魔法少女リリカルなのはー1人の天才   作:ヌムラ

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絶望の終わり

「ぅ……………」

 

目を覚ましたら真っ白な空間にいた。一体なんだと言いたいが、それ以外の表現が見つからないので真っ白い空間と言っておく。アタシのネーミングセンスはゼロなんだよ、悪いか!!

 

「って、そんな事言ってる場合じゃなかった……」

 

そう、アタシはプレシアに殴り掛かってそれでジュエルシードが光りだしたんだ…………。その後の記憶が無い。なに? いつの間にか違う場所に移動したとか? 誰が何のため? つーかプレシアとかフェイトとか管理局とかどうなったんだよ。そしてなんで身体の痛みが消えてるんだ? 痛み止めの効果は切れ始めていたいたから全身骨折で悶え苦しんでなきゃおかしいはずだぜ? さらに斬城は? みんなどこに行ったんだ?

 

「くそ……………。何がどうなってやがる」

 

『そうだねぇ。説明すると長くなるから省略していい? それにアイナじゃまだ理解出来ないレベルの知識だし』

 

後ろから声が聞こえた。その声には聞き覚えがあった

 

「藍か…………、アンタはここがどこか知ってるの? 一体何が……………」

 

どうなってる、と続けながら振り返るつもりだった。でも声をかけて来た少女の顔を見た瞬間、固まってしまった

その少女は藍と同じ顔をしていた。その少女は藍と同じ声をしていた。その少女は藍と同じ背格好だった。そしてその少女は、人間だった

 

 

 

「ナ、ナカ」

 

 

 

『YES。久しぶりだね、アイナ』

 

そこに、アタシが大好きな友達が立っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アタシが二の次を言えないでいると、不意にナナカ?が不満げに口を開いた

 

『何よ、久しぶりの再会なんだから私の胸に飛び込んでくるくらいしてもいいんじゃないの? 相変わらずの社交性ゼロの研究バカなんだから………。藍ちゃん以外の人と話してる? そんなんじゃ彼氏なんて一生出来ないよ?』

 

「んなっ!! ひ、久々に会っていきなりダメだし!? つーか作ろうと思ったらいつでも彼氏なんか作れるし!! でもアタシには藍とナナカがいてくれればそれでいいし!!』

 

『うわ、いきなり愛が重い…………前々から思っていたけどちょっと引くわよ。あんた空鍋煮たりしてないでしょうねぇ』

 

「ヤンデレ!? そこまでヤバいのアタシのナナカへの愛って!!」

 

『自覚無い当たり重傷ね…………。私が生きてる内に彼氏でも作っていたらそいつきっと刺されてたわね…………。そんな確信があるわ』

 

「刺さねぇよ!! なにそのよくわからない確信!!? アンタってアタシの事そんな風に思っていたの!!?」

 

『いや……………だってねぇ』

 

「誰に同意を求めてんじゃぁああああああーーーーーー!!!」

 

アタシ達は、一瞬にして元の関係の戻ったのだった。アタシは殺した事を謝ってもいないのに、ナナカはそんなの全く気にしないとでも言いたげに。アタシ達の関係は死んだ程度じゃ何も変わらず、友達のままだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひとしきり漫才を繰り広げ、笑い合って、くだらない話をして

そしてひとしきり、謝った

 

「ごめんなさい………アタシはずっとあなたに謝りたかった。あなたに謝る為にもう一度会いたかった。死ぬまでずっと謝り続けてもきっとその言葉は届かないって知っていても、謝る事をやめられなかった」

 

謝罪は相手の為にする事じゃない。自分が辛いからするんだ。アタシはナナカを殺してずっとずっと辛かった、藍に救われて地獄から抜け出せても死にたいって気持ちに何の曇りも無いくらいに辛かった

 

「ごめんなさい、ごめんなさい。この世界はきっと夢なのだろうけど、それでもあなたに謝る事を続けるしかないから。ごめんなさ………」

 

 

ゴンッ!!

 

 

目の前に火花が散った。そう錯覚する様な衝撃が頭に襲ったのだ

そして殴った本人はアタシに向かって一言言い放つ

 

『うっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっぜぇ!!』

 

「は、はい!?」

 

アタシは頭を抑えて涙目のまま間の抜けた声で返答した

 

『うぜぇうぜぇ、ほんっとうざいね。何度も何度も謝んな気持ち悪い。アンタは私が本当に私(ナナカ)か疑ってるみたいだけども、私に言わせりゃアンタがあの傲岸不遜のアイナとは思えないね。本当にアンタ誰よ』

 

「え、えっとナナカ?」

 

『なんだこの偽物。ったく、何度も何度もバカみたいに謝りやがって……………。私が許さないなんて一度でも言ったかしらこのおバカ様』

 

あ、あれ? なんでアタシこんなに怒られてんの?

 

『私なんかの幻影に縛られて幸せになれないって言うなら、さっさと私の事なんか忘れちゃえばよかったんだよ、まったく。

………………まぁ、死んだ後でもそこまで思ってくれる友人がいるって幸せな事なのかも知れないけどさ』

 

あぁ、本物だ。そんな確信が胸に広がる。この子は本物のナナカだ。なんでここにいるのか全く解らない。夢とか催眠術とかそんなちゃちなもんじゃない本物のナナカだ

私が信じて、アタシが愛した、ナナカだ

 

『…………………ごめんね。勝手に死んじゃって』

 

「ナナカ…………ナナカぁ…………!!」

 

我慢なんて、出来る訳が無かった。目の前にいるのが本物のナナカと理解してそれで抱き付かずにいれるものか。

ドンッと軽い衝撃の後、アタシはナナカにしがみついて彼女は受け止めてくれる。夢の中のナナカと違ってちゃんと受け止めてくれる。本物のナナカがそこにいた

 

「会いたかった、会いたかったよぅ!! ナナカ、ナナカぁ!!」

 

『…………………………ほんと、なんだかなぁ。ここまで求められたら鈍っちゃいそだなぁ。ほんと、世界ってままならないなぁ』

 

ナナカが何か言っているが、気にしない、出来ない。求めて止まなかった、生き返らせようとさえしたんだ。些細な事は気にする事は出来なかった

 

その言葉の真意に気付くのはそう遠くない未来

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここが何処なのか、なんでここにいるのか解らない。そしてナナカはそれを知っているかの様に振る舞う。その態度は癪だけど、今はそれでいい様な気がしていたんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりとめの無い話を続ける。アタシがどれだけナナカの事が好きだとか、生前はこんな事があったねとか、翠屋の新メニューの話とか、いっぱい、いっぱい話す

この時間が終わらない様に、目の前の奇跡が消えてしまわない様に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでね、なのはったらおかしいんだぜ? 全力全開っとか言ってピンポンの玉打つんだから。卓球でその決め台詞はどうなのよ」

 

『へぇ、まぁ運動音痴のアイナの事だ。どうせ顔面に喰らって鼻血でも出したんだろう?』

 

「………………なんでそんな見て来たかの様に言えるんだぜ? いや実際そうなんだけどさ」

 

あぁ、楽しいなぁ。本当に楽しいなぁ。そう思いながらナナカに抱きつく

 

『アイナ……………全く、一体いつからアンタはこんな甘えん坊に成ったんだろうねぇ』

 

「今まで会えなかった分のナナカ成分補充。アタシが生きて行くには必要な成分です

これが無かったらアタシは狂って壊れてしまいます。マジで」

 

実際、藍がいなかったら壊れていただろうからねぇ。身体で感じるナナカの温もり、それが愛おしくて愛おしくて仕方ない。大好きだ。大好きなんだ。その思いがここに来て極まってくる

ナナカ相手なら百合ん百合んな展開もアリかもって思うくらいにナナカが大好きだ

 

『……………………………ねぁアイナ。ここがどこか、解る?』

 

ナナカが突然、何の脈絡も無くそう言った

 

「何? そんなのどうでもいいぜ!! そうだ、この前女同士でも子供を作れる薬を開発しようとしたんだけど凄まじい事になってさ!! なんと…………」

 

アタシはその話題を逸らそうと必死になる。だって何と無く解ってしまったから、この話が始まってしまったらこの時間は終わる。この夢の様な奇跡は終わってしまう

そんな事を、根拠も無く感じていた

 

『アイナ』

 

「ッ………!! 聞かない、聞かない聞かない!!」

 

『ごめんね、アイナ』

 

「謝んな!!」

 

『でも、話さなくちゃ。頭のいいアイナだったら解ってるよね。このままじゃ…………』

 

「うるさいっ!!!!」

 

アタシは叫ぶ。だって、もう全部解っているんだから

この空間は、ジュエルシードがアタシの願いを擬似的に叶えた空間である。もちろん、ジュエルシードの効力である‘願いを叶える’の仕組みや理論は大して理解していない。だから‘願いを叶える’事を真実と仮定しての話だ

アタシの願いを汲み取って、ジュエルシードは願いを叶えてくれた。ナナカを生き返らせてくれた。もうそれだけでいい、それだけでいいんだ。研究を続けたのはナナカが誉めてくれた唯一の物だったから、また誉めてくれるんじゃないかって、いつかまた現れて『凄いね』なんて言ってくれるんじゃないかって、そう思って続けていた。でも、そんなのどうだっていい、アタシはここで生きたっていい。このまどろみとも夢とも言いがたい世界で一生を送ったっていい

だからナナカ……

 

 

『ジュエルシードは暴走している。このままじゃ次元震、次元断層が起きて地球を含む数個の世界が滅ぶよ』

 

 

 

………………………あぁ、知っている。そんな事は解っている。プレシアがジュエルシードを暴走させた時にアタシはそのど真ん中へ突っ込んで行ったんだ。可能性としてはアタシの願いが叶えられていると言うのは十分にありえる

 

「ここは……………どこだよ」

 

『そうだね、強いて言うならアルハザードだよ。もともとアルハザードって言うのは、ジュエルシードが暴走の果てに引き起こす‘全ての願いが叶う場所’の事なんだから』

 

もちろん、限界はあるけどね。そうナナカは続けた

 

『壊れた思い出は蘇り、愛する人は復活し、願いは必ず遂げられる。そんな場所

ジュエルシードを生み出した文明の最期はある意味幸せだったと思うよ。永遠と刹那の狭間で終わる事の無い夢を見続ける。そんな終わりだったから』

 

「…………………なんでそんな事を知ってんだよ」

 

アタシの知っているナナカは、お世辞にも賢いとは言えなかった。もちろん、アタシからすれば大学教授だろうが幼稚園の悪ガキだろうが大して変わらないんだけども

まぁそれを抜きにしてもナナカは馬鹿だった。揉め事を見つければ必ず首をツッコミ、自分の身内に手を出したやくざの事務所に木刀一つで殴り込み、あげくに汚職政治家にドロップキックを喰らわした事もある(あの時はさすがに肝が冷えた)

そんなナナカがアタシの知ら無い事を知っているのに強い違和感を覚えての発言だった

 

『………………今の私はジュエルシードと直接リンクしてるから、ジュエルシードを生み出した文明の歴史と技術は完全に理解してるんだ。今の状況はアイナの夢越しに伝わって来た情報。だからアイナがどれだけ私を愛してくれたか正しく理解してる。まぁ少し引いたけど』

 

「オイッ!!」

 

閑話休題

 

さて、ここまでの情報を統合して見よう

ナナカはジュエルシードが生み出した、アタシの願いの具現である。だからジュエルシードが保有しているありとあらゆる情報をナナカは持っている。そしてこの場所、ナナカはアルハザードと言った。アルハザードはジュエルシードの暴走の果てに引き起こす‘全ての願いの叶う場所’らしい。だからナナカはここにいて、アタシと話が出来るし触れもする。アタシが望めばきっと藍もなのはもフェイトも皆をここに呼び出す事も出来るだろう。さて、ここからが最重要。外の世界はもうすぐ消滅するらしい。この世界だって永遠と刹那の狭間ってだけで、外がなくなれば消滅するだろう。もっとも、アタシが望む限り永遠に続くのだが

さて、はっきり言おう。アタシは地球がなくなろうがどうしようがどうでもいい。そしてこの世界、アルハザードにはアタシの望む物が全て揃っている。いや逆か、望む物は全てこの世界が揃えてくれる。そしてナナカが存在出来るのはこの世界だけだ。

あぁ、なんだ。アタシが幸せになれるとしたらこの世界だけじゃないか。アタシは至ったんだ、アタシはついに至ったんだ、幸せに。アタシは幸せになったんだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『もう1人、この世界に人がいる。その人はアリシア テスタロッサを生き返らせたわ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、そうだろうな。当たり前だ、それがプレシアの生きる目的だったのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アリシア テスタロッサとプレシア テスタロッサは現在、元の世界に帰還した。その意味を理解して』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理解? 理解も何も…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アリシア テスタロッサの肉体は死んだ当時のまま保存されている。だから魂が戻るなら死体が生き返る形になる』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリシアは現実世界に帰還した? だったら何か方法さえあばナナカを現実に戻せるんじゃないか? 例えば、ランノカラダヲツカエバ‥…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『出来るけど、私がそんなの享受出来るわけないでしょ。だいたいアイナだってもう藍が大事でしょうに

そんな事じゃないのよ、私が言いたい事は。私が言いたいのは、もうこの世界を終わらせる事が出来るのはアイナだけって事 もう、私が何を言いたいか解るよね。アイナ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終わらせる? この世界を? ありえないよ、ありえない。そんな事よりナナカを現実に戻す方法を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『               私を殺して              』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、もう一度この状況を振り返ってみよう。頭から、解りやすく。漏らしが無い様に

 

1 アタシはプレシアを止めるべく、ジュエルシードが暴走中の魔力の中に突っ込んだ。その結果、アタシとプレシアはアルハザードに到達した

 

2 プレシアは嬉々としてアリシアを生き返らせて、フェイトの待つ現実に帰還した

 

3 しかしジュエルシードの発動は、願いを叶えたからと言って収まらない。ジュエルシードは願いを叶え続ける間発動し続ける。つまりジュエルシードの暴走は願いが終わるまで続く

 

4 ジュエルシードの暴走が収まらないと、この世界は終わる。しかしアタシは別に構わない

 

5 ナナカという少女はまるで物語の主人公の様な存在だ。例を挙げるならアンパンマン。自分の身体を削ってでも、困っている人にパンを与えずにいられない。もはやそれは逆らえない習性ですらある。そんな彼女が、地球を含め多くの世界が消滅しかかっている状況を見過ごす訳が無い

 

そこで気付いた。いや、無意識に気付かないフリをしていたんだろう。ジュエルシードを止める方法をアタシは知らないという事を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『先に宣言しとく。これは脅迫だよ

私はアイナがこの世界を終わらせない事を認めない。私を生き返らせるなんて世迷い言も認めない。もしも永遠にこの世界を続ける気なら、もしも私を生き返らせたなら、私は死に続けてやるし死んでやる。今この場で下を噛み切ったっていい。そうしないと、誰も救われない』

 

身体が震える

 

『その上で言うよ、この世界を終わらせる方法。アイナが、アイナ自身の夢を否定するの。私を生き返らせるのを、永遠に諦めるの。もっと解りやすく言おうか?

 

 

 

私をアイナの手で殺して』

 

 

 

心が死ぬ

 

『私が自殺した所で意味が無いの。アイナが、あなたの手で私を殺さないと意味が無い。そうしないと自分の夢を否定した事にならないから』

 

もう嫌だ。なんでいつもいつもこうなんだ

 

『終わりだよ、アイナ。あなたの絶望はこれで終わり。私を蘇らせるなんて夢はもう終わり。これからは恋をして、新しい友達を見つけて

 

さぁ、殺して。アイナ』

 

「嫌に決まってるだろうっ!!!!!!!!!」

 

やっと、声が出た

 

「嫌だ、嫌だ、嫌だ!! 絶対に嫌だ!! 殺せって? よりにもよってアタシにあなたを殺せって言うの? ふざけんなふざけんなぁ!! アタシはナナカに救われた。私はあなたがいてくれたから生きている!! なのになんでそのアタシがナナカを殺さなくちゃいけないんだよ!!? アタシは、世界が滅ぶよりもナナカに生きていて欲しいんだ!!」

 

『………………………平行線だね。世界を救いたい私と、私を救いたいアイナ。でもこの平行線は私に分があるよ。だって私は自分を殺してでも世界を救いたいんだから。もしも私が生き返ってもすぐに死んでやる』

 

あぁ、ナナカが脅迫と言った意味がやっと解った。間違いなくこれは脅迫だ

そして八方塞がり。もしもアタシが何らかの方法で世界の代わりにナナカを救ったとしても、それはすぐに終わる。この世界を続けたとしてもきっとナナカはそれを許してくれない。次期に口もきいてくれなくなるだろう。もう、アタシに残ってるのは絶望しか無かった

 

「どうしようもないの?」

 

『どうしようもないね』

 

即答。それが答えなのだろう

 

「は、はは」

 

口から出るのは乾いた笑い。そうかそうか、アタシに選択肢は無く、もう一度、今度は自分の手でナナカを殺せってか………………。あぁ、畜生

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

哭いた。ただ哭いた。はばかる事無く哭き続けた。何時間か、何十時間か、何日か、何年か、本当に時間の感覚がなくなって来た頃に

 

 

 

アタシはナナカの首に手をかけた

 

 

 

『………………………うん。ありがと』

 

「ふざけんな。畜生」

 

『………………………ごめんね』

 

「謝るのはもっと許せないぜ」

 

『……………ごめんね。嫌な思いをさせて』

 

「謝んなっつってるだろう。畜生………………」

 

『本当に、ごめんね』

 

ぎゅ、と少しずつ力を入れて行く

 

「私は、私は……………ナナカの事が、大好きなんだよ」

 

『うん、………………知ってる』

 

「私は、ナナカをっ…愛、してる…よ」

 

『うん、私もだいすき』

 

もっともっと、力を入れる

 

「………………苦しくない?」

 

『ん……………………………アイナに比べれば、全然』

 

ナナカは苦しそうに呻く

 

『あぁ、そーだ。アリしあ テスたロッさ。あの子の死体って………所々、壊れてる。みたいー。なんだ、よね

だか、ら。あいナが。助けて、あげて』

 

最期の最期まで、違う奴の心配。そして、自暴自棄になった私が生き返ったアリシアを殺すかもしれないって思っての言葉だろう。本当に、最期までいつも通りな奴だ

 

「大丈夫だよ、そんな心配しなくたって。大丈夫、アタシは生きて行ける。みんなを助けて生きて行ける。全部、助けるよ。もう、アタシみたいに悲しい存在を作らない様に頑張るよ。ナナカみたいに、皆を救ってみせるよ。だから………安心して」

 

『そ………………………か。じゃあ、ぁ…………………………んし……ん………』

 

ナナカの唇が、チアノーゼで紫色になる。手足は痙攣して、次第に動かなくなる

 

『……………………イ……………………………………………………………ナ…………………………り…………とう』

 

小さく、本当に小さく、きっと最期の力を振り絞って言う

 

 

 

 

 

 

『アイ………………………………ナ、し、あ、わせに、な、って』

 

 

 

 

 

 

そして、それっきり

ナナカは動かなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界が崩れるとはきっとこんな事を言うのだろう。ガラガラと音を立てて割れる様に崩れて行く

不思議と、アタシの心は落ち着いていた。もう二度とナナカに会えないと、心が正しく理解したからだろうか? 完全に壊れてしまった可能性は高いと思うが、そんな事は無いと直感で思っていた………………。このアタシが直感とは。やはり精神に異常はきたしているな。まぁ元々か

さて、この後どうしようか? アタシの夢を叶えた分のジュエルシードは活動停止に追い込んだが、プレシアの分はまだだ。しかしアリシアは救うと約束した。まぁ大丈夫だろう、特に問題は見当たらない。様はジュエルシードが発動してても次元震を起こさせなければいい。つまり暴走させなければいいだけだ。封印処理ではなく機能制限、なのは達に強力を仰げばなんの問題も無く完了出来る。その後、アリシアをアタシの研究所に連れて行ってメディカルチェック。蘇生作業も問題なしだ

現在起こってる次元震は…………………駆動炉を制御して相殺すれば収まるだろう。計算はかなり面倒だが斬城のメインPCは生きてたし、藍のスパコンも並列計算させれば数秒で計算は完了するだろう

これで現状の最優先事項の問題解決方法は全て実現可能だ。世界は救われ、プレシアも救われ、ハッピーエンドの道も見えた。さあ、これで閉幕だ。現実に戻ろう。

そう思った瞬間、世界は完全に砕け散った

 

「ただいま、皆」

 

元の世界

しかしここからはもう既に予定調和。ならば語るべきではないし意味も無い。アタシはいとも簡単に世界を救ってアリシアを救って帰還するだろう。だからこれで、アタシの物語は幕を閉じよう。そう思って、アタシは傍にいた皆に微笑んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アタシはきっと幸せになれないだろう。アタシはきっと二度と笑えないだろう。アタシはきっと人を救い続けるだろう。アタシはきっとナナカの事を忘れないだろう。アタシはきっと壊れる事はないだろう。アタシはきっと

 

 

 

 

これからも、死にたくなりながら生きて行くだろう。全部が終わってしまうまで

 

 

 

 




超展開です。ご都合主義です。アリシア生存ルートです。ただまぁ後悔はしていない!!

以下、ナナカの設定

麹 菜々華
とにかく困った人を放っておけない巻き込まれ体質の女の子。いつも暴走の果ての人助けで困った事に成り、アイナに助けられていた。アイナの実験に巻き込まれ死亡

好きな言葉は『ゲンコロ』 将来の夢は『正義の味方』

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