我が名はスタースクリーム   作:雑草弁士

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第5話:セイバートロン星への帰還

 物凄く驚いた。スカイファイアーも、唖然としている。何が起こったかと言うと、スカイファイアーのために俺たちの隠遁場所である滝の裏の隠れ家、その洞窟を拡張してたんだ。そしたら、鉱脈にぶつかった。

 何の鉱脈かって?……ルビークリスタル。埋蔵量は以前デストロン軍団が奪いに行った、あのルビークリスタル鉱山ほどじゃないけれどな。だけど未発見の、しかも質もそこそこのルビークリスタルだ。ここは本来某国の国有地、国定公園のど真ん中だから、国家の資産にあたるんだろうが……。すまんが、ちょろまかさせて貰おう。

 

「これでエネルゴンキューブを作れば……。数年は保つな……。」

「数年?わたしたちだけで使うなら、数十年、下手をすると100年は保つんじゃないかい?」

「いや、ちょっとした計画(プラン)があるんだ。今まではエネルギーも資材も無くて、実現可能性無しとして忘れてた計画(プラン)なんだがな。その計画のためのエネルギー源に使いたい。」

「どんな計画(プラン)だい?」

 

 そして俺は言った。

 

「セイバートロン星を再生させたい。」

 

 

 

 その後俺たちは、デストロンやサイバトロンの目をかいくぐって資材を集めた。何の資材かって?それは勿論、宇宙船のだ。基本、地上の土地は全て誰かの物だからな。公海の領域に海底鉱山を掘って、そこから金属資源を大量に得た。それを加工してパーツを製造し、宇宙船を組み上げる。

 活動に要するエネルギーは、作ったエネルゴンキューブにはできるだけ手を付けずに、水力発電とか、あとはこっそり海上に建造した海洋温度差発電所で充電(チャージ)した。小規模な海底油田が見つかって、エネルゴンキューブの数が増えたときは嬉しかったなあ。

 いやしかし、2人だけでやったから、けっこうな時間がかかった。仕事中に40℃も気温が下がった事もあったな。メガトロンの奴が地球コアからエネルギーを抜き出したせいで、地球が寒冷化したんだろう。でもすぐに気温は元に戻った。コンボイが上手くやったんだろ。

 あと、人間のニュースを傍受してたら、某ソ連の戦闘機が行方不明になって某米ソ間の緊張が高まってるとかも言ってたな。あの狂的(マッド)コレクターのチャムリー卿がやったんだよな。でもってコンボイが頑張って事件を解決した。俺はこのニュースをデータ化して録画して、スカイファイアーにも見せてやったよ。あいつ善良すぎるからなあ。地球人にも悪いやつがいて、ピンからキリまであるからなって教えて置かないと。

 大地震が地球全土で起きた事もあったっけ。あれだな。地球のコアからエネルギーを奪う作戦の2種類目。巨大なドリルで地下への穴を掘って、コアにまで届かせるやつ。地球が崩壊する危険もあるんだったけどな。流石にこの件はヤバかったので、公衆電話回線をジャックして、コンボイに連絡した。いくらなんでも地球の危機なので、何なら手伝うと言って。まあ、手伝う間も無く事件は終息したんだがな。

 ああ、そう言えば連絡した時に、以前パワーグライドを通じて渡したメモリーチップに関して礼を言われたな。俺のおかげで、メガトロンの計画に対して色々と先手を取れてるそうだ。いつも通り、「メガトロンに対する私怨を晴らしただけだから、気にすんな。」って言っておいたが。

 事件終息後、あらためて適当な場所の電話回線からサイバトロン基地に連絡した。なんか不安だったからな。セイバートロン星を巨大スペースブリッジで地球軌道に引き寄せ、重力の潮汐力で発生する大災害のエネルギーをもって、エネルゴンキューブを大量生産しようって作戦。日本版アニメ最終回の作戦についてだ。渡したメモリーチップにも情報入れてたけど、災害規模がデカすぎるから注意しろって。

 コンボイは頷いてた。けど、な~んか不安なんだよな。大丈夫か?

 

 

 

 そんなこんなで、ついに俺たちの宇宙船は完成した。

 

「やったな、スカイファイアー。」

「ああ。これでセイバートロン星に戻れるね。戻ったらまず……。」

「まず拠点の確保だな。その後は、セイバートニウムを手に入れて、俺たちの身体をメンテしねえとな。調べたら、あとちょっとで運動機能障害が発生しそうなところじゃねえかよ。

 そしたら次に……。」

「うまく交渉できるといいんだけどね。」

「望みは薄いな。けど、やるだけやってみるさ。」

 

 地下を掘り抜いたサイロに、ロケット型宇宙船は鎮座していた。俺たちは基地施設の機械設備を、可能な限り宇宙船に積み込む。貧乏性と言わば言え。俺たちは、『今はまだ』たった2人の弱小勢力だ。(わず)かでも、資産を無駄にするわけにはいかないんだ。

 

「スタースクリーム、レーダーに感ありだよ。」

「これは……。ついに見つかっちまったな。スラストとダージの野郎だ。ネオジェットロンだよ。だが……。」

 

 俺は発進スイッチを押し込んだ。

 

「もう、遅え。」

 

ゴゴゴゴゴゴ……。

 

 轟音と共に、俺たちの宇宙船は発進を始めた。スラストは俺たちの隠れ家跡へと垂直降下して行く。ほぼ何にも残ってねえんだけどな。一方のダージは、俺たちの宇宙船を追って全力で飛びつつ、レーザーを撃って来た。俺が艦橋(ブリッジ)で操船してんのを、見られたんだな。俺は叫ぶ。

 

「スカイファイアー!フォースバリアーを!」

「了解!」

 

 スカイファイアーの指が、制御盤(コントロールパネル)の上を踊る。宇宙船後部に、トレイルブレイカーのものもかくや、と言う強力なバリアーが張られた。ダージのレーザーは、バリアーに阻まれて宇宙船には命中しない。

 やがてダージは、宇宙船の上昇力においてけぼりにされて脱落して行く。俺たちの宇宙船は、宇宙へと飛び立ったのだ。

 

 

 

 そして俺たちは、無事にセイバートロン星へと到着した。いや、長い長い旅だったが、同時に何も無い退屈な旅でもあったんだ。操船の交代要員は2人しかいねえから、操船放り出してチェスや将棋やリバーシとかで遊ぶわけにもいかん。本気で退屈だった。

 

「……宇宙から見たときも思ったけれど、これが今のセイバートロン星かい?」

「ああ。お前が行方不明になった後はもちろん、400万年前とすら比べ物にならねえ。これでもデストロン占領領域、その中枢部だけだが、そこはまだ多少マシになったんだぜ?俺がスペースブリッジ実験で、エネルゴンキューブ届けたからな。」

「そう、か……。暗いね……。」

 

 俺たちが着陸したのは、今のセイバートロン星では数少ない、今現在デストロンに占領されていない区域だ。当然ながら、デストロンによるエネルギー供給の恩恵に(あずか)れず、周囲は真っ暗闇だ。まあ、俺たちは暗視装置があるから、暗くても大丈夫ではある。もっとも暗視装置映像では色とかわかんねーし、普通の可視光が欲しいのは変わりない。

 

「ここは大昔の、金満汚職議員野郎が持ってた個人用の宇宙船発着場だ。戦争勃発時、真っ先にデストロンに襲われて死んだけどよ。ブラックアウトの奴が手柄を自慢してたっけ。」

「ブラックアウト?」

「あー、戦闘キ○ガイ。今どこにいるんだろな。会いたくもねーが。地球のデストロン軍団には居なかったし、セイバートロンに一時帰還したときにゃ姿を見なかったからな。」

「なるほど。」

 

 俺たちは宇宙船を解体し、そこから地下深くの領域(エリア)へと潜る。大昔の地図から、かつて大規模な金融機関があった場所に目をつけていた俺たちは、その巨大な金庫室へ資材や設備を全て運び込んで拠点化した。

 

「さて、と。一番近いセイバートニウム鉱山なんだが。」

「これはデストロン領域内じゃないのかい?」

「そうなんだ。だからこっちの……。」

 

 俺は地図の上で指を滑らせて、少し離れた場所を指差す。

 

「小規模鉱山の跡地へ向かう。運が良ければ精錬済みのセイバートニウム備蓄が手に入るし、そうでなくとも少しがんばれば採掘できるだろう。その場合は、精錬の手間が要るがな。」

「了解だよ。急ごう。」

 

 俺たちは小規模鉱山跡地へと向かう。往路は問題無かった。目的地にたどり着いてからも、幸いにも崩れかけた倉庫で、精錬済みのセイバートニウムを大量入手に成功した。これならば俺とスカイファイアーだけでなく、『連中』の仕上げ分にも充分だ。俺たちはでかいコンテナにセイバートニウムを満載して、引き上げにかかった。

 そして帰路を道半ばまで来た時だった。コンテナを担いだ俺たちの足元に、ビームが着弾する。

 

「動かないで!デストロンども!」

「あー、めんどくさい奴らに見つかっちまったな……。」

「誰なんだい?スタースクリーム。」

「スタースクリーム!?まだ生きていたのね!エリータ・ワン!こんな奴ら生かして置く必要ないわ!吹っ飛ばしてや……。」

「やめなさいクロミア!情報を聞き出してからよ。」

 

 俺は溜息を吐く。そしてスカイファイアーの疑問に答えた。

 

「こいつらはウーマン・サイバトロン。リーダーのエリータ・ワンがコンボイの恋人でな。あの青いくせに赤いのがクロミア。アイアンハイドって真っ赤な奴の恋人だ。あっちのはムーンレーサーつって、パワーグライドの恋人。一番後ろがファイヤースターって言ってな。消防車のくせに真っ赤なインフェルノって奴の恋人なんだ。」

「消防車だったら、真っ赤なのは当然じゃないの!」

「あー、意味が違う意味が。ぐだぐだ言ってるだけなら、もう行ってもいいか?」

 

 足元に、ビームが着弾。

 

「……わかった、わかった。何話せばいいんだ?だけど、俺が知る限りの事は全部、コンボイに教えてあるぞ?」

「「「「ええっ!?」」」コンボイ、彼は生きているの!?」

「生きてるぞ。地球って星でピンピンしてる。って言うか、400万年前にセイバートロン星を飛び立っただろ?そしてそれを追った俺たちとの戦闘で地球に墜落して、互いに仮死状態になってたんだ。

 400万年経って、テレトラン1のおかげで復活してな。地球でデストロン軍団とサイバトロン軍団でドンパチ戦ってるぜ。」

 

 エリータ・ワンはこちらを睨みつけ、更に言いつのる。

 

「デストロン軍団No.2のスタースクリームが、何故そこまでペラペラ喋るのかしら?」

「きっと命が惜しいのよ。臆病な所は、変わらないわね。」

「……わたしの親友への侮辱は、よしてくれないか。」

 

 クロミアの台詞に、スカイファイアーが機嫌を損ね、一歩前に出た。

 

「動かないで!撃つわよ!」

「撃ちたければ、撃てばいい。けれど、ただでは死なないよ。最低でも、スタースクリームへの侮辱は撤回してもらう。」

「く!」

 

 クロミアがビームガンをスカイファイアーに向け撃とうとする。そうはさせるか。

 

「「!!」」

「トランスフォーム!!」

 

 俺はナル光線(ビーム)でクロミア、そしてその後ろで銃を構えたファイヤースターを撃った。直後変形(トランスフォーム)し、狭い地下だと言うのにアフターバーナー全開で飛行してムーンレーサーの背後に回り込み、再度変形(トランスフォーム)

 

「トランスフォーム!……えい。」

「きゃ!」

 

 足払いで転ばせて、ビームガンを遠くへ蹴り飛ばす。そしてエリータ・ワンの方を見れば、スカイファイアーがクロミアをエリータ・ワンに投げつけて転ばせ、そして銃を突きつけていた。

 

「勝負あり、だね。お嬢さんたち……。」

「く……。」

「あ、エリータ・ワン。シークレット・パワーで時間止めるのは()めといた方いいぞ。お前さんに死なれて、コンボイの怨みを買いたくないしな。」

「な!?なぜお前が、わたしの秘密の能力を知っているの!?」

「さあな。安心しな。知ってるのは俺だけだ。デストロンの奴らは、知りゃしないからよ。」

「え、エリータ・ワン!」

 

 ムーンレーサーが驚きの声を上げる。その視線は、俺の翼に集中していた。そう、俺の『何のエンブレムも着いてない』翼に。ようやく気付いたか。遅えんだよ。

 

「スタースクリームに、デストロンのエンブレムが着いてないわ!?」

「な……!?」

「ああ、メガトロンの不興を買っちまってね。とうとうクビになったんだ。危うく殺されるところだった。つうわけで、俺はもうデストロン軍団じゃねえ。お前らと()り合う意味もなんも無えんだコレが。

 ちなみにメガトロンへの意趣返しで、知り得る限りのデストロンの機密はコンボイに教えてやった。……まあ、いいか。そんときのデータのコピーがここにある。もってけ。地球のデストロン関係ばっかだが、ほんのちょっとはセイバートロン星のデストロン指揮官、レーザーウェーブ関係の情報も入ってるからよ。」

 

 俺はデータの入ったメモリーチップを、エリータ・ワンに投げてやった。驚いた表情で、それを受け取ったエリータ・ワンだったが、必死で気力を振り絞って問いを投げて来る。

 

「わ、わたしたちを見逃すと言うの?」

「当然だろ。お前らが生きて、レーザーウェーブと、果てはメガトロンとドンパチやってくれりゃあ、俺の溜飲(りゅういん)が下がるってもんだ。今の俺の怨みは、全部メガトロンの方を向いてるんでな。お前らへの敵愾心(てきがいしん)とか入る余裕は、無えんだわコレが。

 行こうぜ、スカイファイアー。」

「ああ。それではね。お嬢さんたち。」

 

 俺とスカイファイアーは、コンテナを担ぎ直してその場を立ち去る。ま、奴らに言った事は嘘じゃない。俺の怨みは、メガトロンを向いてる。けれどそれ以上に、やらにゃならん計画(プラン)への使命感の方が大事なんだわ。

 

 

 

 持ち帰ったセイバートニウムで互いのボディを補修した俺とスカイファイアーは、デストロン時代に知ったほんのわずかな情報を元にして、『ある人物』の捜索にかかった。そしておそらくはこの辺の地域だろう、と言うのを特定した俺『たち』は、その人物の元へと出向く。

 

「こんなところに、あの伝説の人物(ロボット)が住んでいるとは……。」

「だよなあ。こんな辺鄙(へんぴ)なところで隠遁して研究生活を送ってるとはなあ。」

他人(ヒト)の事は、我々も言えないよ?」

「だなあ。」

 

 俺『たち』は、あえて大声で話しながら道を進んで行く。そして1つの建物の前にたどり着いた。間違いない。アニメで観た、『彼』の家だ。俺は呼び鈴のボタンを押す。すると、扉が開いた。

 

「入って来いって事かな?」

「だろうな。」

 

 俺『たち』は、建物へと入って行く。そして建物の奥の研究室、山の様に機械やパーツが転がっている部屋に、その『彼』が居た。俺は深々とお辞儀をした。

 

「……アルファートリン殿。お会いできて、光栄です。」

「わしはあまり嬉しくは無いがな。たとえ、お前がデストロン軍団を抜けていようとも、だ。」

 

 うん、俺はコイツ、サイバトロンの長老である老ロボット、アルファートリンに会いに来たんだ。最初の感触は良くはない。だけど、今が最低って事は、今後は上がる一方って事だろ?……すまん。自分に嘘を吐いた。今後の説得の大変さに、めまいがしそうだ。

 

「今回は、是非にお願いあって参りました。俺たちに、ベクターシグマの鍵をお貸しいただけないでしょうか。」

「あれをどうすると言うのか?」

「ベクターシグマを目覚めさせ、この者たちに……命を吹き込みます。」

 

 そう言った俺は、俺とスカイファイアーの後ろに並んでいた奴ら、俺が地球に居た時に完成させた、5体のロボットのボディを見せたんだ。オンスロート、ブレストオフ、ボルター、ブロウル、スィンドル……。そう、あの『スタースクリーム軍団』の軍団員たちだった。




さて、ついに出ましたアルファートリン様。スタースクリームは、彼を説得できるのか!?
そしてアニメでは、政治犯のパーソナルコンポーネントを使って造られたオンスロート、ブレストオフ、ボルター、ブロウル、スィンドル!もしかしたら本作では、まっさらな新しいスパークを与えられるのか!?
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