9-nine- にじいろゆめいろきみのいろ。   作:氷桜

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消そうと思って消せれば。
培ってきた、絆も消える。
そうすれば、残るのは。


68.精神外傷。

 

一度家に戻り、口を濯ぎ。

その後レナに半分支えられるようにして駅へ向かう。

肉体的なダメージなら、まだ良かった。

精神的なダメージは……こう言っては何だけれど。

引(・)き(・)継(・)い(・)で(・)い(・)な(・)い(・)部(・)分(・)が(・)、(・)弱(・)み(・)に(・)な(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)気(・)が(・)し(・)た(・)。

 

幸福な記憶が多ければ多いだけ。

あの時の記憶を思い返す度に、過激なほどに反動が返ってくる。

……当人たちの誰かしらが、いるなら少しはマシなのだろうけれど。

 

「……ったく。 忘れそうになるが大将も学生だもんな。」

「其処を忘れられても困るんだが……。」

「今までの経験を考え直してみろっつーの。」

 

そんな事を言われても俺が困る。

妙に濃縮された4月から5月をあちこちで行ってきて。

その経験の全(・)て(・)を引き継いだのが、初めてのこの枝というだけなのだが。

 

「お。 お姫様のお出迎えだぞ?」

「は?」

 

そのまま駅まで歩いて十数分。

通学には利用しない以上、余り使った記憶のない地元の駅の構内。

若干息を切らした、先程救援を頼み込んだ。

都の姿が其処には見えた。

 

「……ああ、確かにお姫様かもな。」

「そうなりゃ他の奴等はなんだよ、大将?」

 

言われて少し考える。

春風は……まあ、当人の印象も有るし女王辺りか?

希亜は姫とか言うよりも女騎士とかそっち寄り。

天…………彼奴は、なんだ? 妹印象と、メイドとかそっち系統?

各人それぞれ印象は違えど。

舞台が違えば立場も大きく違うだろうな、とは思うが。

ソフィの世界だったらどうなってたんだろうな、本当に。

まあ、とにかく。

 

「それ全員の前で言うなよ?」

「言うわけねーだろ。 ほら、とっとと行ってやれよ。」

 

押し出されるようにして、少し小走りで都の元へ。

電車から降りてから急ぎ足になったのか、少しだけ暖かくなってきた今日にしては珍しく。

汗が額で輝いて見えているような状況だった。

 

「大丈夫、だった?」

「あ~……一応、な。」

「一応なの?」

「詳細は座って話そう。 態々悪い。」

 

顔色の悪さを咎めたのか。

それとも、緊急の連絡に心配したのか。

何方もだろうな、とは思いつつ。

何もなしで話すような気分にもなれずに、自動販売機で飲み物を二本購入する。

その買い物に余りいい顔をしない都だが、今は特殊な事態だと分かっているのか。

何かを言うようなこともなく、渡した飲み物を受け取る。

次の電車が来るまで、十分程の空き時間。

午後の半ば、という中途半端な時間帯というのもあって。

休日にしては少ない人の中、電車を待つ席に二人で並んで座った。

レナは……結局座らずに、席の後ろに立って周囲を見ていた。

 

「それで、連絡を送った経緯なんだが。」

「……うん。」

 

何方も飲み物に手を付けず。

冷えた飲み物を両手で抱えながらの話し方。

もし、現状に耳を傾ける人がいるのなら。

レナが気付くし、内容の異常さに作り話だと思うことだろう。

それくらいに、あの短時間で起こったことは異常さが際立っていた。

 

「……と、まあ。 そんな感じなわけだが。」

「刃物……って。」

「嘘でもなければ冗談でもないからな。」

「そんな嘘つくような人じゃないのは、私がよく知ってるから。 でも……。」

 

今までの争いで、武器を振り回してきた相手は恐らくほぼいない。

高峰は格闘技を学んでいた、という前提があっただけで。

レナも、ゴーストも。 肉体を活かすという意味での格闘技での争い。

それらは純粋に「用意する必要がない」という状況と。

「誰かに疑われても存在しない」「そもそも用意する必要がない」と、そんな幾つもの理由があった。

 

基本的に、ユーザー同士の争いは精神を折る戦い。

肉体に危害を直接与えられるアーティファクトの存在は、俺は闇鴉しか知らない。

それ以外であれば、イーリスが使った何(・)か(・)。

つまり、元々学生であった俺達はそういうものだと思い行動していた部分がある。

そんな中で現れた選択肢。

無意識に選択肢から外していた、武器とアーティファクトを併用する争い。

……文字通り、ゲームや漫画である異能力者系統の世界に踏み込んでしまったと言っていい。

 

「……どうするの?」

「今から何か動く手段身に付けても付け焼き刃だからなぁ……。」

「でも、私達の目的は……。」

 

結局其処に話は戻る。

現状の状況にまで持ち込まれた以上。

対策手段を受け手だけでなく、実行犯達……つまりはあの二人にも考えてもらう必要性が有る。

それも、出来る限り早急に。

 

「目的は――――多分そのままでいいと思う。」

「目的……って、言うと。」

「イーリスの有無。 もしいないなら……与一と高峰の確保。」

 

つまりは、やるべきことは変わらない。

ソフィにも全力で動いてもらう必要性があるし、俺達も相応に動く危険性は有るが。

あちこちに現れた、アーティファクトの反応を一つずつ潰していけば。

或いは、その途中で手掛かりを見つけられれば。

この状況を引っ繰り返す鍵になるかもしれないから。

そんな意味では……希亜が近くに引っ越せるのはラッキーだったのかもしれない。

都の家は近いし、送り迎えも出来る。

天は最悪俺の家でもいいし、春風と共に行動でも何とかなる。

出来れば都か、希亜と行動して欲しいところでは有るが。

周囲に手を出さない、けれど被害は出る。

そんな矛盾した状態を堪えるには。

 

「……手を貸してくれるか?」

「勿論。」

 

そんな、妄想めいた話の中に。

当然だ、という後ろの幻体も。

同じように、声を上げた。

4/25のヒロイン誰が良いよ? 一位が25,二位が26です

  • 九條 都
  • 新海 天
  • 香坂 春風
  • 結城 希亜
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