我が名はスタースクリーム   作:雑草弁士

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第15話:侵攻!侵攻!

 西暦2001年になった。21世紀だ。俺は内心で少々焦っている。それは出来る限り、表には出しちゃいないがな。

 

「スタースクリーム……。焦る気持ちは分かるよ。けれど君が言っていたユニクロン襲来の2005年までは、まだ数年ある。」

「さすがにお前にゃ、わかっちまうか……。」

 

 スカイファイアーには、俺の秘密を全部話してある。俺のスパーク(たましい)に、並行異世界の地球人の(たましい)が融合している事も、そのため両者の精神(こころ)が混じり合って今の俺になっている事も。そしてその人間の記憶に、この世界におけるトランスフォーマーたちの活躍、今後の歴史が、アニメの知識として存在する事もだ。

 無論、これまで前提条件を他ならぬ俺自身が大きく変えたため、バタフライ効果も含めて周辺環境は完全に崩壊と言って良いほど変わっている。ただおそらく、ユニクロンの襲来はそんなに時間がずれないのではないかとも思っているんだがな。あれは、存在がでかすぎる。生半可な事では影響されんのじゃないかな。

 だからそれまでに、セイバートロン星を平定し……いや、せめて制宙権だけでもデストロン軍団から奪って、衛星軌道上に最低6基、可能であれば24基のブラックホール炉衛星を建造する。そして対惑星クラスの敵を想定した巨大兵器を……。

 比較的容易に準備出来そうなのは、宇宙空間に加速器を並べて浮かべた、超々巨大マスドライバー砲か?しかしそれだと、こちらに向かって来るユニクロンに対し、惑星を喰らう口部分方向から命中させたりしたら、そのまんま砲弾食われちまいそうだな。

 ユニクロンが唯一恐れるのは、サイバトロンのマトリクスだって話だが……。サイバトロン連中にばかり頼るのはいけない。いや、それ以前にだ。なんらかの奇跡によって助かる事までは否定しねえよ?だけど最初から奇跡や幸運に頼ってちゃいかんだろうに。

 サイバトロンのマトリクスは、ありゃ不安定だ。たぶんまず間違いなくコンボイならその力を解放できるだろうさ。『2010』の最終回でも使ってたしな。けれど、ウルトラマグナスでは使えなかった。『MOVIE』の最終局面では、ほんと偶然に幸運にもホットロディマス……ロディマスコンボイの手に渡ったが、そんなの期待してどうするよ。

 人事を尽くして天命を待った結果、奇跡によって救われるならば文句は無えよ?でも最初からウルト○マンの助けを待って、怪獣が暴れてるときに情けなく「ウル○ラマン、何をしてるんだウルトラ○ン!」って泣き叫びたくは無え。イ○隊員だってちゃんと立ち直って、用意してた新兵器で戦ったじゃ無えかよ。そう、ちゃんと新兵器用意してたんだ。

 それはともかく、俺はスカイファイアーに応える。

 

「そうだな。焦ったって仕方無え。まずは、やれる事やらんとな。」

「今は今現在攻撃している、デストロンの領域(エリア)を切り崩さなきゃね。」

「違いない。」

「そうして、その次の段階まで上手く行けば……。セイバートロン星の制空権と制宙権は、かなり取り易くなるよ。」

 

 今、俺たちNAILはデストロン軍団の領地のうち、重要部分を攻略中だ。ただし、俺、サンダークラッカー、コンバッティコン、プロテクティコン、シックスショットと言った決戦戦力無しで。理由は幾つかある。

 まず1つ目だが、いつもいつも俺たちに頼った戦いばかりしてたら、NAIL防衛軍……防衛軍って割には攻撃もしてるが、それが何時まで経っても成長できねえって事がある。自信も持てねえだろう。今回はNAIL防衛軍(あいつら)が、それを乗り越えるべき転換点(ターニングポイント)分水嶺(ぶんすいれい)なんだ。

 もちろんの事だが、俺たち決戦戦力は万一に備え、何時でも投入可能な状態で待機してはいる。いざと言う時は、俺の超空間ゲートで一気に運ぶ予定なんだ。だけどそれをやれば、たとえ戦術的には勝利できても、隠された戦略目標が達成されないために、敗北とまでは言わないが痛み分けに等しい勝利になるだろう。

 そして2つ目の理由。俺たち決戦戦力は、可能な限り温存したいのだ。俺たちを温存したまま今回の勝利が成ったならば……。今回勝利できれば、セイバートロン星のデストロン本部基地への攻略が可能となるのだ。この戦いで目的の領域(エリア)を切り取る事ができたならば、レーザーウェーブの守るデストロン本部基地への橋頭保になるのだ。

 それ故、俺たちを温存したまま勝利できたならば時を置かず、俺たち決戦戦力のみでデストロン本部基地を攻略する。単に攻撃するだけならば、橋頭保を得ずとも超空間ゲートによる奇襲が可能なんだが……。それだと、その後の維持ができねえからな。やはりきちんと順序を踏んで、攻め落とさねえとな。

 幸いな事に、地球ではメガトロン率いるデストロン軍団本隊と、サイバトロン軍団とが全力衝突している事が確認されている。デバスターもメナゾールも、セイバートロン星へやって来る事は出来ないんだ。勿論メガトロンも、地球へ釘付けだ。まあ、自分で企てたエネルギー収奪の計画が、サイバトロンのカセットボットによりバレてしまった結果なんだがな。

 メガトロンを待ち伏せして戦いを挑むと、コンボイがホットラインで教えてくれたんでな。ならば時を同じくしてこちらも一大攻勢に出る、と話を付けたんだ。

 

「……自分で陣頭指揮を取れねえってのは、きつい物があるな。」

「わかるよ。」

「スタースクリーム様!ついでにスカイファイアーさん。ドリンク持ってきました。」

「ははは、ありがとう。」

「おい。俺の親友でNAILのNo.2をついで扱いか、ルナクローバー。」

「てへぺろ。」

 

 相変わらず、エネルゴンドリンクの盛りもトッピングも、明らかに量が違う。困った奴だ。

 と、その時だ。

 

『こちらNAIL防衛軍指揮官ツインサーチ!報告いたします!レーザーウェーブの防衛ドローン部隊を壊滅させました!指揮をしていた防衛参謀レーザーウェーブと、ジェットロン航空兵サンストーム、アシッドストーム、ホットリンク、ビットストリームは逃げて行きます!!こちらの損害は、重軽傷者が10名ちょっと居ますが命に別状はありません!』

「よくやった!だが命に別状ないとは言え、そいつらはすぐに後送して治療(リペア)させるんだ!それと追撃はするんじゃねえぞ!当初の作戦予定通り、こっちの斬り込み隊がデストロン本部基地に攻撃をかける!」

『了解!』

 

 俺はスカイファイアーとルナクローバーに、号令を掛けた。

 

「よし、んじゃあ待機室へ走るぞ!サンダークラッカー、コンバッティコン、プロテクティコン、シックスショットと合流して、一気にデストロン軍団本部基地を()とす!!」

「了解、行こうか!」

「任せてよね!スタースクリーム様!」

 

 そして俺たちは、皆が待っている待機室に走った。

 

 

 

「スタースクリーム、裏切り者め!」

 

 単眼を光らせて、レーザーウェーブが叫ぶ。こいつは武装の回路を切られて、レーザーガンへの変形(トランスフォーム)も封じられ、特殊合金製のワイヤーロープで縛られて俺の前に引き出されているのだ。こいつを捕らえられたのは、ある意味で最高の成果、ある意味で理の当然なんだよな。

 こいつ防衛参謀の名に相応しく、最後まで抵抗したんだ。逃げるなら逃がしてやっても良かったんだが、先の戦場からは逃げてもセイバートロン星デストロン軍団本部基地からは、一歩たりとて逃げなかった。ジェットロン航空兵のサンストーム、アシッドストーム、ホットリンク、ビットストリームは飛んで逃げたのに。まあシックスショットが6分身の6段変形でサンストーム以外は撃ち落として、重傷負わせて捕らえたけどな。

 あ、スカイファイアーが怒った。

 

「スタースクリームがデストロン軍団を裏切ったんじゃないよ。デストロン軍団がスタースクリームを切り捨てたんだ。そして今の彼はNAILを背負っている。NAILを護るため、攻め寄せて来るメガトロン配下のデストロン軍団を叩くのは当然じゃないか。」

「何を言うか!メガトロン様の宇宙支配による、完全なる社会体制の実現!その理想を実現するためならば、貴様らも伏してメガトロン様を崇め奉り、エネルギーや労働力を差し出して当然!増してや貴様らはセイバートロン星の再生、復興を叫んでいるでは無いか!メガトロン様はセイバートロン星のために、エネルギーを送って下さっているのだぞ!」

「地球の無辜(むこ)の民人から、エネルギーを奪ってね。我々のやり方なら、そんな必要は無い。メガトロンの様なコソ泥の真似事はご免だよ。」

「な、メガトロン様をコソ泥だと!?地球の人間など、ゴミムシも同然では無いか!その様な者たちがメガトロン様の御為(おんため)にエネルギーを差し出すのは、理の当然では無いか!それを言うに事欠いて、コソ泥だとぉ!?」

「……ふう。やめとけスカイファイアー。こいつには何言っても無駄だ。」

 

 俺の言葉に、スカイファイアーも頬を引き攣らせつつ頷く。

 

「その様だね。コンバッティコン、悪いけれど彼を連行してくれるかい?厳重に、厳重に閉じ込めておいてね。」

「了解です。行くぞ皆!」

「この、放せ!貴様らメガトロン様のお怒りを恐れぬか……。」

 

 オンスロートたちがレーザーウェーブを引っ立てて行く。やれやれ、スカイファイアーを怒らせるたあ、レーザーウェーブもなあ……。

 

「あんま怒るなスカイファイアー。レーザーウェーブは、単なるデストロンって言うよりもメガトロン個人の忠臣なんだ。メガトロンが全て。メガトロン以外に神は無し。そんな奴だ。」

「その様だね。……ふぅ。うん、もう大丈夫。」

「いや、俺のために怒ってくれたのは嬉しいけどな。」

「ははは。」

 

 さて、とりあえずはメガトロンがやって来ない様に、スペースブリッジを一旦封鎖しないとな。でもってシステムを書き換えて、デストロン軍団が使えなくしないと。それとホットライン使ってコンボイに連絡して、地球からメガトロンが奪った分のエネルギーを、奪われた奴らに等分に返還しないとな。使われちまった分も多いけどよ。

 

 

 

 セイバートロン星のデストロン本部基地を制圧完了し、そこに貯蔵されていたエネルゴンキューブはサイバトロンを介して地球のデストロン被害者たちに等分に返還した。スペースブリッジは、とりあえず一旦サイバトロン基地の隣に出口を開いたが、まあ完全に友好関係ってわけでもないので、エネルゴンキューブの山を送りつけたらすぐに閉じた。恒常的にスペースブリッジを開けるぐらいに仲良くなれないもんかね。

 それはともかく、貯蔵されてたエネルゴンキューブは返還しちまったんで、大至急新たな反物質炉を基地に隣接した場所に建設した。反物質炉が星のあちこちにあるのは怖いって奴もいるかも知れん。だが実の所機構(ハードウェア)的に絶対に反物質量が一定以上にならん様に造ってあるので、事故ったとしてもそれほど怖くないんだ。その代わり1基あたりのエネルギー出力は弱くて、数が必要だけどな。

 そして今、俺とスカイファイアー、サンダークラッカー、ルナクローバー、シックスショットの5人は、デストロン刑務所に来ている。刑務所って言っても、俺たちNAILの刑務所や拘置所と違って、すっげえ効率的と言うか非人道的と言うか……。

 ぶっちゃけ、見た目書類倉庫。多数あるキャビネットの中には、ピンクと言うか紫と言うか、燐光を放つ輝く小さなブロック状の物がギッチリと詰め込まれている。うっかりすると、エネルゴンキューブと見間違う馬鹿も出そうだが、俺たちトランスフォーマーの眼にははっきりと違いが分かる。

 ……これは、トランスフォーマーのスパークや人格データなどが一纏まりに詰め込まれた、パーソナル・コンポーネントだ。つまりは、人間で言えば脳みそのうち人格とか記憶とかの部分を取り出して、しまって置いた様なもんだ。俺が非人道的だと言った理由が、わかってもらえるだろうか。

 まあ、こう言う処置は刑務所だけじゃなく、長期間の宇宙旅行の際などにも使われていたため、トランスフォーマーの間ではそこまで酷い扱いとも言い切れないのだが。しかしそれでも、解体刑ってのはゾっとしない。

 

「スカイファイアー、これらパーソナルコンポーネントの内で、本当の危険人物を除いた者たちは、解放したいと思うんだが。おそらくは、無実の罪、つまり冤罪で刑に処された者とか、あとはメガトロンに逆らっただけの者とかも居ると思うんだ。

 だが本気で凶悪犯とか、デストロンの政治犯であっても思想的に相容れない、ウチでも政治犯になりかねない奴らは多いと思われるからな。メガトロンの敵だったってだけで、デストロン至上主義は変わらないとか。そう言う奴らは解放できない。」

 

 うん、本来のコンバットロンになるはずだった連中とかな。

 

「わかったよ。わたしが責任者になって、デストロンの捜査資料他からどんな者たちだったかの調査チームを作る。」

「だいたいの人数が分かったら、教えてくれ。そしたらロボット工場で身体(ボディ)を造らせる。そしてそれにパーソナルコンポーネントを殖え込む。」

「それがいいね。」

 

 さて、とりあえずの大仕事が完了した。セイバートロン星のNAIL領域は随分と広がったな。だけどその分、少しばかり……。ちょっとばかり警備体制とか防衛体制とかの厚い薄いの差。あと旧来の領域である『技術屋の天国(エンジニアーズ・ヘブン)』と新規に獲得した領域で経済格差が出てるとか。制度上の(ゆが)みが出て来てやがる。しばらく内政をメインにしないといかんか。

 まだセイバートロン星の残るデストロン領域には、大量のスタンドアローン(タイプ)の戦闘用ドロイドの群れや、それを指揮する下っ端デストロンが居る。頭は固くて悪いが、武器の威力だけは本物だ。更に指揮官が居れば、かなりの危険度になる。

 下っ端ジェットロン4人のうち3人をシックスショットが撃ち落として捕まえてくれたんで、制空権は近々こちらの手に落ちるだろう。制宙権も、セイバートロン星を仕切っていたレーザーウェーブがこちらの手に落ちた以上、頭の悪いスタンドアローンの戦闘ドロイドが(メイン)なら、なんとかなるか……。

 そして制宙権を握ったら、本格的に対ユニクロンを睨んで防衛環境を整えなくてはならねえ。いや、それだけじゃねえな。メガトロンの逆襲にも注意を払っておかねえと。メガトロンは事実上セイバートロン星を失った様なもんだが、奴の策源地は地球なんだ。逆にかえって、軍団の維持運営に対して重荷になってたセイバートロン星が無くなった事で、奴の自由度は上がったかも知れねえな。

 さあて、どう出る?メガトロン……。どう出る?ユニクロン……。




スタスク、セイバートロン星に王手をかけました。ですがメガトロンの逆襲が怖いです。そして徐々に迫りくるユニクロン。とは言ってもまだ影も見えて無いですが。
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