我が名はスタースクリーム   作:雑草弁士

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第17話:スカイワープ

 ルナクローバーが、帰って来ねえ。ちょいと近場まで、パルプ雑誌の新刊を買いに出かけたまま、帰って来ねえ。アイツも俺の副官と言う役職で、曲がりなりにもNAILの中枢に居る立場だから、出掛ける時は必ず誰かと最低2マンセルで出ろって言ってたんだが。

 それなのにアイツ、「近所だし大丈夫ですよー♪トランスフォーム!」って、セイバートロンヘリに変形(トランスフォーム)して飛んで行きやがった。そしてそのまま、6時間経っても帰って来やがらねえ。痺れを切らした俺は急ぎ、プロテクティコンのストリートワイズとグルーブ、そして諜報主任のシックスショットに頼んで、足取りを追ってもらったんだ。

 

「……くそっ。」

「スタースクリーム、確かに心配だけれど……。」

「こんな時ほど、落ち着かねえと。」

「わかってる、スカイファイアー、サンダークラッカー。……大丈夫だ。落ち着いてる。」

 

 口では言ったものの、俺は随分と苛立っていた。こいつらも、『どこが落ち着いてるんだよ?』って顔をしてやがる。そうだ、こんな時ほど、本当に落ち着かねえといかん。俺は必死で精神の平衡を取り戻す。

 

「……ふう。本当にもう大丈夫だ。ありがとう2人とも。こう言うのは、プロに任せないといかんか……。」

『こちらストリートワイズ!報告します!B-22-315の路地裏で、遺留物を発見!ルナクローバー副官が購入した、パルプ雑誌が記録された記録装置(メモリユニット)です!

 ダウンロードIDが、データ書店への聞き込みで判明した、ルナクローバー副官が購入した物と一致しましたので、間違いありません!』

「なんだと!?」

『それと、周辺の壁に弱装のレーザー痕を発見しました!殺傷目的ではなく、無力化が目的の威力が弱いレーザーです!推測するに……。』

「そこで何者かに襲われ、連れ去られた、って事だな。不幸中の幸い、生きてはいるだろう。わざわざ弱装レーザーを使ったんだ。」

 

 壁の通信画面に映ったストリートワイズも頷く。と、そこで画面が2分割されて、グルーブの姿が映った。

 

『こちらグルーブです!報告します!自分は一般市民への聞き込みをしていたのですが、見慣れない鳥形トランスフォーマーの目撃例が何件か……。外見の情報から、おそらくは……。』

「コンドルか!じゃなけりゃバズソーか!?」

『はい!赤と黄色の両方が目撃されてます!』

「わかった!ストリートワイズ、グルーブ!お前らは一度2人で合流後、そのまま捜査を続行してくれ!」

『『了解!』』

 

 メガトロンめ!姑息な手に出やがって!俺は通信機の制御盤(コンソール)を殴りつけたい衝動を、必死で(こら)える。そこへもう1人から連絡が入った。

 

『シックスショットよりNAIL中央研究所、応答願います。』

「こちらスタースクリームだ!何か情報があったか!?」

『はっ。拙者の情報網に不審な宇宙船が、宇宙港ではなく郊外の(へき)地より離陸したとの情報が入ったでござる。外観からして、アストロトレインでは無いかと推測されまするが……。もしソレにルナクローバーが乗せられていたとすると……。』

『こちらブレストオフ!緊急!緊急連絡だボス!』

 

 突然また通信画面が2分されて、ブレストオフの姿が映し出された。……!?

 

「ブレストオフ!どうした、その損傷(ケガ)は!」

『すんませんボス、してやられた……。俺は衛星軌道上で作業中、逃走するアストロトレインを発見したんだが、周辺の電波状況が悪くて連絡できず……。慌てて追跡したんだ。

 そしたら奴め、『追って来たら人質の命は保証できねえぞ!』って……。そしてスラストとダージにレーザー砲を突き付けられてるルナクローバーの映像送って来やがって。俺ぁ『人質の命は、どっちにせよ保証されてねえじゃねえか!』って言い返したけど、内心(ひる)んじまって。そこを突かれて忍び寄ってたコンドルとバズソーに気付かずに……。』

「わかった!あんま喋るな!今すぐ軌道上(うえ)にファーストエイドを送る!お前はお前の損傷(ケガ)の事考えてろ!シックスショット、聞こえてたな!?」

『はっ。これより拙者は、隠密活動に入ります故。しばしの間、全ての連絡を断ち、地球のデストロン軍団を調査するでござる。しからば、ご免!!』

 

 俺は通信を終えた。やってくれたもんだ、メガトロン。コンドルとバズソー、なんとしても始末しておくべきだった。前回メガトロンの融合カノン砲を取り戻しに来た時に、なんとしても。俺はファーストエイドへ指示を出し終えると、両の拳を、固く、固く、握りしめる。

 ルナクローバー、俺はアイツに負い目みたいな物を感じている。本来は、まっさらな普通のNAILトランスフォーマーとして生まれて来るはずだった。それが何の因果か、多元宇宙の何処の並行異世界か知らんが、『赤の他人(ルナクローバーとやら)』のスパーク情報を自分のスパークに上書きされて。俺みたいな、ダメンズ……NAILを率いてはいるし、そう言う面ではけっこうな物かも知れんが、私生活(わたくしごと)の面でははっきり言って駄目駄目だと思う。そんなダメンズへの恋愛感情を()え付けられて。

 勿論、俺に責任は無えって事はわかっている。わかっちゃいるんだ。だが、だけど。そんなのって、あるか?そんな酷い事って、あるかよ?

 

「そんなのって、無えよなあ……。」

「スタースクリーム?」

「スカイファイアー、なんとしても助けるぞ。ルナクローバーを。」

「……ああ。」

 

 俺はルナクローバーの事を想う。ひたすらに、ただひたすらに、哀しかった。

 

 

 

 俺は普通のエネルゴンキューブで、無味乾燥なエネルギー補給(しょくじ)を終わらせると執務に戻る。アイツが居ない事で、これだけ精神にダメージを喰らうとは思わなかった。執務に逃避してないと、居ても立っても居られん。

 そこへ中央指令室で番をしていたホットスポットから、緊急連絡が来る。

 

「り、リーダー!リーダー・スタースクリーム!地球から通信です!相手は……メガトロン!破壊大帝メガトロンです!」

「なんだと!?今行く!」

 

 俺は中央指令室へ走った。どうやってこちらの通信コードを調べたのか、指令室の通信装置スクリーンにはメガトロンのにやにや笑いが大写しに映っていた。

 

「メガトロン、貴様!」

『おおう、これはこれはNAILリーダー、スタースクリーム殿?ふははは、共に軍団のリーダー同士。そのよしみで、今日はちょっとした頼みがあってな。』

「く……。NAILは軍団じゃねえ。一般市民も含めた、中立勢力だ。」

『ま、それはそれで、だ。こちらにご招待したご婦人がおってな。』

 

 (メガトロン)が脇に()けると、そこには予想通り、ルナクローバーがエネルゴン・バーで作られた(おり)に入れられ、サウンドウェーブに見張られているのが映った。

 

「ルナクローバー!く、メガトロン!何が望みだ!こちらで捕らえているフレンジー、ランブル、ラットバット、セイバートロン星のジェットロンたち、そしてレーザーウェーブの身柄か!?」

『あんな役立たずどもの事など、どうでも良いとも。それよりだな、スタースクリーム。お前を是非、招待したいと思ってな。ただし歓待の準備が間に合わんのでなあ。お一人様で、御出(おい)でいただきたくてな。』

「スタースクリーム、これは罠だ!」

「メガトロン、てめえ!」

 

 スカイファイアーとサンダークラッカーが叫ぶ。ああ、わかってらあな。罠だ。だけどよ……。ルナクローバーの顔にあった痕……。奴め、あいつを殴りやがった!

 

「何処だ。何処に出向けばいい。」

『駄目!スタースクリーム様、来ちゃ……。』

『ウルサイ、キサマハ黙ッテイロ。』

『キャ!』

「サウンドウェーブ、手前(てめえ)!く、さっさと場所を提示しやがれ!」

『いいともスタースクリーム。』

 

 そして画面にマップが表示される。アフリカのサハラ砂漠だ。データベースによると、砂の砂漠じゃなく、岩石砂漠地帯だな。

 

『では、待っておるぞ。くれぐれも、NAILの仲間を連れて来てはいかんぞ?ふははは。』

 

 通信は切れた。俺は拳を握りしめ、歩き出す。ホットスポットが慌てて言った。

 

「リーダー!お待ちを!明らかにこれは罠です!」

「いっその事、NAILの精鋭部隊を揃えて……。」

 

 オンスロートも叫ぶ様に言った。だが俺は(かぶり)を振る。

 

「駄目だ。それをやったら、奴はルナクローバーを破壊(ころ)して逃げちまう。……なあに、さっくりと行って、帰って来るさ。お前らは大船にでも乗った気で、待っててくれ。」

「大船って、タイタニックか何かかよ。スタースクリーム……。いや、()められねえのはわかってらい。お前が()めて()まるんなら、俺は生きて今ここに居ねえもんな。だが……。」

 

 サンダークラッカーが、泣きそうな声で言う。そしてスカイファイアーが語り掛けて来た。

 

「スタースクリーム……。待っているから、必ず『帰って』来るんだ。必ず、ね。」

「おう。んじゃあ行って来る。トランスフォーム!」

 

 俺は変形(トランスフォーム)し、超空間ゲートを発生させると一気にそれを潜り抜けた。

 

 

 

 岩だらけの風景。殺風景な岩石砂漠。だが、俺のセンサーはここに多数の反応を感知している。俺は叫んだ。

 

「来たぞ、メガトロン!」

「ふははは、よく来たなスタースクリーム。では、歓迎パーティーを始めるとするか。」

 

 その声と共に、地面の下から土砂を巻き上げて、2つの巨体が立ち上がる。デバスターとメナゾールだ。更に上空にはスカイワープを先頭にして、ラムジェット、スラスト、ダージのネオジェットロン三人衆と、戦闘機形態のブリッツウィングが飛翔していた。後方からは、アストロトレインとリフレクター3人、インセクトロンのキックバック、シャープネル、ボンブシェルがインセクトロン・クローンと共に押し寄せて来る。

 そしてデバスターとメナゾールの後ろに、メガトロンとサウンドウェーブ、ジャガー、コンドル、バズソー、そして(おり)に閉じ込められたルナクローバーの姿があった。ルナクローバーが叫ぶ。

 

「スタースクリーム様!なんで来ちゃったんですかー!」

「ルナクローバー、仕方の無い奴だな。迎えに来てやったんだから、少しは喜べよ。さ、帰るぞ。」

「そう急ぐこともあるまい。少し遊んでいけスタースクリーム。ふははは、無駄な抵抗は、してもよいぞ?そうでなくては、つまらんからな。

 ……デストロン軍団、やれ!!」

 

 そしてデストロンの奴らが一斉に襲いかかって来る。俺は叫ぶ。

 

「フォースチップ、イグニッション!ヴァーテックス……キャノン!ブレイドぉ!!」

 

 フォースチップがチップスロットに叩き込まれ、ヴァーテックスキャノンとヴァーテックスブレイドが展開する。そして俺は、メナゾールの背後へと回り込んだ。ヴァーテックスブレイドが一閃。

 

「「「「「うわあああぁぁぁ!?」」」」」

「ば、馬鹿者!何故分離するか!モーターマスター!?」

「も、申し訳ありませんメガトロン様……。合体ジョイント部を斬られました!」

「なんだと!?」

 

 奴らが慌てている時、既に俺はデバスターの肩口に陣取って両肩の合体ジョイントを、一方はヴァーテックスブレイドで、もう一方はヴァーテックスキャノンで破壊する。そして飛び降りざまに、脚の付け根の合体ジョイントも破壊。デバスターも6体に分解してバラけた。

 

「ち、ちくしょう!だが数はこっちの方が上なんだ!」

「数で揉みつぶせ!」

 

 敵はレーザーやビーム、ミサイルを連打してくる。だが俺は突っ込んで来たモーターマスターの腕を取り、関節を極めてその大柄な身体(ボディ)を盾に、逆に奴らのただ中へ突っ込んだ。

 

「ぐあ!う、撃つな!撃つなあ!」

「くらいやがれ!」

 

 スクラッパーにモーターマスターを叩きつけ、グレンを振り回してデッドエンドとドラッグストライプを叩き伏せる。ヴァーテックスブレイドでブレークダウンとワイルドライダーの両腕を飛ばし、ミックスマスターの溶解液をロングハウルとスカベンジャーを盾にして躱す。ボーンクラッシャーを一本背負いでミックスマスターに叩きつけ、ヴァーテックスキャノンで無力化する。

 そこへインセクトロンどもや空からの敵が集中砲火を加えて来た。周囲のスタントロンやビルドロン共がまだ生きているのも構わずにだ。俺は致命傷になるものだけを躱し、後は命中す(あた)るにまかせて敵中へと突入した。

 

 

 

 痛てて……。さすがにあれだけ数がいるとなあ。俺はかなりボロボロになっていた。あちこち身体(ボディ)の回線がショートして、放電してやがる。装甲もひび割れ、煤けていた。だが、まだ動ける。まだ動けるって事は、まだ戦えるって事だ。

 メガトロンが、唖然としてやがる。デストロン軍団は、生きてるか死んでるかわからんが、ほぼ全員が死屍累々って状態だ。残るはメガトロンと、サウンドウェーブ、カセットロン3匹だ。

 

「な、ば、馬鹿な……。わしの軍団が……。」

「ルナクローバー……。そろそろ帰るぞ……。俺たちの『家』へ……。セイバートロン星へ……。」

「スタースクリーム様……。」

 

 ルナクローバーは、泣きそうな顔をしてる。そんな顔すんな。お前にゃ、阿呆の様に笑って、物騒な台詞を吐いてるのがお似合いだぜ?

 

「く、せ、セイバートロン星は貴様らの家などではないわ!セイバートロン星は、わしの物なのだ!これを見ろスタースクリーム!」

「む……。」

 

 メガトロンの野郎は、(おり)の中のルナクローバーに融合カノン砲を突きつけて叫ぶ。

 

「これ以上手向かいしてみろ!こやつの頭を吹き飛ばすぞ!サウンドウェーブ!カセットロン!奴を撃て、撃ち殺してしまえ!」

「リョウカイ、メガトロンサマ。ジャガー、コンドル、バズソー、攻撃指令。」

 

キシャアアア!!

クアアア!!

ガウルルル!!

 

 集中砲火が、俺を襲う。俺は急所だけは守って、ほぼ全弾を受けた。吹き飛んだ俺は、地面に倒れ伏す。

 

「ふ、ふはは、ははは!ようやっと倒れ……な、何い!?」

「泣きそうな顔してんなよ、ルナクローバー。さ、帰ろうぜ?」

「スタースクリーム様……。」

 

 再び立ち上がった俺に、メガトロンは怒りの形相を浮かべる。

 

「おのれ、スタースクリーム!ええい何をしておるかサウンドウェーブ!撃て、撃ち殺せ!」

「リョウカ……オワァ!?」

「サウンドウェーブ、何をしておる……な、何ぃ!?」

「クレムジーク!!」

 

 俺もその一瞬、あっけにとられた。突然出現したそれは、かつてメガトロンが作り出した超ロボット生命体の天敵、電気生命体クレムジークだった。クレムジークはメガトロンに飛び掛かる。

 

「クレムジーク!」

「な、ば、ばかものやめんか!貴様、創造主たるわしが分からんのか!」

「クレムジーク!!」

「うわっ!!……な、なにっ!?」

 

 クレムジークに怯えたメガトロンとサウンドウェーブ、そしてカセットロンどもは泡を食って逃げ惑っていたが、そのクレムジークは突然姿を消す。そして誰も居なくなったルナクローバーの(おり)が、そこに突如出現した(トランスフォーマー)影の発したビームで破壊された。

 

「さあ、お嬢さん。お前さんの騎士(ナイト)でなくて悪いがね。さっさと騎士(ナイト)さんのところへ行ってやりなよ。」

「お前は!リジェ!!」

 

 それは透明になれる特殊能力を持つ、サイバトロン戦士のリジェだった。さらに岩陰から、ホログラム映像を出す事のできるサイバトロン戦士、ハウンドも姿を現す。

 

「ハウンド!そうか、さっきのクレムジークはお前のホログラム……うわっ!」

「スタースクリーム様あああぁぁぁ!!」

 

 俺は飛び付いて来たルナクローバーを、必死こいて抱き留める。いや、俺は重傷だからね?まだ戦えるけど。でも重態一歩手前の重傷者だからね?

 メガトロンがリジェとハウンドに向かって怒声を上げる。

 

「お、おのれ!何故貴様たちが!」

「その2人だけだと思わない方がいいな、メガトロン。」

「何っ!その声はコンボイ!」

 

 砂漠の太陽を受けて、赤く重厚な機体(ボディ)(きらめ)く。やっぱりコンボイ、かっこいいよなあ。その後ろには、幾多のサイバトロン戦士たち。

 

「パーティーにはぎりぎり間に合ったかな?たしか、来てはいけないのはスタースクリーム以外のNAILメンバーだったはずだな。」

「な、何故その事を!何故この場所を!」

「NAIL諜報主任シックスショットからの連絡を受けてね。NAILでなければパーティーに参加しても構わないだろう、と。スタースクリーム。彼が詫びていた。独断で事を運び、申し訳無いと。後で自分からも詫びるそうだが。」

「い、いいか!?勘違いするなよ!俺たちは前の借りを返しに来ただけだからな!()(この)んでお前を助けに来たわけじゃ……。」

「アイアンハイド……。その辺でいいだろう。第一スタースクリームだって、そんな事は重々承知だろうさ。それよりか、早く治療しないとな。最後まで面倒見てこそ、きちんと借りを返したってもんだろう。」

「ラチェット……。」

 

 メガトロンは叫ぶ。

 

「で、デストロン軍団!撤た……(リトリー……)。」

「今日こそは逃がさんぞ、メガトロン!サイバトロン戦士、アターック!撃て撃て撃てーい!」

 

 猛烈な火線がメガトロンとサウンドウェーブ、そしてカセットロンを叩く。逃げ出そうにもあれじゃ逃げられない。だが生き汚い(メガトロン)の事……。

 

「撃ち方やめ!ブロードキャスト、反応は!?」

「残念ながら、奇跡的に生きてますねえ。」

 

 メガトロンは、必死に身を起こす。そしてみじめに哀願した。

 

「き、貴様の勝ちだコンボイ!た、頼む!情けをかけてくれえっ!」

「……わたしはともかくとして、彼はどう思うかなメガトロン。」

 

 響く銃声(ビームのおと)。ビームが(はし)り、メガトロンがこっそり拾おうとしていたサウンドウェーブのブラスターを撃ってはじき飛ばしたんだ。

 

「ひ、す、スタースクリーム!」

 

 そう、俺だ。俺が腰部のビームキャノンからビームを撃ったんだ。俺はメガトロンに、ヴァーテックスキャノンの照準を合わせる。

 

「や、やめろスタースクリーム!き、貴様にデストロン軍団のリーダーを、破壊大帝の座を譲ろう!だからやめろ!」

「……要らねえよ、んなもん。」

「やめろおおおぉぉぉ!!」

 

 俺は撃った。

 

 

 

 1人のトランスフォーマーが、胴体のど真ん中にヴァーテックスキャノンの直撃を受けて、それでも立っている。立ち尽くしている。両手を広げ、メガトロンを(かば)って。ぎりぎり最後の瞬間に、瞬間移動(テレポート)して。

 

「……スカイワープ。」

「あ、アストロ……トレインーーー!!メガトロン様を拾って!可能な限りデストロン軍団を拾って!逃げろーーー!!」

「あ、お、応!!」

 

 絶叫したスカイワープの声に、今まで死んだふりしてやがったアストロトレインがスペースシャトル形態に変形(トランスフォーム)する。って言うか、死んだふりしてやがったのか。ボロボロのデストロン軍団が、必死にそれに乗り込む。メガトロンも。

 そしてアストロトレインは離陸する。サイバトロン戦士どもが必死に射撃し、数発は命中したが、致命的な箇所にはあたらなかったらしい。スカイワープが全身全霊で撃ちまくり、離陸を援護したのも理由の1つなんだろうが。

 そしてスカイワープの上半身が、ぐらりと揺れて地面に落ちる。下半身は、立ったままだ。こいつの腹は、ほとんど原型を留めていない。上半身が、千切れて地面に落ちたんだ。

 スカイワープは、だがそれでもレーザーを撃とうとする。しかし両肩のレーザー砲は、ほのかな光を灯しただけで沈黙した。

 

「スカイワープ……。」

「スター……スクリー……ム、か……。へ、へへ……。どう、よ。メガ、トロン……さま……。見ご、と、に……。逃がし……た、ぜ。」

「ああ、してやられたぜ。」

 

 こいつはもう助からない。

 

「後悔、は……無え……。俺、は、デスト……ロン軍……団、に……。メガト、ロン様……に、忠誠……を……尽く……し……。」

「ああ、そうだな。」

 

 スカイワープは、誇らしげな顔から、だが少しだけ哀し気になる。

 

「ああ……。いや……。1つ、だけ……。後悔、が……。」

「なんだ?」

「サン、ダー……クラッ……カー。奴、が……。お前を……軍団に呼び戻そ……う、と、したのを……。メ……ガトロンさ……まに……。言ったのは……。お、俺……。あんな……事にな、るなんて……。サンダ……クラッカー……は、本気で……。軍団のためを……。思って言ったの……に。

 あれだ……け、は、後……悔。奴……に、謝ら……ねえ、と……。」

 

 俺はこいつに言ってやった。

 

「伝えて置くさ。お前が、済まねえって言ってたってな。」

「……おう。サン……キュ……。それでこそ……。お、れ、たちの……。航空……さ、ん、謀……。」

 

 死んだ。……俺が殺した。後悔は無え。けれど、ひたすらに哀しかった。

 

 

 

 俺はセイバートロン星の中央研究所に戻り、対ユニクロン用の兵器の設計に没頭していた。助け出されたルナクローバーも、一生懸命手伝っている。……スカイワープの遺言は、俺がきっちり果たした。サンダークラッカーにスカイワープの謝罪を伝えたとき、奴は「そっか……。」と一言だけ言った。

 だが俺は知っている。スカイワープの遺体を安置した、奴の「墓」……。サンダークラッカーは日ごろ忙しく働いているが、(ひま)を見つけては地下にある墓に出向いては、楽しかった事や苦しかった事など、いっぱい話しかけてやがるんだ。願わくは、サンダークラッカーの言葉がオールスパーク(あのよ)に還ったスカイワープのスパーク(たましい)に届かん事を。

 いや、お前が言うなって言われそうだけどな。俺も(サンダークラッカー)ほどじゃないが、しょっちゅうスカイワープの墓には(もう)でている。スカイワープを自分で殺してしまったのは、かなり何かスパーク(たましい)に来たみてえだ。

 ちなみに地球のデストロン本部基地は、俺を殺しに総員出撃した間に、潜入したシックスショットの手で完全に爆破されている。デストロン軍団は、エネルギーにも修理(リペア)部品(パーツ)にも事欠いているはずだ。だが奴らの行方は(よう)として知れない。(いま)だ地球に居るのか、あるいは宇宙の何処かへ逃げ出したのか……。

 コンボイたちサイバトロン軍団は、それ故に地球の基地を引き払う事ができずにいる。当初はコンボイが、エリータ・ワンからサイバトロン自治区リーダーを引き継ぐ話もあったんだが。

 

「スタースクリーム様!そろそろ休憩しないと!」

「おう、あとちょっとでコレ終わるから、そしたら休む。」

 

 ルナクローバーは、変わらん。と言うか、変わらん様に振る舞ってる。ただ、今回の事は流石に効いたのか、色々と注意は払う様になったな。1人じゃ出歩かんとか。ウーマンサイバトロンに銃を抜こうとしなくなったとか。

 何にせよ、俺たちは立ち止まっちゃ居られねえ。ユニクロンに備え、デストロン軍団の逆襲にも備えなきゃならん。……頑張らなきゃ、な。




ルナクローバー話かと思いきや。実はスカイワープさよなら話でした。
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