我が名はスタースクリーム   作:雑草弁士

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第7話:新たな仲間とかつての仲間

 セイバートロン星の位置が変わった。セイバートロン星は主星たる恒星を持たない放浪惑星だ。セイバートロン戦争勃発後に、なんらかの原因……おそらくデストロンか下手するとサイバトロンの、兵器か軍事実験の失敗か何かで、主星を周回する軌道を離れてしまったのだ。

 そしてセイバートロン星がある宙域は、地球のある太陽系から数万光年ぐらい離れた場所にあったはずなんだ。だけど突然、俺たちがいたセイバートロン星は、太陽系の地球とほぼ同じ軌道に乗っちまった。間違いない。メガトロンの仕業だ。いやほんとに。

 うん、メガトロンがセイバートロン星にいるレーザーウェーブと(はか)って、惑星の……地球とセイバートロン星のあちこちにスペースブリッジの端末機を仕掛けて、巨大スペースブリッジを形成、セイバートロン星を地球近傍まで転移させたんだ。コンボイ率いるサイバトロン軍団は、やっぱりアニメ通りメガトロンの作戦を阻止するのに失敗したか。

 メガトロンの野郎、赦さん。いや、だってな?せっかく計画に使えそうな小型のブラックホール近場に見つけたのに、数万光年彼方になっちまったじゃねぇかよ。別のブラックホールは、比較的近場で見つけたがよ。でも前の奴の方が、実験用にはぴったりだったんだ。

 それと、奴はセイバートロン星と地球が近距離に接近することで、重力の潮汐力により引き起こされる大災害のエネルギーで大量のエネルゴンキューブをインスタントに作ろうって腹だったんだがよ。地球の、我が心の故郷である日本が、いやそれだけじゃなく各国が大高潮とか暴風雨とか様々な大災害で酷い目に遭ってる。

 それだけじゃねえ。セイバートロン星でも、同じ事は言えるんだ。セイバートロン星にも大気はあるんだぜ?雲だってある。俺の研究所は地下けっこう深いから無事だったが、地上じゃかなりの嵐とか吹き荒れてる。

 まずいかな、と思ってたら物凄い衝撃。地上に置いといた監視装置が壊れる直前に送って来た映像によると、セイバートロン星の至近距離で大爆発が起きたんだ。そしてセイバートロン星は軌道を外れて地球から離れて行った。アニメ知識通りに事が推移したんなら、メガトロンが乗って逃げた宇宙船がサイバトロンの攻撃で破壊され、満載していたエネルゴンキューブが引火して大爆発。その衝撃でセイバートロン星が軌道から外れたんだが……。

 よくセイバートロン星壊れなかったな!おい!?

 

 

 

 その後しばらくは何事も無く、研究を続けられた。地上の被害はけっこう出たみたいだったが。先の事件の直後に起きるはずだった地球破壊未遂事件は、犯人の俺がアニメ本編とはぜんぜん違う行動をしてるから起きるはずも無い。セイバートロン星はとりあえず太陽を挟んで地球の反対側の同一軌道に乗ってる。レーザーウェーブの操縦で。機械惑星の上に放浪惑星だからな。ある程度自由に動かせるんだコレが。

 一瞬、そんなエネルギーあるなら地上の復興に回せとか思ったが、不安定な軌道で他の惑星とか下手すると太陽に突っ込んじまってもアレだしな。安定軌道に乗せたと言う事でいいか。

 

 

 

 そんなこんなで、俺たちは研究を続けた。反物質生成(フィールド)の方は、なんとかなりそうだ。この宇宙に次元の壁を越えて隣接して存在する『反宇宙』から、少量の反物質を呼び込むエネルギー(フィールド)だ。これによって得られた反物質を電磁気の瓶に閉じ込めておいて、微量ずつ放出して通常物質にぶつけてやる。そうすると対消滅を起こして、アインシュタインの法則通りに質量×光速の2乗のエネルギーが得られる。

 地球人であれば、こうやって得られたエネルギーは熱エネルギーか何かの形にして、それで蒸気を作ってタービン回して発電機に繋いで電力化しないと使えないんだが。しかし俺たちには、デストロン軍団由来のエネルゴンキューブ技術がある。いやサイバトロンも、エネルギーをエネルゴンに変換するぐらいまではやってたんだがな。効率の良いエネルゴンキューブ技術を開発したのは、デストロンだったんだよな。

 一方のブラックホール炉。ブラックホールは、周囲の質量を吸収して成長する。しかし一方で、ホーキング放射により質量をエネルギーに変換しつつ蒸発している。ブラックホールが充分に小さければ、それに投入する物質の量と放出されるエネルギー量が均衡(バランス)し、常に一定量のエネルギーを取り出す事が可能だ。

 こないだようやく適当なサイズの小規模ブラックホールを、ブレストオフに貨物として積んだ重力バリア発生装置で捕まえたんだ。それをセイバートロン星からやや遠い、地球と太陽とのラグランジュポイント、トロヤ点L4に置いてやり、ダイソン球殻(スフィア)の要領で周囲を囲ってやった。

 まだブラックホール炉の方は実験用としてすらも稼働していない。けれど反物質炉の方はあくまで実験用であるが稼働を始めてる。今は反物質生成(フィールド)の発生に使うエネルギーと、発生させるエネルギーがほぼとんとんであり、(わず)かな黒字でしかない。だが手ごたえは掴んだと思う。システムを整理すれば、反物質生成(フィールド)に使うエネルギーは理論上最高1/10に、実用システムでも1/3ぐらいには抑えられそうなのだ。

 

 

 

 だが、好事魔多しとも言う。レーザーウェーブに、俺たちの存在がバレた。まあそりゃ、宇宙とセイバートロン星の地上とを何度も行き来してれば、何かが居る事はバレるわな。レーザーウェーブは地球との連絡任務や、レジスタンスのウーマン・サイバトロン連中とのドンパチで忙しく、こちらにはあまり手出しして来ないんだが。だからと言って、油断はできん。

 そんなある日の事だ。アルファートリンのジジイから、連絡が入ったんだ。どこで俺らの通信コードを……。あ、俺とスカイファイアーの身体を治療(リペア)した時か!?油断も隙もねえな!

 

「いったい何の御用ですか?アルファートリン殿……!?」

 

 驚いた。アルファートリンが、一介の素浪人の科学者でしか無い俺に頭を下げたのだ。画面向こうではあったが。

 

『済まぬ。サイバトロンであるわしが、お主らに頼めた義理では無いのだが……。エリータ・ワンが捕まって人質になってしまい、コンボイが(おび)き出された様なのだ。』

「……!!コンボイに、デストロンの作戦予測として教えてあったんだが……。同じデータは、エリータ・ワンにも渡してあったんだぞ。」

『ウーマン・サイバトロンは、日常的にデストロンを襲撃し、エネルギーを奪わねば、もはややっては行けぬ状態なのだ。10回やって10回成功すれば油断も生まれよう……。どうか、コンボイとエリータ・ワンを救ってやってはくれんか。礼はかならずする。』

「まったく!……今、こちらで決を採ります!」

 

 俺は俺の後ろで話を聞いていた、仲間達に問うた。簡単に、一言で。

 

「どうする?」

「アルファートリン殿には、ベクターシグマの(サーキットキー)の件で借りはあるしね。」

「俺たちはその件が無ければ、生れなかったですからね。」

「いいだろう、行きましょう。」

「借りは返しておかなければ気分が悪いです。」

「抜かずの剣でいたかったですが、仕方ないでしょう。」

「やれやれ、予算的にはなんとかひねり出せますな。」

 

 そして俺は、画面向こうのアルファートリンに訊いた。

 

「そう言うわけです。場所は?それと判明している情報を!」

 

 

 

 俺は電波吸収塗料で都市迷彩柄が描かれているシートを身に纏い、勝手知ったるデストロン基地へと潜入していた。そこではコンボイが、何やら怪しげな液体……アニメ知識だと強酸だが、それの入ったプールの上にワイヤーロープで吊るされている。そしてそれを見せつけるかの様にエリータ・ワンを捕まえているスカイワープと、それにアストロトレイン、ラムジェット、フレンジー、そして……。

 

「サンダークラッカー、か。あいかわらず、浮かない顔してんな。」

 

 戦士として、こんなやり口は気に食わないのだろう。だが卑屈で事なかれ主義的なところがあるから、言い出す事もできねえ、か。そういや玩具のテックスペックでは、デストロンの主義に懐疑的で宇宙支配にも賛成できてない、って事だったなあ。さて、と。

 お、レーザーウェーブが来た。

 

「大変だ!正体不明のサイバトロン6人が、攻撃をかけてきた!凄い火力で、応戦不可能だ!」

「ち、仕方ねえ。コンボイの処刑を見届けられねえのは残念だが、俺たちは応援に行くぞ!スカイワープ!サンダークラッカー!お前らはコンボイの処刑をその女に見せつけたら、すぐに来い!」

「わ、わかった!おいサンダークラッカー、ワイヤーロープにつけ!」

「あ、ああ。」

 

 レーザーウェーブ、アストロトレイン、ラムジェット、フレンジーが急ぎ立ち去る。今がチャンスと暴れるエリータ・ワンだが、スカイワープに殴られる。コンボイが叫んだ。

 

「エリータ!」

「サンダークラッカー!コンボイを落とせ!」

「う、うう……。」

「何をしてやがる!」

 

 サンダークラッカーは、躊躇(ためら)ってやがるな。俺は飛び込む準備をした。

 

「ええい、もういい!くらえコンボイ!」

 

キュキュン!!

 

 スカイワープがレーザーを撃って、コンボイを吊るしているワイヤーロープを切った!エリータ・ワンの悲鳴が響き渡る!俺は飛び込んだ。

 

「きゃあああぁぁぁ!?コンボイーーー!!」

「トランスフォーム!!」

「「な何っ!?」スタースクリーム!?」

 

 俺は空中でコンボイを機体の上面でキャッチし、更に変形(トランスフォーム)!酸のプールの脇に着陸した。

 

「ったく、手前(てめえ)は重いんだ!早く降りやがれ!」

「な!?スタースクリーム!?」

 

キュキュン!

 

 すかさず俺は、レーザーでスカイワープの肩のレーザー砲を弾き飛ばす。エリータ・ワンはそれを見逃さず、スカイワープに蹴りを入れて脱出した。

 

「ぐわっ!?」

「コンボイ!」

「お前ら動くな!」

 

 いや、俺はコンボイとエリータ・ワンに言ったわけじゃねえよ。スカイワープと、そしてサンダークラッカーに言ったんだ。俺の左右のレーザー砲は、それぞれ片方ずつ、スカイワープとサンダークラッカーに向けてある。

 

「コンボイ!エリータ・ワン!手前(てめえ)らはさっさと逃げろ!」

「スタースクリーム、何故お前が……。」

「アルファートリンと取引をした!いいからさっさと逃げやがれ!……それにお前ら逃がせば、メガトロンの奴が困るだろう?」

「……ふ、違いない。借りにしておくぞ!」

 

 コンボイとエリータ・ワンは逃げ去った。スカイワープが怒り心頭の表情で言う。

 

「スタースクリーム、貴様……。元デストロンの誇りも消え失せたかよ!」

「デストロンの誇り?そんなもん、あの玩具(ナイトバード)に地位を奪われた時にすり減っちまったよ。お前ならどうだ、スカイワープ?あの玩具(ナイトバード)の下で気持ちよく働けるんだろうな?そう言うからには。」

「そ、それは……。」

 

 ほら見ろ、黙りやがった。と、サンダークラッカーも口を開いた。

 

「スタースクリーム……。」

「なんだ?」

「……なあ!スタースクリーム!デストロンに戻って来ねえか!?」

「「!?」さ、サンダークラッカー、貴様!こんな裏切り者を!!」

「だってよ!スカイワープ!……今、俺、スカイワープ、ラムジェット、スラスト、ダージ、持ち回りで航空参謀やってみてるんだが、駄目なんだ。誰も満足に、指揮できちゃいない。お前が居なくなって、お前がどれだけデストロンのためになってたか……。それがわかったんだ。そうだろ?スカイワープ。」

「そ、それは……。」

 

 俺は必死のサンダークラッカーに、だが首を振る。

 

「いや……。駄目だ、サンダークラッカー。」

「どうして!」

「第一に、メガトロンの奴が許さない。奴への腹いせで、コンボイに知る限りの機密を流した俺を、許すわけがない。」

「「!!」」

「いや、それが無くてもだ。あの一件(ナイトバードじけん)でアレだけ恥をかかせたんだ。絶対に俺の帰参は許さんだろう。俺の事自体、赦さないだろうしな。それによ?お前その意見は、メガトロンの許しを得て言ってるわけじゃ無いだろ?」

 

 涙腺も無いくせに泣きそうなサンダークラッカーに、俺は微笑んで言葉を続けた。

 

「第二に、俺がメガトロンを赦せない。絶対に。完全に。俺の仕事ぶりを、あいつはあの玩具(ナイトバード)とは比べ物にならんくらい下だと言いやがった。断言しやがった。……俺の価値が、無いと言いやがったんだ。悔しかった。悔しかった。今もあいつに対する憎悪の炎は、めらめらと燃え盛ってるんだ。」

「「……。」」

「第三に、と言うか今ではこれが一番の理由かもしれないがな。色々な(しがらみ)が出来た。絶対に振り捨てられない、いや俺自身が振り捨てようとは思えない、居心地の良い(しがらみ)が……。新しい、俺の居場所がな。」

「スター……スクリーム……。」

 

 泣きそうな顔で、サンダークラッカーは肩を落とす。俺は優しく言ってやった。

 

「じゃあな。かつての航空参謀からの、はなむけの言葉だ。道は違ってしまったが、お前らと飛んだ空は……悪くなかったぜ。じゃあな。

 トランスフォーム!!」

 

 俺は飛んだ。かつての仲間たちの元から、今の仲間たちの元へ。

 

 

 

 アルファートリンの家で、俺とゴテゴテした変な外装のサイバトロン6人は合流した。と、サイバトロン6人はガラガラと外装を脱ぎ捨てる。勿論のこと、スカイファイアーとコンバッティコン5人だった。

 

「さすがに疲れたよ。そっちはどうだったね、スタースクリーム。」

「コンボイとエリータ・ワンは逃がした。たぶん今頃は、地球から来たサイバトロンどもとウーマン・サイバトロンと合流してるんじゃねえか?」

 

 そこへアルファートリンがやって来る。

 

「アルファートリン殿?今回の件の貸しはデカいからな。前の件での借りを塗りつぶして、まだ余りあるぜ?」

「わかっておる。年寄りをあまりいじめんでくれ。」

「へえへえ、了解ですよ。」

「どうやって借りを返したものかの。ちょっと思いつくまで、借りにしておいて良いかの?」

「かまいませんよ、アルファートリンど、の?」

 

 そして俺たちは笑った。思い切り笑った。

 

 

 

 その後、俺たちは研究生活に戻った。アルファートリンが襲われて、ベクターシグマの複製鍵(コピー・キー)を奪われたり、コンボイたちがエアーボットを創造したり、それにも関わらずアルファートリンが生きてたりと微妙に本来の歴史を書き換えつつ時間は過ぎていく。そんなある日、ニュースが飛び込んで来た。悪いニュース、いや、俺にとって悪いニュースだった。

 

『我がデストロン軍団は、これより3日後の日の出と同時に、裏切り者サンダークラッカーを処刑する!場所はセイバートロン星本部基地!サンダークラッカーは裏切り者スタースクリームと通じていた!これは絶対に赦しがたい裏切りである!処刑執行は、新航空参謀たる、スカイワープの手で行われる!』

 

 明らかに、俺を狙い撃ちした挑発だった。




コンバッティコンの戦闘初仕事!……は、偽の外装かぶってサイバトロンのフリしての陽動攻撃でした。でも陽動なのに、デストロン本部を陥落させそうなほどの猛攻(笑)。
そしてサンダークラッカー……(´;ω;`)。アメコミとかでも、サンクラはちょっと可哀想なんですよねー。
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