月曜日。1週間が始まる悪夢の日だ。行く必要のない学校に行かされ、自分より無能な教師に幼稚園で覚えた事を習う場所、今からそこに向かう
それを嫌がってベッドにしがみつき、藍の鉄拳で叩き起こされ学校に向かう。そんないつもの月曜日だ
しかし今回は少し違う。学校に向かうアタシの隣に長い金髪をリボンで束ねたかわいらしいが少し背の低いフェイトにそっくりの少女が隣にいた
「どうラン、アイナ? 制服似合ってる?」
「はい、とても良く似合ってますよ」
「ん、まぁ悪くないんじゃねーか?」
アリシア テスタロッサちゃんでーす。はい拍手ー。そして回想ー
これはあのアタシの自殺未遂の後の事だ。全員から一発ずつ拳骨を喰らって(なのはに殴られたから勘弁してくれって言ったのに聞いてもらえなかった)どんちゃん騒ぎも再会。飲んで食って、なのはのなんかとんでもなく巧い歌を聴いて、まぁもうお開きかなぁって所でリンディが口を開いた
「さて、この騒ぎも収まって来た所で私の来た目的を話そうかしら。私は貴女達がこれからどうするつもりか聞きに来たの」
まぁ当然の疑問だよねぇ。アリシアを生き返らしてはいおしまいって訳には当然いかない。むしろ大変なのはこれからだ
ジュエルシードと言うロストロギア、それを収集するのも管理局の仕事だ。しかし回収されてしまえばアリシアの魂も終わり、もう一度死ぬ。まぁそんなのをこの場にいる全員が許すはずもない。だから聞いてるのだ、『どうする?』と
「つーかアタシは管理局がどう言うスタンスで行く気なのかが気になってしょうがないぜ。アリシアを殺してでもジュエルシードを回収する気なのか、それとも放置してくれるのか、はたまた他の策を提示してくれるのか」
実際のところ、アタシは管理局と言う組織をよく知らない。大量にある世界を束ねる政府機関みたいな組織と認識しているが、その程度なのだ。さらに言うと、アタシはその手の組織は基本的に信頼しない事にしている。というか50人を超える組織は、絶対に一枚岩にならないから行動を読むのがめんどくさい、だから出来るだけ関わりない
「…………とりあえずの前提だけど、アリシアさんを再び殺してまで管理局はロストロギア回収は行いません。しかし、アリシアさんは自身の身体にジュエルシードを宿し、しかも常時発動してる状態です。当然野放しには出来ません
しかしこちらとしてはアリシアさんに罪はなく、人並みの生活を送ってもらいたいと思っています」
「それって管理局の結論? それともリンディの独断?」
アタシは口を開く。歯に衣着せる? なにそれ、美味しいの?
「管理局員としての判断です。こちらとしてはフェイトさんとプレシアの裁判の為にミッドに連れて行くとき、一緒にアリシアさんも来てくれればと思っているのですが………」
「あー。そりゃ無理だぜ」
アリシアはまだ目覚めたばかり。しばらくはこの研究所の外に出る事さえアタシ的には許可出来ない。まだまだしなくちゃいけない検査もまだまだある。ジュエルシードの状態がアタシの科学とキチンと噛み合ってるか経過を見なくちゃいけない
まぁそんな事を専門用語を上げながら‘解りやすく’説明すると……………
「あ、ありがと、アイナさん。もういいわ。少し頭が痛くなって来た…………」
「か、母さん。今の話理解出来た?」
「え、ええ、少しだけ」
「あうぅー、アイナさん。日本語喋ってー」
こうなった
「全く、この馬鹿主人め……………。アリシア様はしばらくはここから動かせません。100%の安全が確認できるのにはまだしばらくかかります」
藍のあきれた様な仕草と解説。………そんなに解りにくかったかなぁ?
「そう…………だからといってこのままにしておく訳にもいかないし、明日にはミッドに護送しなくちゃだし…………………」
「まぁ選択肢なんてあってない様な物だぜ。しばらくは家で預かるからその間に裁判だかなんだかを終わらせて来て。監視はしょうがないからいてもいいよ」
「……………………あのねぇアイナさん。解ってると思いますけど貴女も連行ですからね」
…………………………………………はい?
「当然です。アースラへの攻撃や敵対行為。公務執行妨害の罪で禁固10年は固いわね」
「いやいやいや、アタシって確かに暴走したけどそれなりに役に立ったぜ。それを加味してくれたら嬉しいなーなんて」
「アイナ様、綺麗な身体になって帰って来てください」
「アイナさん。10年は長いけど頑張ってね」
「アイナ…………。私待ってるから」
「テメェらふざけんな!! つーかアタシを捕まえられると思ってんのか!? その気になれば全世界を相手に喧嘩出来るアタシを!!」
実際、斬城が一つあればこの世界の全ての連合軍だろうと余裕で相手に出来る。まぁプレシアレベルの魔導士が数人がかりで来られたら無理です。あの馬鹿出力を本当に人間が出してると思うと頭が痛くなる
「当然、思ってないわ」
こうなったら徹底抗戦も辞さないぜって感じで斬城Ⅲ(また作った。7兆円)を装備して、藍に『こんな所で戦争でもしでかすつもりですか、この弩バカ様』と言われながらの音波攻撃に悶えてると、リンディが余りにも予想外の事を言って来た
「正直に言って、アイナさんを捕らえるにはアースラの戦力では足りません。本部から応援の要請しても魔力の痕跡を消せるアイナさんには隠れてしまえば問題なく、しかもこちらの次元航行の技術もかなり漏洩してしまってます
まぁその他諸々を踏まえた上で、貴女を捕らえるのは‘割に合わない’と判断しました」
「……………………まぁ、この国の政府にその事を解らせるのに3年もかかった事を考えれば、管理局ってのは優秀なのかねぇ」
アタシの技術力は知る人ぞ知る秘密だ。アタシ自身も出来る事ならバレたくないし、面倒ごとはごめんだ。しかし、知る人ぞ知ると言う事は知っている人は知っていると言う事だ。そして当然利用しようとするもの、ゴマをすって甘い汁を啜ろうとするもの、その他諸々を全て叩き潰し、あれを相手にするのは‘割に合わない’と思わせるのに3年もの月日がかかった
「そこで提案なのですが…………アイナさん。貴女、管理局に入りませんか? そうすれば保護観察と言う形で……」
「却下!!」
アタシは即答した
何故にわざわざそんなめんどくさそうな組織に入らなくちゃいけないのか。つーかそういうのが嫌でアタシは1人で研究を続けているってのに
「まぁそうよねぇ………じゃあ提案その2。一部の研究成果を管理局に渡す事」
「やだ!!」
またも即答です
ぶっちゃけそれはこの世界でもバラ売りという形でやってるからどっちでもいいけど、なんか勢いで
ズガンッ
頭に鋼鉄の拳(比喩にあらず)が突き刺さった
「なにすんじゃ!! この全身凶器のロボ子!! テメーに殴られたら普通に死ねるってなんかいいったら解るんじゃボケ!!」
「あなた様が余りにもヴァカだからつい手が出てしまうんです!! 私は悪くない!!」
「帰れ裸エプロン先輩!!」
本当にこの馬鹿をバラしてスクラップにしてやる!! そう思い、斬城を構えた所で顔面に鋼鉄の(やっぱり比喩にあらず)踵が直撃した
「……………………………死ぬ」
「リンディさん。後者の方でお願いします。というかアイナ様が組織勤めなんて出来るはずがありません」
「アタシを無視して話進めたあげくに暴言!!? アンタ、いい加減にしないとアタシでも怒るよ!!」
「知るかヴァカ」
もはやメイドの言葉ではない。若干絶望しながらもういいやーと嘯いて
「じゃあリンディ、とりあえずこれ。普通にアースラで見れるデータ。重力操作の基本理論が入ってるから勝手に見といて」
「あら、結構素直じゃない」
「まぁその気になればそっちでも作れるだろう技術だしね。魔法の理論はまだ5〜6割程度しか解ってないけど、でもまぁ重力操作くらいはあるでしょ」
「斬城、くれないかしら?」
「それは本当に無理。これは一つで世界を滅ぼしかねないから」
そんな物を個人レベルで所持しないで欲しいんだけどねぇ、とリンディは続けた。まぁ今更だろう
どうにもアタシの技術はレアスキルとやらの扱いになるらしい
そしてロストロギア保持者であるアリシアとレアスキル保持者であるアタシ、2人は管理局の監視が付く事を条件に、地球に留まる事を許されたのだった
して現在、フェイトとプレシアが裁判でミッド…………まぁ魔法の国の首都だかなんだかに行ってる間、アリシアちゃんは家で預かる事になったのでした
アタシと藍は無罪放免…………とは行かず保護観察処分。まぁやった事に比べれば大した罰じゃないだろう
………………………………ぶっちゃけ。管理局の監視くらい逃れる方法くらい、いくらでも思いつくけど
そして監視と言うのはあろう事かなのはの事だった。なんでも将来は魔導士の道を漠然と考えているらしく、じゃあ嘱託魔導士としてしばらく体験で仕事をする事になったらしい
まぁなのは相手じゃアタシは直接排除って手段がとれないから、人選は間違ってないんだろうが…………。すこしリンディの後ろに狸の陰が見えた
「ってアタシも行くフリしないと………………」
「ラン、アイナが学校またサボる気だよー」
藍に聞こえない様に小声で呟いたのに隣にいたアリシアちゃんにはしっかり聞かれてた
「ちょ、おま!!」
「アイナ様ー。殺すぞ」
もはやこの子が何処に向かってるか解らない
「まぁそれはいいとして…………。アリシアちゃん、今日が初登校だろ? 9歳相当の知識はダウンロードしておいてやったけど……………」
「大丈夫だって!! アイナもランもちゃんとこの世界のルールを教えてくれたし、学校に行ったらなのはちゃんもいるし、アリサちゃんやすずかちゃんを紹介してもらうんだから」
うわぁ。やっぱなんか眩しいなぁこの子。アタシの周りにはいなかったキャラクターだなぁ。徹夜明けのこの身体にはキツいぜ
「じゃあ藍。いつも通り留守は頼むぜ、晩飯はカレーな」
「あ、私もカレー食べたい!!」
「えぇ、ではその様に。
いってらっしゃい」
「「行ってきます!!」」
さて、これにて完全に終了です。若干蛇足っぽかったけどどうしても入れたかったので書きました………………なんか変になったけど
ではまた機会があればどこかでー。またはネタを思いついてA's編始めたらまた合いましょう。さようなら