我が名はスタースクリーム   作:雑草弁士

14 / 25
第14話:電脳ダイブ、ただし俺じゃない

 ここは『技術屋の天国(エンジニアーズ・ヘブン)』中央研究所、つまりNAILの政庁と基地と研究所を兼ねた建物の、俺の執務室だ。そしてこの部屋に今、俺たちNAILの中心人物である俺、スカイファイアー、サンダークラッカー、俺の副官ルナクローバー、全員が来るのはちょっと部屋が狭いのでコンバッティコンとプロテクティコンの長であるオンスロートとホットスポットが来ている。そしてもう1人……。

 言うまでも無い、シックスショットだ。俺は彼に向けて、言葉を掛ける。

 

「シックスショット。済まないがもう一回、この面々にお前が言った事を繰り返して語ってくれるか?」

「了解でござる。では……。拙者シックスショットは、デストロン軍団と手を切ってNAILに参加したく、まかり越しました。」

 

 俺とシックスショット、そして先ほど現場に居たルナクローバーを除く一同が、驚きの声を上げる。なおシックスショットの身体には、デストロンのエンブレムは既に無い。

 

「皆様方が拙者をお疑いであろう事は重々承知の上。その疑いは、今後の働きで晴らしてごらんにいれる所存でござる。どうか拙者に働き場所をくだされ。」

「それよりまず、皆にお前がNAIL(こっち)に来ようと思ったわけを説明しろよ。俺たちはもう聞いたけどな。」

「は。では……。」

 

 そしてシックスショットが語ったのは、次のような事だった。

 シックスショットは400万年の長きに渡り、サイバトロン軍団の後方を攪乱(かくらん)および破壊工作の、単独任務に就いていた。しかしメガトロンからの繋ぎはぷっつりと切れ、しばし後にメガトロンが行方不明になってセイバートロン星のデストロン領域はレーザーウェーブが愚直に守っていると言う事情を知った。

 それでもシックスショットは、メガトロンとの約束に有ったエネルゴンの補給とかが無くとも、忠実に任務を果たし続けた。そして数年前……もう数年も過ぎたのか。その数年前に、メガトロンとデストロン軍団本隊が復活を遂げたと言う報を聞き付け、地球へとはせ参じたのだ。

 そして、見たのだ。あの場面を。俺の絶叫を。

 

『……ああ、ナイトバードは強いさ。地球の人間が造ったとは思えない高性能だ。けれどな。喋れもしねえ!自由意志もねえ!何よりもただ命令の内容を考えもせず愚直に従うだけの脳足りんに!自らのスパーク(たましい)さえも持っていない、ただの機械に!!

 副官はおろかNo.2の座を奪われ!引退に追い込まれる!こんな屈辱が!許せるか!?赦せるか!?そんなわきゃ無え!冗談じゃ、冗談じゃねえんだよォ!!』

 

 あの俺の叫びを、当初はまた『(スタースクリーム)』の『いつもの反乱劇(ニューリーダーびょう)』かと思ったらしい。だがそれにしては内容がちとおかしい上に、言葉に(こも)った気迫と悲痛さ。それを感じたコイツは、隠れたまま様子を窺っていた。そして俺が本当にデストロン軍団と決別したのを目にしたのだ。

 そしてその後しばらく身を隠し、シックスショットはデストロンの内情を調査していた。そして『俺が心を入れ替え』て、部下を庇ったり、メガトロンを恐れず諫言(かんげん)をしたり、誠心誠意の忠節を尽くしていた事を知ったのだ。

 だがそれでも当初は、他のデストロン兵士同様に、俺の変化を信じきれなかったと言う。だからその後の俺の活動を、デストロン軍団には極秘で調べ続けたらしい。そして俺が本気で、セイバートロン星を再生し復興させようとしている事、更には部下や市民からの厚い支持を受けている事を理解する。

 一方でデストロン軍団においてだ。メガトロンは、サンダークラッカーがあくまで軍団のためを思い、俺をデストロン軍団に呼び戻そうと画策した事で、彼への疑いを抱いた。そしてあろうことかサンダークラッカーを洗脳してしまうと言う暴挙に出た。その上でサンダークラッカーを処刑するとの(しら)せをバラ撒き、俺を始末しようとした。だがその計略は、サンダークラッカーの覚醒、俺の仲間たちとコンボイの介入で見事に失敗する。

 これでシックスショットの背後にある『シックス一族』は、このままメガトロンに協力していていいのか疑念を持った。『シックス一族』は、メガトロンの性格は熟知していたつもりだが、宇宙を支配するのはおそらくデストロンであろうとの予測から、その配下にシックスショットを送り込む事で将来の政権内部に自分たちの立ち位置を確立しようとしていたのだ。メガトロンの懐の深さから、諫言(かんげん)や忠告できる立場の高官に自分らの縁者を送り込んでおければ……そう考えていたのだそうだ。

 しかしメガトロンはセイバートロン星を戦争で荒廃させただけではなく、サイバトロンの宇宙船『アーク』への攻撃の中途半端な成功……事実上の失敗により、400万年の時を無駄にした。更には部下の諫言(かんげん)や忠告を嫌う性格も、明らかになった。そして現状の、NAILの躍進(やくしん)によりセイバートロン星の領土を徐々に削られている(さま)……。

 ここに至り、『シックス一族』はNAILにも一族の者を送り込もうと考えた。しかしシックスショットは、ここは賭け時だと一族を強引に説得する。デストロン軍団と手を切るべきである、と。NAILには(おのれ)(みずか)らが赴く、と。

 

「……出向くのが遅くなったのは、一族の説得に時が必要だったため。なれど、もし一族を説き伏せること叶わなかった場合は、拙者の一存でNAILに鞍替えするつもりでござった。『今の』スタースクリーム殿には、その価値がござれば。」

「くすぐったいな。NAIL(これ)は俺の力だけじゃねえよ。スカイファイアー、サンダークラッカー、コンバッティコン、ルナクローバー、プロテクティコン、数多の一般軍人や一般市民たち。皆が皆、セイバートロン星を再生し、復興させようと頑張ってる。

 おっと、サイバトロン傭兵やデストロン傭兵、それに協力者たる爺さん(アルファートリン)以下多数も忘れちゃいかん。俺の力が無い、とは言わん。だけど、それだけじゃあ決して無い。」

 

 シックスショットは感慨深げに言う。

 

「……やはり、変わられましたな。以前の貴方であらば、絶対に口にしない事でござった。」

「俺たちゃ、超ロボット『生命体』だぜ?ただのロボットたあ違う。成長できるんだ。ま、ちょっと変わっただけでそこまで感動されるんだ。前の『(スタースクリーム)』が、どんなに酷かったかって事だな。」

「うーん、前のスタースクリーム様も素敵でしたよ?」

「よせやい。俺は調子に乗りやすいんだ、ルナクローバー。」

 

 そして居住まいを正すと、シックスショットは改めて頭を下げる。

 

「拙者は疑われても仕方の無い立場。しかも『シックス一族』の紐付きである事も明かしました故、お疑いは猶更(なおさら)濃くなったかと。なれど拙者、NAILにて働き場所を得られましたならば誠心誠意、NAILに……スタースクリーム殿にお仕えする所存。なにとぞ、お聞き届けいただきたく。」

「……皆の意見を訊きたい。俺の気持ちは一応決まっているが、それを覆す説得力のある意見があれば、そうするつもりだ。」

 

 俺の言葉に、まずスカイファイアーが口を開く。

 

「わたしは迎え入れるべきだと思う。彼の覚悟は本物だと見た。まあ、あくまで情の面から見た言葉だけれどね。」

 

 サンダークラッカーも賛同する。

 

「俺も賛成だ。今、諜報や防諜関係が俺たちの最大の弱点になってやがるんだ。ストリートワイズやグルーブの参入で、多少は楽になったがな。万一裏切られたら、大事(おおごと)になる前に俺が始末してやるよ。」

 

 オンスロートとホットスポットも言う。

 

「今現在のNAILの体力ならば、裏切りがあったところで持ちこたえられるでしょう。痛いは痛いですがね。それよか彼を放逐して、せっかくこっちを向いてる『シックス一族』の秋波(しゅうは)が途切れる方が痛いですなあ。」

「メリット、デメリットで言えば受け入れる方が若干得策かと存じます、リーダー。見張りは正直、最初のうちは付けたい気もいたしますが、忍者参謀などと言う実力者に付けられる凄腕は残念ながら。であるからには、毒食らわば皿までとの気持ちで。」

 

 最後にルナクローバー。

 

「裏切りそうだったら、その前に()っちゃえばいいのよね♪」

「物騒だな。まあ、そんなわけだ。『全員一致で』お前を受け入れる、シックスショット。これからは諜報主任の地位に就いてもらいてえ。忍者ってえ言葉に思い入れがあるなら、そっちでもいいが。」

「ははっ!必ずや皆様の信任を得られる様、尽力いたしますれば!」

 

 感極まった様子のシックスショットは、(うつむ)いて肩を震わせる。そして、ふと顔を上げた。

 

「そう言えば、土産(みやげ)話にしては少々物騒なのですが、1つデストロン関係の情報があったのでした。実は……。」

 

 その話を聞いた俺は、少々の間だけ悩んだ。だがその情報を手に入れた以上、死蔵して置くのは百害あって一利なしだった。

 

 

 

 俺は先日なんとか開通できたホットラインを通じ、地球のサイバトロン基地にいるコンボイを呼びだした。ホットラインとは言っても、サイバトロン基地のコンピューター、テレトラン1に繋がるので、他のサイバトロンたちにも聞こえるんだが。

 

「こちらNAILリーダー、スタースクリーム。サイバトロン総司令官コンボイ、応答されたし。」

『こちらコンボイ。スタースクリームか。』

『けっ、一体何の用だ!さっさと伝えて切っちまえ。』

『やめないか、アイアンハイド。』

 

 まったく……。いや、奴からすればそうなんだろうな。気にせんで置こう。

 

「こちらで、デストロンの機密情報を入手した。俺たちNAILには直接関係が無いが、隠して置いたらお前らとの信頼関係に傷を付けるんでな。」

『貴様との間に信頼関係だ?』

『やめないか、クリフ!スタースクリームは、もうデストロンじゃないんだ!』

『は、はい、司令官……。』

「いや、気持ちは理解するさ。俺でも立場が逆なら、信用も信頼もできんだろう。」

 

 あ、クリフの野郎そっぽ向きやがった。

 

「それより、お前らにとっちゃ緊急事態だ。ただ、あくまで未確認情報だってのは念頭に置いて置け。緊急事態だからこそ、内容の真贋を気にせずに伝えるんだ。真贋を確かめるのは、そっちでやりやがれ。

 ブロードキャストの部下のカセットボット、フリップサイズってのが居るか?」

『ああ、居るぞ。』

『フリップサイズがどうかしたのか?』

「ブロードキャストか。いいか、よく聞け。そいつは大昔に秘密裏に送り込まれた、デストロンの潜伏工作兵だ。」

『『『『『『!!』』』』』

 

 俺の言葉に、サイバトロン連中は殺気立った。

 

『ばかげている!これは陰謀です、司令官!』

『だからこんな奴は信じられないんだ!早く通信を切っちまってください!』

『そんな言葉で、俺が彼女を疑うとでも思って……。』

「馬鹿野郎ども!!」

『『『『『『!!』』』』』』

 

 俺は一喝する。

 

「フリップサイズにゃ、自分がデストロンだって自覚はまったく無え!って言うかだな!今の彼女は完全にサイバトロンなんだ!心の底からな!だがなあ!

 そいつの頭の中には時限プログラムが仕掛けられてるらしいんだよ!下手すりゃあ、今この瞬間から!そいつの頭ん中で!時限プログラムが起動して!サイバトロンの人格を塗りつぶして、デストロン兵士のカセットロンにしちまいかねないんだ!」

『『『『『『!!』』』』』』

「いいか!間違ってるんなら、間違ってたでいい!俺がデストロンの偽情報を掴まされたってだけの話だからな!だが本当だった時の事がヤバいんだよ!俺たちじゃねえ!お前らがだ!!

 それと勘違いすんなよ!今現在のフリップサイズにゃ、何の責任もねえんだ!そいつは、正真正銘の歴としたサイバトロンだ!けどな、時限プログラムが発動したら、フリップサイズは死ぬんだ!殺されるんだよ!そしてデストロンのフリップサイズが出現するんだ!」

 

 そこで突然、ブロードキャストの胸板が開き、1体のカセットボットが飛び出す。どうやらそいつが、フリップサイズらしい。

 

『ふ、フリップサイズ……。』

『ブロードキャスト、わたしを(かば)ってくれるお気持ちは嬉しいです。ですがもし万一、スタースクリームの言葉が本当だったらば。わたしは死んで、この身体(ボディ)をデストロンのフリップサイズが使う事になってしまいます。

 そんなのは、許せません。絶対に……。』

「……そっちにゃパーセプター、ホイルジャック、ラチェットの3頭脳があんだろうが。診てもらうだけ、診てもらえよ。そんで間違いだったら、好きなだけ俺の無能ぶりを罵倒しやがれ。そいつらにかかりゃ、大した手間でも無えだろ?

 だけど、調べるのは本当に注意深くやれよ?時限プログラムが、何をトリガーにして発動するかは分かんねえんだからな。調べた事が切っ掛けで、時限プログラムが発動したり、なんてのは良くあるパターンだ。」

 

 そしてコンボイは言った。

 

『……パーセプター!ホイルジャック!ラチェット!彼女の頭脳回路(ブレイン・サーキット)を調べるんだ!ただし慎重にな。わたしは万が一にも、こんな事で部下を喪いたくは無いんだ。』

『了解です、司令官。』

『お任せを、司令官。』

『了解です。さ、こっちに来てくれフリップサイズ。』

『スタースクリーム、とりあえず今はこれで……。結果が分かったら、こちらから再度通信する。』

 

 そしてコンボイとのホットラインは切れた。

 

 

 

 翌日、コンボイからの呼び出しがあった。

 

『スタースクリーム……。わたしはお前に、礼を言わなければならない。』

「……ってえ事は。」

『ああ。フリップサイズの頭脳回路(ブレイン・サーキット)には、圧縮された人格データと時限解凍プログラムが仕込んであった。』

「結果は?」

 

 コンボイは、頷いて言う。

 

『フリップサイズは無事だ。時限プログラムと、デストロン人格データの切り離しには成功した。パーセプターとホイルジャックが完成させた、電脳ダイブ装置によって、ブロードキャスト他数名のサイバトロン戦士が彼女の頭脳内部にダイブした。そして強固なプロテクトや時限プログラム本体、それに危うく活動を開始した邪悪なデストロン人格データと戦って、彼女を護り通したんだ。』

「……良かったじゃねぇか。」

 

 なんつーか、G1トランスフォーマー的な展開だな。すっげぇSF(サイエンス・ファンタジー)チック。そしてコンボイの礼の言葉が続いた。

 

『知らせてくれて、本当にありがとう。感謝する。』

『だ、だがな!これで俺たちがお前を認めると思うなよ!お前が過去、幾多のサイバトロン戦士を倒したのは間違い無いんだ!』

 

 ……アイアンハイド。頼むわ、せっかくいい感じに終わりそうだったのに。

 

「……ま、アイアンハイドの言う通りだ。だから気にすんなコンボイ。俺はサイバトロンを救ったんじゃなく、憎いメガトロンの計略を叩き潰した、ただそれだけなんだからな。」

『そう言う事にしておこう。とりあえず、この一件は借りにしておくぞ。』

『だけどお前さんの言葉、ちょっとばかり間違っておったね。』

 

 ホイルジャック?なんの事だ?

 

『お前さんはわしらなら大した手間じゃないだろうと言っておったがね。』

『いや、連絡をもらった直後から始めて、今の今までかかったんだよ。丸一日もね。』

 

 パーセプターが陽気に笑いつつ言った。やれやれ。

 

「んじゃあ切るぞ。」

『さっさと切っちまえ!』

『あ、おい……。』

 

 チャージャーの言葉通りに、俺はホットラインを切った。まあ、マイスターとパワーグライド、そしてブロードキャストが、後ろで目立たない様に手を振っていたのが、少しほっとしたな。

 さてと、シックスショットの初手柄だな、コレは。信賞必罰、きちんと褒めて、褒賞として何かやらんとな。勲章なんぞは欲しいとも思わんだろうし、難しいなあ。一定期間エネルゴンの供給量の追加でいいかな?




今回前半はシックスショット話。後半はフリップサイド話でした。そして本作での『シックス一族』はNAIL側に付きました。更にフリップサイド(かば)ったブロードキャスト(ツインキャスト)が嫌疑かけられての逃亡フラグも折れました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。