9-nine- にじいろゆめいろきみのいろ。   作:氷桜

9 / 114
手を取るルート。


天BADENDアフター(下)『伊邪那岐命、伊邪那美命』

 

結局、俺はその手を取った。

他に頼れるものも見えず。

方向を指し示していたソフィもまた姿を消し。

そんな中で、残ったモノが。

唯一の指針だったからだ。

 

例え、それが悪魔との契約だったとしても。

 

 

『彼女』(と、そう呼んだ。 声色からして女性っぽかったし、判断基準がそれしか無かったから)が示したのは。

一つの特殊な儀式のような、既に天と交わした行為によって得た。

俺自身が気付いていない、契約効果そのものだった。

 

何故、それを教えるのか。

気紛れ、と彼女は()()()()に呟いた。

 

それを教えればどうなるのか。

その先にどんな末路が待っているのか。

それが知りたい、見たいだけなのだから、と。

 

その笑い声は何処か冷たさを感じていたけれど。

俺は、漸く得た手掛かりにだけ気を取られていて。

それより先のことを、考えなかった。

他の、大事な人たちのことを考えなかった。

 

「実験」したのは、自分の部屋で。

存在感の減少。

暴走させたことで、天は自分の存在が薄れ続けていて。

俺毎消えることを望まず、たった一人で消えていった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

だから、俺は。

脳裏に浮かんだ、幾人かの少女や。

親や、先生や。 大事な友人達を脳裏に描いて。

ごめんな、と。

悪い、許して欲しいなんて言える訳もないけれど。

そう、呟いて。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

存在が消え、世界から否定されて。

同じ所まで落ちれば、或いは。

同一のアーティファクトから齎される結果は、同じなのだから、と。

他の全てを捨てる覚悟はあるの?と。

その嘲い声(わらいごえ)は、問い掛けていたけれど。

 

そんなものに突き動かされなかったとしても。

或いは、いつかは。

こうしていたようにも思える。

 

俺の部屋の、ベッドの上。

少しずつ、見覚えのある姿が見えてきた。

体育座りで、何処か虚ろな目を浮かべた。

何処かに動けばいいのに。

それすらもせずに、嘗ての思い出に浸ったまま動かない少女の姿。

微かに聞こえる吐息も。

手入れすることを忘れてしまったのだろう、ボサボサになった髪も。

そのどれもが、懐かしくて。

そのどれもが、愛おしくて。

 

彼女に、なんて言葉を掛けたのだろうか。

そんな言葉も。

帰ってきた、返答も。

()()()()()()()()()()()

 

 

 

とあるマンションには、都市伝説があるという。

誰も認識できない部屋の中に、男女の霊がいるという。

妙に広いマンションの廊下は、生きたまま塗り込められたからだとか。

誰かが消えてしまった二人を探しているだとか。

学生ならではの噂が、未だに続く世界の狭間。

 

ぱたり、と。

本を閉じるように。

一つの枝が、閉ざされた。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。