『ナナカの思いは解ってる』
結局アタシには何も‥…なくなった
epilogue 2
「じゃあ、今いくよ。ナナカ」
どうせ会えないって解ってるのにそんな事を言った。アタシは自分で思ってるより形式を大事にする人間らしい
アリシアの整備は藍に任せておけば大丈夫。他のアタシがいなくなって困る問題は全て処理済み。もう、アタシがここにいる意味は……………ない
始めからこうしていればよかったんだ。ナナカを殺した日にこうやっておけばよかったんだ
アタシは何の躊躇もなく針を首筋に近づけて行く
藍が本当の意味で生まれた日、‘生きていいかな’なんて思った。何度も何度も絶望した人生だけど、もう一度頑張ってみようかななんて思った。だから今まで頑張って来た。今まで通り絶望しながら
針を首筋に突き立てた
でも、もういい。最後の最後に待っていたのがナナカの裏切りだ。もしかしたらあの子がアタシに忘れさせたのかもなんて思ったら……………もうダメだった。そう、アタシは
とっくの昔に、生きていたくなんてなくなっているんだ
そして中の薬品を押し込む為に、頭のボタンを………………
カタカタ、カタカタ
押せなかった、全身が、氷水に浸かった様に震えだしたからだ
指が震える。身体が震える。心の中に感じた事のない感情が生まれてくる。
「なんだ、これ」
自分が自分で制御出来ない。そんな事始めてだった
「あ、………はぁ!! あああああ!!」
自分の中に突然生まれた感情に、叫び声をあげずにいられなかった。そしてそのままその感情に従って注射針を引っこ抜く。ほんの少し血が飛び散り、注射針は中の液体を完全に残したままだ
ありえない、ありえない!! そんな思いが自分の中を駆け巡る。なんだこれは…………まさか、これって恐………怖?
「アイナさん!!」
全身からとんでもない量の汗を噴き出させながら、声が聞こえて来た方に振り返る。そこには
「なのは………か」
「アイナさん。何をしようとしていたんですか?」
高町なのはが、そこにいた
自分の中に生まれた感情を無理矢理制御して、いつも通りのヘラヘラした笑顔を浮かべ、言う
「なにって……………中和薬よ。今回の戦いでいろいろ無茶したからねぇ。治そうと思ったらしばらく投薬続けなくちゃいけないのよ」
なのはは少しだけ目を閉じて、開いて言葉を発する
「………嘘、ですよね」
アタシはヘラヘラした笑みをさらに強くして
「嘘じゃないぜ。実際、このまま何の処置もなしだと動脈硬化に脳の肥大化。後はそうだなぁ…………目ん玉飛び出るかもしれないぜ、物理的に」
「でも……………今、打とうとした薬はそうじゃないはずです」
あは、と声が出た
「なんでそう思う? 根拠は?」
「帰って来てから様子がおかしかったから」
「そうか、根拠としては弱いな。他にないか?」
「ありません」
はは、やっぱりこの子は凄まじいな。本当に、本当にナナカにそっくりだ。魂の有り方とか、見てる方向とか。そんなのがそっくりだ
「あ、はは。あははははははははははははははははははははははは!!! あぁお前の想像通りだよ。これは毒薬、アタシに残された最期の希望だぜ」
「な、なんで………………なんで!! アイナさんには藍さんがいるじゃないですか!! ナナカさんの事は聞きましたけど…」
「あぁ、そうじゃないんだ。そうじゃないんだぜ。それはもちろん根底にあるけれど、そうじゃない」
ガタガタ震える心を覆い隠して、精一杯の虚勢を張りながらの叫び。そして言葉を続ける
「なぁなのは。あの時アタシはアルハザードにいたんだ」
「え?」
そこから話した。ナナカと会えた事、話した事、笑い合った事、殺した事。そしてナナカの事を、思い出せなくなっている事
大好きで大好きで仕方のないナナカの事を思い出せなくなっている事。それがアタシにとってどれだけの絶望か、自分よりも幼い少女に話していた
「なのは………。アタシが生まれてからずっと地獄にいたんだ。自分以外に……ううん自分さえも信じれないって地獄に。全員が敵で、それでも救われたくて、信じたくて、そんな時にナナカが現れた。その時にアタシは救われて、その時の幸せな記憶があって、それを大事にして、やっと生きて来れたんだ……………でもさ」
ヘラヘラ笑って、今に至っても出ない涙に死にたくなりながら
「でもさ、それももう……………………なくなっちゃった。もう、アタシの幸せ、全部なくなっちゃったんだぜ。それも、ナナカに消される形で」
ナナカはジュエルシードと直結していた。それはつまり、操作も出来るんじゃないかなんて想像。もちろん根拠はないし理由も思いつかない
いや、もしかしたら…………………アタシはナナカに本当は嫌われていたのかもしれない。だから嫌いなアタシの記憶を消したんじゃないかなんて思う。解ってる、そんなの根拠もない妄想だって、解ってるでも………………もしそうなら、アタシはもう生きて行けない。生きて行けない、はずなんだ
「もうさ、どうでもよくなってしまってさ。もしかしたらナナカに嫌われていたかもしれないなんて想像を抱いた時点でもう……………ダメなんだ。それに、アタシの事を嫌ってなかったら記憶をいじったりしないはずだよね? あぁ解ってるよ…………全部アタシの妄想だって事くらい解ってるさ。でも、もうナナカはいないから………あの子の真意なんて解らない…………。私は、ナナカに愛されてたのかなぁ?」
アタシにとって、ナナカと言う存在は余りにも大きい。いなくなれば死にたくなるくらい。そのナナカがあっさり死んで、そして今、その記憶さえもなくなりつつある。昔っから、生きる事に執着はなかったけれど、もはや生きる事は出来ない
そのはずなんだ
なのにこの身体の震えはなんだ? まさかアタシが、死ぬのを怖がってるなんて言うのか? そんな馬鹿な。親友を二度も殺して、生きる意味をなくして、なのにどうして生なんかに執着する? あぁそうだ。やっぱりアタシは生きる事に意味なんか求めていない。ではなんで身体は震える? 心は恐怖する? このアタシが死にたくないなんて原始的な理由で恐怖を…………
「うん、ナナカさんはアイナさんを大好きだったはずだよ」
その言葉で、ループしかかっていた思考は現実に引き戻された。
そして、なのはの言葉に、次第に驚愕する。この子は一体なんて言った? なんで、この子がナナカの気持ちを代返なんて出来るんだ。恐怖とは別の感情で身体を震わせながら、しかし冷静になのはに言う
「言い切ったね…………根拠はなに?」
「ないよ」
ビキリッと頭の隅で音がする
「ふざけるな。じゃあ何でアタシの記憶を消す? もうアタシはナナカの為に涙さえ流せないんだぜ? そんであの馬鹿、こともあろうにまた幸せになりやがれなんて言いやがった。アタシは……………!!」
「ねぇ、アイナさん。少しでいいから、黙って私の話を聞いてくれないかなぁ?」
なのはは、笑っていた。こっちを見て、優しい笑みを浮かべていた
「アイナさんはずっとずっと、寂しかったんだよね」
……………………今更、だ
「私ね、少しでけど寂しいって気持ち、解るの。最近まで家でひとりぼっちでいる事も珍しくなかったから。もちろんアイナさんみたいに死別したって訳じゃないけどね」
知ってる。士郎さんの過去や高町家の事情も多少は知ってる
「あのね、アイナさん。私、すっっごく怒ってるんだ」
「え?」
予想外の言葉に、間の抜けた声が出た。怒ってる? 何で?
「………………………本当に気付いてないんだね。うんじゃあとりあえず」
ゴンッ
気付いた時には仰向けになっていた。あぁそういやなのはって実は剣道齧ってるんだっけって思い出した
「っテメェ!! なにすんじゃーゴフッ!!」
「今のはフェイトちゃんの分だよ!! ちなみにさっきのはユーノ君の!!」
凄まじい、少なくとも小学生の拳でない一撃が今度は顔面に直撃する
「これはアルフさんの、これは私の分!! そしてこれが…………」
延髄に肘を喰らって、腹に蹴り。そしておもっきり吹っ飛んだ
「長い間ずっとずーーーーーと一緒にいたのに、未だに寂しいなんて言われる、藍さんの分だーーーーーーーーーーーー!!!」
いつの間に取り出したのだろう、レイジングハートを構え攻撃モーション。そして本日二度目の桜色の閃光がアタシを貫いた
全身を焼かれながら、うつ伏せで倒れるアタシ。つーかマジで死ぬ
「どう? 少しは頭冷えた?」
「あのですね、なのはさん。その何かと暴力に訴えかけるスタンスはよろしくないと思うんですよ。アタクシ」
つーかボコこられた理由にも納得いかない。何故にここまでされにゃならん
「…………………………アイナさん。私たちの気持ち、特に藍さんの気持ちって考えた事ある?」
「藍に関してはなのは達に何かを言われる筋合いはないけど……………。そうだな、ないな」
「寂しさや辛さって、分ち合えば薄らぐんだよ」
「そいつは知らなかったな」
「それでね、分ち合ってもらえない方は…………辛いんだよ」
これは私も最近知ったんだけのね。そうなのはは続けた
「そいつも………………知らなかったな」
この子は本当に、ナナカに似ていると。そう思ったこんな風にむちゃくちゃに、無理やり人の心をこじ開けて、ズカズカと土足で踏み入って来る所が
「ねぇ。アイナさん。もう一つ、アイナさんが言っていた事への勝手な想像。言っていい?」
「…………………………」
言葉は発せなかった。代わりにコクんと頭を小さく振る
「さっきアイナさんが、『アタシはナナカに愛されてなかった』なんて言っていたけど、私はやっぱり当然愛されていたって答えるよ。さっきは根拠なんてないって言ったけど予想はあるから
私だったら大切な人には忘れて欲しくないって思う。でも自分が死んで、それで私の大切な人がそれに囚われる様ないき糧をするなら……………きっと私は自分のことを忘れて欲しいと思うよ」
私は、黙ってなのはの言葉に聞き入っていいた
「そう思っていたナナカさんは、チャンスに恵まれた。そして自分に囚われる生き方をしているアイナさんを見て、自分の事をを忘れて幸せになって欲しいと思った………………どうかな?」
「…………………………………………は。根拠なんて何一つないな」
「そうだね、だからこれは私の想像。でも、きっと当たらずとも遠からずだと思うよ」
いつのまにか、涙は出ていた
思い出していたのだ。もはや思い出せなくなってしまったナナカとの思い出を
『ねぇアイナ、私たちはお互いを信じ合おうよ。信じるって言うのは言葉だけじゃない。心を信じるんだ。だからもし、私がここにいなくても、私の思いを汲み取ってね』
『はっ!! そうだな、アンタが明日家族と旅行に行ってる間、アンタの分の給食プリンはしっかり食っておいてやるぜ』
『鬼!!』
その会話はくだらないものだったけど、でもあの子は確かに言っていたんだ。信じてって。アタシは、ナナカを信じてなかったのか?
そしてやっと気付いた。自分の手の震えの意味を。恐怖の意味を。アタシは、ナナカを裏切るのが怖かったんだ
「……………………………………………は、はは。じゃあなにか? アタシはあの子の思いを何一つ理解せず、それで勝手に死のうとしてたと…………? はは、まぁそれは
縋り付きたくなる様な、そう信じたくなる様な……………悪くない想像だよな………」
「アイナさん、貴女は寂しいって言った。でも、その寂しさは他の友達が埋めてくれるよ」
「と、もだ、ち?」
「うん、私と、フェイトちゃん。ユーノ君にアルフさん。クロノ君もそうだしリンディさん。それにプレシアさんもそうだね。私が知ってるだけでもこれだけも友達がいるんだ。アイナさんの寂しさを、ほんの少しでも私たちは癒せるんだよ」
あぁ、友達…………か。そうか、そうだった。アタシが欲しかったのは……………
いつの間にか、みんなが集まっていた。皆が皆、アタシに不満げな顔を向けている。その意味を、なのはに言われてやっと理解していた
「あぁ、そうだな。ごめんな、皆。そして……………………………ありがと」
それだけ言ったら自然に涙が出た。今は泣こうと、そう素直に思えた。皆の前でみっともないとかそんな思いもなく、ただ泣いた
どっかの誰かの言葉を借りるなら、この世界はこんなはずじゃなかった事ばっかりだ。アタシの一番大事な親友は簡単に死んでしまうし、変な世界に飛ばされてもう一度殺すはめになる。でも、今更ながらに気付いたのは自分が一人じゃないって事だ。もちろん、ナナカがいなくなって寂しいし、未だに死にたくなる時はある。一人で枕を濡らすし、なんでもないってごまかしたりもする。しかし本当にどうしようもなくなった時に、傍にいてくれる人が出来た。それはなんと言うか、幸せな事なのだろう。それを藍に言ったら『今更ですか』なんて怒られた
だからアタシは生きて行ける。
泥だらけになりながら、相変わらず世界なんてくそったれだなんて言いながら、生きていく
Truth end
これが本当のエピローグじゃぁあああああああああああーーー!! 本当は前の話の前半と、この話で一つだったのになんかよくわからない電波を受信してこうなりました。いや、でも個人的にはアイナは1回死んどいた方がいいと思うんですよね。はい、なんかすいません
さて、この先の後日談でこの話は終了なんですが……………………A'sの内容を一切考えてません。ぶっちゃけ藍やナナカみたいなとんでもネタももうないし、ゲーム版やってないからリーンフォース生存ルートもよくわからないし、よってマテリアルズってなに? って感じなんです。でもリリカルシリーズで一番好きなキャラってはやてで書きたいって気持ちもあるし、でもなぁ……………なんて感じでA'sやるかどうか未定です
しばらくは更新速度も落ちるでしょうし、ネタを思いつき次第の執筆になるので下手したらこのまま終了です。でも見捨てずにいてくれたら更新してるかもしれません。具体的には感想くれるとか………………
失礼しました。最期までお付き合い頂いて、本当にありがとうございます。またどこかでヌムラの名前を見かけたら相手をしてあげてください
本当にありがとうございましたーー