アタシはとっくの昔に生きていたくなんて無くなっている
アタシは何よりも自分を許せない
アタシはナナカが大好きだ
アタシはナナカを殺した
アタシはフェイトが大好きだ
アタシはなのはが大好きだ
アタシはプレシアを救いたいなんて思っている
アタシの地獄は今なお続いている
さて、そんなアタシが絶対に許せないものってなあに?
手を後ろに回され、機械っぽい手錠をはめられる。あのクロノって管理局の子に
「痛いっす」
「ふざけるな。君の行動は管理局で管理させてもらう」
「へいへい」
今アタシがいるのは次元空間航行艦船アースラとやらだ。フェイトについて地球に帰ったら速攻で捕まって転送された。く、こんなの酷い!! でも感じちゃうビクンビクン!! うん、二番煎じのネタはつまんないね。いっそ天丼になるまでやってみる?…………アタシの心が持たないわ
さて、アースラのブリッジで絶賛中継中のなのはとフェイトの戦闘。高見の見物は趣味じゃないが、まぁこれはこれで面白い
「で? どんな感じだよ」
「すぐさまその台詞が出るとは随分といい性格してるな君は!!」
「まぁいいじゃないクロノ」
おぉう、リンディさんは話が解る………って言うか適当?
「………………はぁ。互角と言った感じだね。まぁこちらとしてはなのはが勝ってもあの子が勝ってもどちらでもいいんだが」
「ありゃ? そうなの。ジュエルシード回収できなけりゃ困るんじゃないのか?」
「ジュエルシードを転送、または持ち帰る時に場所の特定は可能だからね。もちろんなのはが勝つに越した事は無いんだけども」
汚い、さすがお上、汚い
そんな言葉が頭をよぎるがまあ無視。しかし改めて見るが魔法ってのは本当にとんでもねぇな。あれだけの物理現象を引き起こしてるのに物質が目減りする様子も枯渇する様子も無い……………あれって資源問題解決余裕でしたーとか言えそうだよね
「アイナアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
「それはそうと後ろでビーストモード発動してるメイドはしっかり抑えといてね。アタシはこんな事で死にたくない」
「身内に殺されたくないからって司法取引を要求する犯罪者は初めてだわ」
「今後も無い様に願いますよ、艦長」
武装局員数名に押さえつけられてる藍。なんでも連れ去られて心配して心配して心配して、帰って来たらいつもの調子でブチギレたんだと。今回はアタシ悪くなくね?
「フェイトさんが大技に出たわね」
「…………………あれはまずいな。いくらなのはでも耐えきれないかもしれない」
なのはの身体はバインドで縛られ、フェイトの砲撃を受け続けている。ちゃんと計算しないと解らないが斬城の防御は容易く抜くだろう砲撃の嵐。今ここにアタシはフェイトの前では出来るだけバカをしない様にしようと誓った。あの優しいいい子に愛想つかされてあれ喰らうのはキツ過ぎる
「そしてアタシは現在進行形で命の危機だ」
「アイナァアアア? あの世に行く準備はOKですか?」
「いや出来てません。どうやってあの包囲網抜け出したの?」
この子の力が掴まれた状態で3人も投げ飛ばせるなんて知らなかったなぁ
「このまえネットに落ちてた合気道を覚えました。後は斬城の防御プログラムの応用です」
だからなんでアタシのPCの中身を知ってんだよ……。そしてこのままでは比喩なしで殺される
「さて、死んで♪」
「た、助け…………」
見て見ぬ振りしているリンディとクロノに向かって言葉を投げかける前にアタシの意識は闇に飲まれた
目が覚めたのはその3分後だった
「あ、アイナ。なのは様の勝ちで戦いは終わりましたよ」
「…………………もう文句言う気も起きない」
アタシとこの子の関係っていつからこんなんになったんだろ
『艦長!! 来ました!!』
そんな時、オペレーターの声が鳴り響く。聞き覚えの無い声だったので、きっと初めて聞く声だ
「物質転移……………これでプレシアの拠点が解るわ」
ここでアタシはもう知っていると言わない方がいいのは目に見えている
そして判明した時の庭園の場所。数十人の武装局員が乗り込み、プレシア逮捕に向かって行った
さて、アタシはここでどうすればいいのだろう。プレシアを救いたいと思う。しかしアタシには何がプレシアの救いなのか解らない。第一、どうして自分がプレシアに固執してるのか自分でも解らないのだ。管理局に逮捕される事によってどうなるのか、どうなってしまうのか、アタシには判断材料が無い。心を占めるのは謎の焦燥感、そして期待。一体どうすればいいのか解らないうちに、手錠付きフェイトを連れたなのはが帰って来た
「おかえりだぜー」
「捕まって手錠はめられても変わらないんですね、アイナさんって」
そこはかとなくバカにされた気がする
「ようフェイト。お揃いだな」
アタシは自分の手錠を掲げながらフェイトに向かって言った
「…………………そう、だね」
彼女は力なく笑っている。あんまり好きな表情じゃないなぁ。一番最初の藍みたいな表情だ。自分が一体何を信じればいいのか解らなくなっている表情
「フェイトちゃん。私の部屋に行こう?」
なのはがそう言う。大方、艦長さん辺りに娘の逮捕されるシーンは見せたくないとか言われたんだろう。よく出来た人だと思う
その時だった。雷鳴が響いて武装局員が軒並み伸されたのは
『私のアリシアに………近寄らないで!!』
激情に飲まれたプレシアは叫んで杖を薙ぐ。それだけで武装局員は全滅した
『もうダメね………時間がないわ
これだけのロストロギアでアルハザードにたどり着けるか解らないけど
けど、もういいわ、終わりにする。この子を無くしてからに暗鬱な時間も、この子の身代わりの人形を娘扱いするのも………』
その言葉にハッとするフェイトとなのは
『聞いていて? あなたの事よ、フェイト
せっかくアリシアの記憶をあげたのに、そっくりなのは見た目だけ。役立たずでちっとも使えない。私のお人形』
語られたのはプレシアの娘の死。そして人造生命の、ひいては死者蘇生の研究、そして‘フェイト’という名前について。それがオペレーターの口から語られた
『だけどだめだったわ。ちっともうまく行きやしない。作り物の命は所詮作り物。失ったものの代わりにはならないわ
アリシアはもっと優しく笑ってくれたわ。アリシアは時々わがままも言ったけど、私の言う事をとても良く聞いてくれた。
アリシアは…………いつでも私に優しかった
フェイト。あなたはやっぱりアリシアの偽物よ』
なのはが叫ぶ、フェイトの面持ち。そして、多分、この世界で最もプレシアの気持ちがわかるアタシは、手錠を外して言った
「ウロボロス」
刹那、アースラの機能は停止した
「ウロボロス」
縛られたフリも面白いかと思ってつけていた手錠を投げ捨てる。そしてアースラに乗った段階で仕掛けていたウイルスであるウロボロスを解放した。簡単に言えば侵入したPCの機能を停止させるだけのソフト、しかしネット上にバラまけば都市機能が完全にストップすると言う強力な奴だ
アースラの機能を止めた理由はたった一つ、邪魔されたくないからだ
「藍」
「………………まったく」
藍から戦闘用にチェーンされた右手と、斬城Ⅱのパスを受け取る。いざという時の保険として藍に持ち込ませて置いたのだ
右手を取り付け、パスを入力。数秒の時間経過とともに鎧が現れる。ガチャっと音をさせて鎧はアタシを包み込んだ
「アースラの機能掌握…………完了。転送装置とモニターの機能回復、ただしアタシの転送後は転送装置の機能停止」
従来のスパコンのスペックを大きく超える斬城に指示を出して即座に完了する
とんでもなく慌ただしいアースラを一人、鎧を着て、転送装置の中に入った。当然止めようとして来るクロノや武装局員達。邪魔をしてくる全てを重力で押さえつけ、藍に言った
「藍、フェイトを頼む。今あの子を救えるのは、ずっとフェイトを見て来た奴か、あの子の事を大事にしてる奴か、アンタだけだよ」
「…………………あぁ、きっとそうなんだろね。じゃあプレシアテスタロッサを救えるのはアイナだけだ」
そんな小さなやり取りをして、転送装置を起動する
「行ってらっしゃい」
藍のそんな声が聞こえた
最初に目に入ったのは数百を超える鎧武者だった
そのすべてが相応の魔力を保有しているのだろう、相当なプレシャーが伝わってくる…………が、関係ない
「重力操作、負荷全開」
サーモグラフィで中に誰もいないのを確認して、この一帯全ての物質を押し潰した。そして出来上がるのは瓦礫の山。たった一撃で時の庭園は瓦礫の山と化した
いや、プレシアはあの玉座の間っぽい所だけは守ったらしい。生体反応が2つ、アタシを待ってるのだろう
「………………………………」
目の前の瓦礫を吹き飛ばし、道を開く。そしてプレシアのもとまでたどり着いた
「……………………よう」
「さすがに驚いたわ。まさかここまでとは思わなかった」
「安心しろ、今のの操作は難しくってな。もう使えねぇよ」
下手に使えばこっちが死ぬ
「…………………」
「めんどくさいから単刀直入にいくぜ。一発殴らせろ」
プレシアのこめかみがピクリと動く
「意味が解らないわ」
「いや、一発じゃ足りねぇ。気が済むまで殴らせやがれ」
プレシアの魔力弾が放たれる。真っ正面から受け止めて、もう一度言葉を重ねる
「テメェは許さない。絶対に、許さない」
「…………………本当に解らないわ。管理局の支援も無くこんな所に乗り込んで来て殴らせろ? 何が言いたいのよ」
「……………………………………そうだな、プレシア。テメェはフェイトの事をどう思う?」
プレシアは時間の無駄とでも言いたげに、しかしはっきりとモニター越しのフェイトに当てつける様に言った
「大嫌いよ」
ーアースラー
『大嫌いよ』
その言葉にフェイトは崩れ落ちる。それを受け止めたのは藍だった
「フェイト様」
虚ろな目をしたフェイトになのはが駆け寄って、名前を呼ぶ。しかし答えは無い。きっとこのままだったらフェイトは壊れてしまうだろう。藍はそう思った
『嘘だぜ』
そう言い放ったのはアイナ。確信を持ってそう言っていた。その言葉にフェイトは一縷の望みをかけて前を見る
『何を』
『だってアタシは、アンタの立場だったらどんな場合でもフェイトを娘なんて呼びたくない。吐き気がする』
ギリッと、歯ぎしり
『アタシは未だに、藍の事を友人なんて呼べないもの』
アイナはケタケタ笑い出す
『あぁそうだよなぁ。ぶん殴られるのも理由が欲しいよなぁ。安心しろよ、世界一の天才で世界一最悪なクソやろうの過去。全部ぶちまけてやろうじゃねえか!!』
ケタケタ、アハアハ、アイナは笑う。その姿に見ているものはある意味で引き込まれて行った
この物語を書こうと思ったきっかけは、プレシアテスタロッサの最期が納得出来なかったからです
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