魔法少女リリカルなのはー1人の天才   作:ヌムラ

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 ナナカの思いは解ってる

『結局アタシには何も……なくなった』


epilogue1

研究所の一室、そこにはかつて無い程の人間が集まっていた

 

「臓器が数カ所痛んでるぜ。何年死んでいたのか知らないけれど蘇生させる気だったらもうちょい気をつかえよなぁ。………んー、心臓はもう新しく作り直したほうがいいな。ジュエルシード入れておく場所の問題もあるからせっかくだから心臓に…………」

 

この部屋にはアタシと藍の他になのは、ユーノ、フェイト、アルフ、そしてプレシアとリンディ提督がいる

そしてアタシがしてるのは見ての通り、アリシア テスタロッサの蘇生だ。アタシがアルハザードから戻った段階でアリシアは目覚めていたが、身体の一部がイカれててすぐに気絶してしまったのだ。そしてこのまま放っておいたら再び死んでしまうだろうから全身を瞬間冷凍、その後ここで解凍してメディカルチェックの最中と言う訳だ

 

「脳の損傷も少しあるなぁ。これは一旦、記憶と人格のデータをPCに落としてそっから作り直した方がいいね。藍の時と違って全てを機械化する訳にはいかないし………………、藍ーー!! アリシアちゃんのデータ落としてOS組んどいてー。アタシはボディの機械化と調整しとくからー」

 

「ご主人…………プレシア様が飛びかからんばかりの形相で睨んでるから少しは声を潜めてください」

 

さて、当然の前提だが。このアリシア テスタロッサの蘇生はプレシアは納得している。と、いうより納得せざるえなかった。人間の死体を何十年も新鮮なまま保つ方法なんて瞬間冷凍を完全な形でする以外に無い。魔法でどうのこうのあるのだろうが、結果としてアリシアの身体は所々ガタがきていたのだ。もちろん回復魔法なんてふざけた存在も実在しているとの話だが、この場にいる誰にも使えなかった

でだ、プレシアとフェイトはこの後、管理局の親玉の所で裁判が待っている。そして下手をしたら二度とアリシアに会えないなんて刑を喰らわされる可能性があるのも事実。そこで何かと甘いと定評のあるリンディが見張りに付く事を条件にしばらくの自由を貰い、その間にアタシがアリシアの蘇生をするという寸法だ

個人的には自分の技術を管理局の人間に見られるのは凄まじく不安なんだけど…………ってリンディの目的の一つはアタシの技術力の確認か

 

「さぁてと、身体(ハード)の調整はこんなもんかな? 脳のダメになってる部分の機械化は完了してるし…………後は送受信のアンテナ何処に付けるかだよなぁ」

 

余談であるが、藍の本体はこの研究所のPCだ。と言うのも、数時間に一回記憶と人格データの送受信を行って、その全ての記憶を溜め込んでるPCがあるのである

そうしないと人間サイズのHDDではすぐに容量の限界がきてしまう。ビデオカメラだって録画しっぱなしだったらすぐにテープが切れるだろう? それと同じ。まぁ10年年程度だったらなんの問題もないのだが……………

まぁそんな訳で、アリシアの脳は一部機能不全が起きている。それが記憶を司る部分で面倒だからこっちで新しく作っちゃえと思い絶賛改造中なのだ。改造の方法は……………まぁかなり猟奇的でグロテスクとだけ言っておこう

 

「アイナ、こっちは完了しましたよー。バグの点検お願いします」

 

「あいよー」

 

どうして機械である藍がプログラミングして人間のアタシがデバッグしてるのかツッコミたい所であるが、完全記憶能力があるので適切な役割分担なのだ

膨大な数のシステム言語を薬でドービングして高速スクロールさせながら見る。本来のアタシの動体視力じゃ全てに目を通すのに数年はかかってしまうからいちいち薬で強化しなくちゃいけないんだ

スクロール終了まで10分ちょい、頭の中で反芻して確認。もう一度頭から見逃しが無いか確認

 

「ん、大丈夫だったぜ。じゃあアタシは速攻でアンテナ作ってくるから、藍は最終チェックお願い」

 

「解りました。チェック項目はいつもの通りで?」

 

「+プレシアのご機嫌取り。このままだったら殺されかねない」

 

まぁ、目の前で娘の身体を弄くり回されたらねぇ…………。あぁそうだ、プレシアの病気は完治したぜ。確かに面倒な肺の病だったが、アタシにかかればどうって事は無い。そしてその際になのはが『アイナさんの発明って役に立つんですね!!』って邪気の無い笑顔で言って来た時はどうしてやろうかと思ったね。後ろで爆笑していた藍は蹴り飛ばしたけど(アタシの足が痛かった……)

 

「さて、フェイト。本当にいいんだな?」

 

「………………今更聞かないで。私もお姉ちゃんが生き返ったら嬉しいし、母さんも嬉しい。そして母さんが嬉しいなら私はもっと嬉しい。それはきっと、いい事なんだよ」

 

「フェイト…………」

 

そんな健気可愛いフェイトの後ろから、プレシアは抱きついた

 

「か、母さん…………?」

 

「本当に、本当にあなたには辛い思いをさせたわ。許して欲しいなんて言えないけれど、それでも私は…………………」

 

「大丈夫だよ、母さん」

 

フェイトはそう言って、プレシアの手を抱く

 

「私は今、幸せなんだよ。母さんが笑ってくれているのが、本当に幸せなんだ。だからもう謝らないで。私は母さんが私にそうやって微笑んでくれるなら満足なんだから」

 

「フェイト………ッ!!」

 

感極まったプレシアはそのまま泣き出しそうな表情になる。ムカつくからその背中をフェイトごと蹴り飛ばした

 

「テメェら家でやれ!! 見てて恥ずかし………」

 

「アイナさん〜。今、とってもいい所だったのに何で邪魔するのかな〜?」

 

ゴゴゴなんて効果音と共にレイジングハートを構えたなのはが後ろに立っていた。しかもチャージ完了の撃つ準備万端状態で

 

「…………なのはさん。どうか矛を収めてはくれませんか? アタクシはただこのシリアスな空気に耐えきれなくなっただけなんです」

 

「だからって普通邪魔する? せっかくフェイトちゃんのがんばりを認めて貰える最高のシーンだったのになんでアイナさんはそうなの? ホントに、少し頭冷やした方がいいよね」

 

「その台詞はいろいろ間違ってる気がする!!」

 

そしてアタシの絶体絶命のピンチを気にせずイチャコラするプレシアとフェイト。ってもういいじゃん!! なのはさん、またあいつら始めてますよ!!

 

「じゃあ来世でね。アイナさん」

 

「死亡前提!? 助け…」

 

レイジングハートの電子声。目の前に桜色の閃光。あぁ、これは死ぬなーって漠然と思いながら吹き飛ばされる

 

「ほんと、アレがあの時あんなに凄まじかったアイナさんとは思えないわねぇ。本当にただのギャグ要因じゃない」

 

リンディのそんな声が最後に聞こえて来た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、アタシの身体と数億円もする機材に研究成果が吹き飛ばされた所で元の話

藍が帰って来て、チェック項目は全てクリア。後はエンターキーを押せば理論上はアリシアが生き返る所まで漕ぎ着けた

 

「じゃあプレシア。アタシが押すのも筋違いだと思うから押しちゃって」

 

「えらく軽く言うわね…………。フェイト」

 

アタシがPCをプレシアに受け渡し、その後ろに立った時、プレシアがフェイトに声をかける

 

「……………………ありがとう。あなたがいてくれてよかったわ」

 

「母………さん」

 

見るとフェイトは泣いていた。アルフも『よかったねぇ、フェイトォ』なんていいながら涙を流している。なのはやユーノももらい泣きだ

それを見て、少しだけ暗い気持ちに成る。アタシのナナカはもう絶対に生き返らないのに………何をハッピーエンドみたいな顔をしてるんだって叫びたくなる

そう、アタシはアルハザードであった事を皆に一切話していない。だからプレシアだけがアルハザードからアリシアの魂を持ち帰った。そんな感じになっているのだ。言わなかった事に理由は無い、ただナナカだったら言わないだろうななんて思っただけ。それに言った所でどうしようと言うのだろう。何も変わらない、何も変えられない自分の無力に再び打ちのめされるだけだ

 

「じゃあ、いくわ」

 

そう言うプレシアがエンターキーを押す

一部を機械化したアリシアの身体に膨大な数のデータが流れ込み、インストールする。手術台の上に乗ったアリシアの身体はビクンと数回震え、そして動かなくなった

 

「………………………あ」

 

そしてゆっくりと、本当にゆっくりと目を開く。その目を開くだけで数分、次は指が動く、頭、足、呼吸する為に胸が上下に動き出す。そして最後にこっちを向いて

 

 

 

「おかあ……さん?」

 

 

 

そう言った

そこからはもうめちゃくちゃだった。抱きついて離れないプレシアを無理矢理引きはがし、アタシとしては藍と言う前例があるので慎重かつ入念に検査して、この子がプレシアの娘のアリシアと言う事が確定させた

もちろんアリシアの記憶を持った別人の可能性もあるにはあるが、フェイトと藍が『ない』と言っていたのでひとまず信じておこう。それにアタシの検査にも違和感はなかったし、実際にアリシアに会った事のある唯一の人物であり親のプレシアがアリシアと認めた。今後の経過もあるだろうが、とりあえずは問題ないだろう

しかしまぁ課題もある。当然の事だが機械は成長しない。そしてアリシアの身体に合わせて作った臓器は数年おきに交換しなければ成らない。さらに定期検診も必要だ。ただでさえ一度死んだ肉体を使っての蘇生、しかもいろいろアタシがいじくってる。短期間であれば普通の人間より無茶は効くが、長期間の運用には常の検査が必要だ。できれば三日に一度、最低でも数週間に一回は検査をしなければどんな障害が出るか解らない。藍でさえ未だに月ごとの検査は欠かした事はないのだから

 

まぁその事は置いておこう。今、そんな話をするのは完全に野暮って物だ。皆幸せで、笑顔で、それでいい。相坂アイナはクールに去るぜ、なんてな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外でポケットからロケットを取り出す。中にはアタシとナナカが写った写真

 

「ほんと、なんだかなぁ。成功したって保証はないのにあの騒ぎよう。どうしたもんかねぇ」

 

ため息一つとぼやきを少し。そしてアタシの心は……………余りにも殺風景だった。アルハザードから帰って来てから、どうにもアタシは完全に壊れてしまったらしい。きっと涙が出るだろうなんて思っていたのに、乾いてしまってどうしようもなかった。ナナカを2度も殺した罪悪感でどうしようもなくなるだろうと思っていたのに大した事なかった

アタシはきっと壊れてしまったのだろう。あんなにも大事だったナナカとの思い出がが

 

今はもう、ちゃんと思い出せないでいた

 

おかしいよなぁ。一度見た事聞いた事は絶対に忘れないはずなのに………………あんなに大好きだったナナカの事を、ちゃんと思い出せなくなっているんだ

ナナカの顔が、こうやって写真を見ないと思い出せない。ナナカの声が、藍のを聞くまで思い出せない。ナナカとの思い出だけが、薄れているのだ

あぁ……………きっとこれは、アルハザードの後遺症。アタシがナナカの事を否定したから、あの願いを叶える世界はナナカの‘願い’を叶えたんだ。本当に、嫌になる

 

そう思って、ポケットから近代的な注射器を取り出した。中の薬品は毒薬。アタシの体質に合わせて作った、アタシの為の、アタシを殺す為だけの毒薬。他の人間に注射しても何の効果もない薬品だが、アタシの体内に入った時だけ劇薬となる。なんの苦しみもなく、ただ眠る様に息絶える薬。藍が藍になった日に作って、今の今まで密閉保存して持ち歩いていた薬だ

 

「じゃあ、今いくよ。ナナカ」

 

どうせ会えないって解ってるのにそんな事を言った。アタシは自分で思ってるより形式を大事にする人間らしい

アリシアの整備は藍に任せておけば大丈夫。他のアタシがいなくなって困る問題は全て処理済み。もう、アタシがここにいる意味は……………ない

始めからこうしていればよかったんだ。ナナカを殺した日にこうやっておけばよかったんだ

 

 

アタシは何の躊躇もなく針を首筋に近づけて行く

 

 

藍が本当の意味で生まれた日、‘生きていいかな’なんて思った。何度も何度も絶望した人生だけど、もう一度頑張ってみようかななんて思った。だから今まで頑張って来た。今まで通り絶望しながら

 

 

針を首筋に突き立てた

 

 

でも、もういい。最後の最後に待っていたのがナナカの裏切りだ。もしかしたらあの子がアタシに忘れさせたのかもなんて思ったら……………もうダメだった。そう、アタシは

とっくの昔に、生きていたくなんてなくなっているんだ

 

 

そして中の薬品を押し込む為に、頭のボタンを押した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アタシの人生に何の意味があったんだろう。その答えは結局解らない

でも、たった一つだけ解る事がある。私が生まれて死ぬ事に、私は何の意味も見出していない事だ

 

 

 

 

記憶の中のナナカを思い出す事はもうない

 

 

 

 

                                        bad end




…………………………さあ!! 批判でもなんでもするがいい!! いい訳はせん!! 書いてる途中で思いついて、『あれ? これが一番すっきり終わるんじゃね?』って思ったらいつのまにかこんな事になっていたわ!! あ、ごめんなさい。石投げないで

えーと、見ての通りバッドエンドです。そして一番無理のないエンディングです。アルハザードから帰って来たアイナはアリシアを蘇生しそして自ら命を絶ちます。

さて、次回で最初に考えたエンディングを書き、後日談を書いてこの作品は終了になります。ここまで読んでくれた方々、本当にありがとうございました

感想、ご指摘、お待ちしております



もうちょっとだけ続くよ
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