母、桜に連れられて剣護たちはある場所へと向かっていると、遠くから掛け声が聞こえてくる。
剣護「……ん?なんだ?」
桜「この里には道場もあるのよ」
剣護「道場か……」
桜「もう何年もうちに帰ってないわねー…道場とかどうなってるかしらね」
魔理沙「自分ちに道場あんのか⁉︎」
剣護「まあな。そっちは怜二んとこで管理してもらってるよ」
桜「柳生さんのところか。怜二君は元気?」
剣護「元気どころか、あいつ武偵なってんだけど」
桜「え、武偵になったの?あの子」
剣護「通信科でうちのクラス」
桜「あら、そうなの。っと、見えてきたわね」
そうこう言ってるうちに、先程話していた道場の前に着いた。
剣護「んあ?道場?」
桜「そ。ここに用があるのよ」
魔理沙「………待てよ。さっきの流れからして…」
剣護「……多分お前と考えてること同じだわ」
桜「さ、入りましょ」
道場に入ると6人ほどの門下生が稽古に打ち込んでおり、その奥で眼鏡をかけた男が指導していた。
剣護「あぁ………………やっぱりな」
予測していたことが的中し、剣護は手を顔に当てる。
すると入り口付近にいたのか、妖夢が話しかけてきた。
妖夢「あ、入門希望者ですか?……って魔理沙さん達じゃないですか」
魔理沙「よう」
妖夢「何か御用ですか?」
桜「ええ、あの人にね」
桜は指導をしている男を見ると、男はこちら……剣護に気づくとその表情を驚愕で染めた。
「け……剣護……剣護なのかい………⁉︎」
門下生たちも剣護たちの方へ振り向く中、男は剣護の方に駆け寄ってくると強く抱き締めた。
妖夢「え、ちょ、ま、真さん⁉︎どうしたんですか⁉︎」
魔理沙「あー……やっぱりか…」
剣護「やっぱり母さんと一緒にここにいたんだな………父さん」
妖夢「父さん⁉︎」
魔理沙「ちなみに桜は剣護の母親らしい」
妖夢「そうなんですか⁉︎」
魔理沙「そんで優護と愛菜はあいつの実の兄妹にあたるわけだ」
妖夢「理解がおいつかないです……!」
魔理沙「安心しろ。私もだ」
その後、稽古を終えて道場には剣護、真、桜の親子3人が向き合って座っていた。
真「さて、改めて……久しぶりだね。剣護。元気…だったかい?」
剣護「まあ……少なくとも今以外は」
桜「何したらそんな大怪我するのよ」
剣護「その前に父さん達がいなくなった訳が知りたい」
桜「それは………」
真「……難しいね。そのことを話すのは…」
剣護「………イ・ウーに関係することか?」
真・桜『っ!』
剣護の言葉に2人は驚愕の表情を浮かべた。
桜「あなた…なんで知って……」
剣護「アリアって友達がそのリーダーの曾孫で、実際にリーダー……シャーロックとも対峙した」
桜「ウッソでしょあんた……」
真「そうか……すまない、大変だったろう…?そんなにボロボロになって……」
剣護「いーよ、別に。こうして生きて話すことができてるんだし。それより………イ・ウーについて調べてたならイロカネについても知ってんだよな?」
桜「やっぱり聞いてたのね……イロカネについて……」
真「知ってはいるけど……まだ調べている途中だからね。僕らもあまり詳しくは分からないんだ」
剣護「……そっか」
桜「…もしかしてだけど…あなた持ってる?」
剣護「持ってるどころか撃ち込まれてる」
桜「ウッソでしょ…⁉︎」
真「それで、何ともないのかい…?」
剣護「時々胸あたりが熱くなる以外は特に……」
剣護がそう言うと、真は剣護の顔を覗き込む。
真「……うん。今は特に変化とかはないようだ」
剣護「でも常世の神子の時に髪と目の色が変わったのよな」
真「なるほど……」
桜「……それでここに招かれた…てことか」
剣護「何?」
桜「あなたをここに連れてきた人は私たちがイロカネを調べていることを知っていた……まあこっちが教えたんだけど。だからその力を持ったあなたを連れてきたってこと。でしょ?紫」
紫「えぇ、ご名答よ」
声の方を振り向くといつの間にか、金髪の女性が道場の入り口に立っており、その後ろには魔理沙と妖夢が覗いていた。
紫「初めまして。あなたを幻想郷に連れてきた張本人の、八雲紫よ」
剣護「あの時の沈む感覚はあんたの仕業だったのか…」
紫「えぇ、私の能力でね」
剣護「能力?」
真「幻想郷の人々や妖怪達は何かしらの能力を持ってるんだ」
紫「○○の程度の能力って感じでね。私の能力は『境界を操る程度の能力』。あなたを幻想郷に連れてくるのに使った能力よ」
剣護「○○の程度の能力か……てことは魔理沙たちもか?」
魔理沙「おう。私は『魔法を使う程度の能力』だぜ」
妖夢「私は『剣術を扱う程度の能力』です」
剣護「もしかして父さん達も?」
真「いや、僕たちは能力を持ってないよ」
剣護「そっか……」
紫「ちなみにあなたも持ってるわよ。程度の能力を」
剣護「マジで?」
桜「まあ当然よね。ご先祖様の常世の神子の力を唯一受け継いで、鬼道術だって……あれ?うちの子って結構ハイスペックなんじゃ…」
剣護「って話がズレてるズレてる。そんであんたが俺をここに連れてきた目的だけど」
紫「あぁ、それね。さっき話してたイロカネの力を制御できるようにさせるためよ」
剣護「あれを?」
紫「えぇ。あんな未知数なものを下手に扱えばとんでもないことになるのは目に見えてわかるでしょう?」
紫の言葉に剣護は、パトラとの戦いの時のアリアを思い出す。
剣護「………確かに」
さらにシャーロックの言葉、彼が戦いの中で見せた能力が頭の中を過る。
剣護(シャーロックが言ってたこれから先に起こる戦いの序曲…てことは強敵と対峙することになるのは確定……なら力をつけるに越したことはないか…)
真「良いんじゃないかな?剣護の中にイロカネがあるのは、まだ少し不安だけど」
桜「超能力持ち相手の対応もやりやすくなるんじゃない?」
紫「どうかしら?」
剣護「……うん…………よろしくお願いします」
剣護は少し考えてから決心し、真剣な表情で紫に頭を下げた。
紫「わかったわ。その代わり修行はこの世界のルールに従って行うわね」
剣護「ルール?」
紫「この世界では揉め事等は弾幕ごっこで解決するの」
剣護「え何それ」
紫「明日詳しく教えるわ。それまでは……そうねぇ、まあゆっくりしてなさいな」
積もる話もあるでしょう?と言って紫は道場を出て行った。
剣護「積もる話ねぇ……」
真「フフ、いろいろ聞かせてもらおうかな」
魔理沙「私も聞きたいぜ!」
妖夢「わ、私も少し…聞きたいです」
剣護「えぇ…まあ…いっか」
桜「じゃあお茶入れてくるわね」
その後、剣護達はお茶とお菓子を摘みながら、他愛のない話をした。
真「キンジ君や白雪ちゃん達は元気にしてるかい?」
剣護「相変わらずだよ。白雪はー……悪化してるな、うん」
桜「単位はしっかり取ってる?」
剣護「ちょっと足りなくて任務受けたけど……どうなってるかな…」
桜「留年とかしないでよ?」
剣護「わかってるよ…」
魔理沙「留年ってのをするとどうなるんだ?」
剣護「めっちゃめんどくさいことになる」
真「ちゃんとご飯食べてるかい?風邪ひいたらしてないかい?」
剣護「それ親が上京した子供に言うやつじゃん…まあ飯は自炊してるし、風邪はひいてないけど……怪我は増えたかな」
妖夢「確かに前見た時よりも傷増えてますね…」
桜「昔は綺麗な肌してたのにねー。でも本当、大きくなったわねぇ」
剣護「あ"あ"あ"あ"あ"…!抱きつくなぁぁぁ……!」
桜「ところで……剣護」
剣護「何?」
桜「彼女とかいないの?」
剣護「………………………」
ニマニマしながら聞いてきた桜に、剣護は滝のような冷や汗をかきながら顔を逸らす。
追い打ちのように魔理沙と妖夢の期待の眼差しが突き刺さる。
魔理沙「どうなんだぜ〜?」
妖夢「どうなんですか?」
桜「どうなの?」
剣護「………………………ます」
桜「ん?」
剣護「………………います」
桜「ほっほーう………やるわね…」
魔理沙「誰だぜ⁉︎誰なのぜ⁉︎」
真「こらこら」
剣護「い、1年の後輩…………3人と…」
魔・妖『え?』
真「ん?」
桜「………ほほーう」
魔理沙「………マジ?」
剣護「マジ」
妖夢「その人達って……前にアリスさんの事件で会った3人ですか?」
剣護「うん………そのうちの1人は俺と居合で対決した奴」
妖夢「あの子ですか⁉︎」
真「……うちの子は大変だねぇ」
桜「これは将来たくさんの孫に期待できるわね!」
剣護「待って、まだ結婚するとは……」
桜「一夫多妻でも問題ないわ‼︎」
剣護「法律的に無理だろ⁉︎」
その後も皆は日が暮れるまで会話を弾ませた。
真「そろそろここまでにしようか」
妖夢「そうですね。私も幽々子様の食事の用意をしないと」
魔理沙「私も帰るか。剣護はどうするんだぜ?」
剣護「俺か?」
桜「別にここにいても良いのよ?」
剣護「………いや、博麗神社に戻るよ。修行もあるし」
真「そうか。いつでもここに来なさい。優護と愛菜も待ってるからね」
剣護「うん、わかった」
妖夢「それでは失礼します」
魔理沙「お邪魔したのぜ」
真「気をつけて帰るんだよ」
桜「剣護、頑張りなさいな」
剣護「ああ!」
魔理沙と妖夢と別れた後、人里を抜け、森を抜け、長い階段をあがって剣護は博麗神社へと帰ってきた。
縁側の方に行くと霊夢がお茶を飲んでいた。
霊夢「おかえり」
剣護「おう。ただいま」
霊夢「どうだった?人里に行ってみて」
剣護「いい所だったよ。それに…俺の親にも会えたしな」
霊夢「あら、よかったじゃない」
剣護「あぁ……ホントにな」
霊夢「……親、か…」
剣護「霊夢?」
そう呟いた霊夢の表情は少し寂しげな雰囲気をしていた。
霊夢「何でもないわ。それよりさっき紫が来てたわよ」
剣護「んあ?何用で?」
霊夢「『明日から修行を始める』ってさ」
剣護「はっや。もう明日からかよ」
霊夢「修行のスケジュール聞いたけど、かなりハードよ?」
剣護「あー……まあ……期間短いから仕方ない」
霊夢「ま、私たちも付き合ってあげるわよ」
剣護「あぁ、助かる」
人里の道場の近くにある一軒家。そこでは剣護の両親が住んでいた。
桜「………………………」
真「まだ起きてたのかい?」
思い詰めたような表情の桜の隣に真が座る。
真「……剣護のことかい?」
桜「えぇ……」
真「本当に…随分大きくなったもんだよなぁ。あの子も」
桜「………ねえ、あなた」
真「なんだい?」
真剣な表情で桜は真の方に向き直る。
桜「そろそろ戻ってもいい頃だと思うの」
真「戻るって……外の世界にかい?」
桜「えぇ……星伽に行く理由も出来たし、何より……」
真「何より?」
桜「……また家族全員で暮らしたいじゃない?」
真「………そうだね。優護と愛菜も向こうの世界に慣れないといけないしね。いつ頃にしようか?」
桜「剣護が戻る時と一緒でいいでしょ。この時期なら確か夏休みだったと思うし」
真「あぁ、もうそんな時期なんだね。なら剣護が戻る時と合わせて準備しておかないとね」
桜「えぇ。それじゃあ寝ましょうか。明日も早いし」
真「そうだね。じゃあ……おやすみ」
桜「えぇ、おやすみなさい」
そう言って寝室で2人が布団に入ったところで、ふと桜がポツリと呟く。
桜「………そういえば、あの子単位足りないとか言ってたわよね…向こう戻っても私そこが心配だわ…」
真「だ、大丈夫じゃないかなぁ……………多分」