誰の為か。
「……意識して、瞼を開こう。」
「そう……だ、ね。」
腕――――というよりは手の甲を抑える都。
其処に付いていたのは肌に目立つ、赤い痕。
俺自身が刻みつけた、現状に対する咄嗟の応急処置で傷そのもの。
俺は左手、都は右手。
互いに、同じように付いたそれが命綱だと
周囲は死んだように沈み込み。
互いを見つめながら、授業という前提を放棄して教室の外へと扉を開けた。
普段ならばどこからか聞こえてくる雑音すらも、今は無く。
――――けれど。
…………ぺたり。
…………だぁん。
誰かの歩く音と。
何かがぶつかる音が、遠く聞こえる。
「……聞こえた、か?」
「う、ん……。」
そんな信じ込みが効いたのか、或いは別の要因か。
妙な、明らかに異常な眠気は少しずつ遠ざかっていくように感じた。
だが、隣の都は未だにどこかとろんとした寝ぼけ眼で。
……この差は、何だ?
「……ソフィ、いるか?」
少し待ったが、無反応。
ということは現状を俯瞰しているわけではない、ということになる。
確認する手立てが一つなくなったことに心のなかで舌打ちを重ねる。
そうこうしている間にも、動きは変わる。
足音の方に行くべきか、それとも物音の方に――――。
そんなことを考えていた時だった。
かつん、という足音が階段を降りる音へ変わったのは。
咄嗟に警戒をするが、やはり自覚できる程度には動きが鈍い。
だからこそ、自分が階段側に。
都を自分の背で庇うように位置を変えた時に。
「……
聞き慣れた、けれどそんな呼び方をするのは
当然のように、何の影響も受けないように。
かつんかつんと歩みを進めてきたのは。
「春風……いや、女王、か?」
「……ええ。 お久しぶり、と言って良いのか迷いますわね。」
アーティファクトの能力で生み出された、もう一人の春風。
つまり、当人が寝ていようと動くことが出来る。
そんな存在が、彼女自身の身体に何かを纏うようにして立っていた。
「……ああ、少々お待ち下さいましね。」
彼女の、身体に纏うもの……恐らくはアーティファクトが一度強く光る。
気付けば、俺達の身体を同じものが包んでいた。
同時に、先程まで感じていた眠気が完全にどこかに消える。
手の痛みが残ってしまっているが、これくらいなら耐えられる……というか不本意ながら慣れた。
「一応確認させてくれ。 何をした?」
「周囲に、無差別に撒かれている悪影響を避けるようにしただけですわ。」
「あ……本当だ、眠気が消えた。」
そんな対話を重ねていれば、当然隣りにいる都も影響を理解して普通に戻る。
「大丈夫か? 悪い、肌に傷をつけることになって。」
「ううん、これくらいなら残らないだろうし……それに残っても、ね。」
気にしないで、と呟くからこそ余計に気になるんだが……今は、それどころではなく。
「これ、やっぱりユーザーの仕業か?」
「でしょうね。
「春風が眠った、ってのは怖いな……。 ソフィも応じてくれなかったしな。」
抵抗力だけなら俺の知る限りで最上位の春風が眠らされた、というのは驚きを通り越して冷や汗が出てくる。
恐らくは”対象を絞らない”からこそ無差別に、全てに強い力を発揮してると思うんだが……。
「ええと、それで。 ……これからどうするの?」
「決まってる。 ユーザーを止めないとどうしようもないだろ……いや、止めてももうどうしようもないかもしれないが。」
学校中が全員謎の理由で意識を失った。
それだけで大惨事という言葉を通り越して、影響を考えるだけで震えが出てくる。
……休み潰れたりしねーと良いんだが。
「なら……下?」
未だに、何かにぶつかる音が響く。
上から降りてきた春風がいる以上、そいつは下なんだろうけど。
「……一応、警戒しておいてくれ。」
当たり前の言葉を出すのが、精一杯だった。
影響が強すぎる相手、見知らぬユーザー。
……何が起こるかも、分からないのだから。
サトウ……ドコ…………?
4/25のヒロイン誰が良いよ? 一位が25,二位が26です
-
九條 都
-
新海 天
-
香坂 春風
-
結城 希亜