我が名はスタースクリーム   作:雑草弁士

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注)今回は、前回と同じくちょっとだけユルい話になります。まあ大事な分岐点でもあるのですが。


第10話:NAIL旗揚げ……あれ?

 俺とスカイファイアー、サンダークラッカーの3人は、トロヤ点L4ポイントのブラックホール炉研究所から大量のエネルゴンキューブを抱えて、俺の超空間ゲートを使ってセイバートロン星の俺たちの本部研究所へと戻って来た。本当ならば、ブラックホール炉衛星をセイバートロン星を周回する衛星軌道に乗せて、そこから地上へビーム送電するつもりだったんだが……。

 

「それやったら、デストロン連中にブラックホール炉衛星を奪われかねないからなあ。」

「まあ、本格的に我々の準備が整うまでの辛抱だよ。」

「大昔の、ロボット工場……か。」

 

 サンダークラッカーが、しみじみと言う。そう、俺はアルファートリンからデストロンの支配領域下では無い場所にある、昔のロボット工場の位置を教えてもらっていたのだ。そこにはベクターシグマの末端の端末機があり、そこで造られたロボットに命を吹き込むことも可能だ。ただしベクターシグマが稼働状態である必要があるが。

 だからこそ、この計画にはアルファートリンの協力が必要だった。ベクターシグマの(サーキットキー)は今現在3つその存在が確認されている。1つはメガトロンに奪われた、複製鍵(コピー・キー)。これはエアーボットのシルバーボルトが、必死の追撃の末に破壊したそうだ。

 もう1つはベクターシグマによって創られた1stロットのロボットである、アルファートリンそのもの。ただしあいつ自身の回路を(サーキットキー)代わりに使えば、奴は命を失う。これは絶対に使わせるわけにはいかんな。

 そして最後の1つ。これもアルファートリンが管理している、本物(オリジナル)のベクターシグマの(サーキットキー)だ。これはこれでヤバい代物なんだよな。これに秘められている能力(シークレットパワー)は、あらゆる物質を金属化してしまうと言う物だ。あぶなくて、持ち出せたもんじゃねえ。

 そう言うわけで、今アルファートリンのジジイはもう1個、ベクターシグマの複製鍵(コピー・キー)を作ってる最中だ。本物(オリジナル)は厳重に、自分(アルファートリン)しか知らない場所に厳重に隠しているとの事。

 

「そこのロボット工場で、たくさんの市民を製造すんだよな。」

「ああ。エネルギーだけあったって、セイバートロン星の復興にはならねえ。ジジイ(アルファートリン)と話し合って、色々シミュレーションした。」

 

 某都市計画シミュレーションゲームでもやってる気になったよ、まったく。シミュレーションには、メガトロンやレーザーウェーブの襲撃も勿論イベント的に盛り込んだ。それによる損害なども計算に入れた上で、俺たちの反物質炉やブラックホール炉からのエネルギー供給があれば、エネルギーが不足気味のデストロン軍団を抑え込んで復興できる。

 問題は、デストロン軍団が反物質炉やブラックホール炉を狙ってきた場合だ。決戦戦力である俺たちやコンバッティコンが安心して反物質炉やブラックホール炉の護りに就くために、通常兵力の軍人たちも生み出さないとな。

 でも軍人だけじゃ社会は不健全になる。俺はデストロン軍団を再生産するつもりは無いしな。だからと言って、サイバトロン軍団を見習うつもりも無い。あっちはあっちで、組織としてかなり(いびつ)だ。難しいもんだよ、まったく。

 

「それと、ブラックホール炉に使う小規模ブラックホールだがね、スタースクリーム。」

「近場で良い物が見つかったとか言ってたな?可能なら複数欲しいんだ、ブラックホール炉は。」

「ユニクロンに備えるんだったか?」

「おう。」

 

 そう、この世界ではあの怪物が存在して、なおかつ活動してやがる。惑星サイズの超巨大トランスフォーマーで、星を喰らって活動する化け物が。俺たちは着陸して、エネルゴンキューブを降ろしながら話を続けた。

 

「いざとなれば、ユニクロンのどてっぱらに1個ブラックホール炉をぶつける。最悪の場合だがな。」

「良さそうな規模の天然ものブラックホールは見つけたんだけどね。数が必要とあれば、人工ブラックホールを造る事も考えてはどうかな。メガトロンが製造された時のデータを見つける事ができれば……。」

「メガトロンさ、いやメガトロンのか!?いけねえな、ついつい『様』をつけちまう。」

「サンダークラッカー……。」

「いや、大丈夫だ。もう吹っ切れてるからよ。」

 

 まあ、サンダークラッカーの気持ちもわかる。数百万年にわたり、主として敬って来たんだ。しかしメガトロンの製造データ、か。

 

「ブラックホール融合カノン砲、か。生成したマイクロブラックホールから反物質を引き出してそれから得られるエネルギーで攻撃する。無茶な武器だよな。」

「たぶんセイバートロン星最盛期の、当時最新の技術だとは思うんだ。しかも極秘の機密兵器じゃないかね。デストロン軍団の。」

「そんなもん、見つかるかねえ。」

「やあ、ボスたちお帰り。」

 

 スィンドルが出迎えてくれる。他にもブロウルやボルターが出て来て、倉庫にエネルゴンキューブを運ぶのを手伝ってくれた。オンスロートとブレストオフは、反物質炉の実験で手が離せないらしい。

 今の所、研究は順調だ。だが好事魔多し。ここは気合いを入れないとな。

 

 

 

 今日、俺とコンバッティコンは、アルファートリンに教えてもらったロボット工場に来ている。既にここは俺たちの試験用反物質炉から供給されたエネルゴンキューブで、再稼働していた。今も多種多様なロボットが生み出されている。

 いや、厳密には工場生産型1stロットの最終タイプが今しがた完成したところだ。その数、1,500体。ただしそのうち軍人タイプの数は21体に過ぎない。残りは技術者や生産者など、一般市民タイプだ。

 一般市民タイプは、良くてミニボットにかろうじて比肩するか、かなり劣る程度の戦闘力しか持っていない。自衛ができれば御の字だ。性格も、戦闘向けじゃない物になる予定だしな。

 軍人タイプもそこまで強力ではなく、せいぜい合体してないビルドロンと互角か、良くてちょこっと強いぐらい。でも、俺たちはデストロンじゃない。サイバトロンでもないけど。俺たちの目的は戦いじゃ無く、復興なんだ。

 ちなみにこの1,500体って数は、今現在俺たちが供給できるエネルギー量から逆算して、決められた数値だ。試験用とは言え、反物質炉の完成度は実用型と言って良いほどに上がっている。

 

「スタースクリームより、アルファートリン殿。」

『こちらアルファートリンじゃ。』

「ベクターシグマを起動し、直轄(ちょっかつ)工場A-101-33で生産されたロボットたちに命を吹き込んでもらえる様に、願い出てくれ。」

『了解じゃ、待っておれ。』

 

 うん、今ジジイ(アルファートリン)はスカイファイアー、サンダークラッカーと共にベクターシグマのところに出向いてくれている。あっちでベクターシグマを起動し、こちらの端末機で工場生産のロボットたちに命を吹き込んでくれる様に願い出る予定なんだ。まあ厳密には、願い出るのはスカイファイアーに任せる事になってる。

 お。ベクターシグマの端末機が輝き出した。コンベアが動いて、その上に載ったロボットたちに次々にスパーク(たましい)が吹き込まれて行く。コンバッティコンたちが、起き上がった新たな同胞たちを次々に広間に整列させて行く。

 そして最後の1体がスパーク(たましい)を吹き込まれた。オンスロートがそいつを列に並ばせる。そして俺は、広間の演壇(えんだん)に登って、皆に声を掛けた。

 

「諸君!諸君の頭脳には既に基礎的な知識はインストールされていると思う!諸君らが今現在立っているセイバートロン星の大地は、長き戦乱によって荒廃し傷付いている!……その責任の一端は、間違いなく諸君らの先達(せんだつ)であるこの俺にもある!

 それを知った上で、俺は諸君に頼みたい!我らが母なるセイバートロン星の復興、そのために、俺に力を貸してくれ!この俺、スタースクリームとその仲間達に力を貸してくれ!俺はセイバートロン星を再生し、その繁栄を取り戻したいのだ!

 俺たちは圧政の下での平和を望むデストロンとは違う!そして自由のため、正義のために戦いを選んだサイバトロンとも違う!悪を()け、しかして正義を盲信せず!中庸(ちゅうよう)に身を置いてその中で最善を目指す!

 ようこそ同志諸君!『A NON-ALIGNED INDIGENOUS LIFEFORM』へ!!そう、俺たちはNAIL、俺たちはネイルだ!!」

 

うおおおぉぉぉ!!

ウオオオォォォ!!

ウオオオオオオォォォォォォ!!

 

 1,500人のトランスフォーマーが、右拳を天の方向へ突きあげて、叫ぶ。もの凄い迫力だ。うん、さすがにそろそろ組織名が欲しかったんだけど、思いつかなかったからアメコミのトランスフォーマーにおける中立組織、NAILの名前をパクって来た。科学知識はともかく、ネーミングセンスは俺には無いからな。

 

「きゃー!スタースクリーム様―!ちょっとボディ変わってるけど、それもまた良し!きゃー!」

 

 ……うん?なんか最前列にいるウーマンタイプの軍人トランスフォーマーが、何か様子がおかしい。って、なんで今完成したばっかりの奴が、俺の身体(ボディ)が変わってる事を知ってるんだ?あ、なんか投げキッスしてきやがる。

 

 

 

 戻って来たスカイファイアーにサンダークラッカー、そしてコンバッティコンたち、そしてスカイファイアーたちが今回手伝ってもらったお礼にと食事(エネルゴンほきゅう)に誘ったアルファートリン。この面子で今、飯を食って(エネルゴンほきゅうして)いる。いるんだが……。

 

「やーん、ついにニューリーダーになっちゃったのねー、スタースクリーム様♪でもデストロンを捨てるとは思い切ったのねー。」

「マテ。お前さんはナニを言っているのか。」

「やだもう、ルナクローバーって呼んでよ。」

 

 いや待て。ルナクローバーだと?俺のアニメ知識とかには、そんな名前のトランスフォーマーは居ないぞ。それはともかく、呼んでもいないコイツが会食の会場にずんどこ踊り込んで来やがった。何にせよ、お前の事は知らんぞ。

 

「あら?わたしの事覚えてないのー?記憶回路(メモリーチップ)の故障かしら?」

「待て。お前は今しがた完成したばかりだろうが。覚えてないも何も、最初から知らんぞ。」

「あれ?そう言えば、あたしの武装とかも全然違ってない?やーん、デストロンのエンブレムも無いー。まあいいけど。」

「……ちょっと待ちたまえ、お嬢さんや。」

 

 ここで口を挟んだのは、アルファートリンだ。他の奴ら?唖然として、黙々と食ってるが?

 

「何よ爺さん。」

「すまんが、ちょっと調べさせてもらっても良いかの?いや、変な事はせん。お主も今の状態は変じゃと思うじゃろう?」

「うーん、あんまり気が進まないわね……。」

「いいから調べてもらえ。爺さん(アルファートリン)は、こう言う事態のプロだ。」

「うーん……。」

 

 結局俺の一言が決め手になって、アルファートリンはこのルナクローバーとか言うのを調べた。調べた結果、とんでもない事が判明した。

 

「うむ、お主のスパーク(たましい)は、間違いなく先ほど創られたばかりじゃな。ただ、それに焼き付いており、そしてスパーク(たましい)から身体(ボディ)記憶回路(メモリチップ)に焼き付けられた記憶や感情は、並行異世界からやって来た物じゃ。」

「え?え?わたし良くわからないんだけど。」

「簡単に言うとじゃな。お主は並行異世界で、その世界のスタースクリームと何らかの関係があった……お主の行動からして友好関係じゃと思うのじゃが、その並行異世界のトランスフォーマーの……。」

「ふんふん。」

「コピーじゃ。」

「え゛。」

 

 なんか衝撃的な事を言ったぞ、このジジイ(アルファートリン)

 

「アルファートリン殿、こいつがコピーって、どういう事だ。」

「読んで字の如し、じゃよ。ベクターシグマの能力(ちから)は偉大じゃ。オールスパークを元にスパーク(たましい)を創造し、身体(ボディ)に宿らせるほどにの。そしてオールスパークもまた、偉大じゃ。それが数多の多元宇宙、並行異世界に及んでおっても、おかしくは無い。

 そして、他の宇宙のルナクローバーとやらのスパークが、何らかの原因でお主のスパークに転写されたのじゃ。少々荒唐無稽じゃが、それ以外に考えようが無いのう。」

「なんとまあ……。」

「とんでもねえ……。」

「俺にインストールされた科学知識でも、追いつかねえ……。」

 

 スカイファイアー、サンダークラッカー、オンスロートが呆然と言う。そして当のルナクローバーは……。

 

「わ、わたしが、こぴい?」

「そうじゃ。」

「コピー?複製?偽者?」

「うむ。」

「そ、そんな……。」

 

 あ、やばい。こいつ今にも泣きそうに顔を(ゆが)めた。俺はとりあえず、なんと言って慰めたらいいかわからんが、とにかく慰めの言葉を掛けようとした。だがそれに先んじて、こいつは口を開く。

 

「ま、いっか。」

「「「「「「だあああぁぁぁ!?」」」」」」

 

 その場のほとんど全員が、ずっこけてひっくり返る。俺も例外では無い。エネルゴンキューブが、宙に舞った。しかしそれをスカイファイアーとブレストオフが、落下前にひょいひょいと捕まえる。なんかお前ら、随分と図太いな。スィンドルが起き上がりつつ言った。

 

「あいたたた、スカイファイアーさん、ブレストオフ、ナイスだ。エネルゴンキューブが落ちて衝撃で爆発でもしたら、ヤバいところだった。経済的にもね。」

「うん。まあ、わたしはトンデモ無い事態には慣れてるからね。」

「俺もな。宇宙では、何が起きても不思議じゃない。」

 

 俺はテーブルに掴まって起き上がりつつ、ルナクローバーに声を掛ける。

 

「お、お前ソレでいいのか?」

「うん。コピーだろうがなんだろうが、わたしはわたしだし。それにここのスタースクリーム様がわたしの知るスタースクリーム様じゃないって事だけど、わたし自身が本物のわたしじゃ無いんだから。だったら、ちょうどいいかなーって。」

「そうかね。だったら丁度いいかな。」

 

 スカイファイアーが、頷きつつ言った。おい、お前何を。

 

「ルナクローバー君だったね。スタースクリームの副官になってもらえないかい?今まで副官業務は兼務でわたしがやっていたんだが、これでも組織のNo.2と言う立場は大変でね。今回一気に大量の仲間達が増えた事で、とてもじゃないが手が回らなくなりそうなんだ。」

「No.2のスカイファイアーと、No.3の俺、そしてブレイン集団のコンバッティコン。それだけの規模でも大変だったんだがよ。今後は大変になるなあと思ってたんだが。お前が副官やってくれんなら、幾分かは楽になるな。」

 

 サンダークラッカーまで……。ちなみに前にも言ったかも知らんが、副官はNo.2じゃなく指揮官のサポート役だ。No.2は副長とか副隊長とか言う。日本語ではどっちも『副』だから誤解を招いてるんだが。日本語は難しいな。

 

「りょーかいー♪副官任務、承りました!」

「お前、わかってんだろうな!?俺たちの目的は、セイバートロン星の再生と復興!」

「大丈夫!まかせてよ!」

 

 物凄く不安なんだが……。

 何はともあれ、俺たちの仕事は次の段階に入った。ここまで来れば、デストロン軍団にも目を付けられるのは間違いない。そしてサイバトロン軍団も、赤組連中は信用も信頼もできねえ。

 俺たちNAILは、今現在はデストロン支配領域以外の、小さな領域(エリア)で旗揚げしたばかりだ。これから少しずつ領域を広げ、活動を活発化させていかねばならん。そして何としても、セイバートロン星を復興に導くのだ。

 

 

 

 ちなみにこの考えって、人間として生きてた『俺』の物じゃないし、元の『(スタースクリーム)』の物でもないよなあ。2つが融合した『今の俺(スタースクリーム)』だからこその考え、だよな。なんか、(どうりょくそうち)が熱くなるな。

 

「スタースクリーム様~♪」

 

 ……。だけどコイツ、不安だよなあ……。




というわけで、ユルい話でした。けれど、NAILの旗揚げと言う大事なポイントも、今回で書かれています。今まではデストロン軍団に目を付けられない様に動いてきましたが、これからは規模が一気に拡大した事もあり、少し様相が異なってきます。上手く描写できればいいんですがね(笑)。
そしてついに登場した、ルナクローバー(コピー)!!彼女の活躍をご期待ください。
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