「よう、アルファートリン殿。今日はどうしたんだね?」
「うむ、今回はエリータ・ワンの望みでな。お前さん方に話があるそうなのじゃよ。」
「そうか。いや丁度良かった。俺たちの方も、お前さん方サイバトロン連中と話があったんだ。NAILに来てるデストロン連中には、お前さんたちが来る前に話をしてた。あっちは大喜びで了承してくれたよ。」
その言葉に、
「ほう、それは良かったのう。」
「アルファートリン様、スタースクリームが何を言い出すか分かっておいでで?」
「うむ。わしは以前にスタースクリームから色々話を聞いておったでな。そこからの推測じゃが。」
俺は居住まいを正すと、話を続ける。傍らのルナクローバーが、壁にあるスクリーンにセイバートロン星の状況を表示してくれた。
「こっちの話から先にさせてもらいてえ。これが今現在のセイバートロン星の状況だ。赤道
ここには元レーザーウェーブの指揮下にあった、戦闘ドロイドの群れがスタンドアローンで
だが。」
「「だが?」」
エリータ・ワンとクロミアが、異口同音に言った。俺は頷いて続ける。
「ある事情があって、俺たちはセイバートロン星とその周辺宙域の平定を急がにゃならねえ。それで強引だが、攻める事にした。幸いだが、戦力的にはデストロン刑務所から解放した奴らが、多くNAIL防衛軍に志願してくれたんでな。3軍に分ける余裕ができた。
この北極と南極を繋ぐ回廊部分は、俺が指揮官になって攻め落とす。敵に残された
そして攻め落とした後の話が本題だ。南極
「「!!」そ、それは願っても無い事……。と言うよりも、わたしたちはセイバートロン星へサイバトロン基地を建設する事を願い出に来たのよ。それが自治区とは……。」
驚きを顔に浮かべ、自分たちの望みを語るエリータ・ワンと、同じく驚いたまま硬直しているクロミアの対比が面白い。
「これは最初からの想定だったんでな。どうしてもサイバトロンやデストロンの身分を捨てられねえ者たちにも、居場所を作ってやらねえと、将来的に禍根が残る。理想は全員がNAILに加入してくれる事なのは間違い無えんだが、現実を無視しちまったらそれこそ社会に歪みが残る。その結果は、再度の
「「……。」」
「デストロンとサイバトロンは、南極と北極に分かれて住んでもらう。その間にNAILの
セイバートロン星の歴史はお前らにも教えただろう?クインテッサ星人による支配と、それからの脱却。だがその後、デストロンの蜂起。民間ロボット発祥のサイバトロンと、軍事用ロボットが祖先のデストロンは、
無理矢理に『宇宙を一つに!』って
エリータ・ワンとクロミアは顔を見合わせるが、やがてクロミアの奴が何かに気付いたような顔で口を開く。
「スタースクリーム。あなた先ほど、『ある事情でセイバートロン星とその周辺の平定を急がなければならない。』と、そう言っていたわね。その『ある事情』は話してもらえないのかしら?」
「その質問は、先に話を通したデストロン傭兵代表からも出て、説明した。お前らにも勿論話すつもりだったがな。これは全セイバートロン星、いや地球や宇宙にいる連中も含め、全トランスフォーマーの全力を結集しないといけない問題だからな。」
「それは何?」
「ルナクローバー、頼む。」
「はい!スタースクリーム様!」
ルナクローバーの操作で、スクリーンの映像が切り替わった。そこに映されたのは、ある惑星の最後……最期の映像だった。
「これは銀河の反対側……地球や今現在のセイバートロン星がある位置をアナログ時計の6時の位置だとすると、2時の場所に位置する惑星ドーンが滅びた時の映像だ。この惑星には、トランスフォーマーで無いにせよロボット生命体やそれ以外の知的生命体が多数生きていた。だが……。」
「「!!」こ、これは!」
「……。」
「これは、惑星ドーンの数少ない脱出に成功した生き残りが、銀河系に生きる者たちのために可能な限りの伝手で流して寄越した映像の、コピーのコピーのコピーだ。……この惑星そのものを噛み砕いて喰らっている巨大な化け物。
超古代から生き続ける恐るべき天才にして天災科学者プリマクロンが創造したものの、その創造主に反乱して宇宙を暴れまわっている惑星サイズのトランスフォーマー、星帝ユニクロンだ。」
映像の中で、宇宙を駆ける巨大な球体が、2本の牙で惑星ドーンに噛り付き、噛み砕きつつその口で咀嚼して行く。脱出を試みる宇宙船もいたが、その内の多くは口から発せられる
「ユニクロンは、宇宙の惑星を喰らいつつ、それをエネルギーに変えて宇宙を気ままに放浪している。その行動は、本来予想がつかないはず……だった。だが近いうちに、奴は地球とセイバートロン星が存在する、この宙域に必ず現れる。」
「何故かしら?何故それが判るのスタースクリーム?」
「サイバトロンのマトリクスだ。」
俺はエリータ・ワンの問い掛けに、はっきりと答えてやる。
「ユニクロンが唯一自分自身の強大なパワーに対抗し得ると考えている……いや天敵とさえ考えているのが、サイバトロンのマトリクスに秘められているパワーだ。数百万年、いや下手すると一千万年以上に至る間、蓄え続けられて来たサイバトロン・リーダーの叡智の集積体。それを解放すれば、それは強烈なまでの物理的なパワーとして発揮される。
ユニクロンは、だからこそ自身を破滅させうるマトリクスを破壊すべく、この宙域にやってくる。そしてそのついでの食事として、セイバートロン星や地球をムシャムシャやっちまうだろうぜ。」
エリータ・ワンとクロミアは言葉もない。俺は更に言いつのった。
「サイバトロンのマトリクスを上手く使う事ができれば、ユニクロンに勝てるかも知れねえ。だがそれじゃ駄目なんだ。切り札が一枚きり、しかもそれが上手く使えるかどうかも分からねえ不安定な代物だってのは、はっきり言って冗談じゃねえ。だから俺たちは大急ぎでセイバートロン星とその周辺宙域を平定し、対惑星クラスの……惑星破壊兵器クラスの武器を多数建造しなけりゃならねえ。
人事を尽くして天命を待つって言葉がある。みんなで頑張って頑張って踏ん張って踏ん張って、尽くせる限りの手を尽くした上で、奇跡に救われるってのなら俺も否定しねえよ?けど、最初から奇跡のマトリクスに頼りっきりでってのは、何か違うと思わねえか?
NAILに味方してくれてるデストロン連中は、賛成して協力を約束してくれた。お前らはどうする?お前はセイバートロン星サイバトロンの、事実上のトップだ。答えろ、エリータ・ワン!」
俺はエリータ・ワンに決断を迫る。
俺が率いたNAIL防衛軍の部隊が、最後の戦闘ドロイドを破壊する。フォースチップを使うまでも無かった。デストロン軍団支配
そして副官であるルナクローバーが、報告を上げて来た。
「サンストームを発見、逃げようとしたところをシックスショット率いる隠密部隊が捕らえたとの報告です!」
「良くやってくれたと伝えてくれ!こちらの損害は!?」
「損害は軽微!軽傷者が少数で、それも既に後送して
後は北極
『こちら南極
「そうか!よくやってくれた!」
南極
『こちらは北極
「ははは。まあそうだけどな。よくやってくれたな、損害は?」
『うん、損害はほとんど無いよ。敵には1人も指揮官役のデストロン兵士が居なかったんでね。戦闘ドロイドを駆逐する、単純作業の繰り返しだったよ。だけど数が数でね。最後の方はうんざりだったねえ。』
「そうか、ほっとした。後は物資の準備が整い次第、セイバートロン星周辺宙域の制圧作戦を開始するぞ。」
『了解だよ。ではサイバトロン傭兵と抑えの部隊を置いて、帰還するよ。』
これで残るは、周辺宇宙空間だけだ。そこのスタンドアローン形式戦闘ドロイドを掃除終わったら、L4、L5のブラックホール炉をセイバートロン星の衛星軌道に持って来ると同時に、対ユニクロン用兵器を開発開始しなければ。
疲れた。
ああ、いや。身体はそんなに疲れてない。機械だしな。超ロボット生命体だしな。気疲れしたんだ。何で気疲れしたかと言うと、サイバトロン自治区の代表エリータ・ワン、デストロン自治区の代表オクトーン、そして俺たちNAIL中心人物は、セイバートロン星の解放を祝っての式典に出てたんだ。と言うか、主催者だったんだ。
ちなみにデストロン自治区の代表に、いつの間にかオクトーンが収まってたのは正直驚いた。コイツ、『2010』ではダイナザウラーを抱き込んでニューリーダー病やってたんだよな。シックスショットに調べてもらったけど、コイツの野心は非メガトロン派閥のトップになった事で、鎮まってるらしい。正直ほっとした。
うん、セイバートロン星は解放されたんだ。うん。セイバートロン星周辺宙域は、完全に掃除完了した。1人だけ、ジェットロンのブランチヘイズって奴が戦闘ドロイドの指揮官として居たけれど、デストロンのセイバートロン星本部基地が陥落して以来、ろくにエネルゴン食って無かったらしく、すっかりボロボロだった。刑務所に収監されたんだが、最低限とは言え
と言う訳で、オイル風呂に入って疲れを流した後は、俺は再び仕事に没頭する。俺とブロウル、スィンドルは衛星軌道上に建設する新型ブラックホール炉の設計だ。スカイファイアーとオンスロートはブラックホール炉から地上に向けてビーム送電するビーム発信器と、ビーム受信施設の設計を担当している。他にも北極のサイバトロン自治区、南極のデストロン自治区、両者に対する支援策として各々3基ずつの反物質炉を寄贈するので、その手配はボルターがやってる。
今一番忙しいのは、宇宙空間での作業にもっとも適応している、ブレストオフだ。あいつは今、L4とL5のブラックホール炉を牽引して、セイバートロン星の衛星軌道に持って来ようとしている。
サンダークラッカーとプロテクティコン、そしてシックスショットは表と裏から警備に忙しい。セイバートロン星解放に成功した今現在、NAILにもサイバトロン自治区の連中にもデストロン自治区の連中にも、若干の気の
そんな時、通信が入った。ブラックホール炉を曳航してる途中のブレストオフだ。
『こちらブレストオフ。ボス、応答願います。緊急事態だ。』
「こちらスタースクリームだ。何があった。」
『セイバートロン星近傍宙域で、アストロトレインを発見したぜ、ボス。奴はセイバートロン星の地上から上がって来たスカイワープを回収すると、地球へ向けて航宙開始した。追いかけたかったが、こっちは万が一にも盗られたくない
「ご苦労。俺も、お前の判断を支持する。早く戻って来い。」
『了解だ。こいつを静止軌道上に置いたら、すぐ帰還するぜ。』
とうとう動き出しやがったか、メガトロン。おそらく今回は、単なる偵察だ。だがいったい、何を考えていやがる?
ついにセイバートロン星を解放いたしました。しかしスタスクにとっては、それは単なる準備に過ぎません。敵はユニクロン。あまりに強大なソレに対し、蟷螂の斧で立ち向かうスタスクに、勝機はあるのか。
そしてそんな事は知らんと、とうとう動き出すメガトロン。いったいどうなる!
そしてそこはかとなく、デストロン自治区のニューリーダーになっているオクトーン(笑)。彼も、その地位を保ち続けられるのか!?