魔理沙「なあ、人里に行ってみないか?」
剣護が幻想入りした日から2、3日程経ったある日、魔理沙がそう言った。
剣護「人里?」
魔理沙「そ、お前ももう大分動けるようになったし、幻想郷を案内してやろうと思ってな」
霊夢「あら、良いじゃない。行ってきたら?」
剣護「そうだな。流石に体動かしていかねえと鈍るし。それに」
剣護は部屋の角に立てかけてある刀を見る。3本ある刀のうち1本は折れて、もう1本は刃毀れしかけていた。
剣護「鍛冶屋を探したいしな」
霊夢「それならいい所があるわ」
剣護「マジ?」
霊夢「えぇ。ただし鍛治師は妖怪だけどね。まあ、腕は確かよ」
剣護「ならそこの方が良さそうだ」
魔理沙「よし!なら行こうぜ!」
剣護「そんじゃ準備してくるわ」
シャツを着てその上に羽織を羽織る。ちなみに服は宴会の翌日に枕元に置いてあった。
左腰に愛刀の十六夜と氷花、背中にイロカネアヤメを背負う。そして弾はあまり無いが銃も一応ホルスターに仕舞って持っておく。
剣護「よし、行くか」
魔理沙「人里行くのにフル装備かよ」
剣護「置いとくわけにもいかないだろ」
魔理沙「それもそうか。じゃあ行こうぜ」
剣護「俺飛べないからな」
魔理沙「わかってるよ」
階段を降りて人里を目指して歩き出す2人。
しばらく獣道を歩き、森の中を通り抜けると大きな門が見えてくる。
門をくぐり抜けると、木造の平屋が連なって並ぶ里の中へと入る。
魔理沙「着いたぜ。ここが人里だ」
剣護「江戸時代みたいな雰囲気だな」
魔理沙「雑貨屋に呉服屋に茶屋とか、いろいろあるぜ」
剣護「へぇ……」
魔理沙「それにな、ここの茶屋には外の世界から来た結構美人な店員がいるって噂になってんだ」
剣護「そうなのか?」
魔理沙「あぁ、私も会ったことあるけどすげえ美人だったぜ。まあ子供いるんだけどな」
剣護「ならあとで行ってみるか」
魔理沙「おう!で、まずはどこ行くんだ?」
剣護「やっぱ鍛冶屋だな。刀の修理と……後は代わりの刀が欲しいな」
魔理沙「それなら一旦人里を抜けないとな」
里の中を歩いていると水色の髪の少女が子供をあやしているところに出会した。
魔理沙「お、小傘じゃないか」
剣護「小傘?」
小傘と呼ばれた少女は、2人に気づくと子供を母親らしき人物に返すと剣護達の方へ近づいてくる。
小傘「魔理沙じゃない。そっちのお兄さんは?」
魔理沙「剣護だ。つい最近、幻想郷に来たんだ」
小傘「へー。私は多々良小傘。よろしくね」
剣護「月島剣護だ。よろしく頼む」
魔理沙「剣護、こいつだぜ。霊夢が言ってた鍛治師は」
剣護「この子が?」
小傘「お兄さん鍛冶屋探してるの?ならうちに来なよ!」
剣護「ふむ……わかった」
3人は人里を抜けて、里のはずれの森へと歩いていくと森の手前に一軒の鍛冶屋があった。
小傘「ようこそ!私の仕事場へ!」
剣護「おぉ……!」
中へ入ると作業場には炉や金床、作業道具、素材の玉鋼などが一通り揃っていた。
小傘は作業場の奥に入り、しばらくして作業着に着替えて出てきた。
小傘「さてと、用件は何かな?」
剣護「あぁ……この2本なんだが…」
剣護は折れた十六夜と刃毀れした氷花を小傘に見せる。
魔理沙「うわ、ボッロボロだな……」
剣護「これの修復を頼みたい」
小傘「ふむふむ………うん、問題なく直せるよ。黒刀は打ち直さないといけないけど」
剣護「それで…いくらだ?」
小傘「そうだね……ざっと5万くらいかなぁ」
剣護「5万か……わかった」
小傘「お代は刀を渡す時でいいよ。ついでにその背中のも見ておこうか?」
剣護「む………そうだな」
剣護はついでにイロカネアヤメも見せておく。
小傘「もう1本の方も……うん、特に何ともないね」
剣護「そうか」
小傘「ところで刀を預かってる間はどうするの?何ならそこにある刀持っていってもいいよ」
剣護「マジで?いいの?」
小傘「うん。そこの壁に私が打ったのが何本か掛けてあるから」
剣護が壁を見ると刀が5本ほど掛けてあった。
剣護「へぇ……どれも良さげだな…」
剣護は1本1本手に取って、刀を抜き、振ってみた。
剣護「ふむ、ふむ…………………………よし、こいつだ」
全ての刀を試してからしばらく考え、剣護は1本の鞘も柄も赤い刀を手に取った。
小傘「………お兄さん、なかなか見る目あるね」
剣護「そうか?」
小傘「それは『
剣護「ヒヒイロカネ……色金か…」
剣護は左胸に手を当てる。トクントクンと心臓が鼓動を刻んでいるのがわかる。
剣護(……俺の中にもあるんだよな……アリアと同じ緋々色金が…)
魔理沙「おい、どうした?」
小傘「お兄さん?」
剣護「ん、あぁ…いや、なんでもない。こいつを貰うよ」
小傘「迦羅紅ね。わかった。お兄さんの刀は数日したら取りに来てね」
剣護「あぁ、わかった」
剣護は左腰にイロカネアヤメと譲り受けた迦羅紅を差し、魔理沙と一緒に鍛冶屋を後にした。
人里に戻った2人は、茶屋で一休みしようと向かっているその時だった。
『わーい!』
剣護「うおっと!」
『うわっ!』
2人の子供が走り回っており、前を見てなかったのか剣護にぶつかった。
魔理沙「だ、大丈夫か?」
剣護「あぁ、問題ねえよ。お前らは怪我はないか?」
男の子「う、うん……」
女の子「だいじょぶ……」
剣護「よしよし。ダメだぞー?ちゃんと前を見てなきゃ。相手もお前らも怪我するからな」
子供達『ごめんなさい……』
剣護「ん、いい子だ」
素直に謝る子供の頭を剣護はしゃがんで撫でてやる。
魔理沙「ん?
優護「魔女のお姉ちゃん!」
剣護「え?知ってんの?」
魔理沙「知ってるも何も、さっき言った茶屋の女の人の子供だよ。こいつら双子なんだ」
剣護「へー……双子か…ちょっと羨ましいな…」
愛菜「お兄さん。兄弟いないの?」
剣護「俺は一人っ子なんだよ。だからキンジや白雪が羨ましかったんだよなー」
優護「ふーん……それよりお姉ちゃん達、お母さんのとこ行くの?」
魔理沙「おう。そうだぜ」
愛菜「じゃあ、案内したげる!」
剣護「お、じゃあお願いしようかな」
優・愛『うん!』
2人の兄妹と手を繋いで、剣護と魔理沙は茶屋へと歩いていく。
剣護「この子ら、めっちゃいい子やん…」
魔理沙「だろ?人間だけじゃなく妖怪からも人気なんだ」
剣護「え、大丈夫なのかよ。それ」
魔理沙「むしろ妖怪含め皆からの愛情受けて育ったからな」
剣護「すげえな………」
愛菜「見えてきたよ!」
そうこう話しているうちに茶屋の看板が見えてきた。
優護と愛菜の2人は店に向かって走り出した。
その時
「泥棒ーーーーー‼︎」
魔・剣『!?』
1人の男が双子の方へ向かって走ってきていた。
泥棒「どきやがれぇーーーーー‼︎」
優・愛『わあああああ!』
剣護「やべぇ!」
剣護が走り出そうとした時、店の方からお盆が飛んできて泥棒の顔面に直撃する。
すると店の中から1人の女性が現れ、双子の前に立つ。
「全く……子供と店の前で問題起こさないで欲しいわね」
優護「お母さん!」
泥棒「っつう……このアマぁ……!」
「せいっ!」
泥棒は女性に向かって殴りかかるが、拳をいなされ、背中に後ろ回し蹴りを叩き込まれ、転がっていく。
泥棒「グハッ……」
剣護「つよ……」
魔理沙「綺麗な上に強いとか、人気出ないわけないよなぁ」
泥棒「チッ………クソが!」
泥棒はあろうことか偶然蹴り飛ばされた方にいた優護と愛菜を捕らえ、走り出した。
「しまっ……⁉︎」
優・愛『お母さぁん‼︎』
泥棒「ヘッ………あばよ‼︎」
「待っ………!」
ドォン‼︎
『っ⁉︎』
泥棒が走り出した瞬間、爆音のような銃声が響きその場にいた全員が耳を塞いで怯んだ。
泥棒「ぐお……!」
魔理沙「な、なん……⁉︎」
剣護「シャアアアアアアアアアアア!!!!」
泥棒「ガフア⁉︎」
怯んだところを剣護は間合いを詰め、泥棒の顎を蹴り上げた。
思わず泥棒は双子を離し、剣護は優護と愛菜を抱えると女性の元へと離れる。
「優護…!愛菜…!」
優・愛『お母さん!』
泥棒「く、クソ…あ、顎が……」
剣護「動くな」
泥棒「ヒッ……!」
剣護は刀を泥棒の首に添え、顔に銃口を向ける。
剣護「お前を窃盗及び誘拐未遂の容疑で逮捕する」
剣護は泥棒の両手に手錠をかけ、騒ぎを聞きつけ駆けつけてきた自警団の人に身柄を渡した。
魔理沙「あいつもあいつですげえな……」
「魔理沙!」
魔理沙「お、慧音か」
騒ぎを聞きつけたらしく、慧音と呼ばれた女性が魔理沙の元へ走って来た。
慧音「何があったんだ?」
魔理沙「盗人が暴れただけさ。ま、もうあいつがとっ捕まえちまったよ」
慧音「最近来た外の世界の者か?」
魔理沙「あぁ」
慧音は剣護の元へ行こうとすると、慧音よりも先に双子の母親である女性が剣護の元へ駆け寄った。剣護も振り返り女性の方を向いた。
「…………剣護……」
剣護「…………母さん」
魔・慧『………………え?』
剣護と女性が発した言葉に魔理沙と慧音、その場にいた人全員が一瞬だけ固まった。
剣護「やっぱな。雰囲気から分かってたよ」
魔理沙「え?え?え?」
「……そういえば、あなたはそういうのに敏感だったわね」
慧音「え、ちょ……」
剣護「生きてることは分かってたけど……まさかここに居たなんてな」
「私からしたら……あなたがここに来てることが不思議だけどね…」
魔理沙「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
話についていけない魔理沙が待ったをかける。
魔理沙「ど、どういうことなんだぜ⁉︎母さんって…」
剣護「どうって……そのまんまの意味だよ」
慧音「つ、つまりお前は桜の……」
桜「えぇ、息子よ」
魔理沙「優護と愛菜は⁉︎」
桜「剣護の弟と妹よ」
剣護「俺の兄妹なん⁉︎」
剣護の母親、桜の言葉に優護と愛菜の2人も口をあんぐりと開けて固まっている。
慧音「2人はそのことを知って…?」
桜「一応、お兄ちゃんがいることは教えてたわよ?」
優護「お兄ちゃん……」
愛菜「お兄さんがお兄ちゃん……」
剣護「キャパオーバーしてんだけど」
優・愛『………………』
剣護「え、えー…と」
優・愛『……けんごお兄ちゃん!』
剣護「ぐほぁ⁉︎」
黙り込んでいた2人の顔を覗き込むと2人は剣護のことをお兄ちゃんと呼びながら飛びついた。
桜「あら、適応力の高さはお兄ちゃん譲りね」
慧音「……まだ少しついていけんが…とりあえず私は寺子屋に戻るよ」
桜「私もそろそろお店に戻らないと……」
すると茶屋の中から店主らしき男性が現れる。
店主「あぁ、いいよいいよ。桜さん。休みにしとくから、しばらく息子さんと過ごしてきな」
桜「でも……」
店主「いいっていいって。店の方は気にしなさんな」
桜「じゃあ…そうさせてもらうわね」
魔理沙「じゃあ私はここで……」
剣護「待っておくんなし」
魔理沙「なんでだよ!」
剣護「どんな反応したらいいか内心わかんねんだよ」
魔理沙「知るかよ!自分でなんとかしろよ!」
剣護「ついてくるだけで良いから!」
魔理沙「……はぁ……分かったよ」
剣護「あざす!」
魔理沙「全く………」
ブツブツ文句を言いつつ、剣護達に渋々ついて行く魔理沙だった。