刹那、目の前から巨大な木が生えて来た
「んな!!」
「これって………!!」
頭の中でジュエルシードという言葉が浮かぶ。しかしここまでの反応を示したことは一度も無かったはずだ
なら、大きな反応をする理由があるはず。しかし今この場に置いてはどうでもいい。後回し
「フェイト!!」
アルフがフェイトを抱えて跳ぶ。オリンピックに出ろと言いたい動きだったが、とりあえずホッとした
「アルフはフェイトを連れて安全な場所に行ってろ!! アタシはこの異変の原因を突き止めてくる!!」
ポケットから予備のケータイを取り出して、二人に向かって投げつける
「そこにアタシのケー番入ってるから落ち着いたら連絡して!! じゃあそういう事で」
「ちょ、アンタッ!!」
アルフがなんか言ってたが無視。神社の階段を降りながら普段使ってるケータイを取り出した
電源入ってなかった
「あーーーー。それで藍から連絡なかったのか」
若干戦々恐々としながら、藍に電話する。1コールで出た
『アイナご主人!!! 今どこ!!』
「神社の階段を降りた所です、マム!」
ズガンッ
そんな音がして、藍が降って来た。比喩にあらず
「説教は後。とりあえずなのは様と合流しますよ」
「いやなにアンチグラビティ使ってんの!? それの電力消費量ってのわ!!」
捕まって、担ぎ上げられて、藍と一緒に空を飛ぶ。アタシの作った重力制御装置の力を思う存分発揮して、アタシと藍は空を舞った
重力を操るアタシの発明品、アンチグラビティシステム。名前が余りにそのままだと思うのでネーミング募集中だ。そしてもちろんそんな事は後回し、いまは空をバーミア噴かして飛んでるという事実だけでいい
これの電気代が1分につき、一般家庭が1年を優に過ごせるくらい掛かるのもどうでもいい
「よくねぇけどな。で、状況は?」
「見ての通りです。海鳴全域に巨大な樹が生まれ、とんでもない速度で成長してます。樹の種類は不明、ただしジュエルシードの反応が全ての樹から見られます。本体の場所は捜索中」
「OK」
飛びながら、下を見ながら、思う。想像以上だ
ジュエルシードから観測されたエネルギーを樹木を育てる為に使えば、確かにこの事態を引き起こすのは可能だろう。だが実際に見るのは想像を絶した。地震のシュミレーションを見た所で、ピンとこないのと同じだろう
アタシにこれと同じ事が出来るかと聞かれればYesと答える。しかしそれは入念なシュミレーションや莫大な費用と機材が必要になる(本来なら人員も必要だが、アタシは人間並みに動けて頭もいいロボを作れるから問題ない)
一瞬で樹木を成長させる意味を考えるが、魔法の事を深く考えるのはやっぱり後回しだ
「アイナ!!」
とあるビルの屋上に到着した。そこにはなのはとユーノの姿
なのはは魔方陣の中で目を瞑り、なにかに集中している様だ。………どうせ魔法だぜ、アタシには意味解らん
「なのはの奴、一体何してんの?」
「僕としては、魔法の使えないアイナとランがどうやって飛んでたのか気になる所だけど…………。なのはは今、ジュエルシードの場所を探してる。
凄いよなのはは。教えてない探索魔法。エリアサーチまでセンスで使っちゃうんだから」
「おーそれはすげーな。どの辺が平凡な小学三年生か聞きたくなるくらいに」
「平凡な中学一年生は実戦で使える巨大ロボの制作を本気で試みようとしません。アレ、本気で完成させる気ですか?」
「当たり前だのくらっかー。で、なのはは………」
「見つけた」
なのはがそう呟いた
すると、杖の形をしていた(どこが杖だと言いたい所ではあるが)レイジングハートがどこか銃を思わせる形に変形した
そしてそれを見て、アタシは涙するしかなかった
「うわっ、アイナなんでいきなり泣き始めてるの?」
「どうせ見事すぎる変形を見せられたせいですね。アイナでも変形機構の制作は骨が折れるってぼやいてましたし」
「うっさいわ!! 変形機構なんて無駄かつ装甲が薄くなるうえ大したメリットが無いもんどうして組み込まなくちゃいけないんじゃあ!! そしてどうして変形ってあんなにかっこいいんじゃあああああぁぁぁぁああ!!」
出来るよ!? 変形できるメカくらい簡単に作れるよ
でも実用性を考えたらどうしても無駄にしか思えないんだもん。でもかっこいいです!!
「つーか巨大ロボの時点で実用性ゼロですけどね。人型である意味ない
…………でも頭の角って、いいですよね」
最後の最後でデレてくれる藍大好き
「行って!!」
バカ話に花を咲かせている最中もなのははがんばっていたらしい。ちと反省
レイジングハートから放たれた桜色の閃光は、一番大きな樹めがけて一直線に飛んで行く。樹に直撃し、なのはがお決まりの台詞を呟いたとたん
「………………いやぁ、これは無い」
街を覆っていた樹木が全て消え失せた。だから質量保存の……………もういいです。
「ユーノ。解説」
「え、えーと。ジュエルシードを封印したから魔力が霧散して、木が無くなったとしか言いようがないんだけど………………」
ほほう……。エネルギーが霧散すると同時に物質まで消滅すると
このフェレットもどきは適当きわまりない事を言い腐りやがって………………。しかしエネルギーの消失と同時に視認出来なくなる……か。少し気になるな
「…………………………………」
考えふけってると辺りが静かすぎるのに気がついた。いつもなら『終わったぁ〜』とか『なんとかなったよ〜』とか気の抜けた声が聞こえて来るはずなのに
しょうがないから思考を中断してなのはの方に目を向ける
そこには、意気消沈と言った様子の彼女が座り込んでいた
「…………どーしたんだぜ?」
「私…………………ジュエルシードを男の子が持ってるのを見てたんだ。でも、気のせいかと思ちゃって………
私のせいだ。私がジュエルシード集めにもっと真剣だったらこんな事にならなかったのに」
「なのは………」
ふむ。気のせい、ねぇ
残念ながらアタシには解らない感覚の1つだな。なんせ見たもの聞いた事を忘れた事なんか一度たりとも無いんだから
「そうだな……………それでお前はどう思った」
「っえ?」
しかしそれでもアタシの方が年上で‘取り返しのつかない失敗’をしてものうのうと生きてるアタシは、この程度の失敗で落ち込んでる年下の女の子を慰めずにはいられない
「藍。死傷者は?」
「3秒ください………
軽傷者数名、死者重傷者ゼロです」
「どうしてそんな事が魔法も使ってないのに解るのかは聞かないでおくね………」
ユーノが何か言ってるが無視
1人くらい死んでてもおかしくなかったが、この街の人間は普段の行いがよっぽどいいみたいだな
「なのはがこの失敗をどう思うかなんてお前の自由だ。開き直るもよし、そのまま塞ぎ込むのもよし。好きにしたらいい
塞ぎ込むならレイジングハートはユーノに返してやれよ」
「………………………」
いったん言葉を止めて
「でももし、それでも前に進める者なら。アタシはお前を尊敬するよ」
なのはは答えない。そしてしばらくして
「私、ジュエルシード集めを、するよ」
「…………ん、そうか」
そういうなのはのはの頭を撫でようと手を伸ばす
「ユーノ君の手伝いじゃない。自分の意志で」
「………………………………………」
手が止まった
この子はアタシが思ってる以上に強いのかも知れない。少なくとも、この歳の頃のアタシよりは強い
だから
「………ふぇ?」
やっぱり頭を撫でた
この子はどうにも、本当に平凡な小学三年生ではない様だ。下手をすればアタシよりも異常な精神で、少し怖いくらい歪だ
「なのは、アタシの尊敬する人の言葉を教えたげる
人は失敗に脆弱で、失敗でしか成長出来ない歪な生き物。なのははこの失敗に耐えて強くなった
だから………」
…………………この先は、言わない事にした
どうにも、アタシとこの子は‘合わない’らしい。魂とか、精神の有り方が
だってあの日から一歩も進めてないアタシと違うもの
さて、帰り道
なのはを家まで送り、あと数時間もすれば日が暮れると言った所で電話が鳴った
「ん? 金稼ぎ用じゃなくてプライベート用が鳴るのは珍しい…………………初めて?」
「何度か私がかけた事あります」
「じゃ、身内以外だったら初めてだねぇ」
ケータイを持ちながら、通話するという意思を込めると通話が開始した
「はいはいアイナサンデスヨー。用法用量を守って正しくお使いくださいー」
「電話くらいまじめに出なさい」
聞き流しながら耳を傾け
『え、えっとフェイトです。アイナさん……ですよね』
ん? そーいやポケット入れっぱなしにしてた予備のケータイ渡してたんだっけ
「そーだよ。なに? やっぱ家ないからうち来る?」
ギロリとした藍の視線にビビりながら会話を続ける
『えっと………………本当にいいんんですか?』
「いいよーどうせお世話するのは家のメイドだし。………ごめんなさい。ちゃんと説明するからやめて、殴らないで」
『あ、はは…………………あの、本当にありがとう。なんてお礼を言ったらいいか』
「よーゆーのはいいから。そのケータイに家までのナビが出る様にしとくから、それに従って家までおいで」
通話停止を念じて通話終了。微弱な電気信号を拾ってスイッチのオンオフを切り替えれるこの機能。簡単な動作だったら意味ないな。巨大ロボの操縦に必須だと思うんだが
「アイナ、説明」
「はいはい。金色とオレンジが行き倒れてたから世話する事に成った。以上」
「わかりました」
「あんな雑な説明で解ったの!!?」
「アイナの事をいちいち本気で考えるのが無駄だと解りました」
「暴言だった!!」
ひどいや
「……………まあいいですけどね。ではすぐに帰って離れの掃除をしてきます」
「ん。1時間くらい?」
「5分です」
そう言うと、藍を超スピードで帰ってしまった
「……………………………………離れって3年くらい放置してたはずなんだけどなぁ」
どんどんスペックの上がっていく藍に少し驚きつつ、ケータイを操作して向こうの操作を始めた
「我が家へようこそ。しがない天才科学者のアイナさんです」
「このバカのツッコミ役兼メイドの藍です。要望が有れば何でもご申し付けください。出来る限り対処いたします」
「えっと、じゃあ改めて。フェイト テスタロッサ、少しの間お世話になります」
「あたしはアルフ……………………テスタロッサ。フェイトのお姉ちゃんだ」
ゴフッ
フェイトが吹き出した音だ
フェイトとアルフは近寄って内緒話を始める
「フェイトがこの設定で行こうっていったんじゃないか!! なのに笑うなんてひどいよ!!」
「ご、ごめ…………でも、く……………ぷぷ」
最初に会った時から思ってたけど、仲いいよなー
設定がどうのこうの言ってるが気にしないでおこう。向こうが話してくれる気になるまでとりあえず放置
その意思をアイコンタクトで藍に送り、気を取り直す
「もうなんでもいいから…………………
住む場所は離れが有るから自由に使っていい。夕食は一緒に食べる。研究室には勝手に入らない。その3点を守ってホテル相坂邸の生活を楽しい物にしましょう」
「無理矢理感のあるボケだったので10ポイント。残念です」
「何点満点中?」
「ビリオン」
「……………………うわぁ」
閑話休題
二人を離れに案内して、戻る途中
「………随分と見覚えのある子ですね」
「だろ? 藍の隠し子かい」
ゴスッ
「あの目、明るく振る舞ってるけど悲しみを隠せていませんでした。まるで、昔の私みたいな…………」
「脇腹は地味に効く…………」
ふざけながらも話を続ける
「ま、折りをみて話をしてみますよ。なんだか訳ありみたいですし」
「ん、そーしたげて。本当に、昔の藍を見てるみたいでほっとけなくてさ」
隠しきれない孤独を、向けようのない悲しみを
そう言った負の感情はぶちまけなけりゃ溜まるばかりだから
ーフェイト視点ー
通されたのは、少し小さめの一軒家だった
「…………あの人たち、本当にジュエルシードを集めてると思う? アルフ」
そばに控えていたアルフに、私の大事な使い魔に声をかける
「多分ね。少なくとも魔法の関係者だよ。じゃなきゃ空を飛んだりジュエルシードの発動地点に向かうのはおかしい」
本当は、この家に迷惑をかけるつもりはなかった。でももし魔法関係者で、ジュエルシードについての情報を持っているのなら、近くにいて損はない
危険も大きいだろうが、その分早くジュエルシードを集められるはずだ
「………………………あの人たちの善意を利用する形になっちゃうね」
「フェイト……………」
少し………ううん、とても心苦しい
でも私は母さんの為にジュエルシードを集めるんだ。もう一度、もう一度母さんの笑顔を見る為に
「その為なら、私は何だってするよ」
そう、小さく呟いた言葉は心にストンと落ちて行った
原作の3話終了です。若干アンチっぽくなった気がしないでもないが、シリアス回でした。一応
そして注意。タグにもありますが、この作品には独自解釈や独自理論。それっぽい講釈が多数存在します。対してそういうのが嫌いな方は、ブラウザバックを推奨します。一向に構わんという豪気の方は、お付き合い頂ければ幸いです
感想、ご指摘、お待ちしています