我が名はスタースクリーム   作:雑草弁士

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第4話:慟哭

 寒い。むっちゃ寒い。もの凄く寒い。機械の身体ですらも、凍り付きそうなほどだ。ここは北極。極寒の中、俺は手に持った金属探知機を精密モードにして、歩き回って周囲を調べていた。

 

「上空から広域モードで探したが、それらしい反応はこの辺のはずだった……。お!?」

 

 反応があった。大型のジェット機ほどの大きさをした、金属反応。形状は人型。ビンゴだ!!

 

「見つけたぁ!!待ってろ!!」

 

 俺は最近、独り言が多くなった。寂しい奴だって言うんじゃねえぞ。ボッチなのは自覚してる。だが、あえてそれを言われると傷付くんだ。凄く。

 そして俺はビーコンをここに置くと、いったん前線基地にしたキャンプに取って返し、砕氷用の土木機械を持ってすぐさま戻る。そして大急ぎで氷をガリガリと削り始めた。

 

 

 

 北極で長時間活動するため、たっぷりと充電して持ってきた予備バッテリー5基のうちの3基を完全に空っぽにして、俺はソイツを氷から掘り出す事に成功する。それは大型のロボット……超ロボット生命体、トランスフォーマーだ。

 

「システムチェック……。中枢部分がダメージ受けてやがるが、氷に閉じ込められてたおかげでそれ以外の部分には損傷や経年劣化はほぼ無え……。中枢部分も、記憶回路(メモリチップ)とか含む頭脳回路(ブレインサーキット)とか、ヤバい部分は無事だ。

 問題は動力系だな。だが、持って来た部品(パーツ)でなんとかなりそうだ。ミスるな、慎重に、慎重にだぞ、俺……。確保できた部品(パーツ)は1回分だけだ。」

 

 うん、デストロンがサイバトロンとの野戦になって放棄した、臨時基地を見つけたんだよな。デストロン側としては、サイバトロンに発見されると思って撤退の際に放棄してったんだが。しかしサイバトロンはそれを発見し損ねて。結果として、俺が漁夫の利を得たわけだ。

 と言っても、そこにあった設備は最低限。残されていた修理(リペア)部品(パーツ)とかも補給物資とかも、ほんの僅か。エネルゴンキューブに至っては1個しか無かった。だがその、ほんの僅かな修理(リペア)部品(パーツ)は、俺が喉から手が出る程に必要としていた物だったんだ。そう、コイツを治療(リペア)するために。

 ちなみにその臨時基地の設備は、あらいざらいありがたく(いただ)いて隠匿(いんとく)してある。

 

「……よし、仮死によるシステム保全モード解除。もう部品無いからな。これが最初で最後のチャンスだ……。いくぞ、動力点火(イグニッション)!」

 

ウイイイィィィン……。

 

「う……。こ、こ、は……。わたし、は……。」

「やった!成功だ!」

「き、きみ、は……スター……スク、リー、ム?」

「そうだ、俺だ!わかるかスカイファイアー!!」

 

 そう、こいつはスカイファイアー。俺が、過去の『(スタースクリーム)』だった頃の、唯一に近い……。いや、唯一の友人で、親友だった奴だ。数百万年前に宇宙探検に出て、とある未開惑星を探査中に事故で行方不明になった。同行していた俺は必死で、その未開惑星を……数百万年前の地球を1周して探したんだが、発見できず……。断腸の思いで諦めたんだ。

 本当は、『(スタースクリーム)』が今の俺に融合同化した時点で、北極にコイツがいる事はわかってた。だからすぐにでも助けに行きたかった。けれど、デストロンにコイツを入れちまったら、アニメと同様に(たもと)を別つ事になるか、気が優しいコイツを苦しめる事になってたはずだ。

 だからどうしようか悩んで、先延ばしにしてた。どうせメガトロンが地球コアからのエネルギー収奪作戦をはじめれば、コイツが見つかってアニメ同様のエンドを迎えるのは分かり切ってたのにな。だけど……。

 俺はもう、デストロンじゃない。つまり堂々とコイツを救出できるってわけだ。……!!まずい!!

 

「な、ど、どうし……たんだ、い?スター、スク、リーム……。」

「静かに!今、探知妨害装置を動かす!……いいぞ。」

「たん、ち、妨害?」

「ああ。ちょっと見つかりたくねえ奴がな。」

 

 そして、空の上をジェットモードのブリッツウィングがフライパスして行く。そうか……。そろそろ地球コアからのエネルギー収奪を始める気なんだな。間一髪だったって事か。

 

「どうしたスカイファイアー。言葉が妙に突っかかるみたいだが。」

「あ、ああ……。すこ、し発声回路、が、痺れているようだ……。」

「ちょっと待て。今調整してやる。……これでどうだ?」

「ああ、楽になったよ。ありがとうスタースクリーム。」

 

 そしてスカイファイアーは身体を起こす。俺はそれに手を貸してやった。コイツ、デカいから重いんだよホント。

 

「スカイファイアー、トランスフォームはできそうか?飛べるか?」

「ちょっと待ってくれ。今チェックプログラムを走らせるから。……うん、83.09%出力だが、何とか。」

「そうか、なら俺の拠点に行くぞ。そこでゆっくり話そう。ただな……。俺は今現在、色々と後ろ暗い身の上だって事は、理解してくれ。」

「ど、どう言う事だい?」

「それも含めて話す。だから今はとりあえず……。頼む。」

 

 スカイファイアーは、一瞬戸惑ったが、しかしすぐに頷いた。頷いて、くれた。

 

「わかった、友よ。君は命の恩人だ。その君が言うんだ。共に行こう。」

「ありがとうよ……。トランスフォーム!」

「トランスフォーム!」

 

 俺たちは連れ立って、大空へと飛翔した。ああ……。『久しぶり』だ、この感覚は。涙腺なんて無いが、涙が出そうだった。

 

 

 

 いい気分で飛んでたら、後ろから追って来る飛行物体がある。スカイファイアーも気づいた様だ。

 

「スタースクリーム。後ろから何か追尾し(つけ)て来るよ。」

「あいつは……。まあ、あいつならいいだろ。赤くないし。」

「い、いや。見るからに赤い機体色だけど。」

「とりあえず、いったん降りるぜ。」

 

 俺たちは地上に広がる森の中に、トランスフォームして降り立った。そこへ赤い飛行機型ミニボットも、俺たちを追って降りて来る。

 

「トランスフォーム!スタースクリーム、デストロンを抜けたって言ってたけど、仲間がいるなんて、やっぱり……。あ、あれ?そっちの奴もデストロンのエンブレムが無い?」

「ようパワーグライド。こいつは数百万年前に、この地球に墜落した探検家にして科学者のトランスフォーマーでな。俺とは旧知の仲、友人なんだよ。発見して、救出した。」

「す、スタースクリームに友人がいたなんて!!で、でもそれならなおさら、なんでデストロンじゃ……。」

「戦争が始まる前だったからな。」

 

 ここでスカイファイアーが口を挟む。

 

「そこの赤い君。少し失礼じゃないかい?スタースクリームはわたしにとって、大事な親友だ。」

「し、親友!?」

「ああ、いいんだスカイファイヤー。お前が行方不明になってから数百万年が過ぎてる。で、お前が氷の中で冬眠してる間に、俺はデストロンって軍団に入って、こいつのいるサイバトロン軍団と、血で血を洗う戦いに身を投じていたんだ。ま、先日軍団をクビになっちまったがな。」

「なんだって!?君をクビにするなんて、馬鹿なことをしたもんだ。」

「いや、俺は対人交渉能力が低かったの知ってるだろ?それで上官と折り合い悪くなってな。それに人付き合いが苦手だったから、威張り散らすだけ威張り散らして、そんなんで部下や同僚との信頼関係も築く事ができなくてな。クビになった時は、誰も(かば)ってくれなかったよ。」

「そんな……。」

 

 スカイファイアーの哀し気な様子に、パワーグライドは目を白黒させる。そんなパワーグライドに、俺はメモリーチップを投げてやった。

 

「あ、え、こ、このチップは?」

「まあ、俺にも悪い所があったとは言え、けれど俺をクビにしたときの、あのやり口はどうしても赦せなくてな。だからメガトロンへの嫌がらせで、そのチップの中身を編集した。俺が知ってる、デストロン軍団の機密情報だ。それと、メガトロンが今後行うだろう作戦行動の予測。

 ああ、作戦行動の予測の方は、メガトロンが何の気なしに独り言を呟いた内容からの憶測とかも入ってるからな?あんまりソレに(とら)われるな。なんにせよ、コンボイに渡してくれ。」

「す、スタースクリームが親切を!?」

「だからメガトロンへの嫌がらせだって言ったろうが。」

 

 うん、作戦行動の予測は、アレだ。俺のアニメ知識からの情報まとめだ。ま、ここまで色々歴史が変わっちまうと、同じ様になるか全然わかんねえけどな。

 

「ああ、でもスタースクリームを野放しに、だけどこの情報をコンボイ司令官に……。」

「俺は何もしやしねえよ。とりあえず、俺たち程度のエネルギーは自家製の水力発電でどうにかなるしな。」

「う、ううん……。わかった!信じるよ。だけどそれを裏切ったら……。」

「どうとでもしてくれ。」

「……なんか、ホントに変わったんだなスタースクリーム。トランスフォーム!!」

 

 パワーグライドの奴は、飛んで行った。あっちはサイバトロン基地だな。

 

「いや、見つかったのが赤いサイバトロンじゃなくて良かったぜ。」

「赤かったじゃないか。」

「いや、体色じゃなくて精神面の話さ。まあ、その辺も含めて、帰り着いたら話してやるよ。」

 

 そうして俺たち2人は、再度その場から飛び去った。

 

 

 

 そして俺の隠遁場所だ。山中にある滝の滝壺(たきつぼ)を入り口とし、その滝の裏側にある洞窟を拡張して造り上げた、簡易的とは言えど立派な基地だ。

 

「すまねえな、お前には少し狭いだろ。スカイファイアー……。」

「いや大丈夫。ちょっと身を屈めれば、あ(いた)!」

「うん、後で洞窟をもうちょっと拡張するか。お前、エネルギー充電(チャージ)不十分だろ。充電(チャージ)しながら、話聞いてくれ。」

 

 そして俺は話し始めた。

 

 

 話は大昔まで(さかのぼ)る。元々俺たちトランスフォーマーは、最初はただのロボットだった。長い年月の間に、独自の命を……スパーク(たましい)を持つ様にはなったが。

 俺たちの先祖を創ったのは、クインテッサ星人。軍事用のロボットと、民間用奴隷ロボット、それが俺たちの先祖だ。奴隷ロボットたちをいじめたり、軍用ロボットを剣闘士に仕立てて殺し合いをさせたりしたんで、大規模な反乱を起こされてセイバートロン星を追われたんだがな。

 で、平和な環境に不適応を起こした軍事用ロボットが戦争を起こした。軍事用ロボットに対抗するため、民間用ロボットたちはトランスフォーム能力を獲得、発展させ、戦った。そして民間用ロボットの攻勢に対処するためもあり、軍事用ロボットもトランスフォーム能力を獲得。そして長い年月が過ぎ、戦ったり平和になったりを繰り返した。

 そんで長い平和の時、その末期あたりか。お前が大昔の地球に墜落して行方不明になったのは。あの平和は、腐りきってた。不公平はまかり通り、不正は横行してた。当時の司令官、ゼータのクソ野郎が……。おいとこう。

 そんで、軍事用ロボットたちはデストロンを名乗ってまた戦争を始めた。長い、長い戦いが続いた。こんだけ聞くと、デストロンが正しい様に思うが、さにあらず。デストロン連中も結局言いたい事は、「俺に権力を寄越(よこ)せ」だ。いや、当時の俺も他人(ヒト)の事ぁ言えなかったが。俺も、軍事用だったからなあ。

 そして……。デストロンの現リーダー、破壊大帝メガトロンが出現する。って言うか、あいつ俺の事若造若造言うけど、あいつの方が後から出来たんだよな。精神設定は俺の方が若いみたいだが。奴のスローガンは『圧政を通じての平和を』だ。物騒だろ?

 奴は、平和は望んでいる。ただし自分の元での、な。そして全宇宙の覇者となる事を夢見ている。その邪魔をする者は、どんな奴でも、いい奴でも悪い奴でも叩き潰す。この地球の人間なんぞ、ゴミムシ程度に考えてるしな。デストロン軍団が、悪の軍団って言われるわけさ。実際、悪い事を平気の平左でやるしな。

 その、なんだ。お前に言うのは恥ずかしいし、お前に軽蔑されても仕方ないと思うが……。俺もあいつの下でNo.2まで出世したからな。随分と下衆な事に手を染めたよ。しかも今思うと恥ずかしいが、部下の手柄を横取りしたり、自分のミスは部下に押し付けたり、酷い奴だった。思い返すも恥ずかしい。

 ……おお、すまねえ。続きだな。一方の民間用ロボット連中だが、サイバトロンと名乗って軍団を編制し、デストロンに対抗した。正義の軍団を名乗っているし、現リーダーのコンボイ司令官は、それに相応(ふさわ)しい人格者だ。座右の銘は『自由とは全知的生命体の権利である』だ。時々頭脳回路が熱くなって暴走はするけどな。

 ただなあ……。奴らも純粋な正義かって言われるとなあ……。科学の進歩のためなら手段は選ばないマッドサイエンティストはいるし……。ホイルジャックってんだけどな。それはいいか。

 なんっつうか精神面で『赤組』な奴らがいるんだよ。デストロンを滅ぼすためなら、手段選ばねえ奴らが。下手すると、デストロン連中以上に物騒でなあ。コンボイの指示や命令も曲解したり、下手するとデストロンを殺せるなら命令無視したりする。頭が冷えると、自分が悪かったって理解する程度の理性はあるんだが。奴らは『正義のためならあたりまえ』なんだよなあ基本。そうじゃない、普通にいい奴もいるがね。さっきのパワーグライドとか。

 つまりお前が居なくなった後に起こった、そして長く長く幾百万年続いたこの戦争は、『独善の暴君VS暴走する正義』の戦いなんだよ。それで、セイバートロン星は荒廃し、エネルギーは枯渇し、技術は一部の軍事科学とか以外は灰塵に帰し、滅亡の瀬戸際にある。……その責任の一端は、あきらかに俺にもあるんだが。

 そして400万年前だ。荒廃するセイバートロン星を救うため、そして自分たちのエネルギーを得てデストロン軍団に勝利するため、サイバトロン軍団は宇宙船『アーク』に乗ってエネルギーの宇宙探索に出た。だがそれを黙って見ているデストロン軍団じゃなかった。宇宙戦艦『ネメシス』でその後を追って、『アーク』に接舷してそん中で戦いを繰り広げた。んな事してたら、墜落するわな。『アーク』は地球に墜落し、俺たちは400万年の間、仮死状態でその中で眠っていた。

 そして400万年後の今、復活して性懲りも無く地球人類まで巻き込んで、デストロン兵士とサイバトロン戦士は戦いを繰り広げているわけだ。地球のエネルギーを奪ってセイバートロン星を復興させようってデストロン軍団、それを阻止しようとするサイバトロン軍団……。

 

 

 

「軽蔑、しただろ?」

「……いや、ただ『戦争は(ロボット)を壊す』んだな……と感じたけどね。でもわたしは、君を軽蔑したりしないよ。だって……。」

「?」

 

 そしてスカイファイアーは言った。

 

「君はわたしの友達じゃないか。」

「!!」

 

 俺に涙腺が無いのが、こんなに悔しいとは思わなかった。泣きたかった。哭きたかった。俺は顔を伏せて、しばらく震えていた。

 

「すまん……。いや、違うな。『ありがとう』、だ。ありがとうスカイファイアー……。」

「ははは、変だね。助けてもらったのはわたしの方なのに。」

「スカイファイアー……。もう1つの秘密がある。聞いて、くれるか?」

「うん。」

 

 そして俺は、俺のスパーク(たましい)に、並行異世界から来た別の地球人の魂が混じっている事を告白した。その地球人の世界では、トランスフォーマーたちの戦いがTVアニメーションや映画として存在する事も。本来の歴史では、俺たちが決別していた事も。

 そしてスカイファイアーは言った。俺の手に、その巨大な手のひらを被せて言ったんだ。

 

「……地球人のメンタリティが混じった心で、『邪悪』とされる行いをするのは(つら)かっただろう?それに秘密を抱えて、軍団の中で孤立して。必死に頑張ったのにクビにされて。完全に分かるとは言えない。だけど、(おもんぱか)るぐらいはできるよ。

 だから……。我慢しないで。もう『泣いて』もいいんだ。」

 

 その瞬間、俺の中で何かがブチっと音を立てて切れた。俺は慟哭した。涙は出ない。しかし声帯スピーカーがハウリングを起こしそうなぐらいの声で、慟哭した。そうだ。俺は自分でも気づいていなかったけれど。俺は自分でも気づいていないフリをしていたけれど。俺は、俺は(つら)かったんだ。苦しかったんだ。誰かに聞いて欲しかったんだ……。




スカファイ「おい!何を我慢している!お前は今、泣いていい!!……泣いて、いいんだ。」
スタスク「う、ぐ、う……。うああ……。うあああぁぁぁ……!!」

と言うお話でした。
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