘が鋭いのは血は争えない、っていうんかね。」
「まぁまぁ。 それで~?」
「久々に飯でも作ろうと思ったんだ。 結局お前が起きないからギリギリになりそうだが。」
「え、兄やんの手料理!?」
何だその急なテンションの上がり方。
いや実家だと料理なんかしねえから珍しいのは確かだが。
「だったら早く言ってくれればいいのに!」
「つまり狸寝入りを認めるってことだな?」
「そうとは言ってないよ? ……あ~、でも。」
「何だよ。」
「台所一緒に並んでみたかったなーって。」
……いや、急にしおらしくされても困る。
「え、どういう顔すればいいんだこれ。」
「少しは喜んでよ!」
「都とは経験あるしなぁ。」
「みゃーこ先輩でも今名前出さないでー!」
ぎゃいぎゃいと、騒ぎつつ。
若干焦げた目玉焼きと少し分量が足りない米を胃に納め。
「さて、っと。」
玄関口で、外に出る服装を整えて二人で並ぶ。
とは言っても、着ていく服装がそうあるわけでもないし。
いつもの格好の俺に、いつもの格好……着てきた服のままの天。
「忘れ物は?」
「多分大丈夫。」
「ホントかよ。」
「少しは信用してほしいな~とか思ったりして。」
「だったらそれに値するような振る舞いしてほしいがね。」
ほれ、と手を差し伸べて。
ん、とそれに捕まって立ち上がり。
「んじゃ、後でまたLINGにメールするわ。」
「分かった、今日中に何とか結城先輩の家探索しつくしておく!」
「迷惑かけんなって言ったよな!?」
そんな言葉を最後にして。
少しだけ目的地が違う俺達は、マンション前で別れ。
目的地――――と言うよりは。
合流予定地点である、駅前まで少し足早に移動する。
(まだ予定まで時間はあるが……。)
こういう時、絶対に春風は早く来てる。
賭けてもいい。
もう一人……女王の人格の時なら多分そんなことはないだろうが。
普段のままの、あの残念系オタク先輩だったら早く来てる。
もうすぐ、待ち合わせの駅から出たところだが……。
「……やっぱりもういる。」
そんな言葉がうっかり口から漏れた。
少し不安そうにしつつ、日陰になるような場所でスマホを見ながら待っている。
普段の格好、見慣れた服装とは少し違い。
白を基調とした……フリル、というんだったか。
そんな感じの薄着に、肩に何かを掛けた服装。
何方かと言えば都が着ている方が自然な、お嬢様然とした衣装。
少し気後れしつつも。
「悪い、待たせたか?」
「……いえいえ、此方が早く着きすぎただけですので。
……何でこっちの先輩になってるんだ?
「あの。 来る途中で何か有りました?」
「何か、というほど特段な事は。 精々ナンパされたくらいでしょうか。」
「ああ……それでテンパったんですね……。」
「私も、もう少し断る努力は積むべきなのでしょうけどね。」
「俺もそう思います。」
何だこの会話。
二重人格者を相手に平然と喋ってる感じ。
「そ、そそそそそそんな無茶な!?」
「いやいや、春風一回断ってるだろうが。」
「あの時は色々と決意もあったんです……!」
「そっすか。」
「突き放すのやめて下さい……!」
いかんいかん、まだ漫才してる気分が抜けない。
ここからは――――これから会う相手は、下手をすれば与一よりも危険な相手。
一見すればそうでもないのが怖いところなんだが。
「と、巫山戯るのは此処までにして。」
「私は巫山戯てませんけども?」
「行くか、春風。」
「……はい。 お供致します。」
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九條 都
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新海 天
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香坂 春風
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