我が名はスタースクリーム   作:雑草弁士

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第12話:カセットロン哀歌、そして……

 今、俺たちNAILの政庁兼軍事基地でもある研究所は、大騒ぎになっていた。

 

「おい、そっちに行ったぞ!」

「逃がすな撃ち落とせ!」

「わ、やめろ!こっち向けて発砲すんじゃねえ!」

 

 うん。来ると思って、警備を増強しておいたんだが、それでも侵入されたんだ。なんであんな怪しいカセットテープ見逃すかな。俺は腰部ビームキャノンからナル光線(ビーム)を発射し、飛び回るカセットロン燃料偵察兵ラットバットを麻痺させて墜とす。

 

「こいつは武装の回路を切って、閉じ込めておくんだ!それよりも、こいつだけとは限らん!警戒を密に……。」

『こちらスカイファイアー!スタースクリーム、やられた!空中攻撃兵コンドルと、空中破壊兵バズソーだと思われるよ!』

 

 スカイファイアーからの通信内容は、思った通りだった。

 

「スカイファイアー、何があった!」

『分解して調べていた、メガトロンの融合カノン砲だ!解析が終わったので、まとめて置いていたら、2匹がかりで丸ごと持っていかれた!逃げられてしまったよ……。』

「逃げられたのは仕方がない。データは無事か?」

『それは大丈夫だ。データのオリジナルも、バックアップも問題なしだよ。』

「なら、最悪の事態は防げた……!?まずい!!こちらスタースクリーム!!中古部品(パーツ)置き場に、警備員を派遣せよ!」

 

 俺は近場の通信機に飛びついて叫んだ。そして万が一に備え、俺自身も中古部品(パーツ)置き場へと走った。

 

 

 

 そして今現在。俺、ルナクローバー、スカイファイアー、サンダークラッカー、コンバッティコンたち、つまりNAIL中心人物(トランスフォーマー)らの前には、俺たちNAIL技術陣謹製の超合金ワイヤーでぐるぐる巻きにされたカセットロン特殊破壊兵フレンジーとランブルが居る。結局俺がナル光線(ビーム)で麻痺させてとっ捕まえたんだ。だけどこいつらが身体張って逃がしたので、諜報破壊兵ジャガーには逃げられてしまった。

 ジャガーはメガトロンの手首部品(パーツ)(くわ)えて逃げた。手首パーツだけなのは、メガトロンの右腕はバラッバラに分解して中古部品(パーツ)扱いで置いといたので、他は持って行けなかったんだ。

 ……まあ、メガトロンの融合カノン砲はともかく、腕パーツとかは俺がデストロンNo.2やってた時代、海底基地の倉庫に在庫あるの知ってるからな。カノン砲だけでも取り戻せれば、メガトロンは戦列復帰は可能なわけだ。上腕、下腕パーツを奪われたままなのは、奴としては腹立たしい事だろうが。

 

「しかし、大事な部下3人と引き換えに取り戻したのは、融合カノン砲と右拳パーツだけか。お前らも大変だな。」

「さ、3人!?」

「ああ、お前らの他にラットバットも捕まえてある。今は牢屋だ。心配すんな。お前らを殺すつもりはねえよ。下手に逃げ出そうとしたりしない限りな。」

 

 フレンジーとランブルは、顔を見合わせる。そしてランブルが言った。

 

「俺たちゃ、何も喋らねえぞ!?」

「わかってる。お前らのメガトロンへの忠誠はともかく、サウンドウェーブへの忠誠っぷりは良く知ってらあな。」

「スタースクリーム様!わたしにいい考えがあるわ!」

「悪い予感がするから却下。」

「ええーーー!?」

 

 ルナクローバーの意見を聞かないうちから却下する。けれどスカイファイアーが視線で抗議してきたので、仕方なしに水を向けてやる。

 

「わかったわかった。話して見ろ。」

「こいつらの記憶回路(メモリーチップ)引き()り出して高度分析装置(トライコーダー)にかけちゃいましょう!」

「「ひいいいぃぃぃ~~~!!」」

「却下。」

「ええーーー!?」

 

 うん、スカイファイアーは、視線で謝って来た。

 

「いいかルナクローバー。それじゃデストロン軍団と変わりねえよ。最初の演説のとき言ったろ?俺たちゃ悪を()けて、だけど正義も盲信しねえんだ。悪党を通り越した外道にゃ、なりたかねえんだよ。そして、正義のためならあたりまえだって、自分を正当化して下衆な事をするのも嫌だ。

 なあ、わかってくんねえか?」

「はーい……。」

「よし、いい子だ!」

 

 俺はルナクローバーの頭を撫でてやった。

 

「きゃ!こ、これはひょっとすると?ひょっとする!?そしていよいよ今晩には……。」

「ははは、次はその調子に乗るところ、どうにかしろや。

 さてフレンジーにランブル。お前らが知ってるデストロン軍団の秘密や機密にゃ、興味が無いとは言わん。サウンドウェーブは、軍団内の醜聞とか皆の秘密とか、色々収集してるらしいからな。だがな……。」

「「だが?」」

 

 きょとんとしたフレンジーとランブル。俺は悪そうに笑って言ってやった。

 

「だからと言って、手前(てめえ)らをどうこうしてまで、情報欲しいとは思わねえ。それよりかは、手前(てめえ)らは万一の際の人質交換用の、捕虜として確保しておこうってな。これからも長く戦いは続く。常に前回みたく勝利できるわけもねえ。いつかはデストロン軍団に捕虜取られる可能性も高いんだ。

 だからそれまで、大人しく捕虜になってな。」

「ふぃー……。」

「おい、安心してんなランブル。あの顔見てみやがれ。」

「ああ、言い忘れたな。俺はお前らを捕虜虐待とかなんとかするつもりは全然ねえ。でもよ。そうやって『何故か』『かけらも酷い目に遭わされずに』『無事に帰って来た』部下をよ。メガトロンがどう思うかな?あの猜疑心の強い奴が。」

 

 俺が言ったとたん、ランブルとフレンジーは顔を引き攣らせた。もし人間だったら、顔面蒼白になってるに違いねえ。

 

「ち、ちくしょーーー!!」

「絶対、絶対に逃げ出してやるう~!!」

「はっはっは。まあ安心しろよ。昔馴染みだ、捕虜生活はできるかぎり快適にしてやるからよ。コンバッティコン、武装や特にハンマーアームの回線は注意して切って、閉じ込めとけ。丁重にな。」

「「「「「了解です、ボス!」」」」」」

 

 さて、これでとりあえずデストロン軍団の諜報網は半壊したことになるな。ランブル、フレンジー、ラットバットの3人捕まえたからな。残るはコンドル、バズソー、ジャガーか。あと『2010』時代になると、カセットロンに破壊工作兵オーバーキルと情報伝達兵スラッグフェストが加わるんだが……。ま、今は居ねえからいいか。

 だが、んな油断してると、結局逃げ出されたりするからな。しっかりと閉じ込めとかないとな。けどほんとはラットバットよりも、コンドルとバズソー捕まえたかったな。あの2匹どうにかできれば、サウンドウェーブの諜報能力はガタ落ちになる。ランブルとフレンジーの、使い勝手がいい部下を奪えただけ、よかったと思っとこうかね……。

 だけど、俺たちもカセットロンやカセットボットに相当する、諜報・防諜チームがそのうち必要だな。誰か在野に居ねえかな。

 

 

 

 今現在、俺、スカイファイアー、コンバッティコンたちは、人工ブラックホール生成装置と新しいブラックホール炉の設計に入っていた。俺たちが科学技術関係の仕事をしてる間、サンダークラッカーが全体指揮を肩代わりしている。まあ、奴は基本的に戦士……と言うよりも兵士であって、そう言う仕事はあまり得意とは言えない。だから、何か問題があったら即座に俺を呼び出す様に言ってある。

 ルナクローバー?あいつが俺の傍を離れると思うか?まあ、研究資料とかを出したりしまったりとか、後は最近開発されたエネルゴンドリンクを用意してくれたりとかもしてるな。まあ頑張ってくれてるのは、確かだ。ちなみに他(トランスフォーマー)と俺のドリンクは、トッピング含めて盛りの量が一目でわかるほど違う。……スカイファイアーとコンバッティコンたちの生暖かい視線が俺の硝子(ガラス)の心に痛い。

 

「人工ブラックホール生成装置は、こんなもんかね。必要量の物質……ケイ素系の小惑星かなんかでいいと思うが、人工重力装置でそれを重力崩壊させて暗黒縮退星(ブラックホール)にする。」

「理屈は簡単だが、実際に試作機造って人工ブラックホールを生成してみない事には……。」

「メガトロンには、絶対に教えられんなあ。絶対に兵器転用を真っ先に考える。」

「今の所は大丈夫だと思うぜ。爺さん(アルファートリン)がコンボイと通信した内容を教えてくれたんだが、向こうでコンドルとバズソーに手を焼いてるらしい。つまりカセットロンは地球(あっち)に居るって事だからな。研究室(ココ)の防諜も、十全だし。」

 

 そんなわけで、メガトロンのちょっかい無しで研究を進める事ができた。矢面に立ってくれているコンボイには、足を向けて寝られん。まあ、メガトロンの事だから油断はできねえんだがな。

 第一、俺はとんでもなくメガトロンに怨まれてるだろうと、そう思う。いや、怨み憎しみの深さで言えば、俺の方も負けていないんだが。しかし行動の身軽さと言う点では、圧政者であり大帝である奴の方が勝る。奴は思い付きで行動をできるが、こちらはそうはいかないんだ。

 悔しいので、前回の勝利でデストロン軍団の兵力が撤退した領域を、あくまで以前から決めていた計画通りに『技術屋の天国(エンジニアーズ・ヘブン)』領域へと組み込んで再開発を進めた。うん、あくまで予定通りだよ?俺はちょこっと指示出して、サンダークラッカーにあれこれアドバイスしてやってもらっただけだよ?あくまで予定が完璧にできてたから、事が簡単に進んだだけだよ?

 うん、絶対にメガトロンに融合カノン砲と右拳を奪い返されたのが悔しいから、思い付きでやったわけじゃないからな?

 

 

 

 前回の戦いで、俺がフォースチップをイグニッションできたので、サンダークラッカーにも可能ではないかと思い至った。思い至ったので、サンダークラッカーと一緒に訓練してみる事にした。

 

「フォースチップ……イグニッション!!ヴァーテックス……キャノン!!……ブレイドォ!!」

「うへ!?こ、これで先日メガトロンをやっちまったのか!」

「やったと言うか、逃げられたがな。ぬん!!」

 

 訓練標的の木偶(でく)を、ヴァーテックスキャノンで撃ち、ヴァーテックスブレイドで斬り裂く。相変わらず、凄い威力だ。と言うか、キャノン撃つんじゃなかったな。木偶(でく)を吹き飛ばして訓練場の壁に穴が開いた。あとで管理者に謝って置かないと。

 

「うぉ……。凄ぇ威力じゃねえか!」

「いや、これに近い事をお前も出来る可能性がある。」

 

 ちょっと見るに、サンダークラッカーもチップスロットあるしな。

 

「ほんとか!?」

「やって見ろ。とりあえず、そうだな……。メガトロンと、デバスターでも思い浮かべろ。」

「お、おお。」

「そして……。ここは戦場だ。お前の後ろには、損傷(おおけが)を負って戦えなくなった皆が居る。頼りのブルーティカスは、離れた所でメナゾール相手で手が離せない。お前がメガトロンとデバスターをどうにかしないと、皆が破壊される(しんじまう)。」

「……。」

 

 そして俺はサンダークラッカーに語り掛ける。

 

「生半可な攻撃じゃ、メガトロンとデバスターは倒せないぞ。力を、力を心の底から求めろ。そうすると……!?」

 

 俺はその一瞬、サンダークラッカーの背後に、あるトランスフォーマーの姿を幻視した。いや、それは幻じゃない。そいつには実体こそ無いが……。確かにそこに居た。まるで、『2010』での『(スタースクリーム)幽霊(ゴースト)』の様に、スパークだけの存在としてその場にいやがったんだ。

 そしてサンダークラッカーが叫ぶ。

 

「フォースチップ、イグニッション!」

 

 奴の左腕ミサイルポッド後部にあるチップスロットに、フォースチップが……。ベクタープライムが使ってたアレと同じ、宇宙や時空をイメージした様なフォースチップが叩き込まれる。ミサイルポッドが展開し、その裏から大口径ビームキャノンが姿を現す。

 

「サンダーヘル!!」

 

 ビームキャノンから凄まじい威力のビームが放たれた。それは訓練標的の木偶(でく)を貫いて……。訓練場の壁に、大穴を穿(うが)った。

 

「なんか……。なんかが、俺の頭の中(データかいせん)接触し(かたりかけ)て来た……。それを引っ張り込んだ(インストールした)ら……。使い方が分かった。」

「……。」

「どうしたんだ、スタースクリーム。お前がやれと言ったんだろうが。」

「あ、ああ。いや、な。あまりの威力に呆然としてた。」

「お前のキャノンの方が派手じゃねえかよ。」

「そうだな。ははは。」

「ははは。しかし、これで俺ももっと戦えるな。」

 

 俺はとりあえず笑って誤魔化した。そうか、爺さん(アルファートリン)が俺たちのこのボディを造ったのは……。きっと、あの幽霊(ゴースト)トランスフォーマーが干渉してたに違いない。このG1世界で、GF印の機体を造ったのは、そうでもないと考えづらい。

 

「……さて、とりあえず訓練場の管理人に、詫びて来ないとな。」

「お、おお。ちょこっとやり過ぎたもんな。」

「ちょこっとか?流石に修復予算とか、あと残業になっちまうだろうから個人報酬とかも、色つけてやらんとなあと思ってたんだが。」

 

 あの幽霊(ゴースト)トランスフォーマーは、既に姿がどこにも無かった。俺とサンダークラッカーがイグニッションを会得(えとく)し終わった以上、今後会う事があるかも分からない。だが、この宇宙とは位相を(こと)にする空間か何処かで、『()て』やがるんだろうな、アイツは。何処から何処までが、奴の干渉かは分からんけどな。

 まったく、流石『あらゆる時空の監視役』だよ。ほんとにな。どこにでも居て、どこにも居ない。『2010』での『(スタースクリーム)』以上に幽霊(ゴースト)みたいな奴だよ。

 

「なあ、ベクタープライム……。」

「なんか言ったかあ?スタースクリーム。」

「ああ言った。けど、それよりまず訓練場管理人のとこ行って、詫びて来ないとな。行こうぜサンダークラッカー。」

「おう。」

 

 俺たちは連れ立って、訓練場の出口へと歩いて行った。




ランブルとフレンジー、おまけでラットバットが捕まってしまいました。
そしてついに裏で暗躍?していた存在が、姿を現しました。なんとそれは、ベクタープライム(の幽霊)!!混迷の度合いは、ますます増していく!
さあどうなる!!
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